wake up knights   作:すーぱーおもちらんど

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お待たせいたしました。十一話になります。

今日はとても残念なお話をしなくてはなりません。

後書きに続きます。


11

「――へぇ、もうこんな季節か……」

 

 病院の向かい側には公園を囲むように植えられている桜が満開に咲いていた。

 屋上から見下ろすように景色を堪能していた俺は、ここに来てからのことを振り返っていた。

 夢を見て、飼い猫にここの世界に連れてきてもらい、命と引き換えにユウキを助けることができた。

 こうして思い返してみると、嘘のような本当の出来事に俺は自分はまだ夢を見ているんじゃないかと感じることがある。

 

でも、実際はそうじゃない。

 

 確証たる根拠も証拠もないが、俺の中ではもうこれが現実であってほしいと願っている部分もあるからだ。どんな状況であれユウキがこうして生き残ってこれたことは俺の望みでもある以上、そう思うことは必然だった。

 しかしユウキと繋がりができてしまったことは想定の範囲外だ。ALOにフルダイブするにしても何万人といる人口の中、早々出くわすことはないと考えていたし、アスナのアドバイスを鵜呑みにしていたからまさかインプ領にいるとは思っていなかった…まぁ結果的に友達として宜しくすることになってしまったが、よく考えて見ればユウキを心配している自分がいる以上、彼女の人生に干渉しない程度に関わる分にはいいのかもしれない。

 

 それにユウキは言ってくれた。ちゃんと嫌いになると。

 

 その言葉が聴けて少し気が楽になった気がする。俺から離れて彼女が傷ついてしまうのなら、俺が傷ついて彼女から離れてくれるほうが理想的だ。そのほうがずっと楽でいい。

 あとは、俺がユウキの病気を抱えている事に関しては絶対バレないようにしないといけない。これだけは最後まで嘘を突き通そう。アスナもキリトも倉橋先生も口は固いだろうからバレることはないし、俺から話す事もないから大丈夫だとは思うが、仮にバレてしまったらユウキはきっと責任を感じてしまうことになる。それだけは絶対に避けないといけない。

 

 まぁ半年もあればユウキも退院してくれるだろうし、なんとかなるさ。

 

 自分にそう言い聞かせつつ飴を咥えていた俺は、雲ひとつない晴天から降り注ぐ日差しの温もりに、ふとある事を思い出した。

 

――……そういえば、インプ領に留まり続けていたせいか、日差しを浴びるなんて久しぶりだな。

 

 俺はつい心地のいい日差しに感謝するように空を見上げて呟いた。

 

 

「いい天気だ――」

「あー!トウカだー!」

 

 聞き馴れた声が後ろから聞こえる。

 

――おいおい、まさかまた1人で勝手に……

 

 と、若干焦りつつ後ろを振り向いてみると、倉橋先生が車椅子を押しながら「やぁ刀霞さん、こんにちは」と挨拶してくれた姿を見て、俺はつい肩を撫で下ろし、安堵の表情をしてしまった。そんな俺の姿を見たユウキは、指をさし、ふくれっつらで「あ、今一人で来たと思ったでしょ」と文句を言うように叫んだ。

 

「おや、紺野さん。刀霞さんの名前をご存知でしたか」

 

 あぁ、そうか。倉橋先生には俺の名前を伏せるように頼んでいたっけ。

 倉橋先生にインプ領での事件後からの出来事を説明するのを忘れていた俺は、ユウキが話す前に自分から事情を話した。

 

「えぇ、実はALOでたまたま会いまして、あの件からの繋がりで俺から名乗りました」

「そうでしたか、ではあの病気のことも――」

「先生!!」

 

 俺はつい叫び声を上げて倉橋先生の言葉を制止してしまった。倉橋先生はしまったという表情で自分の口を押さえ、ユウキに表情を悟られないよう後ろを向いた。

 ユウキは俺の叫び声に体がビクンと反応してしまい、ちょっとした沈黙が続いた後、困惑した表情で俺の様子を伺うように先ほどの言葉の意味を尋ねてきた。

 

「……病気って?」

「ああ、いや、ユウキの病気が良くなったという話を倉橋先生に聞いてさ。でしたよね?倉橋先生」

「え、ええ。すいません紺野さん。屋上の一件からお二人とも仲が宜しいようなので既にご存知かと思いまして……つい……」

 

 俺も倉橋先生も焦っていた表情を隠しきれない部分がでてしまったが、ユウキは俺の顔をじぃっと見つめた後、「そっか」と納得してくれた。

 倉橋先生はおほんと咳払いをした後、話題を変えるように俺に話を振った。

 

「で、では刀霞さん。もし差し支えないようでしたら紺野さんを暫く見ていただいても宜しいでしょうか?刀霞さんなら安心して任せられますので……」

「え、えぇ。それは構いませんが……ユウキはそれでもいいのか?」

「え、なんでー? ボクは全然平気だよ?」

「では、宜しくお願いします。同伴なら少しの間でしたら外での散歩も構いませんので」

 

 そう倉橋先生は言い残し、そそくさとエレベーターに乗り込み、扉が閉まる際片手で拝みを手つくり、俺に向かって謝罪する仕草をした。

 倉橋先生はもしかして口が軽いのだろうか。今後は気をつけなければ。

 先生の姿が見えなくなると、ユウキは「もう少し下がみたいなぁ」と呟いたので、俺は車椅子を押してちょうど公園の桜が見えるような位置まで運ぶ。

 すると彼女は「えへ、ありがと」と幼さが残るような微笑を浮かべた。

 

「うわぁ、すごいなぁ……やっぱりカメラ越しで見るのとは違うねぇ」

 

 そうか、たしかアスナと学校に行った時に視聴覚双方向通信プローブで見たことあったのか。

 俺はどこか寂しげな表情で見ているユウキに「そうか」としか返せなかった。

 暫く景色を見ていると、ユウキは視線は公園の方へ向けたまま、ポツリと口を開いた。

 

「……名前、本名だったんだね」

「あぁ、そういえば言ってなかったな」

「ボクも、紺野木綿季って言うんだ。一緒だね」

 

あぁ、知ってる。ずっと前から。

 

「――そうか、それは知らなかったな」

「これからも宜しくね、刀霞」

「……あぁ、こちらそ。木綿季」

 

 そう言うと、木綿季は先ほどとは逆に、不安な感情が湧いて顔を曇らせているような表情で視線逸らさず俺を見つめながら話しかけてきた。

 

「……刀霞は、いつ退院するの……?」

「いや、当分は退院できない。ちょっと色々あってな」

「だ、大丈夫なの……?」

「問題ないよ。病状が悪化したわけじゃないからな」

「――そっか……」

 

 安心させるため、言葉を作ってみたがどうも木綿季の雲がかった表情が晴れない。

 彼女なりに心配してくれたのか、それとも先ほどの言葉の真意を確かめたかったのか。どちらにしても木綿季が俺を気にしてくれたことに少し申し訳ない感覚になってしまった俺は自分が飴を咥えていたことを思い出し、ポケットにあったもう1つの飴を差し出して、木綿季にひとつ提案をした。

 

「今日はいい天気だしな、よかったら公園まで散歩してみるか?」

「……うん!」

 

 少しだけ明るくなった表情を見て安心した俺は、私服に着替えて木綿季を病院の外に連れ出した。倉橋先生の許可も得ていたので、一時間程度で戻ると看護士さんに伝え、初めてこの世界で外出することとなった。

 向かい側の公園にはあまり人はいなかったが、それでも遊具には子供たちが遊んでいたり、老夫婦が桜を見ていたりとそれなりに利用している人いるようだ。

 俺はできるかぎりゆっくりと車椅子を押して桜並木を歩き、木綿季と散歩を楽しんだ。木綿季も数年ぶりの外出に目をキラキラさせ、深呼吸したり桜の花びらを触ったりと、まるで小学生のように無邪気な笑顔を見せてくれた。

 俺も元の世界とはなんら変らない感覚だったが、それでも木綿季が楽しんでくれていることについ嬉しくなり、外出してして良かったと満足してしまった。

 そんな散歩中、桜の小枝を指揮棒のように振っていた木綿季は視線を前に向けたまま俺に語りかけてきた。

 

「ねーねー刀霞ー」

「ん?」

「刀霞はいつALOはじめたの?」

「あぁ、二日前かな」

「えぇぇッ でもあの三人やっつけたのって、刀霞だよね!?」

 

 そういえば、木綿季もあの三人が上級プレイヤーなのは知っていたのか。

 

「あー……まぁ、な」

「刀霞は他にもゲームしたことあるの?」

「いや、フルダイブのやつはあれが始めてだよ」

「うっそだぁ!」

 

 木綿季の驚いていた様子が背中越しでも十分伝わった。

 そう思われるのも無理はない。本当に自分が倒したのか俺自身が疑っているぐらいだからだ。あの時の俺は自分でもよく覚えていない。いや確かに自分が倒したという記憶は残っているのだが、どうもあいまいな部分がある。

 

「いやー……まぁ、あの時は俺も必死だったからな……偶々さ」

「……刀霞って実は凄く強かったり?」

「そんなわけあるか。木綿季だって知ってるだろ。俺の装備と資金はどう見ても経験者のステータスじゃないだろう」

「それはそうだけど……」

 

 いずれにしてもあの感覚はいつもの俺ではないことは確かだ。唯一覚えていることと言えば、とりあえず幼少期に叩き込まれた剣術が今でも使えるのは間違いないらしい。体に染み込んでいたせいか、体が勝手に動いたといえば説明はつくのか……いや、それでもあの感覚は俺じゃあない。それは確かはずだ。

 

――そろそろ一時間だな。ぼちぼち戻るとするか。

 

「よし、そろそろ戻るか」

「えー、まだいたいよー!」

 

 木綿季は顔を見上げて車椅子を押している俺を見ながら懇願した。が、ここで甘やかすのは良くない。

 

「駄目だ。看護士さんには一時間で戻るって言ったからな」

「少しくらい大丈夫だよー……」

「またいつでも連れてってやるから、今日は我慢しろ」

「むーっ……じゃあさ、今度刀霞の病室に遊びに行ってもいい?」

 

 一瞬どきりと心臓が高鳴る。

 俺がメディキュボイドの被験者だと知ったらきっと事情を倉橋先生に聞くだろう。倉橋先生のことだから誤魔化してはくれるだろうが、いずれ俺が木綿季の病気を取り込んだ話にたどり着く可能性がある。

 

 ならば、教えるわけにはいかない。

 

 嘘をつくわけではない。ないが、木綿季の要望に応えられそうにない俺は、つい車椅子を握っている手に力が入ってしまう。心苦しく感じながらも、俺はできるだけ木綿季が傷つかないよう断った。

 

「……すまない、それは勘弁してくれ。まだ木綿季だってリハビリ中で無理に体を動かせないだろう。代わりとは言えないかもしれないが、俺が木綿季の病室に遊びに行くよ」

「ほんとに!? 約束だよ、絶対だからねー!」

「ああ、約束だ」

 

 木綿季は嬉しそうな表情で桜の枝を振り回している様子から察するに、どうやら無事に回避できたようだ。

 それから俺たちは病室に戻り、看護士さんに木綿季を託した後、俺は公衆電話でキリトに電話をかけた。

 

「もしもし、キリトか? 俺だ、刀霞だ」

「あぁ、どうした? 電話してくるなんて珍しいな」

「いや、ちょっと話たいことがあってな。今日もアスナと木綿季のお見舞いに来るんだろ?」

「そうだけど……」

「悪いんだが、木綿季と面会する前に俺の方へ立ち寄ってくれないか」

「わかった。アスナには俺から伝えておくよ」

「すまないな。時間は取らせないからさ。じゃあ宜しく頼む」

 

 それから数時間後、学校から直接来たキリトとアスナは制服の姿で俺の病室に現れた。二人を椅子にかけさせ、俺は手短に木綿季と接触したことと、自分から名乗った事を話した。

 現在の状況をキリトとアスナは理解してくれたのだが、ここからが問題だ。

 

 昨日、俺と木綿季がお互いに自己紹介を済ませた後の話だ。

 

 改めて木綿季に属性結晶から武器を製作できる鍛冶屋がいないか尋ねたところ、一人だけ心当たりがあるという。どうやら友人の友人で、女性の鍛冶屋らしい……なので、まずは紹介をしても良いか確認する。ということだったのが……

 恐らく俺が知っている人物だ。もちろんアスナとキリトも知っている。なぜならその女性はかつてのSAO事件の生き残りだからだ。

 遅かれ速かれ木綿季が俺にキリトとアスナを紹介してくれることになるはずだ。だが既に俺たちは知り合いであるため、白々しい態度をとったり初対面の振りすることは器用に振舞えない俺では難しい。

 そこで、俺がキリトとアスナの友人だったということを木綿季にどう説明すればいいか相談したかったのが、今日来てもらった理由だ。

 

「俺から説明しようにも、どう言えばいいかわからなくてな……」

「そうね、でも正直に話していいと思うの。ここで誤魔化したり嘘をついたりしたら木綿季の信頼を裏切ることになると思う。だって刀霞はもう木綿季の友達でしょう?」

「刀霞、俺もそう思う。全ての真実を話す必要はないと思うけど、別に俺たちの関係を隠す必要はないよ」

「そう……だな、二人の言う通りだ」

 

 この件に関しては、アスナが木綿季に話してくれることになった。とりあえず一番木綿季と親しいアスナから話してくれるのであれば、木綿季も疑わずに信じてくれるだろう。

 

 

 

 

 その後、木綿季のお見舞いから戻ってきた二人曰く、快く信じてくれたらしい。寧ろ友達を紹介しやすくなって良かったと安心していたようだ。

 それから話はとんとん拍子に進み、今日の夜には、SAOの生き残りのメンバーに俺を紹介してくれる事になった。

 木綿季はその日、スリーピング・ナイツのメンバーでの用事があるため、行けないらしいので紹介に関してはアスナとキリトに任せるとのことだった。

 俺は宜しく頼むと二人に委ねたが、一つ不安に抱えていることがあった。

 

 それは、小島での一件が俺だとバレないかということだ。

 

 見た目は大きく変ったのでALO内でバレることはないと思うのだが、本人の姿は現実世界とまったく同じなので、現実世界で誰かに会ってしまったら恐らくバレてしまうだろう、俺はそれが不安でならない。

 キリトとアスナは信頼できる仲間だから刀霞が許してくれるのであれば話しておきたいと再度お願いされたのだが、とりあえず保留にさせてもらった。仮に話してもいいと判断した場合、自分から話そうと思う。本でみんなの性格を知っているとは言え、自分の目で見極めてから話したい。二人には申し訳ないが警戒している部分はある。

 とにかく一度会って見て、話してから判断しよう。

 

 キリトとアスナが椅子から立ちあがり、今日の夜での待ち合わせと時間を確認した後、病室から出て行こうとした瞬間、俺は一つキリトに頼みごとがあったのを思い出した。

 

「キリト、一つ頼みたいことがあるんだが……」

「ん、どうした?」

「実はな……」

 

 俺はキリトを近くまで呼び戻し、耳元でアスナに聞かれないようにごにょごにょとキリトに話す。

 

「なるほど……。でもそれって本人に確認してからの方が……」

「いや、多分遠慮するだろう。それでも今後のアイツには必要なものさ。いらなければ本人の自由にして構わないし、時間がかかればかかるほど厄介になる。だからそうなる前に頼んでおきたいんだ」

「わかったよ。出来るかわからないけど取り敢えず話だけはしてみる」

「すまないな。お前には迷惑かけてばっかりだな……」

「気にするなよ。この件に関しては俺も共感できる。まかせとけ」

 

 アスナは二人でコソコソ話していることにたいして「なになに?」とか「私にも聞かせて!」とぴょんぴょんと跳ねながら言っていたが、俺たちはお構いなしに話していたため、痺れを切らしたアスナが二人の会話を切るように大声で叫んだ。

 

「もー!! 仲間はずれにしないでよー!!」

 

 俺とキリトはアスナの叫び声びっくりして、一瞬放心状態になってしまったが、この件に関してはアスナにはあまり言いたくなかったため、キリトにうまく伏せるように頼み、二人で協力しながらアスナを説得した。

 

「いや、ちょっと男同士の話をだね……」

「刀霞はちょっと黙っててくれるかな?」

「はい……すいません……」

「で、キリト君? 二人で何を話していたの? もちろん私にも教えてくれるよね? 私だけ仲間はずれになんて、しないよね?」

 

 こんなに笑顔が怖い女性は初めてだ。余命宣告された時より恐ろしい。

 

「いや、アスナ。これは俺と刀霞だけの話なんだ。別にアスナを仲間はずれにとか」

「他に言い残すことは、あるかな? ないよねぇ?」

「ごめん刀霞……俺、今日ログインできそうにないかも……」

「落ち着けキリト。いや落ち着くのはアスナか。と、とにかくアスナ、事が済んだら絶対に話すから、今日は引いてくれないか。頼むよ」

「……絶対に話してよね!」

「あぁ、約束する」

 

 今日は約束が多い日だな。

 

 若干不機嫌なアスナと、若干満身創痍なキリトを見送り、俺は今日の夜、みんなにどう自己紹介すればいいか悩みながら時を過ごした。




今回も閲覧していただき、ありがとうございます。

先日夢でユウキに会いました。二次創作をしていることを話したら「時間の無駄だよね!」と言われました。もう書く元気がなくなってしまいました。

いや書きますけど……

次回の更新は少し遅れそうです。精神的に参っています。

また宜しくお願い致します。
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