神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
自分が呼ばれたことに気づき朝礼台を登る。彼は登りながら、昔のことを思い出していた。
『ばっちゃん、何やっとるん?』
自分の家の縁側、そこにいる小さい頃の自分。そしてその横に座っていたばっちゃん……福満の祖母は手首を交差させ指を絡め、その隙間から庭を見ている。
『このスキマから1番最初に見えたモンを出せば、絶対勝てるんよ』
その言葉に幼い福満は笑う。
『うっそじゃー、ジャンケンって運でしょー?』
その言葉にばっちゃんはニコニコ笑い、数秒して言う。
『見えた、いくよ、ジャーンケーン……ポン!!』
福満が出したのはパー。ばっちゃんが出したのはチョキ。
ばっちゃんは宣言通り勝ってみせたのだ。
『うわ本当だ、すげぇ、ばっちゃん!!』
幼い福満はばっちゃんが大好きだった。
『ばっちゃん好きじゃ!』『何も何も』
……そしてそれから10年近くが過ぎ、福満は高校生になっていた。これはつい1週間ほど前の出来事だろうか?
福満の周りには不良どもが倒れている。所々出血や痣ができている。福満はその中央にただ1人立っていた。少し殴られた後は有るものの、他の不良どもとは傷の量が違った。
その後、彼は職員室にいた。先公と親も一緒だ。
先公は言う。『一方的な暴力は悪です』と。彼はただ売られたケンカを買っただけなのに。
『頭下げろクズ息子!!』
クソオヤジに髪を掴まれ、無理やり下げさせられる。親も先公も、福満の言った事を全く信用しなかった。
(見た目で決めつける大人達……先公も親も……俺はコイツらを信じねぇ……)
『ケガしとるでねーか、ホレ、そこ座りんしゃい』
しかしばっちゃんは優しかった。ばっちゃんは福満を心配し、彼の傷を消毒してあげた。
『痛いか?』『……うん……ばっちゃん、足の具合は?』
『何も何も』
『え……?自分から学校辞めてきた……?』『勝手な事しやがって……誰に育ててもらったと思ってる……!』
その後福満は、人の本質を理解できない様な腐った学校を自主退学した。それを聞いたクソオヤジに顔面を殴られる。福満はそのオヤジに対し、言葉を叩きつける。
『育ててくれ、なんて頼んだ覚えねーよ!!お前らの事親だなんて思ってねぇし!!』
そう言うと彼は振り返り、『出て行け!!2度と戻るな!!』という怒声を背中に受けながら玄関に向かう。掛けてあるパーカーを着て靴を履き、出かけようとした時、声を掛けられた。
『行くあてあるんか?』
そう聞くばっちゃんに、福満は小さく『友達んトコ……』と告げ、雪の中へと飛び出していった。
……もちろん彼は友達のあてなどなく、家から数100メートル歩いた道路の端でへたり込んでいた。雪が身体につもる。家から出て数時間が経った。寒さとひもじさに負けそうになる、そんな時に、また声を掛けられた。
『嘘つきめ、友達んトコ行くんじゃなかったんか?』
『ばっちゃん……何やってんだよ……足悪いのにこんな雪の中……』
ばっちゃんはにっこり笑って、ゆっくりと言う。
『何も何も、勘がええからすぐ見つけてしもたわ。それより晩飯まだ食っとらんかったろ?ほれ食えおむすび』
そう言ってばっちゃんは福満におむすびを渡す。彼が口に入れたおむすびから、シャリッという音が聞こえた。
(何だよコレ……ばっちゃんの嘘つき……
凍っちまって……シャリシャリじゃねえか……!
本当は俺の事ずっと探して……何時間も歩き回って……『何も何も』じゃねえよ……)
福満の眼から涙が溢れる。ばっちゃんは急に泣き出した福満を心配する。その心配がまた嬉しくて、福満は涙が止まらなかった。
『うめぇ……うめぇよばっちゃん……!好きじゃ……』
そう言って抱きつく福満の頭を撫でながら、ばっちゃんは『何も何も』と言った。
(それから俺は……必死で謝り自主退学も取り消してもらって……正しく生きようと誓ったんだ……エンジェル・イリナの元で人を信じ、人を愛する事も教えてもらった。こんな俺なら、ばっちゃんは褒めてくれるかな?)
そう思いながら福満は手首を交差させ、指を絡めてその隙間を覗く。隙間の中、グラウンドの土の上が見える。そして、その中に……
「見えた……!!」
『さーいしょはグー』
待ってくれてるかな……?
今はただ、家に帰りたい……
『ジャン、ケン……』
ばっちゃんに、会いたい……!!!
『ポン』
「石ころのグー!!!」
福満重里が出したのは、グー。
それに対し、カミが出したのは………
……チョキだった。
「う……!?お……!!」
福満の口からそんな声が漏れる。
福満はグー。そして、カミはチョキ。福満はカミに勝ったんだ!
『福満重里、生キル』
「おおおおお!!!勝った……!勝ったどぉっ!!」
福満は歓喜の雄叫びをあげる。と、その時、福満の身体が浮き始めた。
「!?え?」
カミ・ブリックは相変わらず無機質な声で告げる。
『勝った者は
こうして、福満は空へと上がっていった。
これは……本当に、ただのジャンケンなのか……
「はい次。
南方沙奈」
呼ばれた女子……沙奈ちゃんは独特なポーズをとる。片足を上げ首は上を向き、まるでバレエをやっているかのようだ。
『ジャン、ケン……ポン』
沙奈ちゃんはクルッと1回転して手を出す。彼女の手の形は、チョキ。そしてカミは……グー。
沙奈ちゃんは、チョキの手のみ残して消えて行った。
「はい次の人、どーぞー」
そう言われて、次のやつは力強く朝礼台の階段を上っていく。
「いよいよ私か……まぁ、お手柔らかにお願いするよ」
青髪に緑のメッシュの入った巨乳女子でグレモリー眷属の仲間、ゼノヴィアだ。
「頑張れ、ゼノヴィア!」
俺が声援を飛ばすと、ゼノヴィアは前を向いたまま、こちらに向かって手を振った。カッコいいことするね!
『さーいしょはグー。ジャン、ケン……ポン』
カミが出したのはチョキ。そして、ゼノヴィアが出したのは………チョキ。
再びカミ・ブリックの声が告げる。
『あーいこーで………しょ♪』
カミはパー。ゼノヴィアは………パー。
『あーいこーで………しょ♪』
カミはチョキ。ゼノヴィアもチョキ。
『あーいこーで………しょ♪』
カミはチョキ。ゼノヴィアもチョキだ!
4連続あいこ……何ともハラハラするジャンケンを見せてくれる!!
その後もゼノヴィアとカミのジャンケンはあいこが2、3回続く。ここでカミがブリックを少し止めた。カミはゼノヴィアに告げる。
「こんなにあいこが続くとは……YOU、なかなかやりますね!では私は次に……パーを出します」
その言葉に、ゼノヴィアは全く感情を出さず、額の汗を拭うと再び拳を構える。
『あーいこーで………しょ♪』
カミが出したのは………グー!?あいつ!うそつきやがった!……まぁ、馬鹿正直にパーを出す必要もないわけではあるけど……そしてゼノヴィアは!?
彼女の方に視線を向ける。彼女の手の形は……パーだ。
『ゼノヴィア、生キル』
「やったわ、ゼノヴィア!」「凄いです、ゼノヴィアさん!」
そう言うアーシアとイリナに手を振り、ゼノヴィアはこちらにもウインクをよこす。
「イッセー、イリナ、アーシア!早くこっちに来いよ。待ってるぞ」
そう言うと、ゼノヴィアも上へと飛んで行った。
「2勝2敗ですか……次の人ー?」
次の者、持田涙ちゃんは慎重に階段を上っていく。その眼からは希望に溢れた、力強い意思が感じられた。
「涙ちゃん……」
後ろにいる明石は、心配そうに涙ちゃんを見る。涙ちゃんは後ろを振り向かず、カミを見据えて息を整えた。
『セット』
涙ちゃんはカミの正面に立ち、拳を握る。カミもゆっくりと手を握り開きを繰り返す。
『さーいしょはグー。ジャン、ケン………ポン』
涙ちゃんはパーを出した。それに対しカミが出したのは………前回と同じ、グー。
「ちっ!2連敗ですか!」
『持田涙、生キル』
やった、涙ちゃんは生き残った!俺は彼女が生きていることに歓喜するが、それ以上に後ろは盛り上がっていた。
「やった!涙ちゃんが勝った!」
明石は叫ぶ様に言う。近くにいるナツメグは少しうるさそうな顔をしながらも、明石の声を止めない。ナツメグも涙ちゃんを祝福してるんだと思う。
「やった……明石君!他の皆も!絶対生き残ってね!また会おうね!」
そう言って手を振りながら、涙ちゃんは上へと上がっていく。明石やナツメグ、『すなとりBOX』の皆は、涙ちゃんが見えなくなるまで手を振っていた。
3連続!……かと思ったら4人いました。今回は4連戦でした!
これまで5回戦あって生き残りは3。これはちょっと生き残らせすぎでしょうかね?
次回、おそらく『50%50%』
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!