神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第25話---涙

「……!?」(また、悪夢…!?)

明石は目を覚ます。その直後、彼は激しい頭痛に襲われた。

「うっ……痛い……」

隣ではミツバも苦しんでいる。彼女は服を着ているようだ。今回は服は転送されなかったらしい。どうやらここは校舎内だがさっきとは別の場所のようだ、と明石は判断する。

 

「な……何、今の夢は……」

俺の痛みが治ると同じくらいにミツバも頭痛が治まったようで、彼女はこちらを睨みつけてきた。

「さっきの怪物は……私達が選んだ不思議『(ひつじさる)』、今の映像もこの頭痛も……あいつの仕業に違いない……だけど……私があんな映像を見たのは……明石!あんたがエンジェルを信じなかったせいよ!」

「は?」

「あんたがエンジェルを信じないから私は変な夢を見たのよ!」

「なっ……」

明石は、(宗教って怖ぇ〜)とその身に感じた。もはや催眠級だ。明石は、ミツバの追求から逃げる場所を探す。すると、窓の外、斜め下の方に、見覚えのある物が見えた。

(あ、あれは……俺の服……!!)

明石はミツバから逃げる為、そして服を取りに行く為、2階の窓から裸で外に飛び出した!

 

彼は服を着、イッセーと涙ちゃんの服、そして彼らが持っていた道具を手に取ると、彼らを探しに向かう。

 

一方その頃、イッセー君は……

 

 

「イッセー、私の服を貸してやろう。暖かいぞ」

「じゃあ、私はダーリンを抱きしめて暖めてあげる!」

「なっ、ズルいぞイリナ!」

「ちょっと待って!俺今裸だから!」

イリナとゼノヴィアの双丘が腕を刺激する。くぅ〜、良い仕事してくれる……じゃない!

 

俺がとりあえず服を探そうと思って廊下を歩いていると、前から変な妖怪が現れた。外見は全然違うが、どこか艮と似ているように思えた。左腕が無くなっており、そこから血が出ている。襲ってきたのか!?とも思ったが、奴はこちらを見向きもせず、俺の上を通って行ってしまった。すると、それに続くようにオートクレールとデュランダルを持って走るイリナとゼノヴィアが現れ、今の状況である。

 

俺は、煩悩と共に彼女らを振り払うと、自分の身に『赤龍帝の鎧』を纏う。

俺は自分の仲間達を探さなければいけない、と彼女らに伝えて、別れようとしたが、イリナとゼノヴィアも付いてきた。2人もさっきすれ違った奴に転送された仲間を、あいつを倒すのと並行して探していたらしい。

こうして俺達3人は、仲間を探しに行く。まずはてんてんと落ちているさっきすれ違った妖怪、『坤』の血の跡を辿っていく。そして、仲間達を見つけた!

 

……艮と坤に挟まれ、身動きが取れなくなっている仲間達を!

 

俺は即座に拳を構えて、彼らの方に跳ぶ。それと同時、いや、少し早く、艮が仲間達に攻撃を開始する。

「眼を開けて、明石君……!!」

涙ちゃんの声が廊下に響く。すると次の瞬間には、明石と涙ちゃんが転移する……その僅かコンマ数秒の間に、艮の爪が涙ちゃんの背中に届いた--

 

 

--明石は再び夢を見る。

舞台は学校ではなく、街……都会のどこか。その中に1人の少年が立っている。

 

『え……俺? 瞬……高畑 瞬(たかはた しゅん)……』

 

「……う……」

明石は目を覚ます。周りには跳び箱や平均台などの運動器具が揃っている。どうやらここは体育倉庫のようだ。

隣を確認する。今度は、涙はそこに横たわっていた。目を覚ました涙ちゃんは、頭痛に声を上げた後、息を荒げながらも告げる。

 

「……時間が……無いから……聞いて……」

涙ちゃんは明石に細々とした声で告げる。

 

「いつからかわからないの。すなとりのときかもしれないし……まめまきのときかもしれない……もしかしたら、出会ったときからだったかも……いつからこんな想いができたかわからないけれど、やっと自覚することができたの」

 

涙の手が明石の手を優しく握る。

「明石君の事、大好きだよ」

明石の張り詰めていた力が、一気に抜けた気がした。それでも力を振り絞って上半身を持ち上げると、涙の顔に自分の顔を近づける。

 

2人の唇が重なった。

 

 

一瞬にも数時間にも思えたキスは、明石が離れることで終わりを告げた。どこか名残惜しそうに、そして少し照れたように涙ちゃんは言う。

「やっと言えた……良かったぁ……私いま……すごく幸せかも……」

「お……俺もだよ!俺も幸せだから……!なんつーかその……すごい嬉しかった!あーもー、こういう時に上手いこと言えないけど!とにかく好きだ!大好きだ!」

 

涙は目を細め、優しく……弱々しく笑う。明石は、その目から光が薄れていることに、気づいた。

繋いでいる手が、だんだんと冷たくなっているのに、気づいた。

「明石君は皆の司令塔なんだから……もっとしっかりしなきゃダメだよ……?」

「へ……?あ……うん……もちろん……てか、なんで今そんな事……?」

 

明石は、涙の背中に手を回す。背中を触れられると、涙は顔を顰めた。赤い、紅い液体にが明石の手にべったりと付く。

「何……コレ?」

 

慌てて明石は涙を抱き抱える。胸の下を腕で抱いて、背中を確認した。そこにあったのは……引き裂かれた制服。そして、生々しくえぐり取られた、3本の爪痕だった。

 

「涙……ちゃん?」

涙ちゃんは咳とともに、口から血を吐き出した。慌てて明石は涙ちゃんを寝かせる。

「こんなケガ……いつ!?」

そう言ったと同時に、明石は思い出す。艮の攻撃から逃げる為に眼を開く前、涙ちゃんに横に押された事を。

(まさか……あの時……!?俺を助ける為に!?)

 

涙ちゃんの声はだんだんと掠れてきた。それでも涙ちゃんは喋り続ける。涙がポロポロと下に流れていく。

「バカだね私……明石君に『好き』って……もっと……早く言っておけばよかった……」

「ダメだよ涙ちゃん!しっかり……!!今から死ぬ人みたいな事言うなよ!?バカじゃないの!?」

明石の声は虚しく体育倉庫に響くだけだ。

 

涙ちゃんの冷たい手が、明石の頬に伸びる。

「大丈夫……泣かないで……」

涙ちゃんは閉じそうな眼を必死に開き、明石を見る。

 

 

「あなたに会えて……私は幸せでした……」

「あっ……」

明石はこの光景に既視感を覚える。

(これは……『坤』に転送された時に見た……あの光景と同じ……!?)

 

「生きて明石君……生きて」

「嫌だよ……ダメだよそんなの……一緒に生きて帰るって約束したじゃん……」

「ゴメンね……もっと一緒に……いたかった……」

「だったら帰ろう……!BOXで皆待ってるから……!!すぐ手当てすれば助かるよ、きっと……っ!!」

 

 

手の力が、抜けていた。

それでも明石は縋るように手首を触る。脈は、動いていなかった--

 

 

ーーいた!明石だ。やっと見つけた。

 

俺は2人が飛ばされた後、艮と坤と対峙した。坤と艮は何かを話す(あいつら話せたのか!?)と、2体揃って超スピードでミツバを置いて行ってしまった。

怖かったとイリナに泣きつくミツバを置いて、俺は走り出そうとする。

「イッセー……彼らを探しに行くのか?」

そう問いかけるゼノヴィアに頷くと、彼女は手榴弾を投げてよこした。

「私にはデュランダルとエクスカリバーがあるが、イッセーは手ぶらだろう。持っていけ」

「俺はアスカロン持ってるけど……」

「護身とお守りと思って持っておけ、役に立つかもしれない」

そうやって彼女らと別れた後、必死で明石達を探した。10分くらい経っただろうか?そこでフラフラと歩いている明石を見つけた。

「おい、明石!良かった、生きてたか!涙ちゃんは!?」

「そこにいるよ……傍にいてやってくれ……」

「……お前は……どこに行く?」

 

「決まってんだろ?(うしとら)狩りだ」

 

その声は体育館に重く響いた。俺はゴクリと固唾を呑むと、明石にさっきもらった手榴弾を投げる。

「お前、手ぶらだろう?使え」

「……ありがとう」

明石は、フラフラとおぼつかない足取りのまま体育館を出て行った。

俺は、体育倉庫に入る。強い血の香りに少しむせる。

「やっぱりか……」

頬に涙が流れる。涙ちゃんは血溜まりの中で、息絶えていた。

俺の脳裏に、あの光景が浮かぶ。

 

『うそ……だろ、リアス、ハハ、そうだ、これはウソだろ!俺は騙されないぞ!ハハ……』

最愛の人の死体を見た、あの時の事を。

 

「……」

俺が付いていながら、俺と同じ思いをさせてしまった。覚悟が足りていなかったのかもしれない。大切な人が死んでしまう覚悟が……いや、その覚悟から眼を背けていたんだろう。もう二度と傷つきたく無かったから……

 

「これじゃあ、ダメだよな……」

俺がついていながら、こんなバッドエンドになったらダメだ。赤龍帝として、おっぱいドラゴンとして、リアス・グレモリーの眷属として失格だ。

 

俺は胸のポケットに手を入れたーー

 

 

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