神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
俺、兵藤一誠は目を覚ます。夢の中にリアスが出てきて話していたから、ちょっとそこから離れるのは名残惜しかったけど、気持ちを切り替えて俺は立ち上がった。
「あれ、ここは……あ!」
今自分が置かれている状況を思い出し、俺は焦る。こんなデスゲームの最中に何を眠ってるんだ俺は!!千夏ちゃんが「あ、起きた」……あり?
「おはよー、イッセー」
目の前に座っていたのは、服を着た千夏ちゃんだった。ちゃんと動いて話す事のできる、本物の千夏ちゃん。
「千夏ちゃん!」「うわっぷ」
俺は、千夏ちゃんを抱きしめて無事である事を喜んだ--
『ジグソードール』の部屋から出て、俺達は現在の状況を確認する。どうやら俺は試練をクリアしていたらしい。とは言っても何も覚えてない。必死に思い出そうとすると、千夏ちゃんから止められた。まぁ、クリアしたならいっか!
「イッセーの言う事を信じるなら、この迷宮は何もかもが逆って事でしょ」
そう言われて俺は「多分」とだけ返す。が、千夏ちゃんが言うにはほぼ間違いないそうだ。ジグソードールのクリア方法もそんな感じだったらしい。そんな感じってなんだろう?
「で、それを考えるなら……最初に見た『アレ』も嘘だよね」
千夏ちゃんが言っている意味を、一瞬遅れて理解した。迷宮に入った後、閉じられたドア。そこにはある1つのルールがあった。
「『カギをあつめて突破したならおわり』……あれも嘘って事か」「そ」
俺達は迷宮を歩きながら話す。千夏ちゃんはパズルゲームにはまってる事もあって、道を覚えるのが得意らしい。パズルゲームと道の記憶に関係なんてあるのか、などと思いながら俺は千夏ちゃんについていく。そして数分後。
「ホントに着いた……」「だから大丈夫だって言ったし」
俺達は門の前に立っていた。
「これで中に入ったらおわりなんだろうけど……問題はこれだし」
そう言って千夏ちゃんはセーターのポケットからカギを取り出す。
「普通に考えたらこれも嘘、カギは持ってきちゃいけない……んだろうけど、ただちょっと怖いのよね」
千夏ちゃんが言うには、『ジグソードール』のクリア条件は『パズルを完成させて魂を肉体に戻せ』の逆、『パズルを完成させずに肉体を元に戻すな』……
「つまりルールの1部が本当で、1ヶ所だけ嘘っていう事も考えられる訳か……」
下手にカギを持って行ったら殺されるかもしれない、だけど持っていかなくても殺されるかもしれない。そもそも入り口に入るのが正しいのかもわからない……どうしよう……
「……行ってみよう」
千夏ちゃんがはっきりと言った。
「そうだな、行けばわかるか」
そして俺と千夏ちゃんは、カギを1つずつ持ったまま、入り口のドアを開けた--
その中にいたのは、巨大な2つの目と1つの口。上空に立ち込める変な色の靄の中で、口はニヤッと頰角を上げ、眼は俺達の姿をそれぞれ捉えた。やがて空中に浮いている口が喋る。
『おかえり』
それと同時にドアが閉まる。
『よく気づいたな諸君。ここに戻ってくるのが正解だぜ。ルールが逆さの天邪鬼迷宮、つまり入り口が出口ってワケさ』
どうやら正解だったみたいだ。俺と千夏ちゃんはホッと息を吐く。
しかし、
『ただ、残念だ。お前らの答えは半分しか正解と言えねえな』
その言葉に俺達は手に持っているカギを強く握る。俺の手の中のカギがパキッ、と音を立てるのを聞いて、上の口はヘラヘラと笑いながら言う。
『なんだ、わかってんじゃねぇか。裏の裏を勘ぐっちまったのか?まぁいいや。とにかく、天邪鬼迷宮の真のルールだ。「カギ」は持ってきちゃいけねぇな!
よってラストは
「狸鍵危機一髪」で、「カギ」を使いきってもらうぜ!』
目と口の周りの靄が晴れると、そこにいたのは大きな狸!そしてそれはこれまた大きな樽に入ってる。
「……ってこれ!黒ひげ危機一髪!?」
大きな樽の周りには、3つの鍵穴が付いている。どうやらあの中にカギを入れるらしい。そして狸の顔の下に、『「狸鍵危機一髪」の部屋 大当たりは生きる』とだけ書いてあった。
『狸鍵危機一髪のルールは2つだけ!諸君の持ってきたカギを全部鍵穴に挿すか、誰かが大当たりを引けば終了だぜ!』
その言葉で察した。これも『ジグソードール』同じく、ルールが逆になってるんだ。つまり……大当たりを引かなければ生き残れる!黒ひげ危機一髪のルールでは、ハズレ……このゲームでは当たりか。それは1つだけ。つまりこれも同じく当たりは1つだけのはずだ!
「千夏ちゃん、カギくれよ」
俺は千夏ちゃんに言う。大当たりの可能性は3分の1、残りの3分の2を俺が引き当てて、2人で生きてやる!もし俺が死んでも、千夏ちゃんが生き残って俺の後を継いでくれる……
「やだ」
「えっ」
千夏ちゃんはこっちを向かずに前にタタタッと走ると、樽までたどり着く。
「千夏ちゃん、このゲームもさっきと同じでルールが逆なんだよ。だから大当たりを引いても生き残れない……多分大当たりを引けば死ぬ……「それくらいわかってるし」!」
千夏ちゃんはこっちを振り返って言う。
「あんたにカギを渡して、そのカギであんたに死なれたら後味最悪だし。2回も助けてもらった奴にそんな恩を仇で返すような真似、私にはできない。だから、私も挑戦する」
その瞳には、決意の炎がともって見えた。俺はそれに何も言えず、ただ頷くことしかできなかった。
俺も前に出て、樽までたどり着く。千夏ちゃんが左の鍵穴を選んだみたいだから、俺は真ん中の鍵穴を選んだ。
「……下手したら死ぬかもしれないぞ。やっぱ俺が変わろうか?」「しつこい男は嫌われるし。私は後悔しないって」
それだけ言葉を交わすと、俺は鍵穴にカギを挿そうとする……と、そこで千夏ちゃんの右手が、こちらに伸びてきた。
「私さ、あんまり勇気って持ってないから……ちょっとでもあんたの勇気とか、分けてもらおうと思って」
出された右手を、俺は龍の左手で握った。千夏ちゃんは満足そうに微笑むと、鍵穴の方を向く。
「「せーの!!」」
俺達2人は同時に、カギを挿しこんだ--
『安千夏、大当たり』
狸がはっきりと告げる。俺はそれを聞くと同時に、樽の中に入った狸が勢いよく飛び出るのを見た。
「……残念、でも、後悔は無いかな」
千夏ちゃんはこっちを向いて笑う。
「バイバイイッセー。私さ、久しぶりに人とこんなに触れ合えた気がする。ケンパからここまで短かったけど、楽しかったよ」
狸が千夏ちゃんの地点に落下する!!
「あれ?」
千夏ちゃんは疑問の声をあげた。そりゃそうだろう。死んだと思ったら生きてるんだから。
俺は気がつくと千夏ちゃんを抱えて狸の落下地点から逃げていた。
「イッセー……何やってんの、巻き込まれるよ」
千夏ちゃんは覚悟して閉じた目を開くと、こっちに向かって言う。
「……やっぱり俺が2つともやっとけば良かった……そうすれば千夏ちゃんも死なずに済んだのに……」
俺にはわかっていた。例え今逃げたところで、どうせ千夏ちゃんは殺されると。それでも助けずにはいられなかった。謝らずには、いられなかった。
「フフッ、バーカ。私はさっきも言った通り、こうなった事に後悔も悔いも無いし」
千夏ちゃんは明るく答える。
「……イッセー、あんた私のゲーム、まだ持ってるよね」
俺はそう言われてポケットの中に入っている押収したゲーム機を取り出そうとするが、千夏ちゃんはそれを止める。
「それ、あんたに貸したげるよ。難しいから途中でやめちゃうかもしれないけど、ちょっとくらい触れてみてよね」
「……あ゛あ゛」
俺はそう答えるのが精一杯だった。目から涙が溢れ出す。それを千夏ちゃんは拭う。「泣くなし、男だろ?」と彼女は笑う。
「それを私だと思って、これから頑張ってよ。さ、イッセー。そろそろ離して。さっきから狸の落下を避け続けてるけど、いつか限界がくるし」
千夏ちゃんは俺にそう言うと、ゆっくりと俺の手を解いていく。
「千夏ちゃん……」
「イッセー……私さ。ちょっとだけ、あんたの事好きだった」
そう言うと千夏ちゃんは俺の頰に、唇を触れさせた。
彼女は俺の手を離すと、俺から走って少し距離を取った。落下してくる狸を気にも止めずに、千夏ちゃんは俺に言葉をかけた。
「イッセー!今からは、後悔も悔いも無い様に生きろよ!応援しといてやるし!!」
その言葉を遺言にして、彼女の身体は狸に潰された。
「……ありがとう、千夏ちゃん」
俺は涙を拭うと、前を向いた。千夏ちゃんを潰した狸の腹が開き、ゲートの様になっていた。どうやら迷宮の出口らしい。
俺は、『
天邪鬼迷宮、終了です!終わりが相当近づいてきた……!
次回はちょっと番外編的な?
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!