ただのいちゃいちゃです。ストーリーとかないです。
おもち。
「初撃を掻い潜るだけなら俺の大剣で十分だって!」
「あんたがスキルでパリングしたらそれだけで集団戦にワンテンポ遅れるでしょーが!」
「はいはーい! ボクがやりたーい!」
「皆が前に出たらタンクの意味がなくなるじゃないか! ここはしっかり自分にヘイトを集めてだな」
「テッチの言うとおりエンゲージするのであれば、やはりタンクからイニシエートした方が……」
「ボクも! ボクもやりたーい!」
「ユウキはキャリーするポジションなんだから最初はピールしやすい位置にいてもらわないと駄目だってば! それよりもシウネーとかアスナにハラスしてもらった方が安全に釣れるっつーの!」
「だーかーらー! それじゃあ楽しくないってー!」
対集団戦攻略を網羅された黒板を指して、いつものメンバーがやいのやいのとお祭り騒ぎ。
ジュンが定石の攻略方法ではつまらないと一蹴し、それを咎めるノリを他所にユウキが先陣をきりたいと飛び跳ね、テッチがそれでは自分の立場がないと断固拒否すれば、タルケンが冷静に収めようと説くもこれといって効果はなく――。
そんなやりとりを後方から見守るように――もとい、諦めたようにシウネーとアスナが傍観しているが、これも最早見慣れたものだ。
どちらかと言えば俺も後方組みなのだが、俺の場合傍観というより呆然に近い。何しろ皆が口々にする専門用語の殆どが理解できない。
エンゲージ? イニシエート? ハラス? 何それ美味しいの?
単純な英単語であればなんとなしに察することはできるのだが、どうもゲームで使う用語だと意味合いも違ってくるようで中々理解に苦しむ。
そもそも俺のような初心者如きが居ていい場所ではない気がする、が。
「はいはい、今日はここまで! 予定にはまだ時間はあるし、作戦の続きは明日にしましょう」
アスナが手を打つと、どこか納得がいかないという様子で、ノリたちは唇を尖らせる。
「敵の数や使用してくるスキルも不明ですし、下見をしてから決めるのも良いかもしれませんね」
シウネーの的確且つ一歩引いた意見に俺は頻繁に頷く。それを見たノリがやれやれと肩を竦めて、
「ま、トウカはうちらと初めて組むわけだし、いきなり連携とれって言っても無理もないわね」
「ユウキとは何度か組んでいるようですし、彼女に合わせる事ができれば問題ないと思いますよ」
タルケンが言うと、ユウキは自慢げに胸を叩いて、ふんすと鼻を鳴らした。
「だいじょーぶ! トウカはすっごく強いんだから!」
「おいよせ。俺ができる事なんて何もないぞ」
「へーきだってばー。いつもみたいに、ボクとデ……狩りしてるように戦えばいいんだよ!」
「『デ』? 今、『デ』って言った?」
にんまりと笑みを浮かべたノリがすかさずユウキに詰め寄ると、ユウキは「いいい言ってない! 言ってないよー!」と手を振って顔を逸らした。両手をわきわきさせたノリが白状しろと逃げるユウキをぐるぐる追いかけ回した所で、一応今日の作戦会議は締めとなった。結局捕まって擽られていたけど。最初から最後まで騒がしい会議だったな。
*
「あ~あ。今日も決まらなかったなぁ」
「まぁ、実装まで時間はあるし、それまでに決めればいいさ」
「そうだけどさぁー……」
天を仰いで不満を漏らすユウキを見るのは今日で三日目になる。
というのも、来週実装予定であるダンジョンがどうやら一定数加入しているギルドのみが参加できるとか、なんとか。
公開された情報によると、開放条件は最低でも八人は必要らしく、現在の《スリーピング・ナイツ》のメンバーは残念ながら七人。このままでは生殺しもいいとこだとユウキに半ば強引に袖を引かれ、致し方なく一時的に加入するに至ったわけだ。
勿論、キリトや他のメンバーの方が良いのではという意見具申もした。実際俺は二人以上のパーティでどこかのダンジョンに篭った経験がないし、悲観抜きにして技量も知識も豊富な仲間がいくらでもいるはずだと。そしたらユウキはなんて言ったと思う?
『ボクはトウカがいいの』
そう言ってくれた時の彼女の笑顔は、太陽のように輝いていた。
……悪い気はしない。――いや、正直凄く嬉しい。
攻略を優先することより、楽しさを選んでくれたユウキやそれを受け入れたくれた皆のために精一杯尽くすつもりだ。
「俺ももっと勉強しないとな」
「えー? 動きとかそういうのは実装してからいいんだよ?」
ユウキが俺の顔を覗き込むように、こてんと首を傾げる。
「いや、動きもそうだけど専門用語がまったくわからないんだ」
「あーそっか。ボクたちは自然に覚えちゃったけど、トウカには難しいもんね」
「すいませんね。未熟者で」
「いいんですよ。未熟者で」
奥歯に物が挟まるような言い方に、頭を小突いてやろうと手を振り上げた瞬間、ユウキは「ひゃー! トウカが怒ったー!」と嬉しそうに、とてとてと前を走る。
遠慮なしに言うその性格からか悪気があって言ったわけではないのは知っている。いや、悪気は多少あるか。何はともあれ、こうやって笑っているユウキが見れるだけで、少しだけ寒い夜も忘れてしまうくらいに胸が温かくなってしまう。
この感覚がずっと続けばいいのに。そう耽りたい気持ちを抑えながら、俺もまた微笑を漏らしてユウキを追う。
と、先を行くユウキの足がぴたりと止まった。そのままくるりと振り返ると、満面の笑みを俺に向けて、
「そうだ! これから一緒に勉強しよー!」
「勉強って、いいのか? 夜も遅いしそろそろ――」
「今日はトウカと一緒に寝るからへーき! はい決まりー!」
「いや、それだと寝床が――」
「いいからいいから! 早くいこ!」
リアルでは細枝のごとく痩せ細った少女だというに、どこにそんな力があるのかという程、否応なく右手を引かれる。
あぁ、きっとアスナもこんな感じで彼女に連れて行かれて、《スリーピング・ナイツ》の皆と出会ったのだろうか。困惑と期待が混じったような、例えようのないこの感覚。
と、同時に。ほんの少しだけだが、俺にはもったいないような気がしていた。いつでも嬉しそうに、楽しそうに走る彼女の後姿。この情景は、しかるべき主人公とか、彼女を守ってくれるヒーローとか。そういう人だけが許される感覚のように思えて。
本当に、俺みたいな奴が彼女の手に触れていいのだろうか。そんな考えが一瞬脳裏を過ぎってしまった。
……今の想いを喋ったりしたら、きっとまた叱られるに違いない。
仄かに照らす街灯が、石畳にたなびいてどこまでも続いていた。
花束を解きほぐしたように、きらきらと絶剣を輝かせる。
勇者に恋焦がれる、お姫様のように。
王子に庇護される、お妃様のように。
美しく。愛おしく。
どこまでも。
どこまでも。
*
「デバフ」
「えーっと、一定の能力を低下させる特殊効果、だったか?」
「ぴんぽーん。次、スペルヴァンプ」
「ええと……通常攻撃の際に相手のHPを吸収する……」
「ぶっぶー。それはライフスティール。スペルヴァンプはスキルでHPを吸収するんだよー」
「頭が痛くなるな……」
「少し休憩しよっか?」
「そうしてくれると助かる……」
トウカと専門用語の一覧表と睨めっこ。そんな状態が続いてかれこれ二時間くらい。
ボクは大体頭に入っているから大丈夫だけど、やっぱりトウカには少し難しかったかも。
改めて見ると百項目以上はあって、戦闘中に使う用語だけでも三十弱。それを全て頭の中に叩き込んで臨機応変に対応しろだなんて無理があると思う。だから、よく使う単語だけ予習するつもりだったのだけれど、解説文の中にまた違う横文字があったりとかでもう大変。一つの単語を理解するのにまた違うスキルの内容を把握しなくちゃいけないし、理解できても今度はそのスキルから身を守るスキルを覚えなくちゃいけないし。トウカがこんなに頭を掻くのは初めて見たかも。
「そんなに掻いたら禿げちゃうよ?」
「髪もライフスティールされるのは勘弁だなぁ」
「あはは! なぁにそれ!」
あんまりに可笑しくて、ベッドの上でけらけら笑い転げると、トウカもどこか嬉しそうに眉を細めて「コーヒーでも入れてくるよ」と席を立つ。ボクはすかさず指を二本立てると、トウカはぐっとサムズアップして、
「わかった。ブラックだな」
「違うよお砂糖ふたつ!」
「え? お砂糖がなんだって?」
「ふたつ!」
「な、なに? ちょっとラグくて……」
「いじわる!」
枕を投げつけると、トウカはそれを片手で受け止めてふわりと投げ返し、意地の悪そうな笑みを浮かべて部屋を後にした。
トウカは偶に、変な意地悪をしてくる。嫌がらせとまではいかないような、本当にどうしようもない、子供っぽい悪戯。聞こえてるのに聞こえてないフリとか、一緒にお昼寝している時に鼻をつまんできたりとか。それで嫌いになったりはしないし、寧ろちょっと嬉しいなーって感じてしまう自分もどうかとは思うけれど……。
でも、そんなトウカでも極稀に寂しそうな表情をする時がある。
多分、気づいているのはボクだけかもしれない。
捨てられた子猫を見るような、侘しい目。瞳の奥に、ひっそりと佇む。仲間と話している時、一緒に狩りをしている時、ご飯を食べている時でも。
隠しているつもりはないんだと思う。だけど、ボクが一番トウカを近くで見ているから、なんとなくわかる。
ボクだけが知ってる、小さな小さな秘密。
投げ返された枕をぎゅっと抱きしめて、思いを募らせていると、樫の木の扉からコンコンとノックする音が飛び込んでくる。返事をすると、扉の向こう側から「おおい、開けてくれー」というトウカの声が聞こえた。きっと二人分のマグカップを持っているから両手が塞がっているのだろう。
ボクは駆け寄って、さっきのお返しに悪戯してやろうと扉に耳を立て、おほんと一つ咳払いをしてから初老の王様のように声を低くして、言った。
「合言葉を言うのだ」
「……お砂糖ふたつ?」
「ぶー。はずれ」
「王様の耳はパンの耳」
「ちがいまーす」
「…………」
「……とーか?」
「このお菓子美味いな」
「にゃー!!」
慌てて開けるとトウカはもぐもぐと口を動かして、ボクの大好きな大好きな洋菓子をこれ見よがしに頬張っていた。
「もうっ。なんで先に食べちゃうかな!」
「さっさと開けないのが悪い」
「トウカが悪い」
「ユウキが悪い」
「トウカ」
「ユウキ」
「…………」
「…………」
トウカも、膝の間にすっぽりと収まっていたボクも、じろりとお互いに睨み続けて、やがて耐えようにも耐え切れず、笑みが口角に浮かぶ。そうして、二人とも笑い会って、穏やかな空気がボクたちを優しく包み込んだ。
ああ、楽しい。本当に楽しい。こんなにも心がぽかぽかするなんて、幸せに嬉しさがとめどなく溢れてくる。
こうして自分の背中を彼の懐に預けることで、何もかも委ねてしまいたくなるような。こんな感情を抱いたのは本当に久しぶり。……ううん、きっと初めて。アスナや皆と一緒にいた時の感情とはちっともそぐわない。
「えへへ……」
「うん? どうした?」
「ふへへぇ。なんでもなーい」
ボクたちはコーヒーを飲みながら、なんでもないような会話を暫く交わしていた。
「明日は作戦が決まるといいなぁ」
「そうだな」
「そーいえばね、シウネーがクラインに食事に誘われたって」
「へぇ、それでお返事は?」
「まだ悩んでるみたい」
「まぁ、根はいい奴だからな」
「ボクもそう思う。面倒見がいい人って感じ」
「皆そうさ。アスナにしてもキリトにしても。本当に良くしてくれてる」
「ボクはー?」
「ユウキも良くしてくれてるよ」
「えへへ。トウカもいい子いい子」
「子っていう歳じゃないけどな」
「じゃあ、おじいちゃん?」
「そこまで老けてないだろう」
「トウカおじいちゃん。晩御飯は食べたばかりですよ」
「おおそうかいそうかい。ユウキおばあちゃん、それはわしじゃなくて炊飯器じゃよ」
「ボクもボケちゃってるじゃん」
「老いも楽しむもんさ」
「ボクがお年寄りになっても面倒見てくれる?」
「今とそう変わらないだろ」
「じゃあ、いつか本当にトウカおじいちゃんになったら、ボクが面倒みないとね」
「その頃にはサイボーグになってるから問題ない」
「えー。頭がぴかぴか光るのー? なんかやだなぁ」
「お前はサイボーグにどんなイメージをもってるんだ……」
「だけどそうなったらボクもサイボーグだよ? いいの?」
「お前までサイボーグになったらお菓子食べられなくなるぞ」
「いいよ。その代わりロケットパンチで世界征服しちゃうから」
「いいな。その機能俺にもつけてくれよ」
「トウカは奥歯からガムシロップが出てくる機能つけてあげる」
「涎垂らしてるようにしか見えないな……」
「ボクは目からビームとか、肩からミサイルとか出てくるんだよ」
「ずるいぞ。俺にも何か攻撃システムないのか」
「じゃあ木工用ボンドあげる」
「売ってる。それ売ってるやつ」
「我侭だなー」
「俺が悪いのか……ん……」
ふと、トウカが目をぐしぐしと擦って、小さな欠伸をかくのが見えた。
「眠くなっちゃった?」
「そう、だな。少し」
「今日はもう寝よっか。明日また勉強しよ」
「だな。昨日もあまり眠れなかったし、疲れが残ってるみたいだ」
「ベッド使っていいよ。ボクは暫く起きてるから」
「そうか……。それは……悪いな……」
トウカはそのままベッドへと横たわる。
いつもならボクが眠くなるまで会話に付き合ってくれているのに。今日はなんだか珍しい。
うとうとしながらも必死にボクの瞳を捉えて、薄れていく意識と戦っている。
ボクはそっと、トウカの頭に手を乗せて、慈しむように撫でる。
「大丈夫、ボクもちゃんと寝るから」
「……ああ」
「おやすみ、トウカ」
――――。
数分としない内に、すうすうと静かな寝息が聞こえる。
まるでボクよりずっと年下の、子供のみたいな寝顔だった。暫くの間、彼の頭を撫で続けていたけれど、どうしても我慢できなくなって、そろりと。少しだけ頬を突いてみる。
「う……ん……」
「あは」
ぴくんと眉を細めて、もぞもぞと枕に顔を埋める仕草が、たまらなく可愛い。
ボクよりずっと年上で、ボクよりずっと大人の彼が見せることのない隔たり。
優しくて、意地悪で。そして、大切な人。
そんな彼の普段見せることのない表情にボクは、思わず身悶える。
「えへへ……」
頬突いて、鼻を突いて、頭を撫でて。
手を握って、指を触って、おでこに触れて。
かっこいい。可愛い。好き。大好き。
そんな感情だけが溢れに溢れて、ボクはとうとう我慢できなくなってしまった。
「お邪魔しまーす……」
誰か見てるわけではないけど、辺りをキョロキョロを見渡してから、トウカの寝床にもぞもぞと入り込む。
できるだけ起こさないように、物静かに。足から順番に、体勢をトウカと鏡合わせになるように。
既に人肌と同じ体温までぬくぬくに暖まっていた布団を改めてかぶり、ボクはそっとトウカの胸を顔を埋めた。
「ふへへぇ……」
惚ける声が、自然と零れる。
トウカの芳しい香りが、ボクの体を覆う。今で経験した緊張とは比べようもなく、胸が高鳴る。と同時に、ボクの意識はすっかりと溶かされて、幸せが声となって漏れてしまっていた。
「幸せ……幸せぇ……」
堪らず、すんすんと嗅いてみる。
香水やコロンのような、作られた匂いとはまるで違う。少しだけ汗っぽくて、力強いような感じ。でも、一切不快感は感じない。多分だけど、違う人が嗅いだら良い香りには思えないかもしれない。
でも、ボクはそんなトウカの香りが大好きで仕方がない。こういう場合、好きだからいい香りがするのかな? それともいい香りだから好きなのかな? どっちだとしても好き。はふはふ。
「あ……」
ふと、顔を見上げてみると、寝息を立てている顔が間近に見える。
ほんの少し近づいただけで、唇が当たってしまいそうな距離。心臓が今にも破裂しそうで、だけど好奇心が抑えられなかったボクは、試しに指先でトウカの唇に恐る恐る触れてみる。
「わぁ……」
ぷに、と柔らかい感触が指を伝う。
初めて男の人の唇に触っちゃった。ほんのちょっぴりかさかさしてて、自分の唇とはまた違った感触。
いけないと分かってるのに、その行為を止められないボクは、きっと悪い子なのだろう。トウカは良くしてくれてるって言ってくれたのに。ボク自身もそうでありたいと願っているのに。
――ううん。これは、トウカが悪いんだ。
ボクをこんなにドキドキさせる。トウカが悪い。
「トウカが悪いんだよ……?」
唇に触れた指を、自分の唇に宛がう。
初めての間接キス。心が締め付けられて、罪悪感と共に激しい鼓動がどこまでもボクの好奇心を擽らせて止まない。
――もっと近づけ。もっと前に出ろ。欲しい物はすぐ目の前だ。
あと少し、ほんの少し身を捩じらせて顔を傾ければ、トウカとキスができる。
ずっとずっと、したくて、されたいと思っていた。大好きな人とのキス。
「あ……う……」
したい。
我慢できない。
その唇に触れて、想いの丈を目一杯絡めたい。
ボクは欲求に抗うことなく、首を傾けてそっと目を閉じる。
「ん……ぅ……」
トウカが悪いんだ。いつまで経ってもボクの気持ちを受け入れてくれないトウカが――。
「ユウ……キ……」
「ひゃぅ……ッ」
突如として強い力で抱き寄せられ、ボクの体はしなやかに湾曲した。
後ほんの数センチといったところで、ボクはの悪事は未遂に終わってしまったのだ。
再度身を捩ろうにもトウカに腕にがっちり固定されて、動かせるのは僅かな頭の回転と手回りだけ。一瞬起こしてしまったと慌てて仰ぐも、依然として変わらず規則正しい寝息だけ聞こえるだけだった。
「もうちょっとだったのに……」
ボクは諦めて、彼の胸に頬を寄せる。
心臓の上に耳をつけると、トウカの優しい心臓の音がとくんとくんと脈打つ音が全身に伝う。ボクの感情は徐々に熱を冷まし、やがて気持ちのいい心地に誘われ始めた。
「ま、いっか……」
キスはいつか、トウカからしてもらいたい。
ボクと同じ感情をいつか共有できたら、それは本当の意味で幸せなれるから。
だから、今日は――。
「……ちゅっ」
――ほっぺで我慢してあげる。
ボクは、頭部を右に傾けて、トウカの頬に唇を寄せる。
むず痒そうにむにゃむにゃと顔を顰めるトウカの顔が、とっても可笑しかった。
ボクは、トウカの背中に手を回して、優しく抱きしめ返す。
目を覚ましたら、きっとボクは怒られる。
未成年と寝床を共にするのは良識に反するーとか言って渋るのは分かってたし、結局勝手に布団の中に入って、トウカが起きるまで眠るのだから。
どうせ怒られるなら、夢の中でくらい、いっぱいちゅーしてやる。
好きな人の腕の中で見れる夢なんだから、トウカに会えないわけがないもの。
――それくらい、きっと許してくれるよね。
*
後日談というか、今回のオチ。
案の定ボクは怒られて、ほっぺをむにむに引っ張られました。
とっても痛かったけど、悪戯の件はバレてないみたい。
結局あの後、ちょっともったいないと思って、眠気に負けるまでトウカの頬にたくさんちゅーをした。
回数は五十回から後は数えないけど。
これは、トウカと一緒になれる日がきたら、正直に話そうと思う。絶対また叱られるのは避けられないなぁ……。
でも、これって不可抗力だよね。
トウカを好きになった原因はトウカが作ったんだよ?
だから、トウカが悪い!
「罰として、一週間お菓子禁止」
「ふぎゃあ! デバフはやだよー!!」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
投稿が滞っているのにも関わらずUAも気づけば12万も突破しておりまして……。三年も経っているだけに感無量です。
最近はモチベも相まって中々進行できていませんが、なんとか更新は続けていきたいという意志もありますので、少しずつ、細々と更新できたらいいなと思います。
妄想をぐっちゃぐちゃに混ぜて、レンジでチンした感じの内容で申し訳ないです。
すっかすかですが楽しんでいただけたら何よりです。