神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
木場が、少し狼狽えている天谷からカードを引く。引いたのは今天谷がリリィから引いたばかりのスペードのK。木場は全力を込め、天谷にデコピンを行う。
「でっ!?」
しかし、天谷はただ痛がるだけだ。深刻なダメージに陥ってはいない。木場は隣の秋元にダイヤの5を渡しながらため息を吐いた。
(これでは、
そして次、秋元から高畑に渡す番。
「!」 「ごめん、瞬!できるだけ回さないように耐えてたけど、もう限界だ!」
秋元が渡したのはクローバーの9。『しゃくれ』カードだ。それを見て高畑はしゃくれるが、笑みを作る。
「いや、きょれでいい」
高畑は言うと、『しゃくれ』をハートの9とともに捨てた。これで高畑の手札は残り2枚。
「これでお前が死ぬ確率は50%だ!こい、かみまろ!俺が死ぬ時お前も死ぬ!
俺にとっての『生きる』は、ここで『死ぬ』ことだ」
「あぁん……!?ああ、なるほど。お前……
かみまろに言われて高畑の目が細まる。周り……特に隣の秋元はそれを聞いて叫ぶ。
「『引かれたら死』を引かせて、シンクロで道連れにするつもり……!?死ぬつもりなの!?」
その言葉を聞いて高畑は一瞬眉をしかめた。
「何度目だぁ?」
その高畑に言葉を放つかみまろ。
「何ターンの間、お前は俺を道連れにしようとしていたぁ?んーーー?
そして俺は、その死線を何度潜り抜けた?ん〜〜〜〜〜〜〜?
お前はその度に憤り……怒り……嘆き……そして、熱くなったんだなぁ?
俺の為に熱くなったんだよなぁ!?」
口裂け女のように頬を引き裂かんばかりの禍々しい笑みを浮かべるかみまろに対し、高畑は激昂する。
「黙れ!笑うな!!さっさと引け……!「おおお、お言葉に甘えてぇ!!!」!?」
一瞬の静寂。
「……………………なるほど」
かみまろはがっかりしたように呟く。
「残念だよ、高畑瞬。お前じゃ俺を、殺せないみたいだ」
かみまろが手に取ったのはクローバーの6。『引かれたら死』のカードは、未だ高畑の手の中にある。
「なんでだろうねぇー?単純に『運』かな?いや、それだけじゃ無い気がする……
もしかしたら、『人』と『神』との間には境界線があるのかもしれないな……
人の心を捨ててその一線を踏み越えられる者だけが、俺を殺し、神になれるのかもしれない」
その言葉に歯軋りする高畑に対し、再び秋元が声をかける。
「もうやめて、瞬……!助かったんだよ……!?
かみまろを殺したいって気持ちは、私も痛いくらいわかる!でも、瞬が死ぬのは違うよ!!
誰がそんな事望んでんの!?私は絶対許さないから……!!
瞬が死ぬとこなんて……見たくないよ、私……
生きてよ……一緒に……」
高畑の息がその言葉を聞いて詰まる。
「やっぱお前じゃ無理だわ、高畑瞬。
そんな言葉に揺らいでるようじゃまだ『人』だ……『神』の一線は超えられない」
腹を掻きながら言うかみまろ。その顔が不意に考えるような表情に変化する。
「……そう考えれば、俺は元々……『人間』の側にはいなかったのかもなぁ……
『人間』の側に行こうとしたが、俺には無理だったんだ。
……だからきっと、俺の方へ……
『人』の一線を越えて!『神』になる素質のある者が生き残る!!それがこの選別の意味だ!!
何をすれば『人』の一線を越えられるかはそいつにしかわかんないけどぉ!ははは!!紫村影丸は、きっとそれを越えたから神になれたんだぁ!そーだそーだ!!
お前らも来いよ!『神』の側へ!!!」
「誰が行くか!!お前は神なんかじゃねぇ!ただの人殺しだ!それは紛れもねぇ、地球の全人類の考えだ!お前みたいなサイコ野郎は、俺がぶっ殺す!!」
匙は手を伸ばし、かみまろのカードを引く!
しかし、受け取ったのはクローバーの6。かみまろは首を振る。
「つまんねぇつまんねぇつまんねぇ!!俺を殺せなければ死ぬぐらいはしてみせろよ!」
苦虫を噛み潰したような顔になりながら、匙は明石にカードを持っていく。
明石もクローバーの6を受け取る。丑三にカードを回すと、彼は明石の手札からクローバーのJを持っていった。
続いてオスメスが引くターン。
「!」「ほほう!なるほどこれは面倒な罰ですね!」
『ハイテンション』カードを引いたオスメス。彼は残り2枚のカードのうち、片方をリリィに差し出す。
「!!」
リリィに回ったのもまた、『ハイテンション』カード。なぜなら、今オスメスが持っているもう1枚のカードは、彼が最初から持っていたハートの4だからだ。他の4カードと同じように、このカードにも『引かれたら死』の神罰が書かれていた。
(流石に、リリィを支えるために1人も殺さずに死ぬわけにはいきませんしねぇ……)
最初の死は相手の事故だ、と思っているオスメスは少なくとも1人は自分の手で殺す、と考えている。それがリリィのため、ひいては世界平和のためだ、という志の下に。
リリィはそんなオスメスの横顔を、普段と変わらない目で見ていた。