神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
その途中、木場は思った。
(なんだ……どうなってる?
人が余りにも少ない。少なすぎる……!)
侵入の前に半径100mのレーダーで学校の周囲を回ってみたが、ほとんど反応を示さなかった。反応したのは精々30人。星の国襲撃時や木場達の制圧、敵チームによる確保、攻撃の為に出動している、あるいはスパイとして他のチームに潜り込んでいる。それらの理由で減っているとしても、本陣に置く駒の数が少なすぎる。
(これは……もしや太陽の国のキングは……)
考えながら見ていたレーダー、その100mの輪の中に、異質な反応がある事に気づく。
1つの太陽の国のアイコンが、木場のいる地点へと超スピードで近づいてきているのだ!!
「何が「だあああああ!!」ガッ!?」
木場の身体がくの字に折れ曲り、そのまま壁へと叩きつけられる……直前に、柔らかく弾力性のある、トランポリンの様な材質の剣、という普通ならありえない剣を神器『魔剣創造』で創り背中に敷く事で壁の衝突のダメージをできる限り減らす。
柔らかい薄壁越しに重くて高スピードの質量をぶつけられた壁が壊れた所で、その剣をこれまた創った日本刀で切り裂く事で、突然の腹への衝突の勢いを利用しその場を離れる木場。
「さすがだな、木場。とは言っても、俺も不意打ちでお前を倒せるとは思ってなかったけどな!!」
壊れた壁が立てた粉塵の中から出てくる1人の少年を見て、木場祐斗は剣を構える。
「僕は今度こそ君を倒すよ、イッセー君!!」
少年……兵藤一誠は薄く口角を釣り上げると、左腕に籠手を現出させて、構える。
「俺だって負けねぇぞ。太陽の勝利の為に!」
ーー明石、メルト、ハンナを含んだ脱獄組は、一旦月の国の本拠地を目指して歩いていた。その途中、近づいた寺の近くで、彼らはレーダーの中にある反応を見た。
「ん?これは……あ!8時の方角に仲間がいるぞ!!
マジかよ!しかも50人以上いるぞ!!こんな所で会うか普通!?奇跡だろ!!」
その声を聞き、明石達もそちらに目を向ける。そこにいたのは見知った顔ばかり。
「紫村!ユキオ!!無事だったのね!」
ハンナが歓声を上げる。星月の仲間達もその声にこちらを発見し、手を振ってくる。
その紫村&ユキオの隣に、明石はもう1つ、見知った顔を見た。
「丑三……」
ファトマと手を繋いで歩いているその青年は、明石の小さな声を拾ったかの様に、ファトマから目線を変え、こちらと目を合わせてくる。その唇が小さく動いた様に、明石は見えた。
「やっぱりいた!ファトマの予知絵の通りだ!!
紫村が興奮した様に叫ぶと、周りの星月メンバーも湧く。その中で、ファトマを手を繋ぐ状態から抱え状態に移行した丑三が全速力で明石達に向かって走ってくる!
「丑三!お前の事、探してたんだ!!」
明石の言葉が丑三清志郎の耳へ、脳へ、ココロへ届く。
(明石が、俺を……?)
そのまま胸へ飛び込んでやろうとばかりに、残り100mほどを全力で走ろうと更に勢いを上げる丑三。
と、そこで彼らの耳に『ゴン!』と言う鐘をついた音が響く。
丑三も明石も、そこにいる皆が一方向……寺の方を向くのと、その門が開くのはほぼ同時だった。
中から現れたのは、太陽の国の王。
その後ろに、数十……いや、数百といる太陽の兵士達。
王は兵士に一言告げる。
「『勝って生きろ』、太陽の国」
その言葉と共に、太陽の国の兵士達が襲いかかってくる!!
狙いは明石靖人、ファトマ・カルカヴァン。
そして、その到達を邪魔するもの全て。
「待ち伏せか?敵の数が圧倒的に多い!しゃーねぇ退け!星月軍一時撤退!」
状況を冷静に分析し、戦略的撤退を唱えるユキオ。しかし、仲間達の中でも最後尾の数人が、動かない。ユキオは彼らに檄を飛ばし……そこで見た。
彼らの服装が、『星月』から『太陽』へと変わっていくのを。
「マジかよ……お前ら、『スパイ』だったって事か!!?」
総勢5人のスパイが、状況が飲み込めていない星月の兵士を捕らえていく!
「気づくのが遅ぇよ!!『独離腐寺』に来る事は電話でリリィさんに
中と外から挟み撃ちだぼ!?」
スパイの司令塔らしき男の顔を、丑三は踏み台にして飛んだ!その脇にはファトマを抱えている!
「だからどうした?丑三は誰にも止められない。だって目の前に明石がいる。
何人たりとも、この想いを止められない!!」
「何なのアイツ……すっげー!」
賞賛、と言うよりも唖然としているハンナに、明石は独り言の様に言葉を紡ぐ。
「あれが……丑三清志郎。俺が1番頼りにしてる男だ。
戦おう、俺達も」
「チッ、それしかねぇみたいだが、リリィを倒す方法がまだーー「あるさ」
明石は右手首に左手をやり、脈を測るように押さえてからグルっと回す。
すると、明石のグローブが輝きを持つ。
夏川めぐを飛ばした時のリリィのグローブの様に。
「ここで戦いを終わらせる」
ファトマ・カルカヴァンと丑三清志郎の後を追って、太陽の国とやらの兵士を(その下の足場を凍らせて滑らせる事で)退けて進む光圀。
(あーもー無茶しやがる。こんな敵地のど真ん中でも丑三はいつも通りだな、オイ)
ヘラヘラと笑いながら韻を踏み続ける光圀。と、その視界の端、先程まで彼や丑三達がいた方向に、光を捕らえた。
(……何だ?あれは?)
思考する間に、その光はどんどんと大きくなっていく。それはやがて紫村達や敵スパイがいる場所へと到達すると、
数人の身体を貫通して、更に突き進む。
「は!?」
光圀はライムも中断して、そちらに首を向ける。その間にも光はどんどんと近づいてきている!!
(何だあのレーザービーム!直径50cmはあるぞ!……この進路上だったら俺は当たらねぇとは思うが……!?)
文字通りの光速、とはいかないまでも高速で近づいてくる光線。その進路上にいるのは、女の子を抱えて奮戦している丑三清志郎。
いや、正確には『抱えられている少女』。
星の国のキング、ファトマ・カルカヴァン。
「くそったれ!誰だか知らねぇが、絶対にやらせねぇ!」
巴光圀は、そちらに向かって飛ぶ!手元にあるのはマイカフォン。彼は早口で韻を踏んで、特性の氷を発動させる!
「出てこい『エーキュー・クリスタル』!」
出てきた溶ける事の無い氷に光線がぶつかる!!
(俺の氷は透明に透き通ってる!だから光を当てたら乱反射して分散する!)
光圀の思った通り、光線は氷結晶を起点として様々な方向へと分散していく!
(そしてこれくらいなら!!)
直後、肉を焼く様な音と臭いが丑三の耳鼻に届いた。丑三は動きを止め、そちらを振り返る。
「……光……圀……?」
「俺を……貫通する……事なく……止められる……」