とある愚兄賢妹の物語 作:夜草
閑話 水着撮影会
撮影スタジオ
約一名、退場したものの水着のモデル撮影が始まった(その原因はあまり人には言えない。でも、愚兄は妹の女子校の学園生活が激しく心配になった)。
始まった、と言っても、撮影は全て人ではなく、機械が行い。
モデルのように決まったポーズを撮りたいのではなく、なるべく自然体の様子が欲しいので、自由に動いても良いとの事(約一名、カメラマンがいないのに張り切ってポーズを取る者もいるが)。
他は、固法美偉はハンモックで日頃の<風紀委員>の仕事の疲れを癒すように休んでおり、元気があり余っている子達は、美琴、佐天、初春対インデックス、湾内、泡浮とチーム分けしてビーチバレーで遊んでいる。
そして、この中で唯一の男子である上条当麻には、
「分かっているかと思いますが、一応、念のために言っておきます。当麻さん、見るだけなら良いですけど、触るのはダメですからね。まあ、当麻さんが1人の男であることは私も重々承知しています。だから、私が一肌を脱ぎましょう! もし我慢できなくなれば、私のを代わりに触っても良いですよ」
と、注意事項が――――
「ねぇよっ!! お前がそこまで体を張る必要はこれっぽっちもねぇよっ!! 当麻さんは、そんな飢えた狼野郎じゃありません事よ!!」
「まあまあ、落ち着いてください。現実的に考えて、女の子の胸を揉んでも良いなんて、そうそうあるようなものじゃないですよ。据え膳を喰わねば男の恥とも言いますし。それに、ほら、知ってます? 私のおっぱい、結構大きいんです」
そう言うと、水着になり、解放されたその凶暴なまでに存在感を放つふくらみをアピールするようにむぎゅ、と両手で下から掬い上げる。
でも、
「知ってるよ! 知ってるけどな! 俺は男だけど、お前の兄でもあるだろうがっ!! 俺は妹に手を出すような変態野郎じゃねぇんだよっ!!」
水着を押し上げるLevel5級の豊かな胸も、
中学生にしては出来過ぎなくらいにくびれた腰も、
張りのあるお尻も柔らかなそうな太股も、
内はしなやか筋肉が発達しているおり、外は眩し過ぎるほど一点の曇りのない肌はみんな優しく心地良い丸みを帯びている。
強い陽光をいろんな角度で照り返し、胸の下や谷間に影がハッキリと落ちる。
急場凌ぎの為、デザインが無く梔子色のビキニ水着だが、着る人が着れば、どんなに見ても飽きが来ない。
特にむぎゅむぎゅ、と揺れる胸のあたりが目に入って、男として無上の幸せを覚えた。
しかし、彼女は血の繋がった正真正銘の妹。
隣人の嘘吐き陰陽師は、血は繋がってはいないが義妹に手を出しているシスコン軍曹なのだけれど、上条当麻は変態野郎ではない。
「今日限定ですよ? 日頃、頑張っている当麻さんへ詩歌さんからの今日限定のささやかなサービスですよ?」
ぷるんとした唇に人差し指を当てて、それだけで一目惚れさせるような柔和な微笑みを浮かべながら、物分かりの悪い生徒に丁寧に常識というのを教えるように悟りかける。
しかし残念ながら、今、世間一般的な常識からズレているのはそちらの方である。
「いらん!! っつか、もう撮影が始まってんだぞ! そんな所を撮られたら、水着モデルどころの話じゃなくなるだろうが!!」
今でも水着モデル撮影ではなく、グラビア撮影になりかけているというのに、そんな事すればR18規制がかかる。
愚兄は、そのような事態を防ぐために保護者としてここへ来たのだ。
いくら愚兄でも、ミイラ取りがミイラになったなんて真似はしない。
「ああ、そう言う事ですか。全く、当麻さんはシャイですね。でも、大丈夫。今日限定ですから、撮影が終わってからでも、お家に帰ってからでも有効ですよ」
「お兄ちゃんは、見られたら恥ずかしいとかそんな事を言ってんじゃなくて! 兄妹としての常識をだな……」
「常識なんて幻想、この右手でぶち殺す!」
「俺の台詞をそんな事に使うな!!」
と、仲良く(妹が兄で)遊んでいる。
人見知りという訳ではないが、会っていきなり、水着姿の美少女達と遊ぶのは当麻にとって中々ハードルが高く、正直、眺めているだけでもお腹がいっぱいである。
そんな訳で保護者的な立場で見守っていた詩歌とお喋りに講じていた訳なのだが、ひょっとするとこちらの方が精神的疲労が大きいのかもしれない。
水着になって身体だけでなく、精神も解放されたのか、何だか機嫌が良いというか、ハイテンションである。
「ふふっ、じゃあ、私のお願いを聞いてください」
「何だ? 変な事じゃねーだろうな。これ以上のボケは勘弁してくれよ」
「大丈夫です。妹から紳士で信頼できる(ヘタレ)兄へのお願いですから。それに、妹を甘やかすのも兄の立派な仕事ですよ」
何か途中でぼそっと言われたような気がするが、詩歌の言う事には一理あるかもしれない。
「分かった。俺ができる範囲でならいいぞ」
「ありがとうございます。それでは、これをお願いできます?」
言質を取ると、ツッコミ疲れではぁはぁ、息を切らしている当麻に、詩歌は小さな小瓶を差し出す。
「これってもしかして……」
「はい、日焼け止め用のオイルです」
やっぱりそうか。
南国の海の定番品である。
「……ん? これがお願いって事は、まさか」
「……塗って、いただけませんか?」
(……そうきたか。薄々は予感してたが、まさか本当にそう来るとは……)
「あのなぁ、当麻さんは男な訳で。こういうのは、他の人にやってもらった方が」
「でも、固法さんはお休みのようですし、婚后さんも何だか忙しそうです。あとの皆さんも遊び始めている訳ですし」
確かに、この場で手が空いてそうなのは当麻ぐらいのものだ。
「とりあえず、手の届く範囲は自分でやったのですが、私だけ、1人で着替える事になってしまったので……それに、肌が弱いという訳じゃないですけど、予想以上に日差しがきつくて……」
これが科学の最先端技術が生み出した幻想である事は分かっているが、質感もあり、降り注ぐ太陽の日差しも本物に近い。
「ですから、“信頼”のできる“兄”に塗っていただきたくて」
何故だろうか。
先程のやり取りがボディブローのように地味に効いてきたような気がする。
ここまでお願いされて断れば、妹を1人の女の子だと見ている土御門と同じに……
「詩歌さんは平気ですよ。“妹”なわけですし、たとえ異性でも“兄”である当麻さんになら、どれだけ触られても構いません。もちろん、当麻さんも同じですよね?」
「そ、そうか……」
受け取り方が困るような気がしない訳でもないが、
チェスでいえば、チェックメイト。
将棋でいえば、王手。
と、見事に逃げ場を封じられて決められている訳で。
……仕方がない。
兄として、妹の瑞々しい柔肌に、日焼けの痕を付けさせるわけにはいかないし、一肌脱ぐとしよう。
「分かった。それじゃあ、そこに寝転がってくれ」
「はい、お願いします」
笑顔で頷くと詩歌は砂浜に敷いたシートに伏せて、水着の紐を解いて―――
「お、おう」
無防備にその背中を晒す。
きっとそれは当麻に対する詩歌からの信頼の証なのだろう。
しかし、体に潰されてむにゅりと形を歪めたその大きな胸が、脇の下から見えており、うつ伏せになったせいかしっかりと発育したお尻が主張してくるので……視線の置き場が悩ましい。
このままだと、………まずい。
説明書きにあったように、サンオイルを手に馴染ませるように温めながら、目を瞑り、
(無だ! 無我の境地だ! 今こそ悟りを開くんだ! 上条当麻! 無無無無無無無無無無無――――)
「あの……あまり焦らさないでください。さっきはああ言いましたけど、やっぱりその、恥ずかしいので……////」
ピキッ―――と停止。
本気か演技かは分からないが、いつも泰然自若な少女が、不意に恥ずかしがり、しおらしい態度をとると、『不良が雨の日に捨て猫を拾う』みたいに、そのギャップの破壊力にグラッとくる。
だが、ここで止まる訳にも、逃げる訳にもいかないので、
「ぐおおおぉぉっ!! その幻想をぶち殺すッッ!!!」
感情を必死に押し殺しながら、その背に触れる。
もうこれは早く終わらせるしかない。
肩甲骨をなぞるようにして、きめ細かい肌へとオイルを擦り込む。
「やんっ……当麻さっ――お兄ちゃ、駄目。もっと、ゆっくり。お、落ち着いてっ!?」
詩歌が慌てたように焦り出すがもう遅く、今の当麻の頭の中には『早く、目覚める前に、終わらせる』としかない。
なので、より一層激しく――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3対3のほのぼのとしたビーチバレー。
になるはずだったのだが、美琴とインデックスの、『絶対にコイツには負けられない』と負けず嫌い精神に周りのチームメイトも引っ張られて、白熱とした試合になっていった。
タイブレークが続き、今は美琴の番。
あと1点決まれば、この勝負は決まる。
だが、元気はあるが身長も低く、体力も見た目通りなインデックスはさて置き、日頃から水泳で体を鍛えている優等生の泡浮と湾内は、運動能力もそうだが、そのコンビネーションがちょっと侮れない。
「よしっ、ここで決める! ―――ん?」
ジャンピングサーブの体勢で、コートの奥の方にいるインデックスに狙いを見定めて――と、そこで水を差すように、視界の端で何かが映る。
相手コートの奥、ヤシの木など障害物があって、その影に隠れるようにビーチパラソルの下で……抵抗する幼馴染を力任せに屈服させながら、一心不乱に背中を摩っている愚兄の姿が……
―――ブチッ!!
「ア・ン・タってヤツは~~~ッ」
高々とボールを放り投げ、
「詩歌さんに~~~ッ」
大きくラインを無視して超えて、思い切り砂浜を蹴り上げ、
「――――何、セクハラしとんじゃゴラァッ!!」
ネットを突き抜け、強烈な超電磁砲ジャンピングサーブが愚兄の頭上に炸裂した。
パンッとビーチボールの破裂音が響き、そのまま、愚兄は畑の野菜のように、砂浜へ逆さまに顔面から突き刺さった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『あはは、ちょっと日焼け止めを塗ってもらっただけです。でも、当麻さんは初めてで、それで緊張しちゃったんでしょうね。だけど、そんなやましいことなんて一切ありませんよ』
シートでノックダウンしている間、当麻の代わりに詩歌が説明したおかげで、当麻の変態シスコン疑惑は解消された。
と、まだ撮影中でもある為、今度は固法や婚后、医務室から復帰した黒子や復活した当麻も交えて、
「行きますよ、婚后さん! そーっれ!」
「はい! 詩歌様! えいっ!」
「私が行くわ! ……っと!」
「わわっ、こっちにきます!? ええいっ!!」
「おっ、と。はいっ、詩歌さん」
「じゃあ、今度はインデックスさんっ!」
「うん! と、とうま!!」
「まかせろ! ほいっ、御坂!」
海の中をざぶざぶと掻き分けながらのボール遊び。
少し危なっかしいのもいるが、平均すれば軒並み運動能力が高く、全員コントロールが良いので成立している。
ただ、問題としては、と言っても当麻個人の問題なのだが、詩歌、婚后、固法といった発育が素晴らしい面々がボールを跳ね返す度に、その胸に付いている2つのボールも、元気良く弾む事である。
青少年、上条当麻にとっては気が気じゃないのだが、
『ちょっと男の子に慣れてない娘もいるんですよ。ですから、申し訳ないですけど、我慢してください』
と、お願いされてしまった。
温室育ちのように女子校通いのままでは、男性の免疫がつかずに学園の外で色々と困る事になる。
事実、Levelはあるのだが、湾内は過去に<スキルアウト>に恐喝されてしまった事もある。
偶々、近くにいた美琴と詩歌が割って入って、事無きを得たようだが、彼女が最初からちゃんとした対応ができていれば、そういった事態にはならなかっただろう。
という訳で、彼女達の将来の為にも、そして、今更、1人抜け出すのも格好悪いので、抜けるなんてことはできない。
とりあえず、ガン見をしなければ構わないとの許可をもらってはいるので、あの3人以外の子の方へ顔を向けながら、ボールを弾いている。
(ま、でも、この状況って、結構眼福ものだよなぁ。―――っと、注意せねば、今度こそ超電磁砲が飛んでくんぞ!)
気合を入れ、身構えるがボールは泡浮の方へ。
「はい、婚后様」
美琴からのボールを、泡浮はふんわりしたトスを婚后へ上げる。
と、そこで、婚后がフッと笑って、
「お兄様。行きますわよ!」
パン、とスパイク。
それと同時に『噴出点』を設置。
婚后はLevel4の<空力使い>。
どんな物でも飛ばせる事ができ、本気を出せば、成層圏を突き抜ける事ができる。
今はお遊びで加減はしているものの、並のスパイク以上の速さだ。
「うおっ―――」
なるべく元気良く弾む胸を見ないように、婚后から視線を逸らしていた当麻はボールを大きく後ろへ逸らす。
(まずっ。確かこれって……)
このボール遊び、最後に落した人がその前に触った人の言う事を出来る範囲で聞く罰ゲーム付きである。
あまり変な命令は来ないと信じてはいるが、あのエカリテリーナちゃんという大蛇の存在が不気味である。
「お任せください、お兄さん」
と、高々と飛んでいるボールが頭上に通りかかろうとした時、佐天が足元に『噴出点』を設置して、舞い上がる。
佐天もまた<空力使い>。
そして、彼女の場合は<風力使い>の素質も混じっており、圧縮に特化してはいるが、今では数秒程度なら宙を飛ぶ事ができる。
ボールの高さまで飛ぶと、自分のターゲットである初春へボールを落とす。
「うーいはるーんっ! これ落としたら後でスカートを捲らせてねー!」
「わわっ、佐天さん!? 何を―――きゃ!?」
初春は<風紀委員>ではあるがデスクワークが本業で、運動神経は皆無。
何とかレジーブしたものの遠くへボールを飛ばしてしまい―――
「白井さんっ! 助けてくださいっ!」
「仕方ないですわねぇ」
やれやれ、と同僚からの頼みに肩を竦めながらも、<空間移動>で弾かれたボールの先へ回り込んで、
「お姉様っ! 黒子の気持ちを受け止めて下さいまし! そして、わたくしに隅々までサンオイルを―――」
己のピンク色の欲望を乗せて美琴の方へボールを弾き飛ばす。
「塗らせる訳が無いでしょうがっ! っつか、変な事言ってくんじゃないわよ!」
だが、その想いはボールと共に叩き落される。
そして、今度は真っ直ぐインデックスへ。
インデックスは反応できず、肩にボールを当ててしまい、
「うわっ! しいか、お願い!!」
「はいっ、インデックスさん」
だが、予め予測していた詩歌がすでにそこへ駈け込んでいて、レシーブ。
膝を使って、ふわり、とその勢いを見事に殺し、
「湾内さん!」
「はい! 詩歌様」
そして、湾内は優しくボールを泡浮の方へ―――
「―――油断大敵よ。上条君」
だが、その間にいた固法に割り込まれて、視線を合わせぬように他所を見ていた当麻に、ぷるんと胸の大きな膨らみを弾ませながら、身軽な動きで鋭いスパイクを決める。
しかし、ここで上条当麻の神業的緊急回避が光る。
「うおっ―――」
視界の端で捉えてすぐに、身を捻って、1つに固めた両手でレシーブではなく、バットを振るうようにボールを打ち返す。
そのまま返される固法へ返される打球は、まさにピッチャー返し。
固法は反応できず、そのボールを真正面、その大きな胸で受け止め―――
「え―――?」
―――と。
まるで一陣の風でも吹き抜けたように、固法の胸の辺りが不意に涼しくなる。
そして、当麻の真正面で、たった今まで固法の豊かな乳房を包んでいたはずの薄布がスローモーションのように、はらりと肌から舞い落ち……
……おずおずと、視線を落として、固法は、そのまま声にならない悲鳴を上げた。
「~~~~っっっっ!!!!???」
反射的に、固法は露わになった胸を両腕で隠して、転がるようにスタジオの外へ駈け込んで行ってしまった。
一方、突然のハプニング映像に固まってしまった当麻はと言うと、
「フフ、フフフフ」
はっ、と這いよる危険に振り向くとそこに、恐妹と化した詩歌がその右腕を構えており、
「美琴さん。常盤台中学、古伝、行きます」
「はい、あれですね。詩歌さん」
そして、当麻を挟んでその延長線上の背後に、同じように美琴が詩歌とは左右対称に右腕を構えていた。
既視感。
そうこれは、あのわだつみで喰らった神裂とのツープラント。
臨死体験間違い無しのクロスボンバー。
しかも、今回は、あの時のように即席タッグが放つのではなく、長年の幼馴染同士という熟練タッグ。
息の合いようが格段に違い、少しもブレなく完全に同調している。
尋常ではない悪寒が当麻を襲った瞬間、2人の右腕から強力な電磁波が放出され、当麻の首を中心に繋がり………
「「常盤台中学、古伝『電磁双砕クロスボンバー』!!」」
逃げる暇なく、詩歌の出す-の磁力と美琴の出す+の磁力が凄まじい勢いで引かれ合い――――
ドグワシャャアアアアァァッッ!!!!
音が世界を震撼させる。
常盤台中学古伝、『電磁双砕クロスボンバー』。
これは昔の高レベルの発電系能力者の常盤台の完璧お嬢様の2人が編み出したとされ、古くから伝わる常盤台中学伝説の秘奥義。
其々の腕に、電磁波の+と-を集中させ、その引き合う力によって相手を文字通り挟み打ちし、その壮絶な破壊力を以て、相手の直前の記憶を完全に抹消する。
姉妹のような2人の息の合い方もさることながら、Level5序列第3位で学園都市最強の電撃使い、<超電磁砲>の御坂美琴とそれを投影した<幻想投影>の上条詩歌は、その必殺技のこの上ない至上の継承者。
もし本気でやれば、その記憶ごと当麻の頭は抹消されている。
こうして、上条当麻はボール遊びの直前まで記憶が吹っ飛び、何故、意識を失ったかも分からぬまま撃沈した
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え、っと、大丈夫なの? お兄さん」
「ええ、固法さん、ご安心ください。生かさず殺さず、完全に直前の記憶を抹消しましたから」
水着を直し、担当者に問題の写真をチェックしながら完全に消去してから、戻ってみると、そこには、陸に打ち上げられた魚のようにピクピク動く当麻の姿が…
(彼、ひょっとするとあの人以上に鍛えられてそうだったけど、それが一撃で……)
逆に申し訳なくなってきた。
だが、こういうのを見慣れている詩歌、それにインデックスや美琴は、この後5分もしない内に復活するのは分かっている。
そもそも、ここに来た時の首狩りも、美琴の超電磁砲スパイクも、愚兄はすぐに目覚めて、ピンピンしている。
あの回復力は、お仕置きで鍛えられ過ぎて、もしかすると土御門の<肉体再生>よりも上なのかもしれない。
と、そのとき――――
???
「……ん? と、ここは……」
目が覚めたらそこは、吹雪が荒れ狂う極寒の世界だった。
「え~っと、『トンネルを抜けたら、そこは雪国でした』なんてオチは勘弁……。――――じゃねーよっ!!」
寒過ぎるッ!!
海パン一枚で、氷河の上は厳し過ぎるッ!!
南国から南極に。
一文字違うだけでも環境は大違いだよ!
死ぬ!! 本気で死ぬ!!
ちょっと待て!?
そもそも何でこんな所にいるんだ!?
さっきまで、確か……………
「思い出せん」
何か、この寒さのせいなのかもしれないが、妙に記憶が朧気だ。
ボール遊びをするって、話になってそれから、プツンって映像が途切れていて……ただ、
「ものすっごくキツいモンを喰らったような気がする」
気になるのか、首元に触れた瞬間、
「あっつうううっっっ!!!」
今度はいきなり砂漠に。
地面に触れただけで火傷するほど熱く、降り注ぐ日差しは体内の水分が蒸発するほど暑い
さっきまで寒い寒いと文句言っていたが、だからと言ってこんな異常な暑さまで求めてない!!
「み、水、水ぅぅ……!」
と、次の瞬間には、
「うぉぉぉぉぉーっ!?」
滝にでも打たれたかのように頭上から降り注ぐ大雨を満身に浴びる。
それだけではない。
ここは船上。
荒れに荒れる大嵐の海の中を彷徨う船の上。
船体は大きく傾き、受け身の取れないまま、海へ――――
「おにい――――ん!!」
何者かの手にグイッと引っ張られ、ギリギリで帆柱へ手が届いた。
そして、この右手を掴む者の顔を見ようとした時、
「う、宇宙!?」
周囲には無限に広がる星空と、凸凹した巨大なクレーター。
その奥には、青い星、地球が……
ここは月面。
南国→南極→砂漠→大嵐→宇宙。
一体どこの冒険野郎なんだよ。
と、そこで、ようやく……
―――早く起きて、お兄ちゃん―――
上条当麻は夢の世界から目覚めた。
撮影スタジオ
「ん? ……ここは?」
目が覚めると、そこは、陽気な砂浜でも、凍てつく氷河でも、灼熱の砂漠でも、吹き荒ぶ大海原でも、銀河に浮かぶ月面でもなく。
大自然を感じる山林の中にある長閑なキャンプ場であった。
そして、目の前にはテントと、屋根の付いた大きな野外の簡易調理場。
そこで、
「ふんふんふふ~ん♪」
聞き覚えのある鼻歌と共に、料理している少女の姿が。
ナイフを握れば、力を入れているとは思えないのに、分厚い肉や大きめの野菜が鮮やかに切り出され、
その手の中では、鍋がまるで自分の意思を持っているかのように自在に踊り、市販で売られている固形の茶色いルゥを加えると、それだけで食欲をそそる香りが立ち込める。
それから、少し味を見て、一通り揃っている調味料と香辛料をその場でブレンドして加え、何やらアレンジを施していく。
そして、その成果だろう。
安物の市販物だったものが、より鮮烈な、良い香りを纏うようになり、唾液腺をきゅうっと刺激する。
「うわぁ、すごい……」
「流石、詩歌様……」
当麻だけではなく、その周りにいる女の子達も、その光景に目を奪われているように、しばらく息を呑んで立ち尽くしている。
「初春さんに佐天さん。余所見は良いですけど、そろそろお鍋の中の野菜が焦げて大変な事になってますよ。それから、婚后さん、湾内さん、泡浮さん。きちんとエビの背腸は取り除いてくださいね。あと、黒子さんは美琴さんにお水を一杯持っていってあげてください」
目は、自分の料理に集中しているのに、耳と鼻、それから肌と舌を通して、進行状況を読み取り、忠告したり、指示を出したりしている。
「「「「「は、はい」」」」」
そうして、彼女は1人なのに他よりも早く、そして、淀みなく自分の料理(カレー)を完成させると、今度はトマトやキュウリ、レタスなどの野菜をナイフで切り出し、花細工のように盛り付けていき、
「これでよしっと」
最後は、自分で調味料を合わせて作った手作りのドレッシングを振りかけて、サラダも完成させる。
(にしても、楽しそうだな、アイツ)
彼女は料理をしている時、本当に良い笑顔になる。
きっとそれが彼女の性に合っているのだろう。
血生臭く、誰かを不幸にさせる戦いではなく、温かく、誰かに幸せを共有する事こそが、あの笑顔が輝く時だ。
人を生かし、物を生む……殺すことしか、壊すことしかできない自分とは対極な才能。
そして、今度は飛ぶように料理初心者が集う調理場へ移動する。
「婚后さん、どうですか?」
「はい! エビもイカも、野菜もちゃんと詩歌様のご指導通りに切り分けましたわ」
「ふふふ、そのようですね。見れば、きちんと丁寧に頑張ったのが良く分かりますよ」
「でも、詩歌様と比べれば、全然……」
「私も、最初からうまくできた訳ではありません。基礎的な技術を習得するだけで、何年もかかる事があります。ですが、技術さえ身に付けてしまえば、後は食べる人の事を想って、その食材の旨みを引き出すだけ――――料理は愛情です」
穏やかに笑みを浮かべると、次の手順へと導くように、口頭で説明しながら最初にお手本を見せて、
「大丈夫です。婚后さん。能力で伸び悩んでいた時も、あなたは諦めることはせずに必死に努力してきました。私はそれをちゃんと知っています。もちろん、湾内さんに泡浮さん、佐天さんと初春さんもね。だから、頑張りましょう。一歩一歩ずつ」
「「「「「はい!!」」」」」
そして、彼女は後輩達がせっせと調理を進める後ろで、時折、失敗する事はあっても注意するだけで、自分が手を出す事はせずにただ見守る。
そう、彼女達を信頼しているから。
そして、彼女が信頼してくれることを彼女達は知っているから。
ああやって、前へと進む事ができるのだろう。
手を伸ばし、立たせて、自分の足で歩かせる。
そして、己が先頭となって、導く。
彼女が人に好かれるのは、そのおかげ。
「―――? おや、さっきから視線を感じると思ったら」
くるっと柳髪を舞わせながら振り返り、
「おはようございます、当麻さん」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「大丈夫ですか、当麻さん」
「ああ……何だか頭が痛いが、どうしたんだろうな。心なしか数分の記憶が無いんだ」
「それは大変です。一体いつから?」
「えっと、確か、皆とボール遊びをする直前で、途切れているんだが……」
詩歌は自分の顔をじっと覗きこみ、眉間にしわを寄せたまま、考え事をすると、
「………良かった。成功です」
詩歌の後ろでホッと固法が安堵の息を吐く。
(ほっ、これならもう一度やる必要はなさそうですね)
……どうしてだか、助かったような気がする。
周囲をもう一度窺うと、少し青褪めた表情でこちらを見ている。
何か恐ろしい物でも見たのだろうか?
まさか、この記憶を失った間に何かが―――なんて考えは止そう。
すごく、本能的に危ない気がする。
「で、これって、どういう状況何だ? 水着モデルの撮影じゃなかったのか?」
「今は調整中です。どうやら、カメラや背景にシステムエラーが出てしまっているようで、直るまでの間、時間が勿体無いから昼食を取ることにしたんですよ」
どうやら当麻が気絶している間に、機材に不具合が生じ、背景が次々と南国から、砂漠から、大嵐から、宇宙から、と変わってしまい大騒動だったらしい。
そういえば、夢の中でも色々と大変な目にあったような気がする。
というわけで、昼食。
料理はカレーで、佐天と初春がチキンカレー、婚后と湾内と泡浮がシーフードカレー、そして、詩歌が夏野菜カレーとサラダ。
ご飯は
インデックスも人数分のパイナップルをくり抜いて、カレーを盛る器を作った。
各自、お皿に白米を盛り付けると、其々の鉄鍋からカレーをその果物の器に装っていき、
「「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」」
皆で唱和。
「んー! 美味しい!」
「細かい野菜も味が出ていいねぇ!」
「大きいのも美味しいです!」
佐天と初春が作ったチキンカレー。
煮崩れないように大きく切るか、カレールーに溶け込むように細かく切るか、と野菜の大きさを審議しあっていた佐天と初春も、其々のを一口食べてみると『どっちでも美味しい』という結論に。
2人は些細な事ではあったが、より互いを知って、友情を深め合った。
「……、」
婚后と湾内と泡浮が作ったシーフードカレー。
不安そうに周囲の様子、自分の作ったカレーを装った人達の様子を、婚后は身体を委縮しながら窺う。
「……これも中々美味しいですわねぇ!」
「ほんと美味しい~!」
しかし、自分の事を毛嫌いしているはずの黒子や固法からの称賛を受け、嬉しそうに笑みを綻ばす。
「よかったですね!」
「頑張った甲斐がありました!」
「えっ…ええ!」
今までは、包丁の扱い方すら知らず、『箸よりも重いものを持ったことが無い』と生粋の箱入りお嬢様を地で行く婚后達であったが、初めて作った料理の評価は上々。
そして、この感想は3人の中でかけがえのない思い出として、いつまでも残り続ける。
「アンタねぇ~、ちょっとは落ち着いて食べなさいよ」
「もぐもぐ……そんな事言われたって、私のお口はもう止まらないんだよ」
せっせとカレーを口に運ぶインデックスを、サラダに手を付けながら呆れた表情で美琴が窘める。
このつやつやと白く輝くご飯は、美琴が火を使わない調理機、IH(誘導加熱)をその電磁波を操る<超電磁砲>によって再現して、炊いたものだ。
だが、熱加減もちょっとでも乱れればすぐに吹いてしまうほど繊細で、一定の熱量を維持するにはずっと集中し続けなければならず、さらに、炊く量があまりに多かった。
11人分でも多いのに、詩歌からそれ以上を要求されたのだ。
おかげでへとへと、そして、こんなにやって残したら用意してくれた業者の方に申し訳ないなぁ……と思っていたのだが、この白い悪魔の異名を取る少女の食欲旺盛ぶりを見て評価は一変。
業者が用意してくれたのが辛口のカレールーしかなかったので、辛いのが苦手な人の為にと、わざわざパイナップルで器を作ったのだ。
おかげで食べやすくなり、そのコクもより深みを増した。
で、彼女は確か、詩歌に頼まれて、カレーの器作成の為に、パイナップルを5個以上をその小さな体の中に収めたと言うのに、全くその食欲が衰えていると言う事は無い。
お好み焼屋でも思ったことだが、彼女の胃袋の構造が非常に気になる。
異次元にでも繋がっているのではないのだろうか?
「あ~、もう! 急いで食べるもんだから、ほっぺにカレーが付いちゃってるじゃない!」
「? そうなの? でも、今両手が塞がってるから取って欲しいかも」
『だったら、それをテーブルに置けばいいでしょうが!』と言いたい所だが、何だか美味しそうに食べているインデックスの姿を見ていたら、気が削がれて、深い溜息をつくと、
「……はぁ、ったく、しょうがないわねぇ」
どのカレーも美味しかったが、断トツに一番だったのは、やはり、詩歌が作った夏野菜のカレーだった。
一口食べれば、目を開いて一瞬だけパニックになるが、口の中に広がり始めた味が分かると黙って口を閉じる。
鮮烈なスパイスの衝撃から、複雑な味わいがゆっくりと口の中に満ち、至福の表情を浮かばせる。
すぐにその虜になり、夢中にカレーを掻きこんでいくが、鉄鍋から全てなくなる時、其々の口からはそれを惜しむ気持ちが零れ出る。
「まあまあ、皆さんのお口にあって何よりです」
「本当にうめぇよ。流石、俺の自慢の妹だ」
「ふふふ、ありがとうございます。今日は皆さんがいるからいつもよりも気合を入れて頑張ってみました。それと、当麻さんへの日頃の感謝の気持ちもたっぷりです」
「そうか。ああ、感謝の仕方はこういうのが良い。ああいった事は勘弁してくれ。……ん」
「はい、当麻さん」
ちょっと喉が渇いたな、と当麻が思えば、自然に手元に水の入ったコップが差し出され、
「ありがとな」
「いえいえ」
律義に礼を言ってから一息で飲み干し、空になったコップを返す。
兄の呼吸を、妹は完全に掌握していた。
これは、当麻と詩歌にとったら何でもない日常の光景。
だが、この隣に並んで兄妹は、2人だけの世界を作っているようにも見え、おしどり夫婦のように仲睦まじ過ぎるような光景とも………
『やはり……お兄様は……この味に慣れて……』
『あたし達の水着とは……反応が違ってたし……』
『結構格好良いし、優しいし……でも……』
『その比較対象が……詩歌様では……』
とりあえず、上条兄妹の仲が彼女達から一目置かれるようになった。
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上条詩歌が、今回の水着モデルを引き受けた理由は3つある。
1つ目は、湾内や泡浮、後輩達の為に。
困った後輩を助けたり導くのは先輩の義務であり権利。
だから、詩歌にとって、可愛い後輩たちを助けるのは当然のことだ。
それに、男性経験の少ない後輩達に、当麻と会話させることで少しでも慣れさせようという狙いもある。
詩歌は、その体質については警戒してはいるが、当麻の性格に対しては信頼している。
わざと女の子を泣かせる真似など絶対にしないと。
ついでに、ちょっとくらいの牽制もしておくのも忘れないが。
当麻自身は気付いていないのだろうが、その身体は鋼のように鍛えられてり、太さ自体は驚くほどではないが、両腕、両足、腹筋、胸筋、背筋、といった全身の筋肉がみっしりと重く硬く引き締まっている。
素人の目から見ても解るほど鍛えられているその逞しさは、下手をすれば、その広い背中を見せただけで堕ちる。
実際、うっとりと見惚れていたのも何人かいた。
当麻が好かれる事は詩歌にとってみれば大歓迎なのだが、それなりの覚悟が無ければ、少なくても自分に怯まない程度でなければ認められないので、若干嫉妬の成分もあるが、牽制させてもらった訳である。
2つ目は、インデックスの為に。
インデックスはこの学園都市で同年代の知り合い、そして、女の子の友達がほとんどいない。
1年前まで人との繋がりを作る事さえも許されなかった環境、そして、その世界(魔術)からかけ離れた世界(科学)へ飛ばされたインデックスにとって、それは寂しい事なのかもしれないが仕方のない事。
でも、彼女と少しでもお話すれば、誰とでも親しくなれる。
詩歌は、インデックスを狭い環境に閉じ込めておく気はない、いつか自分自身で見つけた友達を見つけて欲しい、いや、見つけられると信じている。
そして、こういった絆は力になる、と。
それに、魔術側の人間と科学側の人間の交流による相互理解は、これからの世界に必要になるだろう。
3つ目は、当麻の為だ。
今年の夏休み、その記憶を失ったのが始まりに、普通なら人生に1度あるかないかの命懸けの不幸に1度だけではなく、何度も巻き込まれている。
ハッキリ言って、例年以上に不幸過ぎる。
なので、終わり良ければ全て良しとは言わないが、夏休みが終わりに近くなったこの日に少しでも幸運な思い出が作れば、“初めての”夏休みに良い印象を残す事できるかもしれない。
上条詩歌は上条当麻を幸せにする為にこの街に来たのだ。
それに<御使堕し>以来、当麻は、強くなる為だとここ最近ずっとオーバーワークで、こちらがトレーニングや体調管理などをサポートしていたとはいえ、休ませてやりたかった。
あと、海の一件で、水着姿を見せる事ができなかったから、もあるが。
「ねぇ、当麻さん。今日は、楽しかったですか?」
妹からの問いに、彼女の考えを知ってか知らずか、しばらく目を合わせた後、兄はふっと笑い、
「ああ、幸せだ」
当麻は思う。
『疫病神』だった頃の記憶はもう無いけれど、母が育て、父が託したこの幸福のお守りは、ずっと自分を支えてきてくれた事は分かっている。
両親に感謝を、そして、大切な妹に幸せを。
だから、今度こそこの思い出を失わない。
そして、彼女と過ごす毎日を忘れないように。
「これからもよろしくな、詩歌」
「はい。こちらこそ、お兄ちゃん」
そして最後に、全員でカレーを手にした写真を1枚撮って、今日という日を、心にまた刻みつけた。
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『は~、美味しかったぁ! こういうモデルなら大歓迎だな~!』
『楽しかったですねぇ!』
『たまには庶民の味も悪くありませんわね』
『おかわりしてらしたくせに』
『あれ? 御坂さんは?』
『それから、しいかもいないよ?』
『アイツら、一体どこに……』
水着モデル撮影が終わり、業者ビルを後にした一同。
けれど、約2名の姿が見当たらず………
「ええ~っと……あれっ?」
その内の1人は、未だに撮影スタジオに残っていた。
ただし、着ている水着が競泳水着から、可愛らしい少女趣味のふわっふわのフリルがついたセパレートタイプの水着に換わっているが……
「これじゃなくて……こっちか? ――おお!」
そして、誰もいなくなったスタジオで、リモコンをポチポチと操作しながら、背景を南国に、
「―――きゃっほう!! あはは、やっぱこの水着、可愛い! らんららんらら、それっ!」
どうやら、美琴は一度手放したはずのこの水着を諦めきれなかった模様。
でも、恥ずかしいので皆がいなくなってからこっそり一人で堪能しようと、
「まだまだ甘いですね、美琴さん。私から裏をかくなんて」
が、その様子をこっそり陰から窺うもう一人の少女の姿が、
「ふふふ、この貴重な光景はMIKOTOフォルダに永久保存です。あと、美鈴さんにも報告しなければ……」
この長年の付き合いのある姉のような幼馴染は、妹の行動など、釈迦の手の平で転がる孫悟空のようにお見通しだった。
さらに、残念な事に……
第15学区 繁華街
『らんらんらんら~ん♪ あはははっ! あはははぁ! そーれっ!!』
ビルの
リモコンの使い方をいまいち理解していなかった美琴は、適当に出鱈目に操作して、その結果、背景を変える事ができたが、ビルの外の大画面に自分の姿を映し出してしまうことに……
「とうま、アレって、短髪……?」
「……ビリビリ? …何やってんだ……アイツ……?」
そして、その様子を最も見られたくなかった人に見られてしまった。
つづく