終わりのセラフ〜転生した少年〜   作:鬼城

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早めに更新できました!!

今回はオリジナルの回です。戦闘描写はありませんが…そして、少しだけ沙耶の秘密が分かります!!

それではどうぞ!!


三十九話 現人神

沙耶が産まれたのは少し有名な神社のある家庭だった。なにごともなく唯々普通に過ごす日々。恋こそはしなかったけれどもそれなりに充実した日々を送っていた。

親になにか秘密があったわけではなく家になにかあったわけでもない。いわゆる一般家庭のソレと同じだった。

しかしだ。やはり神社の子ということもあり人より霊感や霊力が優れていた沙耶は現人神と呼ばれる者と同じ力を持っていた。だから、5歳のあの時選ばれてしまったのかもしれない。

 

ーーーー

 

「今日は、沙耶様の誕生日ですよね?おめでとうございます!!」

 

神社のバイトさんがそう沙耶に話しかける。それに沙耶はニコリと笑ってお辞儀をした。きっと、いいように見られたいのだろう。と推測し心の中で軽蔑の目を向ける。

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ、当然のことです」

 

相手は満更でもなさそうな顔をしてはにかむ。

やはり、それにうんざりして沙耶は自分の部屋に戻った。

 

「馬鹿みたい。どうして…嘘の言葉を言われなきゃならないの?」

 

ストレスを吐き出すように言ってみる。

それでも気分は落ち着かずそばにある枕を投げる。

 

「なんで……」

 

現人神の才能が開花されたと同時に彼女に対して周りの反応は360度変わった。ぺこりぺこりと頭を下げる大人や敬語まで子供に使って媚びてくる大人。そこで沙耶は初めて大人の醜さを知った。というより知らされた。

 

「私は……こんな風になりたかったわけじゃない」

 

そうして、運命を呪う。

日常的には何も問題はない。むしろこの家でよかったとも思う。それでも、こう思ってしまうのは止められない。

 

『何故に運命を呪う?娘よ』

 

突如聞こえたノイズまじりに響いた声。それにビクッと体を震わせて振り返る。もちろんそこには誰もいない。疲れているのかもしれない、そう考えて沙耶はベットに横になった。

 

『何故に人間は運命を呪う?』

 

横になってもなお響くーー否、聞いてくる声。それにうんざりしながらも沙耶の意識は落ちていった。

 

 

 

 

目を開けるとそこは青空が広がる空間だった。

 

「わぁ、綺麗……」

 

どこもかしこも綺麗な青で癒される。いや、本当に癒されていたのだろう。そんな空間に暫く一人で浸っていた時、後ろから声が聞こえた。

 

「何故、運命を呪う?」

その声は寝る前に聞いた声。そして質問。

バッと振り返るとこんどは可愛らしい少女の姿があった。服は着物を着ていてどこか気品を漂わせる。

 

「あなたは誰?」

 

「我は創造の神。もう一度問う、何故に運命を呪う?」

 

「神様?」

 

「そうだ」

 

「そう、なのね……これは夢か。まぁ、いいわ。運命を呪うのは嫌だからよ。この運命が」

 

「何故に?神が創りし運命を嫌う?」

 

よくわからないといった様子で首を傾げる少女。その姿に苦笑し沙耶は言う。

 

「そうね。理不尽だから……」

 

「理不尽?」

 

「そう。皆が皆、平等ではなく。決まった道を歩かされるのが……まるで道化のよう」

 

「否定。それは違う。私たち神は人間を愛している。だから道化のようには扱わない」

 

「神が人間を愛してる?それは本当?」

 

沙耶は自称神様に対して嘲笑的な意味での笑みを向ける。だって、おかしいから。人間を愛してるのに神は争いをさせる。人間を愛してるのに神は願いを聞いてくれない。奇跡などない。

それなのに、この神様は言う。

ーー人間を愛してる、と。

 

「本当」

 

「そう……案外神様って分かってないのね」

 

「ん?分かってない?」

 

「なんでもないの。それで、あなたは私の中の夢の一部よね?なら、私が今どんな気持ちで生きているかは分かるのかしら?」

 

「……?我は神だ。汝と我は別」

 

「別?本当に神様なの?」

 

「さっきからそう言っている。約四年前、我は汝の身体に逃げたのだから。最近になってやっと力が戻ってきた」

 

真顔でそう言う少女はまるで嘘をついているようには見えない。そもそも、本当に嘘ではないのかもしれない。それに、そういった体験談は沙耶の家の倉庫に埃をかぶってしまってある。昔にもこういったことがあってそれを記したものらしい。

 

「信じたくはないけれど……」

 

「何を言う。汝は5歳だというのに本当に肝が座っているというかなんというか……まぁいい。別に信じろなどは言わない。我はただ捜し物をしているだけだ」

 

「捜し物?」

 

「そうだ、捜し物。汝の霊力を使って禍々しいナニカを感じることは出来ない?我はソレを回収せねば……」

 

「禍々しいナニカ……」

 

少女はナニカを捜しているようだ。それは禍々しいというのだから神にとっては悪な物なのだろうか?などと考えながら沙耶は音の波長に集中する。人間とは違う。そして闇の住人とも違う。もっと別の何か…それをなんとなく感じ取った時には異変が起きていた。

 

「ど……どうなってるの?」

 

意識を強く刈り取ったのは真っ暗な闇。あれはこの世にとっても神界にとっても異物なもの。しかし、その闇は収まることを知らずに膨れ上がる。そして、一つの人間の波長が無くなった。

 

「コレって……」

 

「何かを感じたようだな。我が捜しているものはソレだ。その闇は我の半身。しかし……力が強くなりすぎている」

 

「半身?何言って……」

 

「おっと、汝はそろそろ起きる時間だ。今度は現世で会おう」

 

その言葉と共に少女は消え、沙耶の意識は遠ざかっていった。

 

 

目を開けるといつもの天井があった。重たい体を持ち上げるようにして起き上がりふと夢のことを考える。

夢とは思えないあの感覚。闇に飲み込まれるソレはいまも生々しく肌に纏わり付いているかのようにリアルだ。

 

「夢…?でも、夢じゃない?」

 

暫くボーッとしていると、目の前に光が奔る。そこから出てきたのは夢の中で神様と名乗っていたあの少女。

夢の時となんら変わりのないその姿に今は寒気を感じるほどに恐れをなしている。

 

「……あなた…」

 

「ふぅ…具現化までは力が戻った。すまない、霊体だからな怖がらせているかもしれない」

 

「…だ、大丈夫」

 

「そうか、それは良かった。汝の体を借りている我にとっては実体を持つことは出来ない。暫く汝の体で生活させてもらうこととなる」

 

「……前も思ったんだけど、なんで私の体に?」

 

「それはだな。我にも分からん!神界からアレを捜すために下界に降りたのだが…気づいて目が覚めたらすでに汝の体の中だったのだ。」

 

アレとは夢の中で言っていたあの禍々しいナニカのことだろう。それを捜すために降りて目が覚めたら沙耶の中。はっきり言ってやはり意味がわからない。絶句する沙耶だったが分からないのであればもう分かる手段がない。神様でも分からないのだから自分がどうこうできるはずがないと割り切り軽く息を吸い込んだ。

 

「…ねぇ、その捜し物。私にも手伝わせてくれない?」

 

「ん?何故?」

 

「だって、それがないと貴女も帰れないんでしょう?私の中にずっと居るのもなんだか可哀想。それなら、手伝う方がいいでしょう?」

 

「しかし…アレは人が触れるものではないぞ?」

 

「それでもよ。こんな退屈な日常よりはマシ」

 

その言葉を聞いて少女はうーんと考え始めた。やはり、神様の事情に首を突っ込むのは悪かったかな。と考えながら少女の返事をまつ沙耶。

退屈な日常……それは日々思ってきたこと。それは平和な日常であるほど強く感じてしまう。現人神と言われて自分には普通の人とは違う力があるためソレは他の人が思うよりも深く大きい。

彼女はすでに普通ではないのだから。

 

「分かった。汝と我は同体だから少しは汝も無関係というわけにはいかない」

 

「なら交渉成立ね。それで、あの禍々しいナニカってなんなの?」

 

「アレは……我と同じ神であり我と対になるもの。所謂、破壊の神。アレと我はもとは同じ一体の神だったってことしか分からない。どうやら記憶が少し飛んでいるらしい」

 

「……神様も記憶喪失ってことがあり得るのね」

 

「まぁ、我は不良品ってやつでな」

 

神様にも不良品とかがあるらしい。神は人々の信仰によって初めて生まれることができる。つまり、この少女にも信者はいることになる。それでも今のこの少女にそれらがいるとは思えない。もし、いたのなら私の体には入れないはずだ。……それならば、不良品というのはそういう意味でのものなのかもしれない。

不良品だからこそ信者ではない人間に触れることができる。そういう話は聞いたこともないがまぁ、大丈夫か。と沙耶は考えて笑顔をつくった。

 

「まぁ、いいわ。それじゃ行きましょうか」

 

「奴がいるのは名古屋だ。そこに向かうとしよう」

 

「名古屋?ここから随分遠いじゃない!?」

 

「ほう、感じ取れても場所まではわからないか……」

 

「まぁ、5歳ですから」

 

「そうだったな。汝が5歳ってことをすぐに忘れてしまう」

 

普通の人から見れば5歳と言っても信じてくれないだろう。他の同級生に比べれば沙耶の身長は随分高い。頭もよくまわる。まるでそれは5歳児とは思えない。少女はそのことにやはり不思議に思う。

 

「まさか……な」

 

ある一つのことを思い出したが少女はありえないというように首を振った。運命は神が決める。それはすなわち…自分の思い通りにできる駒をつくることでもある。もちろんそんなものが認められる訳ではない。正確に言うと運命は神たちがつくっているのだ。一人が反対すればその運命は不許可となる。それに神は…今ではそれぞれの対立が激しい。沙耶は神社の子である以上誰かの神の信仰者だ。その信仰者をこれほど優遇的に作るとなると他の神が許すはずがない。信仰はされるほどに神にとって良いものとなるからだ。信仰をされるかされないかでは神の力は変わってくる。

 

「どうしたの?そんな青い顔をして」

 

「…!?い、いやなんでもない」

 

急に沙耶に声をかけられて少女は自分が長く考えていたのだと気づく。それから、心配そうにみる沙耶に声をかけた。

ともかく、これから名古屋までいかなくてはならないのだ。さっき考えていたことをすっぱりと忘れて少女ーー創造の神は指を鳴らした。

 

 

少女が指を鳴らす。刹那、沙耶の目の前に広がる景色がパッと変わった。どうやらそこは広場のように見える。

 

「何をしたの?」

 

「移動。もう名古屋に着いた」

 

「え!?そっか、貴女本当に神様だったのね」

 

「疑っていた?不愉快」

 

「ごめんなさい。…そ、それで捜し物ってどこ?」

 

怒りの目を少女に向けられて沙耶は謝り、無理やりに話題を変える。しかし、別にそれほど怒ってなかったのか少女は笑った。

 

「分からない。大まかな場所は分かるけど何処にいるかは分からない」

 

「それ本当?」

 

「本当。だから捜す。ここにいる地域全員に会う。会ったら分かる」

 

そう少女は言う。それに沙耶は面倒くさそうだなと思ったが首を横に振り楽しそうに遠くを指差して笑った。

 

「さぁ、私たちの冒険を始めましょう!」

 

 

目を開ける。そこはいつも通りの刀の中。

どうやら、あの攻撃で全体力を使うと陵が危ないから自分の力を代わりに使ったためか気を失っていたらしい。

気を失っていたので、鬼呪装備としての力は半減しただろうが陵にとってはさほど問題はないだろう。と考えて沙鬼は起き上がる。

 

「それにしても…懐かしい夢を見たなぁ」

 

そう一人で呟きため息をついた。確か…あのあと2年かけて捜して…やっと見つけたはずだ。

(まぁ、まさか陵だとは思わなかったわ)

さてさて、昔に浸るのは後にして今はどうなっているかを見せてもらおうかしら。と考えて陵の目と自分をリンクさせる。

 

「……ふぅん。あの子は鬼になるつもりかしら?」

 

そこに映った景色は陵と優がクローリーと戦っている場面だった。優は満身創痍だというのにクローリーに向かっている。その姿を見て沙耶は無謀な…とため息をついた。陵の姿は見えない。それは自分の目と彼の目が一緒になっているためだ。つまり、陵目線で見ているから陵が見ているものしか沙鬼は見えない。

 

「時間切れってとこかしら」

 

そう沙鬼は呟くと後ろを振り向いた。

時間切れがどういうものをさしているのかはわからない。しかし、彼女の表情は険しく泣いているようにも見えた。




今回は主人公は全然でませんでしたー!!許せ!

なんとなく気づく人もいるかもですが…なるほどと思ってもらえれば光栄です!!

それでは次回もよろしくお願いします!
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