神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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「……んぁ?」
俺、兵藤一誠は目を覚ます。夢の中にリアスが出てきて話していたから、ちょっとそこから離れるのは名残惜しかったけど、気持ちを切り替えて俺は立ち上がった。
「あれ、ここは……あ!」
今自分が置かれている状況を思い出し、俺は焦る。こんなデスゲームの最中に何を眠ってるんだ俺は!!千夏ちゃんが「あ、起きた」……あり?
「おはよー、イッセー」
目の前に座っていたのは、服を着た千夏ちゃんだった。ちゃんと動いて話す事のできる、本物の千夏ちゃん。
「千夏ちゃん!」「うわっぷ」
俺は、千夏ちゃんを抱きしめて無事である事を喜んだ--



第6話---カギ

『ジグソードール』の部屋から出て、俺達は現在の状況を確認する。どうやら俺は試練をクリアしていたらしい。とは言っても何も覚えてない。必死に思い出そうとすると、千夏ちゃんから止められた。まぁ、クリアしたならいっか!

「イッセーの言う事を信じるなら、この迷宮は何もかもが逆って事でしょ」

そう言われて俺は「多分」とだけ返す。が、千夏ちゃんが言うにはほぼ間違いないそうだ。ジグソードールのクリア方法もそんな感じだったらしい。そんな感じってなんだろう?

「で、それを考えるなら……最初に見た『アレ』も嘘だよね」

千夏ちゃんが言っている意味を、一瞬遅れて理解した。迷宮に入った後、閉じられたドア。そこにはある1つのルールがあった。

「『カギをあつめて突破したならおわり』……あれも嘘って事か」「そ」

俺達は迷宮を歩きながら話す。千夏ちゃんはパズルゲームにはまってる事もあって、道を覚えるのが得意らしい。パズルゲームと道の記憶に関係なんてあるのか、などと思いながら俺は千夏ちゃんについていく。そして数分後。

「ホントに着いた……」「だから大丈夫だって言ったし」

俺達は門の前に立っていた。

「これで中に入ったらおわりなんだろうけど……問題はこれだし」

そう言って千夏ちゃんはセーターのポケットからカギを取り出す。

「普通に考えたらこれも嘘、カギは持ってきちゃいけない……んだろうけど、ただちょっと怖いのよね」

千夏ちゃんが言うには、『ジグソードール』のクリア条件は『パズルを完成させて魂を肉体に戻せ』の逆、『パズルを完成させずに肉体を元に戻すな』……ではなく(・・・・)、『パズルを完成させずに魂を肉体に戻せ(・・)』だったらしい。

「つまりルールの1部が本当で、1ヶ所だけ嘘っていう事も考えられる訳か……」

下手にカギを持って行ったら殺されるかもしれない、だけど持っていかなくても殺されるかもしれない。そもそも入り口に入るのが正しいのかもわからない……どうしよう……

 

「……行ってみよう」

千夏ちゃんがはっきりと言った。

「そうだな、行けばわかるか」

そして俺と千夏ちゃんは、カギを1つずつ持ったまま、入り口のドアを開けた--

 

 

 

 

その中にいたのは、巨大な2つの目と1つの口。上空に立ち込める変な色の靄の中で、口はニヤッと頰角を上げ、眼は俺達の姿をそれぞれ捉えた。やがて空中に浮いている口が喋る。

『おかえり』

それと同時にドアが閉まる。

『よく気づいたな諸君。ここに戻ってくるのが正解だぜ。ルールが逆さの天邪鬼迷宮、つまり入り口が出口ってワケさ』

どうやら正解だったみたいだ。俺と千夏ちゃんはホッと息を吐く。

しかし、

『ただ、残念だ。お前らの答えは半分しか正解と言えねえな』

その言葉に俺達は手に持っているカギを強く握る。俺の手の中のカギがパキッ、と音を立てるのを聞いて、上の口はヘラヘラと笑いながら言う。

『なんだ、わかってんじゃねぇか。裏の裏を勘ぐっちまったのか?まぁいいや。とにかく、天邪鬼迷宮の真のルールだ。「カギ」は持ってきちゃいけねぇな!

 

よってラストは追加遊戯(サドンデス)

「狸鍵危機一髪」で、「カギ」を使いきってもらうぜ!』

目と口の周りの靄が晴れると、そこにいたのは大きな狸!そしてそれはこれまた大きな樽に入ってる。

「……ってこれ!黒ひげ危機一髪!?」

大きな樽の周りには、3つの鍵穴が付いている。どうやらあの中にカギを入れるらしい。そして狸の顔の下に、『「狸鍵危機一髪」の部屋 大当たりは生きる』とだけ書いてあった。

 

『狸鍵危機一髪のルールは2つだけ!諸君の持ってきたカギを全部鍵穴に挿すか、誰かが大当たりを引けば終了だぜ!』

その言葉で察した。これも『ジグソードール』同じく、ルールが逆になってるんだ。つまり……大当たりを引かなければ生き残れる!黒ひげ危機一髪のルールでは、ハズレ……このゲームでは当たりか。それは1つだけ。つまりこれも同じく当たりは1つだけのはずだ!

「千夏ちゃん、カギくれよ」

俺は千夏ちゃんに言う。大当たりの可能性は3分の1、残りの3分の2を俺が引き当てて、2人で生きてやる!もし俺が死んでも、千夏ちゃんが生き残って俺の後を継いでくれる……

 

「やだ」

「えっ」

 

千夏ちゃんはこっちを向かずに前にタタタッと走ると、樽までたどり着く。

「千夏ちゃん、このゲームもさっきと同じでルールが逆なんだよ。だから大当たりを引いても生き残れない……多分大当たりを引けば死ぬ……「それくらいわかってるし」!」

千夏ちゃんはこっちを振り返って言う。

「あんたにカギを渡して、そのカギであんたに死なれたら後味最悪だし。2回も助けてもらった奴にそんな恩を仇で返すような真似、私にはできない。だから、私も挑戦する」

その瞳には、決意の炎がともって見えた。俺はそれに何も言えず、ただ頷くことしかできなかった。

 

俺も前に出て、樽までたどり着く。千夏ちゃんが左の鍵穴を選んだみたいだから、俺は真ん中の鍵穴を選んだ。

「……下手したら死ぬかもしれないぞ。やっぱ俺が変わろうか?」「しつこい男は嫌われるし。私は後悔しないって」

それだけ言葉を交わすと、俺は鍵穴にカギを挿そうとする……と、そこで千夏ちゃんの右手が、こちらに伸びてきた。

「私さ、あんまり勇気って持ってないから……ちょっとでもあんたの勇気とか、分けてもらおうと思って」

出された右手を、俺は龍の左手で握った。千夏ちゃんは満足そうに微笑むと、鍵穴の方を向く。

 

「「せーの!!」」

俺達2人は同時に、カギを挿しこんだ--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『安千夏、大当たり』

狸がはっきりと告げる。俺はそれを聞くと同時に、樽の中に入った狸が勢いよく飛び出るのを見た。

「……残念、でも、後悔は無いかな」

千夏ちゃんはこっちを向いて笑う。

「バイバイイッセー。私さ、久しぶりに人とこんなに触れ合えた気がする。ケンパからここまで短かったけど、楽しかったよ」

狸が千夏ちゃんの地点に落下する!!

 

 

 

「あれ?」

千夏ちゃんは疑問の声をあげた。そりゃそうだろう。死んだと思ったら生きてるんだから。

俺は気がつくと千夏ちゃんを抱えて狸の落下地点から逃げていた。

「イッセー……何やってんの、巻き込まれるよ」

千夏ちゃんは覚悟して閉じた目を開くと、こっちに向かって言う。

「……やっぱり俺が2つともやっとけば良かった……そうすれば千夏ちゃんも死なずに済んだのに……」

俺にはわかっていた。例え今逃げたところで、どうせ千夏ちゃんは殺されると。それでも助けずにはいられなかった。謝らずには、いられなかった。

「フフッ、バーカ。私はさっきも言った通り、こうなった事に後悔も悔いも無いし」

千夏ちゃんは明るく答える。

「……イッセー、あんた私のゲーム、まだ持ってるよね」

俺はそう言われてポケットの中に入っている押収したゲーム機を取り出そうとするが、千夏ちゃんはそれを止める。

 

「それ、あんたに貸したげるよ。難しいから途中でやめちゃうかもしれないけど、ちょっとくらい触れてみてよね」

「……あ゛あ゛」

俺はそう答えるのが精一杯だった。目から涙が溢れ出す。それを千夏ちゃんは拭う。「泣くなし、男だろ?」と彼女は笑う。

「それを私だと思って、これから頑張ってよ。さ、イッセー。そろそろ離して。さっきから狸の落下を避け続けてるけど、いつか限界がくるし」

千夏ちゃんは俺にそう言うと、ゆっくりと俺の手を解いていく。

「千夏ちゃん……」

 

「イッセー……私さ。ちょっとだけ、あんたの事好きだった」

そう言うと千夏ちゃんは俺の頰に、唇を触れさせた。

 

彼女は俺の手を離すと、俺から走って少し距離を取った。落下してくる狸を気にも止めずに、千夏ちゃんは俺に言葉をかけた。

「イッセー!今からは、後悔も悔いも無い様に生きろよ!応援しといてやるし!!」

 

 

その言葉を遺言にして、彼女の身体は狸に潰された。

 

「……ありがとう、千夏ちゃん」

俺は涙を拭うと、前を向いた。千夏ちゃんを潰した狸の腹が開き、ゲートの様になっていた。どうやら迷宮の出口らしい。

 

 

俺は、『兵士(ポーン)』の駒を1つそこに置くと、出口の光の中へと入っていく--

 

 




天邪鬼迷宮、終了です!終わりが相当近づいてきた……!
次回はちょっと番外編的な?

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!
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