とある愚兄賢妹の物語   作:夜草

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残骸編 起死回生

残骸編 起死回生

 

 

 

能力実技室

 

 

 

『己の信念に従い、正しいと感じた行動を取るべし』

 

 

<風紀委員>の心得の1つ。

 

その事について、能力開発後、ふと詩歌が黒子の前でこう漏らした事がある。

 

 

『それは、まさに『正義』ですね』 と。

 

 

その理由として詩歌はこう続ける。

 

 

『誰かのために行動することは、誰かの所為にすることと同じ。『正義』を主張したいなら、己の為に行動するべきです。決して曲がることなく、誰の所為にするでもなく、全てを己の所為にして行動するべきなのですよ。それを貫き通した時、辿った道の全てが己にとっての『正義』となる。『正義』とは己。他人の中に自分の『正義』はないのですから、己の『正義』は己のみが己の為に貫くべき』

 

 

でも、とそこで一拍間を置き、

 

 

『己の為のみに行動するという事は、他人から見ればそれは『悪』にもなりえる』

 

 

自分の中に正義があるように、他人にも正義がある。

 

そして、他者の正義が自分にとって相反するものなら、それは悪だ。

 

しかし、価値観などに絶対はなく、無限にある。

 

そう、

 

 

『まあ、結局『正義』は『悪』で、『悪』は『正義』ですね』

 

 

自分が正しいと思う道を突き進む。

 

それこそが正義というものだ。

 

だが、それは同時に悪でもある。

 

だから、自分が正しいのだと思った時にこそ、一度立ち止まって考えてみるべきだ。

 

答えなどない、しかし、己の正義を知り、他人の悪を知ること、きっとそれこそが皆に認められる真の『正義』に最も近づける方法なのだろう。

 

 

『黒子さんは<風紀委員>です。でも、正義の味方にならなくても、悪になっても、黒子さんが黒子さんらしく自分を貫ければ、私はそれで構わないと思っていますし、黒子さんにはそうするだけの力が備わっています。ですが、力を振るう時は後悔しないよう覚悟を持ってください。それが力を持つ者の責任です。そして、皆に認められたいのであれば、それに相応しい行動を取り続けてください』

 

 

そこで詩歌は黒子に微笑みを向け、

 

 

『ふふふ、でも、もう私は黒子さんの事を自慢の後輩だと認めていますけどね』

 

 

 

 

 

バス

 

 

 

「ねぇ、貴女、御坂美琴と上条詩歌と親しいんでしょう? 『実験阻止』にしても先輩に手伝ってもらってた奴なんだし、後輩のあなたに何か聞かされてないの? そう、例えば<最終信号>を隠した場所や」

 

 

「らすと、おーだー? ……なん、ですの、それは」

 

 

「その反応……あなた、彼女達の事、“何も知らない”の?」

 

 

その言葉に、白井黒子の体がピクリと震えた。

 

痛みで震え、感覚の消えかけた体がそれとは別の揺らぎ方を見せる。

 

 

「なん、ですって?」

 

 

首に意識を注ぐ。

 

顔を上げる。

 

歯を食いしばって、全力を振り絞って、地の底から天の上を仰ぐように、

 

 

「わたくしが……お姉様方の何を知らない、と?」

 

 

黒子の問いに結標はいちいち答えようとする。

 

彼女にとって黒子は脅威に感じないと判断した余裕から生じる戯れみたいだ。

 

 

「あら、本当に知らないの?」

 

 

少女は足を組んだまま、冗談みたいに口に片手を当てて、

 

 

「まあ、常盤台中学の超電磁砲はそんな人格していないでしょうけど、本当に何も教えてもらってないとはねぇ」

 

 

焦らしているのか、結標は黒子の問いにすぐには答えず、ますます煽り立てるだけ。

 

残る力を振り絞りつくして放った質問に、しかし返ってくるのは自己満足のような語りだけ。

 

黒子は届かぬ頭上を睨みつける。

 

 

「さっき、から……」

 

 

血でも吐きそうな声と共に、貼り付く唇を動かす。

 

 

「……何を、言って………」

 

 

「レムナントやシリコランダムと言ったのにも聞き覚えは?」

 

 

……一体何の単語だ?

 

黒子には思い当たる節はない。

 

状況が何一つ呑み込めない中、しかし黒子はより一層眼光を強くして少女を睨みつける。

 

そもそも、こんな危険人物の口から彼女達の名前が出てきただけで十分に問題なのだ。

 

 

「うふふ。あらあら、すっかり蚊帳の外って感じね。その分だとやっぱり『実験』について何も知らないみたいね。けれど、貴女はその断片を覗いているはずよ。例えば……およそ1カ月前に操車場でひどい爆発が起きたでしょう? 当時は列車が全線止まって大きな騒ぎになったと思うけど。あれだけの事態から、1週間足らずで列車の運行ダイヤを元に戻せた貴女達の手腕に、私はかなり感心していたんだけど」

 

 

少女は愉快そうに言うが、黒子には答えられない。

 

黒子の頭をジリジリと焼くような焦りが襲いかかる。

 

しかし、それでもやはり少女が何を言いたいのか理解できない。

 

 

「まだ分からないの? これだけ言っても分からないのかしら。8月17日。この特別な日に貴女の周りで何か変わった事とかはなかった?」

 

 

そんな事を言われても、漠然と日付だけを言われた所で、黒子には上手くイメージできない。

 

そもそも、先月の17日など、特別な祝日でも何でもないのだ。

 

 

(さっきから……何を? 会話をしようと思うだけ、無駄―――)

 

 

どうにか体を起こし椅子に背中を預けるも、脇腹を貫いた矢の最後部が引っかかり、その振動に体が震え、バランスを崩して床に倒れ込み、様々な激痛が体内で炸裂する。

 

周りの人間は誰も黒子を起こそうとはしない。

 

誰も味方のいない状況。

 

傷の手当ても、できない。

 

<空間移動>で抜くのではなく、移せば、この一番最初に受けたコルク抜きだろうと引っ掛かることなく取れるが、そうすると身体の外へ血が溢れ出てしまう。

 

傷口から抜いても、早急に止血するための準備を整えなければ……

 

冥土帰しの異名を持つ上条詩歌が尊敬するカエル顔の凄腕の医療研究者が作り出した一般には出回っていない非売品―――消毒、止血、傷口を閉ざす、の3つの効能がまとめられた止血用チューブは常時携帯してるが、ここでやる訳にはいかない。

 

こうして、今無力化されたからこそ、止めを刺さずにいてくれるのだ。

 

回復して、反抗すれば、次は意識さえも奪われるだろう。

 

 

「が、ぐ……っ!」

 

 

痛みが爆発する。

 

それが、起爆剤となり、そこで停止するな、と黒子の自立思考を奮い立たせた。

 

 

(はち、がつ。じゅう、しち、にち)

 

 

痛みで上手く働かない頭で黒子は床に座り込んだまま、考える。

 

今は少しでも情報を集めて、打開策を探るしかない。

 

まずは、彼女の言う、8月17日について。

 

 

(確か……お姉様が夜遅くまで帰ってこなくて……そういえば、あの殿方が突然、学生寮にやってきた日ですの……)

 

 

1つ浮かべば、次々と情報は引き摺り出されていく。

 

学園都市の外れの工場地帯、あそこにある操車場で何らかの爆発があったとされるあの日を境にある噂が学園都市中に溢れだした事を思い出す。

 

 

『学園都市最強のLevel5が、何者かによって倒された』

 

 

確かあの話は、学園都市理事会が余計な混乱を招くとして、すぐさま情報管制が敷かれたため、具体的に『誰が』最強のLevel5を倒したのかは、黒子の耳には入って来ていない。

 

だが、舞台となった操車場の破壊の爪痕は並大抵のものではないと誰もが口を揃えて言う。

 

復旧作業は<警備員>主導で行われたが、<風紀委員>の黒子も手伝いとして参加し、その有様を目撃している。

 

それを引き起こしたLevel5は、やはり学園都市最強の存在なのだろう。

 

だが。

 

これだけの大惨事の中、そのLevel5に平然と立ち向かった者はどれだけの力を秘めていたのかと。

 

 

(そういえば……あの殿方)

 

 

その時、黒子の脳裏に初めて上条当麻が自己紹介した時が思い浮かぶ。

 

 

『私の兄、当麻さんはLevel0です……Level0はLevel0ですけど、Level5第1位に勝ったLevel0です』

 

 

『ええ。詳しくは言えないけど、詩歌さんの言う事は本当よ』

 

 

そう詩歌と美琴が、当麻が学園都市最強Level5を倒したと明言した。

 

つまり、8月17日にLevel5に立ち向かったのは当麻で……

 

そうだとするならば、その学園都市理事会に揉み消された情報を詩歌と美琴は知っていたという事になり……

 

おそらく、美琴、それに詩歌もその事件に関わっていた。

 

 

「うふっ、気づいたようね」

 

 

そこまで考えて、黒子は激痛に思考を寸断された。

 

確かに8月17日は、普通の日ではなかったようだ。

 

けれどそれが、何の意味を示すのか、彼女には判断できない。

 

動機は未だに不明だが、彼女が何か深い事情があるのは容易に想像がつく。

 

だが、今日まで美琴は黒子に対して困ったり悩んだりする素振りは一切見せない。

 

それを見つけられるのは、いや、見せられるのは上条詩歌、もしくはその愚兄だけなのだろう。

 

だから、自分は何も知らない。

 

 

「ねえ白井さん。白井黒子さん。こんな話は知っているかしら。まったくあの人の近くにいると様々な話が耳に入るんだけど」

 

 

口ずさむように結標は言う。

 

 

「昔々、ある所に強大な能力者と組織があったの」

 

 

結標は黒子に何だか訳の分からない冗長な話をし始めた。

 

 

 

ある組織が、莫大な利益を得るために、その強大な能力者のクローンを作ろうとした。

 

しかし、結果は無残で、出来上がったクローンは、その強大な能力者の1%の性能にも達しなかった。

 

1%未満でも十分に世間に通用する性能なのだが、それでもその組織の期待を裏切った事には変わりなかった。

 

 

 

「ねえ白井さん。クローニング技術で生まれた子供は、遺伝子レベルで同じ骨格を持つのよ。脳の構造だって、オリジナルと全く同じはず。にも拘らず得られた能力に差が出たのは何故かしら」

 

 

過剰に自信に満ちた問い掛け。

 

本来なら、こんないきなりの与太話に付き合う理由はない。

 

けど、今の黒子は無知な自分が嫌で、つい、耳を傾けてしまう。

 

 

「く、だらない、仮説ですわね。学園都市の学校が、どんな風にランク付けされているのかも、ご存知ありませんの……?」

 

 

同じ人材でも育て方や環境の違いで開花の仕方は変わってくる。

 

だからこそ様々な能力開発理論が生まれ、学校にも名門校や優良校などのランク付けも生まれてくるのだ。

 

しかし、結標は大して気にもせず、

 

 

「いいえ。“作られた個体達は、人工的にオリジナルと全く同じ才能開花を迫られた。”それでもやはり結果は追い着かなかった。同じ脳を使って、同じ結果が出ないのなら、“単純な脳構造以外の項目”が能力開発に関わっているとは思わない? そして、その項目を見つけ出す事ができれば、人間の脳以外の演算装置だって、能力を扱えてしまう事になってしまわないかしら」

 

 

―――つまり、

 

 

 

 

 

「能力の発現に、人の脳を使う必要なんてあるのかしらね?」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

超能力とは、量子論的な考えを飛躍させたものだと言われている。

 

<自分だけの現実>という、意図的に『枠』を歪めた演算機能と判断能力を使って現実の観測を行う。

 

そして、その結果に応じて極めてミクロな世界の確率を不自然に変動させる事で何らかの現象を生み出す。

 

だが、それは本当に人間でなければならないのか?

 

例を上げるとするなら、植物であっても光という現実を観測する事が出来る。

 

いや、特殊な五感ではなく、特殊な処理能力こそが能力に必要ではないのか?

 

情報をどう捉えるか、そう高度な精神活動が必要だ。

 

だとするなら、アリはどうなる。

 

彼らだって、人間と同じように群れで生活し、王アリ、女王アリ、働きアリといった身体的特徴による分業社会を形成するし、害虫が幼虫の卵を襲いに来れば、当然のように親アリが守ろうとする倫理観までも備わっている。

 

高い視点から見れば、アリと人間は同じ。

 

さらには、どちらが正しく現実を捉えているかなど、人間に決められるはずがない。

 

アリが能力を発現できないなんて断言できるはずがない。

 

そして、認識を捉える頭脳を持つのは何も生物に限ったものではない。

 

 

「ねえ白井黒子さん。貴女は私が失望してしまうような人間至上主義じゃないわよね。『頭脳』なんて呼ばれるものは人間以外にだってくっついてるでしょう? ―――ほら、例えば<樹形図の設計者>、とか」

 

 

「ま、さか。演算機器が、わたくし達と同じような能力が発現すると? 貴女、本気でそんな事を考えてますの? それは機械に心があるというのと同じレベルの寝言ですわよ」

 

 

しかし、また一段高い視点から考えれば、そもそも『現実を観測して分析する』だけの作業に、『人間の心』などという高度なシステムは必要あるのか、と黒子は迷い始める。

 

対して、結標はムキにもならず、

 

 

「ええ。機械は所詮、機械。例えばデジカメの手ブレや露出光を調整するAI が物事の現象を前にした所で、演算チップにできるのは光学情報を画面上に画素配置するだけ。そもそも情報処理の方向性そのものが現象の観測とは大きく外れているもの」

 

 

その顔に余裕すら見せて、

 

 

「さらには、確かに私達のような能力を使える動植物も発見されていない。本当にそんなものがあるかどうかも分からない。けど、“予測できる”。あらゆる現実を完全に再現する究極のシュミレートマシンを使えば、現在この世界でまだ発見されていない可能性も一万年後の生物の進化経過も、その全てを完璧に見せてくれる」

 

 

しかし、次には歪む。

 

憎悪に。

 

 

 

「でも、それを彼女達に台無しにされた」

 

 

 

憎んでいる。

 

負けて敗北者になったなお、捨てきれない願望。

 

黒子はそれに圧倒される。

 

 

「でもね、まだ他の可能性はあるの」

 

 

しかし、それも一瞬の事で。

 

すぐに余裕の笑みに切り替わる。

 

 

「木山春生って、知ってるわよね。あなた達が関わった幻想御手事件の首謀者。あれに使われていた<幻想御手(レベルアッパー)>の本来の目的は、複数の人間の脳を『一つの巨大な脳』に束ねて、高度な演算を可能にさせるネットワークを作り出すこと。それが一万も集まったのなら、その演算能力は<樹形図の設計者>の代わりにもなる」

 

 

「あなた、まさか、そのためにまた<幻想御手>を! それでどれほどの人間が犠牲になったか―――っ!?」

 

 

「そんなことしないわよ。する必要はない。―――だって、もう“ある”もの。木山春生が人間の脳を使った演算機器という発想に至った『原型』が。その『核』をある一人の少女が独占してるのよ」

 

 

 

 

 

道中

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ―――」

 

 

逃げる逃げる逃げる。

 

先程から髪を束ねる髪飾りが背中に触れさせることなく、風を切って柳髪を靡かせ、狭い路地裏を駆け巡る。

 

<警備員>に体験入団した事があったので、その音の周波数や携帯電波での位置特定など色々と知っているが、まさかこんなにも早く見つかるとは……

 

事件解決に乗り出してからの展開が速すぎる。

 

これでは、事件が起きたから自分を捕まえようとしているのではなく、まるで自分を捕まえるために事件の容疑者にしたようではないか。

 

それに、<風紀委員>の応援が無い事も気になる。

 

大抵、学生の問題にはサポートに着くはず。

 

考えれば、追いかけてくるのもどこか正規の<警備員>とは違う。

 

 

(<調色板(パレット)>には、時間制限がある。昨日から一度も充電してないから、なるべく節約しないと。逃げるだけなら自分の足でも十分)

 

 

でも、これでは、結標淡希を追い掛けるどころの話ではない。

 

事態は一刻も争うと言うのに。

 

 

「見つけたぞ!」

 

 

躊躇いなく銃器をこちらに向けるそれは、明らかに<警備員>のそれじゃない。

 

このままでは捕まってしまう。

 

人混みに紛れようが、彼らなら一般学生を巻き込もうと発砲しかねない。

 

 

 

「―――先輩! 伏せて!」

 

 

 

その時、上条詩歌は聞き覚えのない声、だけど、その調子には覚えがある叫びが耳に届いた。

 

伏せた詩歌の頭上で、狩人達に向かって、銃声の瀑布がわたった。

 

こちらも正規の治安維持に必要な装備とは格の違う集団。

 

陣形が崩され、生じた隙に、再び声が、

 

 

「早く乗ってちょうだい! これじゃ、デカブツの相手なんてできないんだからぁ!」

 

 

振り向けば、そこにはワンボックスカーの開け放たれたサイドドアから手を伸ばす大人の男性。

 

けど、その目には―――

 

 

「……ふふふ……何だあなたでしたか。声でおやっと思いましたが、その瞳は見間違いできようがないです」

 

 

「はい♪ あなたの後輩の食蜂操祈でぇーす☆ 詩歌先輩、助けに来ましたよぉ~」

 

 

大のむさくるしい野郎が野太い声で、きゃるんと決めポーズをとるのは結構精神的にクルものがあるが、こんな非常時にそのおふざけは間違いない。

 

 

「そうですか。それは助かります。色々と聞きたい事はありますが、ちょうど誰かに助けて欲しかった所ですから、ありがとうございます」

 

 

もう一台。

 

ワンボックスカーの形をした<迎電部隊>の特殊装甲車が、盾となるように割り込んだ。

 

周囲に銃声が響き渡り、勢い良く排夾された薬莢が落下する音が聞こえる。

 

しかし、その振動と衝撃は車が壁となっているので詩歌には届かない。

 

 

「さあ、早く!」

 

 

「本当、頼りになりますね、ウチの後輩は」

 

 

「うふふっ、でしたら、一番乗りしたご褒美に、今ここで良く出来ましたと頭を撫でてもらっても良いですよぉ~♪」

 

 

「それはやめておきましょう。中身が操祈さんとはいえ、おっさんの頭を撫でるなんて流石の詩歌さんも痛いです」

 

 

詩歌を救出した女王に支配された<迎電部隊>はすぐさま出発。

 

だが、そう易々と逃がす『狩人』ではなく、広い道に出れば、『グリーンマーブル』駆動鎧部隊の出番だ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『おい、まだガキ一匹捕まえられねーなんて、冗談だろう?』

 

 

『い、いえ、<迎電部隊>が妨害に入り、獲物(ターゲット)を回収されました』

 

 

『何、奴らが……! まさかこちらへの当て付けか―――だとしても、実験動物(モルモット)を横取りする真似なんてしないはず』

 

 

『しかし、本物です。どうしますか? ―――』

 

 

『決まってんだろ。追え。邪魔ものは皆ぶっ殺してでも捕まえろ! <警備員>の動きも活発になってきている。出来るだけ早く確保しろ。―――『ピュアブラック』。後方支援からターゲット狙撃に入れ。多少実験動物に傷がついても構わん』

 

 

『了解』

 

 

 

 

 

 

 

「………とりあえず、行先はそこでお願いです」

 

 

「はい、りょうか~い」

 

 

追手はなく、道路も空いている。

 

このままなら逃げ切れる。

 

 

「にしても、まさか、操祈さんまで関わってくるとは思いませんでした」

 

 

「それは、今、詩歌先輩にいなくなってもらっちゃ困るんですよぉ。それに私も寂しいですしぃ」

 

 

「はいはい。では、なるべく人のいないルートで」

 

 

「えぇ~」

 

 

「あれは私たちがどこにいようと撃ってくるような輩です。このまま繁華街へ突入となったら大惨事です」

 

 

「分かりましたよぉ~」

 

 

「そうぶうたれない。指示(ナビ)は私がしますから」

 

 

「りょうか~い。もぉ、こういう時も詩歌先輩はスパルタ力全開ですねぇ♪」

 

 

学園都市を歩き回り、何か困っている人間の助けをしている詩歌は、このあたりの地理なら詳細に把握している。

 

道路の混雑状態や信号の繋がりなどの一刻一刻と変化する環境情報さえも計算し、リアルタイムでルートを指示していく。

 

 

「……どうやら、後ろに来たようです」

 

 

数機。

 

迷彩色の駆動鎧が追いついてきた。

 

流石にこのまま逃げ切れるなんてのは高望みだったか。

 

まあ、こちらも不幸に関する経験値には自信がある。

 

伊達に愚兄との付き合いは長くない。

 

背後から聞こえてくる機械の作動音を耳にしながら、バックミラーから良く観察する。

 

夏休み、武装無能力者事件で見て、その仕組みは理解している。

 

駆動鎧が使っているのは新型の駆動補助装置。

 

どんな場所でも、その場で学習し、最も効率的なパフォーマンスを叩き出すように自動調節するドライバ。

 

これなら例え南極のブリザードだろうが熱帯のジャングルだろうが、機械が周辺環境を走査し自動的に調整を行うため、環境に性能が左右されない。

 

しかも、その自動調節機能は同型機で起動中は全機へ情報が送受信されている。

 

おそらくこの街の動き方を一番よく知っているに違いない。

 

また、二足自立機能特有のバランスに弱いという弱点も克服しているので、悪路でも止まらないだろう。

 

可能な限り遮蔽物によって射線から逃れるように入り組んだ曲がり角を選び、細かい移動を繰り返すよう指示を出しながら、<調色板>のヘッドフォンを装着。

 

 

(一発ぐらいなら、問題はないですね)

 

 

あらゆる環境にリアルタイムで自動対応する駆動鎧は自動車のよりも早く、人間よりも柔らかく地面を踏み締めながら追いかけてくる。

 

このままだとチェックメイト。

 

けれども、女王と聖母は、まるでこの前の紅白戦のようなノリで会話する。

 

 

「どうすんですかぁ? このままじゃ捕まってハチの巣ですよぉ」

 

 

「まあまあ、先輩を信じなさい」

 

 

詩歌は窓を開けるとそこから身を乗り出す。

 

残暑の熱気を伴う風がざぁっと室内に入ってきた。

 

そして、悪路にガクンガクンと揺られながらも、平然と微笑みながら手を振る。

 

その様子は余裕どころか、……そんな無骨な車に乗るのが似合わないほどに、優雅で洗練された気品を感じさせる。

 

呆ける『グリーンマーブル』に、詩歌はその動きを読み取る。

 

挙動を予測し、当てるのではなく、その場所に突っ込ませるような位置に狙いをつけ、

 

 

「混成、<浅葱>」

 

 

掌から唐突に水の長槍が生まれ、それが勢いよく駆動鎧へ突き刺さり、その巨体を一気に後ろへ吹き飛ばした。

 

それでお終い。

 

詩歌は車内へ戻り、<調色板>を外す。

 

駆動鎧はまだいる。

 

威嚇攻撃されたのも何事もなかったように復帰している。

 

能力者からの反撃など慣れているし、この装甲は前の重厚なものではないが、それでも対戦車ミサイルぐらいは真正面から受け止められる。

 

 

「ひょっとしてこれってピンチですかぁ? 私、ガラクタの相手苦手ですし、そもそもこの身体じゃ天才力を発揮できませんよぉ」

 

 

「ええ、ピンチです」

 

 

そして、その機関銃を取り付けた腕を持ち上げ、狙いを―――

 

 

 

「彼らの、ね」

 

 

 

上条詩歌が歌うように囁いた途端、『グリーンマーブル』に変化が起きた。

 

ガクン、と。

 

急にブレーキがかかり、減速。

 

生身の人間よりも滑らかに動けるはずの駆動鎧が唐突に固まった。

 

 

『―――なっ……』

 

 

『―――どうした! 『グリーンマーブル』』

 

 

『動きません! マシンが急に……くそっ、一体どうなってやがる!』

 

 

慌ててチャックに動作異常の移るも、まるで歯車が詰まったようにギチギチと音を立てるだけで、指先も動かない。

 

 

「精密機器はたった一杯の水で台無しになります」

 

 

軽い調子で説明する。

 

 

「あれには砂漠でも南極でも対応できる新型の駆動補助装置が搭載されてます。それは、機械が自動に環境を調べて自動にメンテナンスを行ってくれるようです。でも、場合によってはそれが足枷にもなります。例えば特定の条件が揃ったルートの順番を辿っていくと、自動装置がエラーを起こしてしまうんです。分かりやすく言えば、『右へ曲がる』と『左へ曲がる』、相反する条件を一度に入力すると判断能力が低下してしまうセキュリティホールというやつです。あの機体は、まだ開発されたばかりの試作機だってことです」

 

 

おまけに、同型機は全て情報をリンクしているため、一機の故障が全体に影響を与えてしまう。

 

10人11脚で、1人がこければ、全員が転んでしまうのと同じだ。

 

 

「これで最低でも10分は動けないはずです」

 

 

「そんな事良く知ってますねぇ、詩歌先輩」

 

 

「ふふふ、以前、ちょっと壊した(触った)事がありますので」

 

 

その様子は普段のと変わりなく、食蜂操祈は改めて、上条詩歌の黒さを確認した。

 

そうして、大通りに出て目的地へ真っ直ぐ―――とその時、並走していた壁役の車両が、

 

 

 

―――ドゴンッ!

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

数回息を整えて、止め、狙いをつけた標的に、『ピュアブラック』は心静かに、暗夜に霜が降りるが如く粛々と引き金を引く。

 

 

『―――ショット』

 

 

オレンジ色の炎の閃光が噴き出ると同時、銃口から高速弾が射出される。

 

飛翔する弾丸は、たとえ防弾使用の特装車であっても、障子紙のように簡単に装甲を突き破る。

 

着弾した弾丸は、ボックスカーのエンジン中枢を容易く貫き、水冷用の溢れだした冷却水がエンジン熱で蒸発して白煙を上げる頃には、完全に破壊され、瞬間的に動力源を断たれた乗り物は停止した。

 

噴出した白煙は視界を奪い、そして、対象の(ボックスカー)を折って間髪入れずに、弾丸ではなく、矢杭を装填。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「先輩、どうするんですかぁ? 何だか狙われてる気がするんですけどぉ~」

 

 

「ふぅ、では、ここは頼もしい後輩に任せてみましょうか?」

 

 

「えー、いきなりのご指名ですかぁ♪ 詩歌先輩って、先輩力高いですよぉ~。でもぉ~、いくら私であっても、無理なものは無理です☆ まぁ~、天才力を発揮できれば不可能はないけどぉ、苦手な事はあるのよねぇ……」

 

 

「操祈さん、→→↓A←←B↑↑↓!」

 

 

「無理ですぅ、不可能なことありましたぁ! 詩歌先輩の要求力高すぎよぉっ!!」

 

 

食蜂は確かにリモコンによるコマンド入力で<心理掌握>を発動させている訳だが、そんな格闘ゲームの裏コマンド的なものは出来ない。

 

できるはずがない。

 

決して、車体が変形してロボットになったりしない。

 

 

「―――でも、まあ、止める事ができないという訳じゃないのよねぇ~、うふふぅ~……頼られちゃったら、仕方ないわよねぇ~♪」

 

 

そんな不敵な笑みを頬に張り付かせつつ(そんな仕草をしても外見はおっさんなので、詩歌は<御使堕し(エンゼルフォール)>の時を思い出した)、<迎電部隊>の装備品の中からゴロゴロと取り出したのは小さなパイナップル―――手榴弾、

 

 

「じゃなくて、これはスタングレネード。非殺傷型のねぇ」

 

 

恐らく、こけおどし程度の効果は出るだろう。

 

ピンを抜くと窓から放り投げた。

 

 

「爆発しますよぉー! 見ないように目を庇ってくださーい! ―――えいっ!」

 

 

路面を転がり、『ピュアブラック』の眼前で強烈な閃光を炸裂。

 

操縦手が覗きこんでいた照準用の光学センサーは一瞬にして真っ白になり、眼球に白い影を焼きつけた。

 

 

 

が、

 

 

 

「あー、やっぱり自立走行機能がありましたかぁ」

 

 

「そーいうの先に行ってくださいよぉ! おかげで私が自信満々でやって恥ずかしいじゃないですかぁ!」

 

 

「いえ、良い線言ってると思ったのですが残念―――と、左!!」

 

 

後部から身を乗り出して慌ててハンドルを切る。

 

パンッ! とサイドミラーが破裂。

 

あの状況からでも正確にこちらを撃ち抜こうとするその技量。

 

このままだと時間の問題だ。

 

詩歌は振り向き、後ろの『ピュアブラック』の様子を―――と、

 

 

「あれは……まさか―――」

 

 

その時、後方から紅一点が視界に入った。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「―――元々ここは江戸の町。火事と喧嘩にゃ尽きないねぇ、全く」

 

 

遠く、<風紀委員>のオペレーター初春飾利によるハッキング信号操作で封鎖された道路に自動二輪が、戦場に突っ込んできた。

 

フルフェイスのマスク、身体に完全にフィットするライダースーツ、それら全てが真っ赤な格好の少女の凶眼が射抜く。

 

 

何だコイツはと、一人を除いて誰もが拍子抜けした。

 

 

だが、その機体の赤色から滲み出るように炎が現れ、道路一帯の温度が常夏のように急浮上した途端、誰もが自然と息を呑んだ。

 

紅蓮を曳いて滑走する暴君の瞳が、その『MAR』を捉えた―――瞬間、鼓啓瑚孝は無意識に身を捻った

 

 

「なっ―――」

 

 

痛覚が無い駆動鎧の代わりに悲鳴を上げるように爆音が生じ、狙撃砲とは逆の腕が腐り落ちるように、『MAR』と書かれた肩ごと道路に落下した。

 

観測したあらゆるものを焼滅するこの能力者は<鬼火>と呼ばれる。

 

敵も味方も無差別に食いつくす戦場の悪夢を、武装無能力者事件で対能力者に特化した部隊である『MAR』すらも思い知らされていた。

 

 

『あれは、<赤鬼>……!?』

 

 

『ピュアブラック』に動揺が生まれる。

 

今回、彼らの装備は緊急に用意した軽装備で、重装甲でさえも破壊した<超電磁砲>よりも攻撃力のある彼女の前では役立たずだ。

 

 

 

「―――さて、前にもアンタらのトコにウチの馬鹿どもがお世話になってたようだけど。まさか、今度は親友(ダチ)を実験動物にしようとしてんじゃねぇだろうな!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

<鬼火>。

 

それは、『MAR』でも、暴走の危険性のある能力者のブラックリストの中に記載されている危険な悪だ。

 

先程のあのスタングレネードが精々という事は、もう向こうに攻撃手段はない。

 

だとするなら、今の優先順位は、後顧の憂いを断つ事だ。

 

 

『『ピュアブラック』、自立追跡モード―――及び反転』

 

 

ぐるん、と上半身部分が180度旋回し、狙撃銃を後方に構える。

 

 

『―――ショット』

 

 

若干の溜めのいる<物質感応>を省き、自分で狙いをつけて狙撃砲を放っていく。

 

それを赤い機体は、何と銃弾を回避し―――たが、カットで余計に曲がり走らされ、距離が離れていく。

 

 

「くそっ……このままじゃ……!」

 

 

卓越した狙撃手に対して有効な手段は、接近してからの白兵戦。

 

しかし、この現状で『ピュアブラック』に気づかれないように近づくのは不可能。

 

対応する前に、超スピードをもって視界に入れようにも、向こうもそれに気づき、高速で後方へ下がっていく。

 

 

「ちっ!」

 

 

強く、敵のいるはずの先を凝視する。

 

以前、奴らに喧嘩を売った事があるから、きっと向こうもこちらの<鬼火>は調べ上げているだろう。

 

しかし、<鬼火>の爆破加速については知らない。

 

問題はタイミングだ。

 

先に加速してもハンドルを切っても、同時では危うい。

 

陽菜自身が矢となる以上、もし絶好の隙を見せれば『ピュアブラック』が<能力封じ>を放たれ、避けても<物体感応>により修正されてしまう。

 

故に、この<鷹の目>が捉えた瞬間、0.1秒の時間が勝負だ。

 

一撃を放ち、次弾を装填する前に、一気に蹴りをつける。

 

 

『……』

 

 

しかし、無理に一発勝負に付き合う必要はない。

 

周囲の建造物を撃ち抜き、瓦礫で道を封鎖。

 

これでは近づこうにも近づけない。

 

 

「く……ッ! ちょ、掠り傷でもつけたら弁償なんだぞ!」

 

 

瓦礫が雨あられと降り注ぐ先は、当然、後続する陽菜の頭上である。

 

直撃は無論のこと、今の装甲スピードならば掠めてハンドルを取られただけでも、間違いなく事故に繋がる。

 

減速は―――ありえない。

 

元より、退がってやり過ごそうという性質ではない。

 

選ぶ活路は、突破あるのみ。

 

覚悟を決めた陽菜は、臆することなく、降り注ぐ障害物の真っ只中へと突っ込んだ。

 

雪崩落ちては路面で跳ね返り乱舞する降下物。

 

その紙一重の間隙を、<鷹の目>は見抜き、蛇の如く軌跡を捻りながらすり抜ける。

 

 

(ここだ―――っ!!)

 

 

鬼塚陽菜の野生染みた直感が、絶好の勝機を予感する。

 

眼前に崩落した、ひときわ巨大なコンクリートの塊。

 

それはまるで俄か仕立ての傾斜路。

 

悲鳴の如き軋みを上げて、その上を駆け抜け、車体を虚空へと打ち上げる。

 

重力の軛すら蹴り落とし、宙高く―――跳躍して獲物に襲い掛かる肉食獣を、狩人は見た。

 

 

(ここ―――っ!!)

 

 

狩人はいついかなる時も機械のように冷静でなくてはならない。

 

喉元に牙を突き立てられても、その脳天を打ち抜けば、こちらの勝ちだ。

 

『ピュアブラック』のカメラが、鋭く光り、獲物を捉えた。

 

これは鼓啓にとってのチェックメイトではない。

 

逆だ。

 

鬼塚陽菜は失手した。

 

障害を跳躍した回避したが―――機動力を失う空中で、無防備に腹を晒してしまった。

 

これが狩人の絶好の好機でなくて何とする。

 

 

『―――ショット』

 

 

今度こそ標的を射ると大気を滑る<能力封じ>。

 

避けようにも、<物体感応>により直前まで軌道修正し続けるそれは直撃―――かと思いきや躱された!?

 

紙一重で。

 

 

(なっ、馬鹿な―――)

 

 

上空で、ぐるりと視界が回る。

 

スピードはそのまま、車体が縦回転する。

 

最大速度で滑空しながら、バイクの前輪部分だけがでんぐり返しして上方向に向いた。

 

 

(バックフリップ―――っ?)

 

 

スポーツバイクのエクストリームスポーツ――フリースタイルモトクロスで、バックフリップと呼ばれた極限の曲芸後方宙返り。

 

最近まで、バイクでは実現不可能と言われた高難易度の業を、能力による補助と、大型二輪を駆る陽菜の凄まじい技量の凄まじさで、前人未到の三回転。

 

その大胆さに呆気に取られながら、鼓啓瑚孝は見た。

 

 

(笑ってる、だと……)

 

 

鬼の眼を。

 

凄まじい機動の中、あと数cmで射抜かれたのにもかかわらず、爛々と光る鬼塚陽菜の双眸が、さらに輝きを増すのを。

 

戦闘では、極力感情を無にする己とは対極の反応。

 

 

「余所見運転は危険ですよ」

 

 

ガン! と鼓啓は前のめりにつんのめった。

 

見れば前方カメラ―――つまりは、彼の後方直前にワンボックスカーが。

 

 

(しまった―――!)

 

 

追われているはずの車両が減速ブレーキし、こちらの邪魔をした。

 

<物質感応>の性質上、使えばどうしても本体に隙ができてしまう。

 

その為に機体でカバーしていたのだが、自立運転を信頼しすぎて、またあの自分の渾身の射撃を避けた曲芸に気を取られ、前方の接近に気付かず、衝突回避支援システム――緊急ブレーキが作動してしまったのだ。

 

 

「これで懲りたんなら、もう二度とウチの周りの人間に手を出すんじゃないよ」

 

 

そして、陽菜はそのまま道路に熱流で一瞬浮かして、細心の注意で柔らかく着地すると―――ブレーキ。

 

反動でバイクから飛んだ陽菜の身体が、ぴたり『ピュアブラック』の真上数十cmへ出現。

 

 

『なっ……』

 

 

頭上のカメラを見た鼓啓が、大きく喉を鳴らす。

 

 

『……貴様は……! なんという……』

 

 

そして、そのカメラへ、陽菜は高々と、これまで容赦なく相手を打ち崩してきた拳を振り上げ―――

 

 

「爆ぜろ!」

 

 

装甲を突き破った刹那、『ピュアブラック』は爆発した。

 

 

 

つづく

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