神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
下手な鼻唄を背景に、明石は目を覚ます。それと同じくらいに、他の生き残りも起き出す。
「でーきた!……あ、お前と……お前だっけ?これ、没収ね。もう1人のは見つからなかったけど、ま、落としたんでしょ?」
鼻唄を歌っていた張本人……マナの左手には、2つのスマホ……カミーズフォンが握られている。どうやら、明石と紫村の物の様だ。
「それより見て見て♪じゃーん♪」
そう言うとマナは、もう片方の手に握られていた物を明石達に見せつける。それは……絵だった。
幼稚園児が描いたのか、と思う様な、乱雑で汚い絵。殆どが赤と黒で塗られているが、かろうじて人が描かれている事だけはわかった。
「始めるよ
『地獄変』」
マナは片頰を吊り上げて笑うと、その身体を光らせる!?
そして明石達が再び目を開けた時、そこにあったのは……
地獄絵図だった。
沢山の人……若い男女が化け物に襲われて死んでいっている。例えば、巨大ひょっとこに吸い込まれたり、例えば、鎧武者に首と胴を切り離されたり、例えば巨大ねぶた人形に握り潰されたり、例えば、例えば、例えば……
「もしかして、この人達って……空中ケンパに参加してなかった神の子じゃ……?」
天馬ちゃんが言う。確かに、俺達と同じ位の年齢の人達ばかりだ!
「な、何がどーなってんだよぉ--
『ガブッ』と大きな音が聞こえ、
空中ケンパをクリアしたうちの1人が、言葉が終わらないうちに巨大獅子舞に噛まれ、上半身を失った。
「……に、逃げろ!逃げろぉ!」
誰が言ったか言わないかのうちに、明石達7人は一斉に逃げ出した。
「あーあ!せっかくの『うんどうかい』会場がめちゃくちゃ……どーゆーおつもりっすか?」
ふと上から、気の抜けた声が聞こえる。イッセー達は皆上を向く。そこにいたのは……神小路かみまろ。
「マナさーん」
その言葉に呼ばれたのか、アシッド・マナもかみまろの横に出現する。
「だってつまんなかったんだもーん。
今から、アンタのもカミのも全部予定変更して、マナが考えたゲームやろうよ」
「え。別にいいけど、何すかこの地獄変って?」
「アンタが同人誌に予告だけ書いてたでしょ?「忘れた」それをマナが勝手に考えてみたの」
「……いいねぇ、これ。でも、これなら世界中巻き込んだ方が面白くない?」「うん、いいよ。これが最後だし」
「この世界を、喰い殺してやるんだ……
いい子も悪い子も……どーでもいい子も…皆、平等に地獄に堕とす……
アメリカも…フランスも…エジプトも……中国も……
ドイツもコイツもイタリアも…………あ……やべ。手ェ止まんねぇよ……」
その言葉と共にかみまろが座っていた……サイコロの様なものが変化する。青い球体。それは……地球。その中にかみまろの描いた絵がどんどんと入っていく。
その時、グラウンドを覆っていた壁のうち一部が壊れた。その中から階段が現れる。
「はい注目」
マナが生き残っている人間に向かって話す。
「このままでは、世界中の人は殺されちゃいます。救える資格を持つのはアンタ達、『選ばれの子』だけ。地獄から天国へと続くその道を昇って、この指に一番最初にとまった子だけ。その子が神さまになれまーす。
最後の選別、『地獄変』……スタート♪」
第1話ーーーあっちこっちハッチ
明石靖人は思っていた。どうして、自分が信じた人は、皆死んでしまうのだろうと。
タンクマン藤春ミツバ鳳トロイハラカイスージー柘植ちゃん芽衣ちゃんりんぺー佑……そして、涙ちゃん。
あんな思いは、もうしたくないのに……
嫌だよ俺…悲しいのはもう嫌だ…怖いんだ……仲間を信じて戦って、また……失うのが怖いんだ……
「何やってるんですか明石さん!?」「走って!!走ってください!!」
天馬ちゃんと紫村の声が聞こえる。その言葉にハッと正気を取り戻す。そして、背後を見る。
そこには、獅子舞の大きな口が……
「あ……」
大きな口が……蹴飛ばされた。獅子舞の変わりに明石の前に現れたのは、1人の少年。
全てが始まる前、明石と喧嘩別れした……神の子の試練を乗り越えたものの、そのショックで精神を病んでしまった男。
明石靖人の親友。
青山仙一が、そこにいた。
「あ……青山……」
「あか……し……」
青山はそれだけ言うと、明石に背を向ける。そのまま彼は階段の方へと走り出した。
「おい……青山?……待てよ青山ぁ……!?」
明石は青山を追って走る。
「何で……何で逃げんだよ青山!お前を元に戻す為に生きてきたんだよ、俺……!なぁ!?話できるなら話そーよ!青山ぁ!「ムダだよ……」!?」
青山を必死に追う明石、その後ろから1人の男がついてきた。彼は明石の横に来ると、明石と歩調を合わせながら語り出した。
「青山は、心を失っている……あ、俺は子門隼人。もしかして、君が明石靖人か?俺は彼と同じ箱の生き残りなんだ。君の話はよく聞いてたよ」
その言葉を聞き、明石は子門に逆に問う。
「ムダってどういう事ですか?青山に今、何が起きてるんですか!?」
質問に、子門は険しい顔で答える。
「彼は……神の子の選別の後、受け答えすらままならない状態だった。専門医が言うには、『大きな精神的ダメージによる現実逃避』、目の前で仲間が死んだ事が、よっぽどショックだったんだろう。
……でも、選別が開始された時、彼は動き出した。しかしそれは正気に戻ったんじゃなく、生物的本能……今の青山はただ、『生きる』という目的にだけ取り憑かれた、感情を持たない戦士だ。恐らく彼自身も、自分を見失ってる。残念だけど……諦めたほうがいい……」
その時、階段の下の方から大きな音が聞こえた。明石と子門が振り向くと、階段の下の方が崩れていっているのが見えた。
明石と子門はスピードを上げる。すると、少しいった先は……分かれ道になっていた。
「左右に分かれてる……青山は……」
明石は、左の階段を登り、ゲートに侵入しようとしている青山を発見した。それに続き彼も左の階段を登り、ゲートを潜る。子門に紫村、天馬ちゃんもそれに続いた。
ゲートを潜った先、いたのは大きなたぬきの像。右にひょうたん、左に頭陀袋を持っていた。その頭陀袋とひょうたんにはそれぞれ文字が書いてある。
『天邪鬼迷宮』『カギをあけて突破したら終わり』
それ以外のルール説明は無い。明石は狸を調べようと思ったが、そこで見た。
青山仙一が、迷宮に向かって一番に走っていくのを。明石はその後を追う。
入り口を抜けると、いきなり左右に道が分かれていた。青山は左へと曲がる。明石はただひたすら青山についていく。
曲がった道には、沢山のドアが付いていた。青山はそのうちの一つに入っていく。
「待て青山……くそ!」
明石は青山の入った部屋の前に立ち、ドアノブを掴む。
(逃がすかよ青山……俺はお前に、あの日の事を謝る為にここまで生きて来たんだ!こんな所まで来て……諦めてたまるか!!)
明石は扉を開けて驚く。そこには誰もいなかった。あるのは7つの扉。そこで自分が閉めた扉以外の6つの扉が、殆ど同じタイミングで開いたーー
〜〜〜〜〜〜〜
高畑さんと天谷さん、それに匙先輩のかみまろへの攻撃が失敗に終わった後、なぜか突然沢山の化け物が襲来しました。私達1年生はそれから逃げ、新たな試練の場に入って行きました。天邪鬼迷宮。その不気味な迷宮には通路に沢山のドアが付いていて、私、塔城子猫はその中の一つに入りました。
中にいたのは1人の男子。すると隣のドアからも更に何人かの人達が……あれ、ほとんど知り合い?
「7人の扉から、7人が1つの部屋に……か、チーム戦っぽいな…自己紹介でもしとく?」
7人の中で知らない人のうちの1人が、そう提案してきたので、私達はお互いに自己紹介をしていく事になりました。
「私は、秋本・クリストファー・健人。一応、
「板東純子。純子でいいよ」
「平井響子です。よろしくお願いします」
「由良翼紗だ、どうぞよろしく」
「塔城子猫です。よろしくお願いします」
先に知り合い5人で挨拶を終える。残った2人……知らない2人の番になる。
「俺は子門隼人……滑らない話が得意なおせっかい人間だ。……で」
そう言って子門さんは次の人……最初にいた人に話を振りますが、彼はうつむきながら「……俺はいいよ、仲間なんていらないから…」と言いました。
私はその言葉に、エクスカリバー事件の時の祐斗先輩を重ねまてしまいます。子門さん曰く明石、というらしいその人は、部屋の端に寄って私達に背中を向けてしまいました。
するとそこで。
壁がバタンと倒れました。周りにあるのは……
壁が倒れたその周りにあるのは、更に広い部屋。その床や壁には、大量のハッチが付けられていました。
更に天井が開き、モニターが出現!モニターの文字にはこう書かれています。
『あっちこっちハッチの部屋
通路口を開いて脱出せよ! 0:56』
カウントダウンは1分!?もう試練が始まっている事に私達は驚きます。皆慌てて部屋を散らばりハッチを開け始めます。もちろん私も!
まず1つ開くと、入り口の狸の絵と共にハズレの文字が……ムカつく……
「あ!あった!ありましたよ、出口っぽい穴!」
!!クリスさんが出口を見つけた様です!彼はそこに入って行きました。更に子門さんが続こうとしますが……
「うおおい!?ダメだ!穴がパイプで塞がっちまった!?」「1つの穴に1人って事!?」
そう言っている間にも時間は過ぎていきます。残りは後40秒!
「見つけたよ、お先」「あった!行ってくる!」「うおっし発見!先行って待ってるぞ!」
更に純子さん、由良先輩、子門さんも出口を見つけ、先に行ってしまいました。私もそろそろ見つけないと……!
「ありました……お先!」
私はゴールらしき空洞のハッチを見つけ、そこに飛び込みました!
暗いハッチの中を、私は滑る様に進んでいきます。このまま出口に……と思っていた時、足が壁らしきものにつきました。
「?……行き止まり?」
私が首をひねると、
横の壁から出てきた鉄パイプが、私の両足を貫通しました。
「!?……にぎゃぁあああああああ!?!?!?」
そんな!?何で!?ゴールじゃ無かったの!?そう思う私の手を、更に別の鉄パイプが貫通していく!
鉄パイプはどんどんと壁から現れ、私の全身を抉り、貫いていく……!
あ……ダメだ……意識が朦朧と……
「……いっ……せ………せん……ぱ」
その時私の目の横から鉄パイプがとびで
「……ああぁ」
何やってんだ俺は。明石は自分自身に問う。
せっかく見つけたゴールを、明石は最後に残っていた女の子に譲ってしまった。もう時間は5秒もない。さっさとゴールを見つけないと、死んでしまう。
「これだ!これにかける!」
最後に開いたハッチ。その中身は……ハズレ。
明石は絶望する。
(俺は……どーしようもないバカだ。信じようとしてくれた人を裏切ってまでここに来たのに。
知らない誰かを助けて……何やってんだ俺は……
本当に助けたかった人達は、救えなかったのに……
俺は……ここで死ぬーー)
『終了〜〜。「あっちこっちハッチ」の部屋……
明石靖人、クリア。
明石靖人、生きる』
(え……!?)
明石の周りにあったのは、6つの死体、そして……1つのカギ。