その頂を君に~名家の姫と英雄伝~   作:結城真尋

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プロローグです。

主人公は三国志の人物の名を借りたオリ主です。

さらに洛陽、統治体制、人物の生い立ち・家庭環境などに関してねつ造が多々あります。

純粋な三国志とはかけ離れていますのでご了承ください。

それではどうぞ。


プロローグ

秋も深まり冬の到来を感じさせる帝都・洛陽の裏通りを冷たい風が通り抜けていく。

 

今日の夕飯の材料である野菜を買い求めた張恰に風に乗ったどこかの夕飯の香りが届いた。

 

高祖が建てた前漢の流れを汲む後漢の都であるここ洛陽。

 

その中心街である大通りは夕暮れ時というのに人の往来が絶えず、にぎわっていた。

 

夕飯の支度の煙が漂う家々、客の呼び込みをする商売人、道端で談笑する人々。

 

大路の先には皇帝陛下の宮城を望み、帝国の繁栄を感じさせるようだ。

 

ーー今日のご飯はなんですかね。

 

ふと張恰は思った。

 

「おい、そんなとこに突っ立ってたら邪魔で通れないよ!」

 

そんな言葉で我に帰る。

 

急いで道を空けると、そこを荷物を持った商人が通り過ぎて行った。

 

ふと潮の香りが鼻をかすめる。

 

褐色の屈強な男たちから、ああ揚州の商人かなと思う。

 

洛陽のある司隷の河東郡には解池という塩が取れる湖がある。そのためここ洛陽での塩はその解池からの塩が多く出回っているが海でとれるものより香りは薄い。

 

ーー塩で単純に野菜炒めもいいですね。

 

まだ張恰は夕飯の事を考えていた。

 

 

そんな大通りから一歩わき道に入った裏通りに入る。

 

するとそこは先ほどまでのにぎわいを感じさせない静かさがあった。

 

日ももうすぐ落ちようかという夕暮れ時の裏通りは薄暗さが増し、一層寂れている様に見えた。

 

遠くから聞こえる表通りの人馬の音とは反対にここは静かだった。

 

ふぅ、と息を吐いて手近な打ち捨てられた廃材の上に張恰は腰を下ろし、野菜の入った袋を横に置いた。

 

「やはり人通りが多いですね。疲れました・・・・・・。」

 

そう呟いて腰にある竹管から水を飲む。

 

喉を通る水はぬるまったものだが、それでも心地よく感じる。

 

ふと、あたりを見渡した。

 

打ち捨てられたゴミ、舗装されていない道路、空家同然の家々、そして横たわる人。

 

洛陽、と聞いてこの国の人々の多数が思い描く華やかな風景とは真逆の光景がそこには広がっている。

 

大通りを光とするなら、ここ裏通りは闇。

 

表通りの風よりも心なしか冷たく感じられる風が体を冷やしていく。

 

張恰にとっては最早見慣れた光景ではあるが、思う

 

ーーこの大帝国の首都の真の姿はこれですか・・・・・・。

 

高祖・劉邦が前漢を建ててから既に350年以上経つ。

 

昨今は皇帝陛下の代変わりも早く、前漢の高祖や武帝のような御代の長い皇帝はいない。

 

今代の皇帝である劉宏様もお体が弱く、病なのではないかという噂も洛陽内では囁かれている。

 

大帝国の広い領土のあちこちでは盗賊などが跋扈し始めているという。

 

洛陽まで来るのも一苦労さ、と幽州からの馬商人がこぼしているのを聞いたことがある。

 

御用達の商人が訪れる回数も少しづつだが減ってきているのを張恰は感じていた。

 

はっきりと最近の世は乱れが生じてきてると言えた。

 

ーー一体これからどうなるんでしょうか、この国は。

 

そう、思わざるを得ない。

 

しかし

 

「僕にはなんの力もありませんから・・・・・・」

 

となにもない手のひらを見てうつむきながら張恰はぽつりと言った。

 

張恰はまだ子供だ。

 

しかし自分がこの世を変えられるような英雄であると夢想することも、変えてやろうという意気込みもない。

 

それはとうの昔に捨ててしまったものだ。

 

そう思える程に、いろんなものを知ってしまったのだ。

 

ふぅ、とまた張恰は息を吐いた。

 

 

 

ーふわりと上品な香の匂いがした。

 

視界に金色がちらつく。

 

はっと頭を上げると

 

女の子がいた。

 

歩いているので後ろ姿しか見えないが、一目で高価とわかる服を身にまとい、彼女自身の金髪を大きく二つに巻いている。

 

背丈は張恰と変わらないくらいだろう。

 

この裏通りには似つかわしくない彼女のいで立ちと、彼女自身の輝く金髪も相まって張恰は思わず身入ってしまう。

 

ーーまるで物語のなかの天女の様だな

 

そう思っていいるとその少女はふと立ち止まり、辺りをきょろきょろし始めた。

 

はっと張恰は我に返り、少女に声をかける。

 

「あのー、どうしました?」

 

少女はいまだきょろきょろしている。

 

「あのー、どうしてあなたのような人がここに?」

 

少女きょろきょろ。

 

そのうちに少女とそれを見ていた張恰の視線が重なった。

 

「あのー・・・・・・「ここは」はい?」

 

鈴のような綺麗な声だった。

 

「はい、どうしました?」

 

問いかける張恰と少女は真正面から向き合った。

 

 

 

「ここはどこですの?」

 

まさかの迷子だった。




週に2回程度の更新になると思います。

どうぞよろしくお願いします。
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