魔法少女リリカルなのはBlack 番外編   作:黒崎ハルナ

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アプリでコラボが決定した時の黒崎ハルナ。
「……書かなきゃ!」
ネタバレ防止でイベント終了間近の投稿となります。続くかどうかは未定。
注意 今回、演出の都合で一人称と三人称が混ざった様な文章になっています。読み辛かったらすいません。


唄いつなぐ小さな魔法編
撃槍が唄い、黒銃が撃ち抜き、そして――


 つまるところ、この出会いは刺激的ではあるが、特別意味を持たないものだった。

 世にも奇妙な偶然と、ほんの少しの奇跡。それが重なって起きたあの出会いは、俺の記憶に残ることはないらしい。

 まあ、それは別にどうでもいい話だ。

 なにせ俺というイレギュラーの介入が、あの事件を解決に導いたわけでも、ましてや誰かの笑顔を護ったわけでもない。俺以外の、俺よりもヒーローに相応しい連中が華麗に解決したからだ。俺はそれに付き合っただけの脇役。

 世は全てこともなし。つまりは、そういうことだ。

 

 ──救ったのはお人好しを通り越した馬鹿二人。

 

 ──二人を導いたのは頭の硬い防人と、運命の名を持つ子。

 

 ──二人に力を貸したのは人助けが趣味な友人を持った少女と、夜天の王様。

 

 ──二人に知恵を授けたのは、後の未来で出会う筈の姉妹たち。

 

 俺がしたことは、ちっぽけで意味のない行為だけ。

 だが、だからこそ、俺はこの一連の出来事を記録する。記憶に残ることの無いこの体験を、いつかの未来の俺が閲覧する為に、俺は音声記録という形で残すことにした。

 さて、先ずは何処から語ろうか。

 

 やっぱり、最初はあれからだろうか。

 俺こと黒道(こくとう)リクトが()()()()に飛ばされた日のこと。最短で真っ直ぐに一直線に誰かを救う()()との、そのファーストコンタクトから──

 

 

 

 ヴァリアント・コア最深部で多重ロックされた音声データの一部から抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたら、見知らぬ工場に居た。

 

「……は?」

 

 辛うじて出た言葉は、なんとも間抜け極まるものだ。正直、頭が理解することを放棄している。

 魔導師なんてものをやっているからか、常日頃から非日常やら超常現象には慣れてはいるつもりだった。つい最近も、自称魔法少女と名乗る女子小学生と一緒にプールで水着泥棒に全てを捧げた変態の化身を消し炭にしたくらいだ。

 非日常側の人間は人の皮を被った化け物と変わらない。そして、優秀な化け物ほど厄介ごと(トラブル)に巻き込まれ易い傾向がある。俺のように超一流の魔導師なら尚更だ。

 だが、いくらなんでもこの状況は予想外過ぎる。

 昨晩、確かに俺は自分の家の自分の部屋で寝た筈だ。鍵も掛かっていたし、近所で不審者が現れたという情報も聞いていない。拉致られるほど誰かに恨まれるようなことはここ数年はしていない……と思う。

 とにかく訳がわからない。この一言に尽きる。

 拉致にしては手足を拘束されていない。身形は寝る直前に着ていた寝巻き──半袖短パンのまま。俺をこの場所に放置したやつの目的が見えてこない。

 ──つまりこういう場合、被害妄想気味なくらい慎重に行動をした方がいい。

 数秒ほど考えた挙句、俺は勢いよく立ち上がった。やることが決まったのなら、真っ先に確認することがあったからだ。

 

「……よかった。()()()があるなら、なんとかなる」

 

 短パンのポケットにあったソイツを握り締め、俺は安堵の息を吐いた。

 ヴァリアント・コアと呼んでいるコイツは、文字通りの意味で俺の生命線だ。コイツがあって初めて俺はフォーミュラという、魔導師としての力を行使することができる。ヴァリアント(コレ)が有れば、どうにかできる筈だ。

 

「とりあえず、外に出るか」

 

 幸いにも道は一本道で、何やら騒音も聞こえる。つまり……誰かがいる。打撃音や爆発音が聞こえるのは不安ではあるが、いつまでもこの場に座り込んでいても、状況が変わるわけもない。

 それなら、腹を括って前に進むべきだ。

 

「上等だ」

 

 俺は小さく笑みを浮かべていた。

 不思議と気分が高揚しているのがわかる。久しぶりの鉄火場に、無意識に気持ちが昂っているのだろう。理不尽上等。絶対に、こんなふざけた余興を仕組んだやつを殺してやる。

 

「リライズアップ」

 

 変化は一瞬。呟いた起動の言葉と共に握っていたヴァリアントはリボルバーへと姿を変え、着ていた服もフォーミュラスーツと呼んでいる黒一色のものへと変わる。この非常事態に撃鉄は起こしておいた方がいい。

 そうして一本道へと足を踏み出し、ほんの十歩程度歩いたくらいに、その光景は目に入ってきた。

 

 誰かが()()()と戦っている。激しい爆発音と斬り結ぶ剣音が戦場に鳴り響く。それはさながら、SF映画のワンシーンにも見えた。

 機械の化け物が群れを成して、三人の人間を取り囲んでいる。その包囲網の中を三人が戦っているという構図だ。しかも、驚くことに居合わせている三人全員が女性だった。彼女たちの服装は俺のフォーミュラスーツの様な戦闘服。更には各々が剣を振ったり、光線の様なエネルギーを撃ち出したりして応戦している。唯一、オレンジ色の戦闘服を身に纏っている女性だけは、拳オンリーという中々に男らしい戦闘スタイルだったが。

 加えて俺を驚かせたのは、

 

「……歌?」

 

 歌だ。戦場に似つかわしくない歌が流れている。旋律を奏でているのは三人の女性。信じられないことに、彼女たちは戦いながら歌っている。

 ロボットらしき四足歩行の敵と、歌を歌いながら戦うワルキューレ。マジもんのSF映画の世界じゃねェか。

 

「ターミネーターか、トランスフォームか、悩ましいとこだな」

 

 軽口を叩きながら考える。

 俺はどちらの味方に付くべきか。それが問題だ。

 静観はありえない。この場に拉致られた理由がわからない状況下で、隠れて遣り過ごすメリットは薄いからだ。

 そうなると、やはり人間側──つまりは、現在進行形で劣勢状態の彼女たちに加勢するべきなのだろう。

 とはいえ、それも軽率だ。あの三人が俺にとって味方になるのかが不確定な状況。最悪の場合、敵の一人としてカウントされる可能性も捨てきれない。なんなら、俺を拉致した連中の仲間という線もある。

 

「ぐうぅ……!」

 

 そんなことを考えていたら、戦況が変化した。

 最前線で戦っていたオレンジの女性が、四足歩行の一撃をモロに受けて倒れる。急いで立ち上がるも、他の仲間二人とは完全に孤立してしまった。敵に四方八方から囲まれている状況下で、味方からの援護が望めないのは致命的だ。

 

(ひびき)ッ!」

立花(たちばな)ッ!」

 

 仲間らしき二人が悲鳴にも似た声で女性の名前を叫ぶ。だが、彼女たちも敵に囲まれている所為で、直ぐに助けに行くのは困難だった。

 群がる四足歩行の機械の軍団。逃げ場も助けも不可能な状況。

 久しぶりの鉄火場。当たり前の様に迷っている暇はないらしい。

 仕方ない、と俺は苦笑気味にヴァリアントの引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──しまった! 

 

 立花響は四方を敵に囲まれた状況を理解して、自らの失態を恥じた。

 突如、薬品工場に出現した未確認の敵。他の任務の都合、仲間の数人が不在という不安を抱えた現状戦力。加えて、ここ最近の激務による見えない疲労。

 それら全てが小さく積み重なっていき、立花響の心に僅かばかりの隙を与えてしまった。

 更に最悪なのは、そのことに本人が気づいたのが戦場のど真ん中ということだ。踏み込みの甘さが脚を滑らせ、死角からの敵の一撃を真面に受けてしまう。

 

「ぐうぅ……!」

 

 致命傷にはならない。こんな小さなミスで死ぬような、柔な修羅場を経験してはいない。だが、状況は最悪と言っていいだろう。

 

「響ッ!」

「立花ッ!」

 

 遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。

 仲間と逸れた。敵に囲まれ、逃げ道はない。

 どうする。響は奥歯を強く噛んだ。

 

 ──その時だ。

 

「……うわッ!」

 

 複数発の発砲音が鳴り響き、頭上から鉛玉が降り注いだのは。

 

「なになに!」

 

 真っ先に思い浮かべたのは、この場に居ない仲間の一人による援護射撃。しかし、仲間──雪音クリスは他の任務で海外にいる筈だ。

 では、誰が──

 その疑問は直ぐに晴れた。

 

「子供……?」

 

 工場の出入り口付近に立つ人影を見た響は、あまりにも予想外な人物の姿に目を丸くする。

 そこに居たのは少年だった。年の功は十代前半。中学生か小学生か、それくらいの幼さだ。自分よりも年下なのは間違いない。

 少年の右手には、無骨で巨大な拳銃が握られている。本来なら不釣り合いな組み合わせ。しかし、響にはその姿が不思議なくらいにさまになってる様に見えた。

 もしや、今の射撃はこの少年が? 

 そんな当たり前な疑問が生まれる。

 

「立花、無事か!」

「響、大丈夫?」

 

 呆気に取られていた響の元に、仲間の二人が駆け寄って来る。

 

「あの少年は?」

 

 仲間の一人、風鳴翼(かざなりつばさ)が件の少年を見つめた。どうやら、彼女にとっても予想外な乱入者らしい。

 

「わかりません」

 

 尋ねられた響は首を横に振る。響は改めて目の前に居る少年を見るも、やはり響にはその少年が何者なのか見当がつかない。もう一人の仲間である小日向未来(こひなたみく)も、響同様に首を横に振った。

 

「……さあ」

 

 不意に、ニヤリ、と少年が笑った。その笑みを遠巻きに見た響は、自らの背中に冷たいものが走る感覚を覚える。あの笑みを自分は知っている。幾たびの戦場で度々目にしてきた。あれは──

 

「ショータイムだ」

 

 狂気を孕んだ笑みだ。

 

「危ない!」

 

 響の隣で未来が叫んだ。

 周囲に居た機械兵器たちが、一斉に少年の居る場所へ向かって行ったからだ。だが、当の本人たる少年に焦りの色はない。まるで散歩に行く様な足取りで、敵が密集する中へ歩き出した。

 それは、自殺行為に近い行動。ものの数秒後には溢れ返る機械兵たちによって、少年の身体は見るも無残に喰いちぎられるだろう。

 だが、それは少年が響の中での常識に当て嵌まる場合だけだ。

 響は知らない。

 目の前にいる少年が普通では無いことを。

 ここぞとばかりに駆動音を鳴らした機械の軍団が、その狂気を少年へと向ける。だが黒一色の服に身を包んだ少年の拳銃は、その悉くを見過ごさない。まるで音楽を奏でる様に鳴り響く銃声。踊る様に軽やかな足取りで少年は戦場を立ち回り、規則正しい銃声のリズムを刻む。一瞬にして少年を取り囲んでいた機械の兵隊が物言わぬスクラップとなり、硝煙が花道を彩る。

 

「凄い……」

 

 最初に呟いたのは誰だったか。響は愕然とその光景に目を見張るしかなかった。自分よりも頭一つは年下であろう少年がたった一人で、それも拳銃一つで敵が密集した場所へ向かった時、響は心臓が止まるくらいに焦りで不安になったからだ。

 ところが実態はこの有様だ。不安は杞憂だった、というレベルじゃない。ここに来るまでの道中でも散々自分たちが苦戦した機械兵たちを、少年は赤子の手を捻るかの如くあしらってみせた。

 こうなれば後は消化試合だ。この場での強者と弱者を決める天秤は決した。

 

「Humph,it's like hunting ducks(はん、鴨打ちかよ)」

 

 退屈そうに少年が呟く。まるで物足りない、と言っている様だった。

 その期待に応えるかの様に、残骸を掻き分けて一回り巨大な機械兵器が姿を見せる。最後の一体。おそらくは敵の親玉。ソレが少年の背後から現れた。

 強固な装甲と巨大な体躯。人間一人を押し潰すには十二分な質量の塊が、無防備な少年を襲う。

 

「伏せてッ!」

 

 叫ぶよりも早く、響の足は前に向かっていた。彼女の持つ武器──アームドギア・ガングニールが響の想いに応える。

 

「うおおおぉぉォォ!!」

 

 腰に付いたスラスターが火を吹き、響のスピードを更に上げて行く。元より立花響の(チカラ)は誰かを護る為の力。彼女は誰かを助ける為なら迷わない。いつだって最速で、最短で、真っ直ぐで、一直線に── 

 

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 握り締めた拳が唸りを上げて、巨大な機械兵器に突き刺さる。

 巨大な質量すらも上回る重い一撃──それは親玉だけでなく周囲に僅かばかり残っていた機械兵器たちすらもまとめて消し飛ばし、派手な爆発音が夜の工場内に響渡った。

 

「大丈夫! 怪我とかしてない?」

 

 舞い上がる粉塵と硝煙と爆炎。その中心で、先ほど見事な一撃を魅せた響は少年に近寄り、少年の安否を気遣う。

 

「Great. It was a good blow(凄いな。良い拳だ)」

 

 そう言って少年は笑った。先ほどまでの狂気を孕んだものではなく、純粋な年相応な笑顔だ。もしかしたら、響の馬鹿みたいな一撃を目の当たりにして興奮しているのかもしれない。その証拠に、少年はどこか嬉しそうだ。

 しかし、それを今の響が確認できる余裕は無かった。

 

「……へ?」

 

 目を丸くする響。

 突然だが、立花響は中々に特殊な立場にある人間だ。だが、普段は私立リディアン音楽院高等科に通う普通の女子高生である。当たり前の様に友達と遊び、青春を謳歌する普通の女子高生だ。

 つまり、何が言いたいかと言うと、

 

「あ、あい・きゃんのっと、イングリッシュ」

「Can you not speak English? (英語が喋れないのか?)」

「ま、まいねーいず、ひびきたちばな」

「What do you say? This woman(何を言ってるんだ? この人は)」

 

 立花響は普通に英語が、というか勉強全般が苦手だった。

 

「響……」

「立花……」 

 

 遠くから仲間二人の冷ややかな視線が響の胸に突き刺さる。一応、全国の女子高生たちの名誉の為に言っておくが、日本の高校では英語は必須科目だ。程度によるが、英会話が得意な高校生も大勢いる。あくまで立花響が酷過ぎるだけだ。

 困った。これでは会話ができない。そう思った響は、なんとか必死のボディランゲージでコミュニケーションを試みる。その姿はなんとも間抜けだった。しかも、当の響は至って真面目だ。

 

「……」

「み、みく〜」

 

 だんだんと自分を見る少年の目が冷ややかなものに変わっていくのを感じた響が、後ろにいる親友に助けを求めた。親友の未来は呆れ顔だ。

 すると、

 

「……くッ」

「く?」

「くッははははぁ! ヒィー! 腹痛え! 今時マジなボディランゲージしながらCannot speak Englishとか言うやつ初めて見たわ!」

 

 突然、少年が腹を抱えて笑い出した。まあ、今の響の言動を見れば当たり前だが。

 しかし、そんなことよりも響が気になったのは、

 

「に、日本語喋れるの!」

「いや、喋れるだろ。日本人だし、俺」

「え、それなら、なんで英語で喋ってたの?」

「いや、なんとなく。つーか、あんた俺よりも年上だろ? 普通は英語くらい喋れるって思うじゃん。なんなら、さっきのだって中学生レベルの英会話だし」

 

 そう言われて、へなへなと座り込む響。なんと言うか、あまりにも惨めだった。

 

「あたし呪われてるかも」

 

 実に久しぶりに、響はかつて自分がよく口にしていた口癖を呟いたのだった。




時間軸的にはBLACK側はAct.12から少し後。シンフォギア側はイベントストーリー冒頭となっています。
シンフォギアは良いぞ。……色々な意味で。
サブタイトルを戦記絶唱シンフォギアXD編か唄いつなぐ小さな魔法編かで悩んだのは内緒。
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