神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
「……?」
丑三清志郎は目を覚ます。そして今の自分の状況を確認した。
(連れ戻されたのか……)
先程、空中ケンパという過酷な試練に放り込まれた愛しの明石を助ける為に、TV局のヘリを脅して乗っ取り、スカイツリーの上までたどり着いた。こちらを見て驚きながらも少し嬉しそうだった明石に手を差し伸べると、明石もその手を握り返して……くれるはずだったのに。
どうやら自分はその一歩手前で転送されてしまった様だ、と現在の状態から丑三は察する。
ゆっくりと目を開けると、そこには見た事のあるモニターがあった。ここはかみまろの家の様だ。そのモニターの前で、少女……の姿をした化け物、アシッド・マナが、エイリアンの様な服装でゲーム機を操作している。
「空中ケンパ、終了♪生き残ったのは……8人かぁ。意外と健闘したね、生き残りは3人くらいだと予想したんだけど。
さぁて、そろそろ始める?」
その言葉と共に、モニターにデカデカと映し出された『CLEAR!!』の文字が消え、『次のステージを えらんでください』という選択画面に切り替わった。選択肢は1つ。
「『じごく……へん』?」
「そうだよ」
その言葉に、マナがこちらを見向きもせずに答える。
「今創ってるからちょっと待ってね。心配しなくても、お前も参加させるから。『地獄変』」
こちらに興味なさそうに淡々と答えるマナに、丑三は冷や汗を流しながらもそっちを睨む。
「お前は、何なんだ?
どこから来て……何がしたい?」
マナはそれに対し、空返事の様に感情のこもらない声で告げる。
「地球人。 未来から来た地球人」
丑三は、息を呑む。その音が妙に大きく聞こえた。
「例えばぁー、お前らが生きるこの地球がぁー、未来のおもちゃだったとしてぇー、マナとカミは、それで遊んでただけだとしてぇー、そのおもちゃの住人の中のたった1人にだけ……
天神橋マサルにだけ不思議な力を与えただけ……
だったらどーする?」
丑三は、全力で拘束具を引きちぎる。自由の身になった丑三にも興味は無い様で、マナはそのままの姿勢で続ける。
「大丈夫だよ。どーせそんなこと、考える必要もなくなるから。
だって、次は地獄だよ?みんな地獄に堕ちるんだよ?」
その言葉と共に、モニターに多くの画面が映る。その画面の中に、丑三は何人か知っている顔を確認した。
(明石!明石がいる!良かった生きてた!)
そう思った時、ズボンの左ポケットから振動音が聞こえた。丑三はポケットを探る。その手に、固い感触があった。
「コイツもコイツもコイツも、世界中の神の子も、カミーズJr.もみんなみんな、
みーんな地獄に集まって、最後の
『
その言葉を耳に入れながら、丑三はポケットの中のものを取り出す。それは……カミーズフォン。
今は亡き(?)セイン=カミの遺産とも言うべきそれは、丑三にある事を告げていた。
(神の子VSカミーズJr.? これ、どうなるんだっけ?確か、影が繋がって……)
「何なの?そのケータイ」
マナがこちらを初めて向く。モニターでは大爆発が起こり、人が2人ほど爆風に巻き込まれ空を舞っている。その2人に見覚えがあり、丑三の意識は一瞬そっちに傾いたが、マナがこちらに話しかけてきた為思考は中断された。
「カミが作ったやつ?何か仕込んでんの?だったらこっちに渡してよ。『
よこせ、ホラ」
「……お前は、俺と明石を引き裂いた」
丑三はよこせと言われたカミーズフォンを逆にギュッと握りしめ、ゆっくりと話す。
「もぉ少しであの手を摑めたのに……
だが俺は
俺の愛は!
台詞の途中でカウントダウンが終了し、丑三は影へと沈む!それは丑三もマナも予想していなかった。マナはしかし驚きもせず、消えていった丑三のいた場所に近づき、淡々と言う。
「あーあ。おとなしく言う事聞いてりゃ、すぐ逢えたのに。バカだねー」
その時、モニタールームのドアが急に開いた。そこに現れたのは、太った若者と怪しい服装のオヤジ。
「え……?へ?」「あ……う……そ……?ホントに……宇宙人!?」
「違うよ、私、宇宙人じゃ無いもん」
そう言った直後、かみまろの部屋で軽い爆発が起きたーー
ーー(落ちたのか?また影に?)
丑三は影の中で辺りを見回す。すると、クラスハウスに置いてきた自分の大切な物……六ちゃんのスケボーが浮いていた。
丑三はカミーズフォンを見て、今の状況を理解する。
(なるほど……『影踏み』でリンクさせた影のワープが、タイマーで発動したのか……ナイスタイミング……ラッキー……
あ……出口だ……って事は、光の先は……」
「……ん?空?」
丑三は辺りを見渡す。辺り一面見る限り何もなく、ただ下に小さく街が見えるだけだった……否。
丑三の下には、1人の少年がいた。天谷武。1度戦い、そして親しくなった神の子が、血塗れで下にいた。どうやら気絶しているらしい。
と、そこで丑三は、更に2人下にいる事に気づく。2人は、ただ上へと……天へと手を掲げ、まるで自分が来る事が分かっていたかの様に、こちらをじっと見つめていた。
「……プハァ!?何だ急に!ワープって……え?空!?」
「光圀、良いところに。手伝え」
「え?何を……っておい、アンタら!血塗れじゃねえか!すぐ病院いかねぇと!」
神に背きし、光と影。
その2つの運命の螺旋が、神を討たんと魅かれ合い、交わる時、物語はーー
終結へと、加速する。