神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
修羅海……ハラカイは仰々しい台詞回しをしながら明石達をギロリと睨みつける。動かない両者の間に重苦しい雰囲気が漂った。その雰囲気を和ませるため彼の肩に手をかけ、話しかける者がいた。
「お、お前ってもしかしてハラカイ?俺、多分同じ高校の間凛平ってんだけど!」
「同じ……高校?」
ハラカイがリアクションを返した!凛平は緊張した面を笑みに変え、話を続ける。
「俺ってアメフトやってるんだけど、ハラカイってガタイいいじゃん?だからぜひともアメフトに……お?」
凛平が肩に置いていた手を、ハラカイが掴む。
そして掴んだまま、背後に向かって思いっきり手を振るう!凛平は予想外のパワーに浮き上がり、ハラカイの後ろに吹き飛ぶ!
ハラカイの後ろ……動きの止まったバケモノの口の中に!!
「な!?何をしてるんだ、ハラカイ!?りんぺーをバケモノに放り込むなんて!?」
言いながらりんぺーを救出しに行こうとする明石。しかしそれをハラカイの仲間の1人、悲しみの相の女子が立ち塞がり、止めた。
「俺は1度死んだぞ明石。暴力が全てだと悟る過程で、俺の中の『原海』という弱い男は死んだ!!だが、お前らの中にはまだ……昔の俺が生きている!弱かった頃の俺が!お前らが生きている限り、俺の迷いは消える事はない!
よって滅殺す!原海を知る者全てを!」
その時こそ真の 修羅海の誕生也!
修羅海は床にペンキで相撲の土俵を書くと、その中央で見得を切った。
「かかってこい、過去の俺か今の俺か。どちらが勝つか、勝負だ」
丑三が前に出る。敵に使うはずの刀を…抜いた。
そんな彼の肩に、明石が手を置く。丑三は明石を見ないまま、小さく言う。
「止めてもムダだぞ明石……俺は……」
その先を言う前に、明石が「待て」と短く告げる。丑三は明石に振り向いた。彼は真面目な顔、真摯な目をしていた。だからこそ、丑三は怒りが溢れてくる。
「いくら何でも甘すぎるぞ。まだこんな
肩に置かれた手に、力が入った。
「違ぇよ。
俺が行く。俺がこいつをぶっ殺す!!」
ハラカイは口が裂けんばかりに笑みを作る!
「やってみろ明石!!お札で動きを止めたこの怪物の口に相手を入れた方が勝者だ!さっきのラガーマンのように!
これは最早相撲に非ず!|負けた方は死に、勝ったほうが生きる……死撲《デスモウ》だ!」
修羅海は四股を踏むが、明石は……近くの掃除用ロッカーからモップを取り出すと、修羅海にぶつける!
「おま……きたねぇぞ!?」「うるせぇバカ!どけぇ!!」
明石は……修羅海を無視して後ろの怪物へと突撃していく!そのまま、なんと自らの上半身を怪物の口の中に入れていった!
「うおお……おぉ……だああっ!!」
くぐもった声が口の中から響く。しばらくすると、明石の上半身がだんだんと出てくる。丑三も明石に超速接近し、彼の身体を懸命に引っ張る!そして、遂に明石は怪物の口の中から飛び出した!
明石の腕に、もう1組の腕が引っかかっていた。明石はさらに腕に力を込める。出てきた勢いで引っ張り出したのは……凛平!動きが止まったことで消化をも止めていた妖怪から、呑み込まれたままだった凛平を引きずり出したのだ!凛平の体はまだどこも無くなっておらず、ただ髪がしなっていただけだった。
「良かった凛平!」「死んだと思った……マジ感謝ぁ……」
明石と凛平は抱き合う。その明石の背後から、丑三が覆うように抱きついた。
その光景に唖然とするのはハラカイである。彼はワナワナと震えると、遂に耐えきれずに叫んだ!
「ズルいぞ明石!何故天はお前にばかり味方する!?」
修羅海は激昂する。その問いに明石は冷静に答えた。
「俺はただ生き残りたいだけだ。信じた仲間と一緒に」
「な、なにが『信じた仲間』だ……そんな綺麗事で生きていけたら神なんていらねぇ……っておい聞けよぉっ!!」
最早明石はハラカイの言葉に耳を貸さず、凛平に肩を貸し彼に背を向けた。
「なに帰ってんだよ、まだ
しかし、丑三もハラカイに背を向けた。その背中に先程まで満ちていた殺意は全くなくなっていた。
「……おいどうした!?さっきまでの戦意はどうした!?」
丑三は面倒くさそうに首だけ向けると、ゴミを見るような目でハラカイを見て、言った。
「お前は今の明石のロケットセイヴを見て、何も感じないというのか?ブッ飛ばすつもりだったが……失せた。お前には明石の輝きが見えないんだな。
自分しか愛せない人間にはキョーミは無い」
丑三もそのまま、歩いて行ってしまう。残されたハラカイの声はだんだんと小さくなっていく。
「お、おい待てよ……帰んなよ……なあ戦えよ!逃げんなよホラ……無視すんじゃねぇよ……かまえよ……かまってくれよぉ
……なぁ!!
寂しいよぉ……!!」
ハラカイは、自分の言った事が信じられなかった。感情は全て捨てたと思ったはずだったのに、どうしてこんな弱気になっているのだろうと思った。
(どうして俺は……こんなにも……惨めなんだ……!?)
「あの……!」「は……ハラさん!」
そこで修羅海に声を掛けたのは2人の『あやとり』の仲間達。
「お……お前らぁ……「あの……もう直ぐ7分です……」
「は?」
「効果が消える!お札の……!!」
七つ道具のうち、お札の効果は『7分間不思議の動きを止める』効果。その効果時間が今無くなり、怪物は修羅海に襲いかかる!
原 海は思う。
(何が暴力だ……何が力だ……結局俺は自分のことだけ考えて……ひとりぼっちになっただけじゃないか……どうしてこうなった……俺はどこで間違えた?)
走馬灯の様に思い出す、『あやとり』の記憶。
(あの時俺は……死の恐怖に心を喰われて、生き残る為に過ちを犯した。……人を殴るのは初めてだった)
人の顔に、腹に拳を加えながら、泣いている自分を思い出す。なんて酷いことをしたのだろう、今ならそう思えた。
それより前の記憶も、流れてくる。明石や丑三……みんなと一緒に戦った、『豆まき』の思い出。みんなで笑っていた、あの過去。
(あの時に戻れるのなら……俺はもう2度と誰も傷つけないと誓う。
あんなに楽しかったのは、生まれて初めてだったから……)
……?
「な、何で、死んでいない……?」
いつまで経っても消えない意識、来ない痛みに、ハラカイは目を開ける。
目の前に立っていたのは、かつての仲間と今の仲間。
「俺達が助けたからに決まってんだろ?ラッキーポーク」
「何で……何で俺なんかを……」
「当たり前だべ……あんたは『あやとり』のキャプテンだ」
悲しみの相を塗った女……柘植がはっきりと言う。
「でも俺……どれだけお前らにヒドイ事をしたか……」
「終わった事はもういいよ」「それより大丈夫すか?身体溶けてないすか?」
明石が許してくれた。仲間が心配してくれた。
(何でそんなに……優しいんだよ……)
ハラカイの目から涙が溢れる。それは、顔に塗った隈取りを落としていく。
「変わったなら戻れるさ、本当の優しい原海に。だから傷つけあうのはもうやめて、一緒に生き残るのはどうだ?」
明石は笑顔でハラカイに告げる。あやとりのメンバーも、凛平も笑顔で同意する。丑三だけは真顔だったが、それでも小さく頷いた。
「うぅ、ごめん……みんなごめぇん……ごめんなさぁぁぁい!
俺ぇ……変わるから……変わるからぁ!!」
〜〜〜〜ー
その様子を、校舎の中庭に植えられた木の上から見ていたイリナは、涙をこぼす。
「いい話ねぇ……こんなデスゲームの中で……いいえ、中だからこそ生まれる友情、愛情。素晴らしいわ。愛は全てを救う物。これで彼も道を踏み外す事はもう無いでしょう。やっぱり、愛って素晴らしいわ!主よ、この者達に、その友愛に祝福あれ、アーメン!」
4日目はほとんど終わりですが、まだ少しだけ続きます。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!