神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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明石とリリィは向かい合う。やがて、どちらからともなく動き出すーーその時!

『ドシュン!』と1撃。
リリィの胸元に、電撃の銃弾!リリィの動きが止まる!

「待ってたぜ!確実にスナイプできる、この時を!!」
打ったのは月の国のスナイパー、メルト!
「行け、明石!もう誰も邪魔はいない!!」
その言葉に頷き、明石は走り出す!
「ナイス、メルト!!……望み通り、終わりにしてやるぜ!リリィ!!」
明石の光る手がリリィに届くーー



ーー直前。

「あ゛……ヴ……ウガアァァァァァァァァァアアアアア!!!」

雄叫びに、明石の動きが止まる。
リリィの身体が、それと立ち替わる様に動き出す!?

「な……こ……コイツ、化け物だ!!」「フザケンナよ!!ルール凌駕してんじゃねーよぉ!!?」

そう言う星月の兵士達に、リリィの腕が飛ぶ!
「……メルト!もう1発だ!………………メルト?」
明石が指示を出すが、メルトの反応がない……と言うより、いない?
「……スナイパー!撃て!誰でもいい!」
その言葉に、星月のスナイパーが一斉に弾を撃ち出す。しかし、リリィはその歩みを、動きを止めない!



第28話ーーー希望

「リリィー、やっぱお前は立ち上がってくると思ってたぜ。お前が、こんな小細工で動けなくなる様な野郎ならもうとっくに殺してるもん」

リリィに吹き飛ばされて壁にめり込んでいた天谷が、縋り付かれているのを振りほどく様に壁を破壊し、悠々と出てくる。天谷はリリィへ直接向かわない。彼が向かうのは独離腐寺正門。手ぶらになった阿院像ではなく屁吽像の前に行き、その右手から大木の剣を奪い取る!

「さぁて、終わりにするかぁ♪」

 

真田ユキオとハンナ・フェリックスは客観的に周りを見て、戦力を計算する。

「……えっと?大体の奴が吹っ飛ばされたか転送されたか……で?丑三が戦線離脱。となると」「うん、戦えるのは私とあなたと天谷、そして……」「明石、か」

 

明石の蹴りがリリィの顔面に入る!と、その脚にリリィの手が近づく……が、明石はそこに気づいて寸前で脚を引っ込める。明石の掌がリリィに伸びるが、リリィはそれにだけは捕まるまいと全身の筋肉を収縮させ、明石から離れる様に横飛びする。

と、そこで60秒が過ぎたのか、リリィが再び動き始める!まず彼は、少し離れた場所で再び標準を合わせようとしているスナイパーを纏めて吹き飛ばす!

 

「これで、もう動きは止められんぞ……明石、決着をつけよう」

 

そう言うリリィの周りを囲む様に、明石・ハンナ・天谷・ユキオがそれぞれファイティングポーズを取る。

 

硬度を確かめる為か地面に剣を叩きつけ、戦いの狼煙の様に粉塵を撒き散らす天谷。彼が先陣を切ってリリィに斬りかかる!

 

横薙ぎ一閃!しかしリリィはそれをしゃがみ避け、天谷の顔面に右拳を1発!!その隙を突く様に明石とユキオがリリィの背中に飛びかかる……が!

 

リリィは背後に光る腕を振るう!そのグローブが2人のライフジャケットに迫りーー

 

 

「中途半端に飛び込むのはダメ!!」

 

 

ーーハンナがギリギリのところで、彼らを引っ張り後ろへと退げる!明石とリリィのグローブが数cm離れて衝突を避ける。

 

「背中に目ん玉でも付いてんのか、アイツ!?」「いや……第六感みたいなのを待ってるんだろ!とにかく無謀な突撃は避けよう!攻撃して削って、消耗と疲労を待つんだ!!」

 

明石に再び突撃するリリィ。その進路を天谷の太刀が遮る!

楽しそうな、愉しそうな顔をしながら、天谷はリリィと正面から目を合わせ、声をぶつける。

 

「戦うのが楽しくないのか?自分が負けるのがそんなに怖い?

 

カワイソウだな、お前!

 

見ろよ!俺の顔!!」

 

天谷は口が裂けんとばかりに笑い、大声で叫ぶ!怯んだリリィの顔面に、真田の拳がクリーンヒットする!

 

「これが『生きる』なんだよ!!『今死んでも良い』って思える事!!瞬だって!丑三っちゃんだって!光圀だって!真田も秋元もそうだ!

 

嫌なら辞めちまえばいい!気の向くままに生きればいい!

 

俺達が戦うのは、自由に生きる為なんだよ!!」

 

真田の拳が更に2発、3発と続く!リリィは反撃できない、動けない!

その真田の真上から天谷の剣が振りかぶられる。その口から、リリィに最後の言葉が引き渡される。

 

「リリィ、アンタ強いけどさ。

 

 

俺から見れば死んでるぜ」

 

リリィの脚に、太刀が刺さる!リリィの顔に、拳が飛ぶ!

 

リリィは、動けない!

 

「ぬ゛……ぬ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああ!!」

 

(お前らは……希望の為に戦ってる……)

 

明石とハンナの蹴りがリリィの腹に入るが、リリィは腕を少し動かしただけで、明石達を捕まえようともしない。それを見て、明石・ハンナ・ユキオは頷き合う。明石のグローブの光が、一際大きく輝く!

 

(でも俺は……俺には、希望(そんなもの)は無いんだ。

 

俺達は最初から……ただ絶望から逃れる為に……目を背けて戦う事しか知らないんだ。

 

だから、もうやめてくれ……頼むから……

 

 

希望に満ちたそんな表情(カオ)で、立ち向かって来ないでくれ……

 

 

 

 

心が 折れる )

 

 

 

 




ーー池袋・太陽の国。その牢屋。

夏川めぐは、砂時計が落ちていくのを眺める。と、その牢屋に1人の男が現れる。
「ん?誰だバガッ!?」「「あ、アルフ・Eー!!お、お前ダボッ!?」」

3人いた牢番の意識を瞬時に持って行き、丑三清志郎は夏川めぐと対峙する。
「丑三……アンタが来たんだ。てっきり、泣きそうな顔した明石が来るかと思ってた」
「明石が来てたらどうしてた?」「思いっきり罵倒してた」
フフッ、と笑うナツメグ。丑三は聴く。
「死ぬのは怖くないか?」

「怖くない……って言ったら嘘になるけど。でもそれより今は嬉しいの。明石が私との約束を、守ってくれてるから。それだけ自分の事、仲間の事を考えられてるって事だから」
涙を流しながらも笑うナツメグ。彼女はふと何かを気づいた顔になると、髪に付けていたシュシュを外す。
檻の外に出したシュシュを受け取る丑三に、ナツメグは言う。

「これは涙ちゃんのシュシュ。私の大切なもの。明石に渡してあげて。私達はずっと、明石を見守ってるよって」
「……俺達の最大の恋のライバルのか」「ライバルっていうか、もう負けてたけどね」
そこだけ渋い顔をする2人。しかし、それは仕方がない。
丑三はナツメグの手をシュシュごとグッ!と掴み、シュシュだけを取る。

「明石の所に戻る?」「いや、俺はここで、星の最期を見守る」
「じゃあ、昔の話でもしよっか?昔の……明石の話」「それなら、まめまきで赤鬼に果敢に挑んだ明石の話をしよう」







2016年最後の投稿!次回、三国ドロケイ最終回!!



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