神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
「--ふぅ、これでこけしの試練は終わり……かな?」
僕、木場唯斗はこけしと死体で溢れた病院から脱出し、外に出た……かと思ったけど、出てきたのも何かの中のようだ。天井含め、周り全てに白い壁が貼ってある。
「外じゃねえのか、ここはどこだ?」
「建物が8個……真ん中にはラインがある……ラインに文字が書かれてますね。『KEEP OUT』?」
「床は……これは砂だね。脚に悪いモノでは無さそうだ。ここでは裸足でも大丈夫かな?」
匙くんと由良さんがいち早く周囲を分析する。それを元に会長は現状を整理し始めたようだ。僕は別の気になったものを探す。
今僕達が掴んでいたロープ。天井から降ってきたあれはもしかすると、ここからさらに上、あるいは外から降ってきたものなのかもしれない。だとすれば、ここで見逃すわけにはいかない。
縄は砂の地面に縄文を描きながら、真四角な建物のうちの1つ、その頂点へと登っていく。悪魔の力で空を飛び、天井の上を確認すると……
そこに、1人の少年が…コマネチポーズで立っていた。
「……へ?」
いや、よく見るとそれは少年の形をしているだけで、少年ではない。その身体は肌色には似つかわしくない銀色で、全身がフルメタル。
コマネチポーズで強調している股間には、縄のような物がぶら下がっている……って、まさか!?
『オ〜〜〜〜〜イェス!!』
嫌な予感的中!地面を擦っていたヒモは天井付近で大きな弧を描き、コマネチの中に収納されていく!
時間にして、10秒程度。そのスピードはしかし、異様に早い。
そして、縄の全てが股間に収まり、先端の凸部が蓋のように穴を塞いだ……これは、男性器!?
……幸い女子達はこっちを見てないようだ。良かった。
『オ〜〜〜〜イェ〜〜〜ス!!』
2回目の大きな声で皆も気づき、一斉にそちらを向く。これは……有名な世界遺産で知られる、しょんべん小僧の像!
この像は、しかし素材が金属やコンクリートではないかのようにしなやかな動きでカクカクと腰を振っている。その胸には『忍耐』の文字が堂々と書かれており、本物のしょうべん小僧の像ではなさそうだ。
しかし、さっきのヒモは、偽しょんべん小僧の男性器だったのか……強烈に手を洗いたい欲求に襲われた。
『OK!!お前ら1回集合、オーイェイ』
そう言われて、集まる7人。従わなかったら殺されるのは目に見えているから、次の指示を待つ。指示をくれるだけこれまでのノーデータ試練よりは優しいものだ。
『とりあえずイェイ、お前ら1番最初だしイェイ、この中、早く入れお前ら……オーイェイ……ポウ!!!』
「馬鹿にした喋り方しやがって……」
「サジ、落ち着きなさい。言う事に従わないと、殺されますよ」
こうして僕達は建物の中に入って行く。その直前、しょんべん小僧は1つだけ口にした。
『まぁあとは……我慢だシェゲナベイベー』
その言葉の意味がよくわからないまま、僕達7人は建物の中に入る。中はどうなっているかというと……
「ふかふかそうなソファーに、立派なテーブル……そして謎のガチャガチャ、2階へと続く階段、わからない事が多すぎますね」
どれも罠っぽく思える。特にあのガチャガチャは、何が出てくるのか戦々恐々と行った感じで、皆視界に入れないようにしている。
と、一番後ろで警戒していた由良さんが室内に完全に身体を入れた瞬間、ドアが勢いよく閉じられる。鼻頭にドアの直撃を食らった由良さんが悶絶しながらしゃがみ込み、みんなの視線がそちらに集まる。
「!! ドアに文字が書かれてある!」
匙くんの言う通り、扉には文字が書かれてある。どうやらこれが、次の試練終了の条件らしいけれど……
「『ひいて全滅せしめたらおわり』?また、よくわからない事が増えましたね……」
会長は再び思考タイムに移る。それを傍目に、由良さんが少し力を込めてドアノブを回してみたが、もう開かなくなっている。僕達はこの建物に閉じ込められたようだ。
「こっちにキッチンがあります。水は出るみたいですね」
「会長、ここにはトイレがありました!警戒しながら水流して見ましたけどどうやら流れには問題なさそうです!」
匙くんと小猫ちゃんはもう探索に入っている。それを見て会長も瞑っていた目を再び開いた。
「少ない情報では思考に偏りや主観が生まれますとりあえず中を一通り調べてみましょう。5分後にここに再集合してください。では、分かれて捜査を開始しましょう!」
会長のその言葉を合図に、全員がこの建物内部の探索を始めた。
--5分後。
「それでは各自、見つけた事を発表してください」
立派なテーブルを囲み、僕達はソファに腰掛ける。ソファと椅子にも仕掛けがないことは、会長が調査して明らかにしてくれた。
「2階には部屋が人数分あり、ベッドやイス、ランプ、鏡、シャワールームなどがありました!どうやら休憩スペースのようです!」
「いろいろなところに小さなしょんべん小僧の模型があったわね。動いたりはしないけど。いい趣味してるわ、ホント……」
生徒会メンバーは2階の部屋を発見したようだ。匙くんが由良さん監視の元で全て使用してみたが、どれも罠や凶器が襲ってくることはなかったようだ。
そして……
「私はモグモグ、このガチャガチャをムグムグ、回してみました」
誰も触れなかったガチャガチャを回し、その中の物を調べたのは小猫ちゃん。好奇心は猫を殺す、などと言うことにならなくてよかった…と胸を撫で下ろす。
「……それで小猫ちゃん、何食べてるの?」
小猫ちゃんは手に残った塊を口の中に押し込み、飲み込む。少し息を整えて、教えてくれた。
「このガチャガチャの中身はどうやら、食料みたいです。美味しいですよ」
「良く食べる気になったね……」
「食べ物の匂いがしましたし、毒がないのも確認済みですので」
まぁいずれ誰かが開けないといけなかったから、早いうちに中身が見れたのは僥倖だ。
「情報はこのくらいですか。どうやら、ここで長期間過ごすことを意識した作りとなっているのですかね?」
情報を総括して会長が告げる。それなら確かにしょうべん小僧が言っていた『我慢』の話も理解できる。ただ、どうやっても試練の内容と一致しない。あと怪しいのは外の『KEEP OUT』と書かれたラインだけど……
しょうべん小僧、我慢、KEEP OUT…もしかして…
「トイレを我慢せよ、と言うことなのでは?」
「……私が使っても何もなかったから違うと思うよ」
桐生さんがちょっと恥ずかしそうに言う。ご、ごめんね……
「あ、そういえば私も、縄跳びとかで疲れたし、お腹空いたな〜。小猫ちゃん、1つ食べ物取って〜」
桐生さんによる話の切り替え。乗っかることにした。
「あ、じゃあ俺も1つ」「私も私も」
「……とりあえず、食事にしますか」
こうして僕達は、少し休憩がてら食事の時間を取った。ソファーにゆったりと腰掛けて、ガチャガチャの中の……これは何だろう。ボールのような食料を、恐る恐る嚙った。
「……ホントだ、美味しい!」
「何これ!思ってたのより数倍美味しい!!!」
「携帯食料みたいな味を予想してたのに!」
こうして、皆が満足して食事の時間を終えた。ただ、その途中で2人ほどふかふかソファーの魔の手に陥り、眠ってしまった。緊張感が少しずつ失われている。あるいは、これが相手の目的か……?
と、
『オゥ、イェス!!』
会長が驚いたように目を剥く。急に、この建物の中のミニしょんべん小僧が叫び始めた。次がいよいよ始まるのか!
僕は慌てて寝ている2人を起こす。
さぁ、何が始まる?……
……
…………
………………何も起こらない!
次の試練突入……と書いたものの、今回は休憩みたいなものですね。次から試練が始まりそうです!すぐ終わりそうな気もしますが!
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!