神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
--ここは、イッセー先輩の家の庭。
「……はぁっ!」
私は丹田に力を込め、サンドバッグの中心を狙って拳を1発叩き込んだ。
あの地獄の試練が終わり、私達が『神の子』としてこの世に再び出てきてから、1週間が過ぎた。私達が帰ってきた時、ここにいつもいるはずのイッセー先輩はいなかった。その代わりにいたのは、グレイフィアさん。そして、大量の悪魔の子供達だった。
「あぁ!ヘルキャットちゃんだ!」
その声とともに悪魔の波にもみくちゃにされ、帰ってそうそうきつい思いを体験した。
その後、グレイフィアさんに話を聞いた。グレイフィアさんが言うには、冥界は封印したはずの堕天使コカビエルと、旧魔王派やはぐれに襲われて半壊滅状態だそうだ。グレイフィアさんはサーゼクス様の命令で、生きていた冥界の悪魔を連れて人間界に逃げてきたらしい。グレイフィアさんがサーゼクス様の話をした時、急に泣きだしたことが、私達に事件の真実味を帯びさせた。
この広くしたイッセー先輩の家は、襲撃によって親が殺された悪魔の子供達を住まわせているそうだ。ここの家主であるイッセー先輩の御両親には、この家に来た時、全てを……それこそ悪魔の事まで全てを話したという。そして、その時人間界の惨劇、そして……リアス部長の死を初めて知ったらしい。
『あなた達が……イッセーに関わるからだ!だからイッセーも、リアスさんも、アーシアちゃんも……いや、全国の高校生が!』
『やめて、父さん!グレイフィアさんだって被害者なのよ!』
全てを話した直後、イッセー先輩のお父さんから罵倒されたという。グレイフィアさんは、何も言えなかったそうだ。
その後、落ち着いたイッセー先輩の御両親と話し合い、なんとか子供達を住まわせてくれるように説得したらしい。
グレイフィアさんがここに来た日がちょうど私達の試練が始まった日……そして、イッセー先輩が消えた日でもある。イッセー先輩……いや、イッセー先輩を含めたその日学校に行っていなかった欠席者が、夜中のうちに全国で一斉に消えたらしい。
私は、イッセー先輩に対する嫌な想像を振り払うために、よくこうして庭でサンドバッグを殴る。
イッセー先輩は……死んでない!そう思いながらサンドバッグを吹き飛ばす。けれど、途中でいつも悲しくなってやめてしまう。今日もそうだった。
「イッセー先輩……寂しいです……」
私の目から、涙がこぼれ落ちる。涙は落とすまいと上を向く。
「……え?」
涙でボヤけた目には、何かがこちらに向かって降ってきているように見えた。
その直後。
ドォン!!と庭に何かが落ちてきた!?
私は慌てて目を拭い、落下物を凝視する!家の中にいた朱乃先輩や祐斗先輩も、音に反応してかベランダやドアからそっちを見ている。
音がした方、そこでは砂煙が上がっている。その煙も、だんだんと晴れていった。私の視界に映るのは、2人の男女。
「あいたたた……もう少しゆっくり着陸したかったな」「すまん、私の下敷きにしてしまって……」
「……イッセー先輩!ゼノヴィア先輩!」
私は降ってきた2人に抱きついた!何で降ってきたのか、今までどこに行ってたのか、そんなことはどうでも良かった。ただ、イッセー先輩達が帰ってきたのが、嬉しかった!
「こ、小猫ちゃん!」
イッセー先輩も私の体を抱きしめる。その上から更にゼノヴィア先輩、朱乃先輩、祐斗先輩も抱きついて、私達は再会を喜んで泣いた。
「母さん、父さん、ただいま……」
そう言ってリビングに入ったイッセー先輩に、御両親は何が起きたかわからない顔をしたけど、何とか先輩が帰ってきたのを理解したみたい。
「イッセー……!どこに行ってたんだ!」「良かった……あんたが無事で……本当に……」
「……ゴメンな……母さん、父さん、ゴメン……」
そう言って泣きながら抱き合う親子を見て、私達もただ頰を濡らした。
イッセー君、ゼノヴィアさん、帰還です。
次回、大切な物探し。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからよろしくお願いします!