神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
太陽の国の暴挙を見た明石。その身体は怒りを我慢しているかの様に小刻みに震えている。
気づいた時には、明石の身体は4人の方へと向かっていた。
「やめろお前ら!!そんなやり方間違ってる!!殺すな!!これじゃ戦争と同じだろ!?」
明石の叫びに、これまで車の上に座っていた、目の周りに♂と♀のマークを模した型を取っている男……オスメスが、淡々とした、冷酷な声で告げる。
「これは戦争ですよ。そう思っていただかないと。月のキング・明石」
オスメスへと向かう明石だったが、その前に1人の男が立ち塞がった……と思ったその時。
「ゴッ!?」
明石は腹部に強い衝撃を受け、意識を強制的に飛ばされる!
明石の前にいるのは、紅色の鎧に身を包んだ男。彼は月のキングを片手で持ち上げると、もう片方の手を背中へと近づけていった。
「もう1度言う。これは戦争です」
その言葉と共に、明石靖人の身体は転送されていった。
残されてしまった事に絶望するハンナとジェイク。その背後に、1人の男が現れた。
「しまった……遅すぎたかな。キングは捕まってしまったのかい?」
金髪に泣きぼくろの付いた優男は、ハンナとジェイクに問うが、その目が眼前の状況を見て細められた。
〜〜明石が捕まる数分前〜〜
太陽の国の幹部、
本拠地である池袋を出てしばらく直進したところで、巨大で歪な塔と、それに向かって歩いていく集団を見つけた為、彼らは即座に殲滅及び塔の支配を目論んだ。
10数人ほど倒した所で彼らは思わぬ人間の姿を視界に捉えた。C・Bとダンデライオンの動きが止まる。
「あれは……月の国のキング・明石。なぜここに?殺されに来たのでしょうか?」
オスメスの言葉に、紅い鎧を着た男は、持っていた剣を星の国の男に突き立てながら応える。
「あいつはそういう男なんだよ。ルールもわからずに猪突猛進、突っ走っていくようなやつなんだ」
鎧の男は突き立てた剣を星の国の男の身体から引き抜く。その鎧の手のひらから発せられた緑色の巨大な球を鎧の男はその傷に埋めて、死体の山へと放り投げた。
「俺が行く」
鎧の男はそれだけ言うと、明石の前へと飛び出した。
男はワンパンチで明石靖人を気絶させると、そのまま背中のマークをタッチして彼を太陽の国へと転送させた。
「……いやはや、ここにキング・明石が来るとは予想外でしたが、まぁ良いでしょう。彼はリリィの言うとおり、太陽の国の牢へと送りました。あとは、残ったゴミの片付けです」
オスメスも車の上から降りる。それを合図に2人も殺人を再開した。
そんな4人の前に、1人の男が現れた。
金髪に泣きぼくろを1つ付けた、整った顔立ちにスラッとした体型、長い脚。その片手には、立派な剣が握られていた。
「これ以上はこの僕、月の国の『兵士』、木場祐斗が許さない」
彼は剣を4人に向ける。その言葉にダンデライオンが飛びかかりそうになるが、1人がそれを止めた。
「俺にやらせてくれないか?」
鎧の男が告げる。その言葉にダンデライオンは首を振る。すると鎧の男は手を握り、腰へと構えた。それを見てダンデライオンも腰に手を添え……
「「ジャンケンポン!!」」
鎧の男のパーとダンデライオンのグーが交差する。ダンデライオンは頭を抱えたが、地団駄を踏みながらも木場と鎧に背中を向け、他の獲物を仕留めに行った。
紅い鎧の男は、兜を消す。その中から現れた顔に、木場祐斗はニッコリと微笑みを向ける。しかしその眼は凍える様に冷たい。
「君と戦うのは……模擬戦や訓練を除いた、本気の試合だとこれが初めてかな?イッセー君」
その言葉に鎧……イッセーも笑いながら返す。
「お前に追いつけたかどうか、試させてもらうぜ!」
「それは僕のセリフだよ!!」
彼らは一瞬で距離を詰めると、互いの剣をぶつけた。
兵藤一誠の『竜狩りの剣・アスカロン』と、木場祐斗の『聖魔剣』が衝突し、火花を散らす!鍔迫り合いを数秒続けた2人だったが、木場の聖魔剣がアスカロンのパワーに押され、遂には粉砕される!!
イッセーはそのまま袈裟斬りで木場を斬ろうとしたが、剣が破壊される事を予想していた木場はいち早く後ろへと下がっていた。距離を離した木場は凛とした声で叫んだ!
「『
その言葉と共に、木場の背後に5人の騎士が現れる!!木場はその騎士達に5本の剣を持たせる。
「『魔帝剣グラム』、『バルムンク』、『ノートゥング』、『ディルウィング』、『ダインスレイブ』……僕のもう1つの切り札だ。この1対多の状態で、僕に勝てるかい!?」
木場はそう言いながらイッセーに斬りかかった!!イッセーは背中にドラゴンの羽を展開し、空を飛んで逃げる。木場の聖騎士団のうち2体が剣を身体の前に構えて突撃するようにイッセーの後を追うが、イッセーはそれをアスカロンでいなす。その少しの動作の間を突き、木場と残り3人の聖騎士が上下左右4方向から斬りかかるが、イッセーは剣を避けず、木場に突撃した!イッセーの左拳が迫り、木場は慌ててそれを回避する。
『
『explosion!!』
ここでイッセーは、闘いが始まってから貯め続けていた倍加を解放し、超スピードで木場に接近する!勢いそのままにイッセーの左拳が木場の胸へと迫るが、木場はギリギリで反応し、心臓部への直撃は避けた。しかし完全には避けきれず、拳を受けた左腕から嫌な音が響いた。
左手が使い物にならなくなった木場は、しかしニヤリと笑うと、
イッセーの左手ごと、自分の腕を剣で突き刺す!!
「!!?」
急な左腕の痛みと、身動きが取れなくなった状況にイッセーは焦る。その隙をつき、木場は高速で5人の聖騎士団にイッセーを囲ませると、
「喰らえ!!」
自身で作った聖剣と5本の魔剣、合わせて6本の剣を、イッセーの身体に突き立てた!!
イッセーの手から『アスカロン』が落ちる。木場が左腕に刺さった剣を消すと、そのイッセーの身体も重力に従って落ちていき、剣が身体に刺さったまま勢いよくコンクリートの地面に落下した。
木場はその後に続いて地上へと降りる。痛みに堪えながらも6本の剣をイッセーの身体から引き抜き、彼の身体のそこらじゅうから流れる血を見る。イッセーの血の赤に、自分の透明な涙が入り込むのを見ながら、木場は口を開く。
「イッセー君……何で敵として出てきたんだ!何で僕達は戦わなければいけなかったんだ!」
イッセーの亡骸に向かって叫ぶと、木場は鼻をすすりながらも前を向く。いつまでも泣いてはいられない。周りにいる残りの3人の殺戮者を倒す為に木場は剣を右手に生み出し
「っ!!?!?」
その首を掴まれた。
木場は上に持ち上げられ、地面のコンクリートに叩きつけられる!木場の肺の空気が一気に放出されるが、息継ぎする暇もなく再び持ち上げられると、今度は上に向かって投げられた。
木場は慌てて悪魔の翼を出し、空中で体制を立て直す。しかし、
ズバババババババッ!!と下から大量の魔力弾が襲ってくる!!
木場は間一髪、それらを全て紙一重で躱すと、魔力弾が飛んできた方……自分がいた方向を向きなおす。
そこには、身体の所々から煙を出しているイッセーの姿があった。鎧は紅から、橙と水色に変わっている。先ほど木場が開けた穴は、全て鎧ごと再生しているようだった。
「『
再びイッセーの鎧の色が変わる。今度は金色と黄色。
色の変わったイッセーは胸の前で手を合わせる。その手を開いていくと、そこから巨大な魔力が生み出されていく。イッセーの手の内の魔力はバチバチと音を鳴らしながらどんどんと大きくなり、巨大な雷の中国風の龍と西洋風の光のドラゴンを形取る!
「『
2頭の竜が木場目掛けて襲いかかる!木場は2体の騎士の剣でそれらを横に弾き、別の2体でそのガラ空きの横腹に剣を突き刺しかっさばきながら、残りの1体とともに再びイッセーに突撃しようとするが……
イッセーは、そこからすでに姿を消していた。
「いない!?まさか今の竜は目眩ませ!?」
驚く木場の背中に衝撃が走り、再び木場は地面に叩きつけられる。背後に回り込まれているのに全く気がつかなかった。恐らくどちらかの竜の横に隠れて進んできたのだろうと推測しながらすぐに起き上がろうとするが、身体が言うことを効かない!まるで体内の調子を狂わされたかの様に、身体が命令通りに動いてくれないのだ。と、そこまで考えて木場は思い出す。塔城小猫の仙術。イッセー宅地下の特訓場で、彼女から気を狂わせる掌底を何度か喰らった事のある木場は、その時の感覚と現在の状況を重ねる。
「『
いつのまにか白い鎧になったイッセーが叫ぶのを視界で捉えるが、木場の身体はまだ動いてくれない。それでも木場は聖騎士団を自分の周りに展開し、守りを固めた。
そこで木場は、イッセーの鎧の変化を目撃する。ライバルの白龍皇の様な真っ白とは違い、少し肌色が混じった様な柔らかい白から、彼の鎧は元の紅色に戻っていく……いや違う、最初よりももっと濃く、もっと色鮮やかな真紅の鎧がイッセーの身体を包んでいく。
「『
イッセーの指から計5個の小さな魔力弾が造られると、木場の騎士団へ向かって飛んでいく。魔力弾を切断しようと剣を振る聖騎士達だったが、どの魔力弾も剣に当たる少し前で、軌道を変える!イッセーが手をしきりに動かしているため、彼が魔力弾のルートをコントロールしているということは木場にも分かったが、しかしその彼をどうにかする前に、魔力弾が聖騎士達に衝突する!衝突した瞬間に魔力弾は巨大に膨れ上がり、騎士達はその身体をボロボロと崩し、魔剣を残して消滅していった。
イッセーは、立てず喋ることすらできない木場の胸倉を右手で掴み、言う。
「さっき俺達の戦いを1対多だって言ったよな。ある意味それは的を射てる。俺は1人じゃない。俺は皆の魂を背負って戦ってるんだ」
イッセーの鎧が緑色に染まる。それと同時に1本の剣が木場の腹に突き刺さった。ズブリ、という肉を裂く音が、一際大きく辺りに響く。
イッセーがアスカロンを抜き手を離すと、木場は力無くその場に倒れこんだ。イッセーはその身体に空いた穴に先ほど星の国の男にしたのと同じ様に緑の球を詰めると、これまた同じ様に死体の山へと彼を放り込んだーー
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!