目を覚ますと、知らない森の中で倒れていた。
あたりは薄暗く、いかにも何かがいそうな雰囲気を醸(かも)し出していた。
「どこだ? ここは」
あたりを見渡しても、木、木、木ばかり。それになんだか体が重たい感じもする。
そして、耳を澄ませると遠くから足音が聞こえてくる。その足音は俺のいるところに向かってきている。
野生動物かと思い、鞄に入っていたライターを手に持つ。
「あれ? 見かけない顔だな」
現れたのは、金髪のロングヘアーで白と黒を基調とした帽子、そして、帽子と同じ色をしたエプロンドレスを着ていた女の子だった。
そして、彼女は俺に何故と聞いてきた。
「気付いたらここにいた」
俺はそう答えるしかなかった。というよりもそう答えることしかできない。
「そうか、だったらお前は外来人か?」
外来人? 男勝りな口調の女の子がそんなことを言ってきた。
「外来人がなにかもわからないようだな。よく妖怪に食べられなかったもんだぜ。相当お前運がいいな。私のうちに来るか?」
俺が場の状況と女の子が言っていることに混乱していると、その女の子が又口を開いた。
「取り敢えず私の家に来てみなって。そうだ忘れてた」
女の子は自分のペースで話している。そして、何かを思い出したように言った。
「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだ。よろしくな!」
「え、あ、よろしく」
混乱している俺は名乗らずに宜しくとだけしか言えなかった。
そして、魔理沙についていくこと小一時間が経っただろうか? ようやくそれらしき家に着いた。
「ここが私の家だ」
「あ、そういえば俺まだ名乗ってなかったな。さっきはいろいろ混乱してたから。俺は言葉(ことのは)霊(れい)これでも立派な男だ」
「そうなのか? てっきり女の子かかと思ったぜ」
俺が混乱していて、尚且つ警戒もせずに自分の家に上げようとしていた魔理沙は、やはり俺を女の子だと思っていた。
それもそのはず、俺の髪は肩までかかっており、セミロングだ。さらに結わえていない上に女の子みたいな顔つきなのだ。声と一人称でわかると思っていたのだが、やっぱりだめらしい。
「とにかく俺は男だ。異論は認めない!」
俺がそういうと、魔理沙は「そうか」とだけ言った。
「ここで話すのも何だから、早く入ってくれ」
俺は魔理沙に促されるまま、家の中に入った。家の中は一言で言うと本で散らかっていた。
正直に言うと、女の子が住んでいるような部屋ではない。いやうちの妹とほとんど同じで、片付けるのが苦手なのかもしれない。
「その辺に座ってくれ。何もないけど寛(くつろ)いでていいぞ」
寛げと言われてもどこに座ったらいいのかわからない。俺は適当に本を避け、ほこりを払って座った。
「それで、霊はなんであそこにいたんだ?」
「いや、その、なんていうか……気づいたらあそこにいた」
嘘ではない。事実である。ゲームを起動させたらいつの間にか森の中だったのだ。しかし、そう言っても魔理沙は信じないだろう。
「そうなのか?」
「俺からも質問があるんだが、ここはどこなんだ?」
「ここは幻想郷だ」
幻想郷? そういえば『東方紅魔郷』でもそういった単語が出てきたかもしれない。
「幻想郷が何かわからないようだな。幻想郷っていうのは外の世界で存在が亡くなりそうになったり、忘れ去られたものが最後に行きつく楽園ってとこだな」
なるほど、と頷く
。
「まあそれに関しちゃ霊夢の方が詳しいだろうから、博麗神社にでも行くか」
そういって魔理沙は家から出た。
「あ、おい待てよ」
俺は慌ててその後を追いかけた。
「そういえば霊は……当然飛べないよな」
「え? 魔理沙は飛べるの?」
「ああ、まあ箒を使うけど」
そう言って箒に乗り、ふわりと浮かんで見せた魔理沙を見て俺は、驚いた。
「おーい」
あまりの常識外れに、言葉が出なかった。人が空を飛んだ。魔理沙の場合は箒になっているが、それでも何かトリックがあるのかとも思う。
「なんかすごすぎて言葉が出なかった」
「幻想郷で常識に囚われていたらダメなんだぜ」
そうなのか……そう言われてみるとそうかもしれない。俺が今この幻想郷にいることが何よりもの証拠なのだ。
「魔理沙の箒に乗せてもらうことって出来るか?」
「出来なくもないけど……絶対途中で例が落ちると思うぜ」
自信満々に言う魔理沙に、乾いた笑いしか出ない。
「そうか、歩いていくしかないのか。『俺も飛べたら』いいのに」
その瞬間ふわりと体が宙に浮いた。今何が起こったのか俺には分からなかった。
「おお! なんだ、飛べるじゃんか」
「あ、いや……なんで飛べたのかわからないんだけど」
「そうか……でも飛べたから解決したな」
魔理沙はまだ疑問を浮かべている。けれども、その疑問を振り払うように頭を左右に振ると「こっちだぜ」といい、俺はその後に従った。
しばらく飛んでいると、魔理沙が指をさして言った。
「あれが博麗神社なんだが、普段は霊夢がお茶を飲んでいるけど、何かあったときは頼りになるぜ。あとは参拝客があまり来ていないのでも有名で、お賽銭が雀の涙以下でも有名だな」
どれだけ、廃れた神社なのか想像してしまったが、近くまで来てみると、とても綺麗な作りの神社だった。
そして、神社の縁側に紅白の巫女服を着た少女が座ってお茶を飲んでいた。
「あら、魔理沙。どうしたの? ……察したわ」
「おう、理解が早くて助かるぜ。こいつは魔法の森で見つけたんだ」
「俺は、言葉霊。よろしく」
俺は者みたいに言われたが、気にせずにすぐに自己紹介をした。
「どうも、初めまして。私は博霊神社の巫女をしている、博霊霊夢よ。よろしく」
「霊夢。お茶の邪魔されたからって不貞腐れるなよ。いつものことだろ」
「いつものことだから不貞腐れているんでしょうが。毎度のこと面倒事を持ってくるあんたに言われたくはないわよ」
俺は面倒事扱いされているらしい。
「それよりも……えっと霊と言ったかしら、ここに来た経緯を話してくれるかしら?」
俺は、魔理沙と同じ説明を霊夢にも説明した。霊夢はすぐに納得したようである。
「でも不思議ね。飛べなかったはずの貴方が、いきなりそれも一瞬で飛べるようになるなんて……」
うーんと唸っている霊夢であったが、実際俺にもわかっていないのである。
「まあ、考えても仕方ないわ。ゆっくり様子を見てみましょう」
お茶を啜りながら呑気にいう霊夢。本当に神に仕える巫女なのだろうか?
「それじゃあ、私は帰るぜ。いろいろとやらないといけないことがあるし」
「すまない。ありがとうな、魔理沙」
「おう、じゃあまたな」
魔理沙は箒に跨(またが)りまた森の方へ飛んで行った。
とうとう霊夢と二人きりになってしまった。二人きりというのは別に問題はないのだが、俺はこれから野宿でもしなくてはならないのかと思い、ため息をついた。
「何か不安でもあるの? 今すぐ帰りたいなら帰すこともできるのだけれど」
「それは本当か?」
うんと頷く霊夢。俺は帰れるのかとほっと安心した。
「ちょっと待ってね。少し準備するから」
霊夢はお茶を置いてどこかに行った。その間に俺は何をしようかなと思い、考えていると、
「はい、それじゃあこっち来て」
「うわ!」
早すぎる準備である。それに驚いてしまった。
「何も驚くことはないじゃない。ほら早くこっちに来て私も忙しいんだから」
忙しいようには見えないが、突っ込んだら負けという気がする。そう思いながら、霊夢の後をついて行った。
「ここを通れば帰ることができるわ」
そこは神社の鳥居だった。
どう見ても帰れないように見える。本当に鳥居をくぐるだけで帰れるのだろうか?
「なんか帰れないと思っている顔をしているようだけど、結界を弄って外の世界とつなげたから帰れるわよ。まあ外からはこれないけれどね」
そうなのか……疑ってなんだか悪いと思った。
「そうか、ありがとう、短かったけど世話になった。魔理沙にもよろしくと伝えておいてくれ」
俺は、鳥居のほうに歩きだし、くぐった……。
「え?! 嘘……」
後ろから声がした。
そう、俺は帰ることができなかったのだ。
そして、何か違和感を感じる。ふと空を見上げた。
「あれ? なんかやけに空が赤くないか?」
なぜか空が、赤い霧のようなものに覆い尽くされていった。
霊夢が目を見開き、言い放った。
「これは……間違いなく異変ね。霊が帰れないのもこれが原因かもしれないわ。全くトン等に魔理沙の奴は面倒事を持ってくるんだから」
霊夢がぶつくさと言いながら、赤い霧の原因を探ることにしたのであった。
自分で言うのもなんだけれど、展開が早いような気がします。
もう少し、内容を濃くするように努力いたします。