神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
え?
おい、嘘だろ?冗談だろ?
神がこんな簡単に死ぬ訳ねぇだろ?
会長を殺せるような奴だぞ?
死んだのか?ホントは生きてんじゃねぇのか?
ホントのホントに死んだ?もう生き返りはしない?
じゃあ、俺は?
約束は?誓いは?敵討ちは?逆襲は?お礼参りは?仕返しは?
もう、何もできない……?
…………
……………………
…………………………………………
「……うははは!ヤベェ!勃ってきた!スゲェよ瞬!しばらく何も言えなかったけど、やっぱ最高だぜ、あいつは!」
股間を片手で握り、もう片方の手で膝を打つ天谷。
「まぁ、俺には真似できねぇ真似だな。するつもりもねぇけど。だって、俺は神になるし」
血溜まりを見ながら言う天谷を、木場は警戒した目で見る。
(彼は危険だ……僕は彼を神にするのを止めるべきなのだろうか?いや、でも神になるのを止めると言うことは、つまり彼を殺すと言うこと……どうする?どうすればいい?)
騒ぐ天谷と黙る木場、どちらも視界の端に見ながら明石は匙から1枚カードをもらう。
「……え!?なんだこのカード!?」
もらったのはJOKER……つまり、持っている限り死なないカードだ。
今、明石の手札の中にあるのはクローバーの6とK、そして高畑とかみまろから再配分された『引かれたら死』のスペードの4。
(どうすべきかな?『引かれたら死』を引かれても、今の状態なら死なない。今のうちに『引かれたら死』を回すべきか?)
とりあえずは、と持っている4枚全てを丑三に提示する明石。丑三はその中から、クローバーのKを持っていった。
次のターン。リリィが丑三のカードを引いたが何も起こらず。
そして次のターン。リリィから天谷が引く番で。
「お?またこいつか!」
引いたのはスペードの6。『順番リバース』カードである。これにより3度、順番が逆となった。
天谷からリリィが引く番。
「あら?それ取っちまうかー。まぁ、引いたら死ぬってリスクがあった方が、興奮するけど!!」
天谷は笑いながら言うが、リリィは反応しない。
リリィから丑三が引くターン。
「……来たか!」
丑三は『ハイテンション』の神罰があるハートの5を引き、先ほど手札再配分で回ってきたスペードの5とともにテーブルに捨てた。これで丑三の残り手札は2枚。
そのうちの1枚を丑三は片手で持ち、明石の前に差し出す。
「あっちはダメだ。だから……これを」
明石は頷いて引く。先ほど渡したクローバーのKだった。
次のターン。
「どれでもいい。取ってくれ」
明石は匙にそう声をかける。匙は首を傾けると、右端のカードを引いた。そのカードは『引かれたら死』。しかし明石はJOKERのおかげで助かる。
「待っててくれ、匙!次のターンには助かるようにしておく!」
明石の声を背中に受けながら、匙は木場に向かって1枚のカードを突き出す。木場はそれを、ためらいなく受け取った。
「……すまねぇ、木場。俺はもう、頑張れねぇや」
そのカードは、『引かれたら死』。
木場が口を開け声を発そうとした時には、すでに匙は血の塊となっていた。
言われるがままにカードを引いてしまった自分の愚かさを攻めながら、木場はテーブルをバンッと叩く。
「なんで……なんでだ匙君!?もう、かみまろはいなくなったのに……「だからこそだろ?」!?」
口を挟んできたのは、思わぬ人間。木場の隣に座っている、もっとも危険な男だった。
「見た感じあいつも『かみまろを殺す』が全て、生きる上での目標みてぇになってたし、目標が消えちまったら、ゴールかなくなったら、メンタルよえー奴はどうしようもねぇだろ?」
匙の残り手札から再配分されるカードを受け止めながら言う天谷。その口が大きく開く。
「まぁ、そんな奴が神になれるわけもねぇし。どうせどっかで死ぬはずだったんだろうよ」
「……は?」
木場祐斗のオーラが、そこで急激に変わる。それを見て天谷は『ヒュウ♪』と口笛を吹いた。
「君に……お前に匙君の何がわかる!彼の背負う物を知らないお前に!!」
「別に知る必要なんてねぇよ。もう死んじまったやつのことだし」
「お前はどれだけ人を……人の死を馬鹿にできる!?なぜお前が今生きている!?ハンナさんを殺したのは紛れも無いお前だ!その責任をも紫村君に押し付け、彼に精神的な傷を負わせたのもお前だ!そんなお前が、なんでこうものうのうと生きて、なんでこんなにも平然と死人を侮蔑できる!?」
「なんでって?それは俺が生きてるからだよ」
天谷は言った。
「ほら、死人に口なしっつーだろうよ。死んだもんは生きてるもんに対して手出し口出しできねぇってよ。だから歴史は往々にして勝者が……生き残った奴が作るし、そこでは勝者が強く、偉く、立派に素晴らしく描かれる。逆に敗者はひ弱に、無様に、下衆に、不細工にされるもんだ。
俺は生きてる!その時点でここまでの試練で死んでいった何千何万の奴らよりも強く偉く立派な勝者だ!だから俺が何を言っても問題はねぇだろ!」
アハハハと高笑いをする天谷武。木場祐斗はその笑い顔を睨む。目を血走らせながら、木場は天谷に告げる。
「……その理屈はよくわかる。死んでいった者は生きているものに対し、干渉することはできない」
そこで一旦区切り、木場は大きく目を見開き言った。
「だけど、いろいろな気持ちを残すことができる!!
恐怖、安堵、絶望、希望、悲嘆、恋慕、尊敬、愛情、憎悪!他にもたくさん!
それを踏みにじったお前は、僕がこの手で倒す……いや、殺す!!」
木場は手札から2枚のカードを捨てる!捨てたのはスペードとクローバーの4。
「……そういやお前、確かに『引いたら死』のカード、持ってたな!さっき『見た』ぜ!いいじゃんいいじゃん!そんなスリルのある戦いは大好きだぜ!じゃあ勝負だ!俺が死んだら俺の負け、俺が死ななかったらお前らの負けってな!」
残る手札は3枚。その全てを突き出す木場から、天谷は1枚、ど真ん中のカードを奪い取る!
「……ふふ」
微笑んだのは。
「……アハハハハハハ!!ギャハハハハハハハ!!」
天谷武!
彼は一言。
「くそったれェェェエエエ!!!!!」
雄叫びを上げ、木場に対して腕を振りかぶり、
全力で拳を喰らわせる、その直前に、
血溜まりと化した。
「君はずっと1人で戦ってた。対して僕は、死んだ人全員が味方だった。それが勝負を分けた」
その血を浴びた木場は目を細めながら、頰にまで溢れた液体をハンカチで拭った。
「……オスメス。アンタも行くの?紫村は今生きてる人間を助けに行くーって飛んでいったけど。アンタもそんなことする奴なの?
あ?違う?誓いの場所?報復?なんだそりゃ?まぁ、好きにしたらいいか!アンタも神だもんね!行ってらっしゃ〜い!!
…….はぁ、また行っちゃった。最近の若者ってのは落ち着きがなくてダメだねー。
って、アレも私が創ったんだった!!」