神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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ーー空中ケンパ終了後、東京都上空。
なぜか東浜佑は、空に浮いていた。
「?……ああ、なるほど」
疑問は上を見てすぐに理解する。自分の手を持って、1人の少女が空を飛んでいる。先ほどクリア者として転送されていった兵藤一誠と同じように、彼女は背中に黒い羽を生やしていた。
(確かにこいつは明石や兵藤と仲間だった様子だった。もう1人も)
佑はさらにもう1人、空中で男を抱えて飛んでいる女を見た。確か彼女も兵藤一誠と親しくしていた、彼の仲間なのだろうと佑は推測する。
「運が良かったね。私達はこれで生き残れる」
そう言って笑いかける少女……持田涙に、佑もああ、と無愛想に応じる。
今まで、天才という色眼鏡をかけて眺められ続けていた佑にとっては、持田涙の純粋な笑顔は対応に困る物だった。

空を飛んでいる残りの2人と合流した佑は、抱えられてゆっくりと下に降りていく。と、その時涙のスカートのポケットから、振動音が鳴り出した。涙はスカートから音源を取り出す。そこにあったのはスマートフォン。涙はそれを見て、目を見開く。
「そっか……今なんだ……」
涙は少し考える表情になった。
「……ねぇ、君?」
涙は佑に話しかける。佑が上を向くと、そこにスマホが突き出された。画面の中ではカウントダウンが行われている。残り時間は約30秒となっている。
涙はその画面に指をさして言う。
「私の代わりにこれを使って、明石君のところに行ってあげてくれない?」
その言葉に佑は驚く。クリアした人間のところに自分がどうやっていくのか、そもそも自分は選別の敗者で、復活の権利なんて無いんじゃないか、と涙に質問する。
「明石君のところにはね、多分これを使えば1人だけなら行けると思うんだ。詳しくは時間が過ぎたらわかると思う。敗者復活は……大丈夫だよ。私もそんな感じだったから」
涙は佑にスマホを押しつけると、さらに自分の背中に佑が来るよう、背負うような体制に移行した。
残り時間は12秒。話す事ができる最後のチャンスに、佑は涙に質問する。
「なんで俺なんだ?お前が行けば良いんじゃないのか?」
その言葉に涙は苦笑いをすると、言いにくそうに言う。
「私は……明石君の足手まといになっちゃうから。前も今回も、私は死んだと思われて明石君にショックを受けさせちゃったし、またこんな事があったら、明石君も辛いと思うの。でも、あなたは違う。あなたはその頭脳で、明石君を助けてあげて。あなたならきっと、明石君を助けられる」
カウントダウンが3秒を切った。2秒、1秒……0。

それと同時に、涙の影が液体のように変化し、佑の身体がその中に沈んでいく!!
「うおっ!?」
すでに下半身が完全に沈んだ状態の佑に、涙は最後の言葉を伝える。
「もし明石君にちゃんと逢えたのなら、1つ伝えておいて欲しいの。

……大好きだよって」


第14話--ー助く

--「と言う訳だ。俺はお前を補助するために、ここまで生きてきた。しかしなんだこの体たらくは。ふざけるなよ、バカが」

明石の眼から涙が落ちていく。ナツメグは、正妻には敵わないなと肩をすくめる。

と、そこで佑はクルッと後ろを向き、明石達に背中を向けて言う。

「俺はこの太陽の国の軍師になった。今から星の国の王、ファトマを捕らえに行く。同時進行で管制塔も抑える。その為に、この本部からかなりの兵を出す。おそらくここに残らせるのは……100と少しだろう。幹部はリリィともう1人、ミケが残るはずだ。そいつらに注意しておけ」

そこで佑は1度息を吐き、

「さっさと、明石を脱獄させろ。上手くやれよ」

ナツメグに言うと、外に向かって歩き出した。

 

ナツメグと明石は改めて向き合うと、同時に頷く。佑がチャンスを作ってくれた。それを活かさなければ、明石は死ぬ。このチャンスを無駄にしてはいけない!

「ナツメグ、頼む」「わかった」

短く返ってくるが、その言葉の中には強い意志が宿っているように明石は感じた。そのままナツメグを送り出そうとするが、そこでナツメグは

「でもまだ交代の時間になってないの。今行くと、怪しまれるから……」

急にもじもじと身体の前で手をいじるナツメグだったが、やがてその手を檻の中、明石へと差し出してきた。

「ん?何?」「手、繋いでてよ。まだ時間あるから……」--

 

 

 

 

--時は流れ、星の国本拠地。

太陽の国襲撃直後、400人超の兵士達が星の国へと襲いかかる。彼らは皆武器を持って、星の国の兵士達を殺していった。

未だ事態が飲み込めていない星の国に、学校に取り付けられているスピーカーから平坦な声が流れる。

『あーあー、ギョーム連絡ギョーム連絡。頃巻(ゴロマキ)高校放送部真田ユキオが、星の国の奴らに告ぐ……

 

……死んでも喰い止めろ』

「いたー」

ユキオのいる会議室に、窓から1人の少年が入ってくる。大きな斧を持った男、通称はダンデライオン。

『太陽の国の奴らは容赦なく殺しに来るから、逃げてても、どっちみち死ぬ。だから簡単な話、こっちも殺すつもりで行け』

ダンデライオンの振り回す斧をギリギリで避けながら、ユキオはマイクを持っていない手で拳を握り、

 

『刺し違えてなんぼ!!』

ユキオの拳がダンデライオンの顔面を捉える!!怯んだダンデライオンが地面に倒れると、ユキオはその背中をタッチして、ダンデライオンを自国の檻に転送した。

『そしたらなんとか、互角に戦える……ゴフッ』

ユキオは持っているマイクを床に置くと、ダンデライオンと同じように床に倒れ伏した。顔面にパンチを喰らわせた時、クロスカウンターで斧を脇腹に受けていたのだった。

血を吐き、意識が飛びかけながらもユキオは最後の言葉を、掠れた声で口にする。

『ここを耐え抜いたら……勝てるぞ……俺達……』

 

 

放送が切れる。それを聞いて、1組の男女が校舎の中から外に出る。

「殺しても良い、と言っていたな」「まぁ確かに、日本語で刺し違えるってのは相手に刺されるのと同時に自分も刺す、みたいなニュアンスだし、そういう解釈で良いんじゃねぇかな?でもやっぱり、殺されるよりは敵を仕留めた方が良いわなぁ。理想は転送する事だろうけど」

 

「よしわかった。神の名の下に、私は敵を断罪しよう!

 

このデュランダルで!!」

星の国の少女、青髪に一筋緑色のメッシュを入れたカトリック信徒が何もない空間から剣を取り出しながら言うと、隣にいる坊主頭も、胸を探って大切な物……位牌を取り出す。

 

「『ナンモナンモ』!!」

位牌を握りしめて坊主頭がそう唱えると、その背後に老婆の幽霊が現れる!

 

「さぁ、逆襲だ!!」「よっしゃ行くぞ!金太郎をも倒した『バッチャジャラ』の実力、しっかりと見せてやるわ!!」

 

 

 




--東浜佑が持田涙の影に沈んだ後、涙はもう1人の飛行少女、姫島朱乃の方へと向かった。
「あらあら、良かったのですか?あなたも行きたかったのでは?」「私は良いの、さっき明石君と一生のお別れーみたいな事をしちゃって、そこからすぐ逢うのも逆に気まずいし」
「あの殿方ならむしろ喜びそうですけれどねぇ」
そんな事を言いながら、涙と朱乃は、未だ頭に疑問符を抱えているもう1人の男を抱えながら、下へと降りて行く。そして、ゆっくりと地面に着地した。


ピュンピュンピュンという素早い音が、3人の耳に入る。

「グフッ!!」
先程まで抱えていた男子が倒れる。その身体の腹部には、大きな穴が開いていた。

そして、おそらく今の自分達にも。
涙と朱乃は、互いの身体を見る。穴が開いているかを確認する前に喉の奥から何かが逆流してきて、2人はそれを吐き出す。

それは巨大な血の塊だった。
2人も男子に続くように倒れる。

「やはり……そう甘くはありませんわね。もし万が一落下した後生きていたとしてもとどめが刺さるように準備をしていたなんて……ゴフッ!」
その言葉を最後に、朱乃は動かなくなった。涙は彼女に近づこうとするが、脚にも腕にも力が入らない。
だんだんと視界が白に染まっていく。音がだんだんと遠のいていく。
(前にもあったな、こんな事)
涙の頭の中に、2人の少年の顔が浮かぶ。自分を悪魔として転生させてくれた主。そして、人生で初めて告白をして運良く両想いになった、1人の男の子。
(2人とも……無事だったら良いなぁ……)
それを最期に、持田涙の意識も途絶えた--


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