生きているのなら、神様だって殺してみせるベル・クラネルくん。 作:キャラメルマキアート
注意。
この話しは多少(?)のネタバレ要素、キャラ崩壊、メタ要素等様々含まれております。
更にはお蔵入りにする予定のものでした。
こんな未来が訪れるかどうかも分かりません。
閲覧の際には、ご一考お願い致します。
それでは短いですが、どうぞ!
#? バレンタインの一コマ
「ああ! 湯煎とは鍋にそのまま入れることではないのですよ!」
「違うのですか?」
「ふふふ、私のを見て。ちゃんと溶けてるでしょうって、焦げてる!?」
「お姉様。これくらいの甘さはどうでしょう?」
「......ん。うん、良いと思います。あ、私のも味見してくれますか?」
「やっぱり、インパクトが大事だから、身体に塗って私を食べてっていうのはどうかなー?」
「そ、それはちょっと......火傷じゃ済まないと思うのですが」
「ねぇ、これで良いの?」
「ああ、大丈夫だろう。後は焼き上げるだけだ」
「お前! それはボクが使おうとしていたものだぞ!」
「あ? 何や、ドチビ。小さくて気付かんかったわ」
「......一々喧嘩するなよ」
「あら、意外と難しいわね......」
「テンパリングは、きちんとやらないといけませんからね」
「うふふふ......団長に食べて貰う。私の______を」
「お前も難儀だのう......」
姦しい。
ひたすらにそう言える、この空間は、酷く甘ったるい匂いに包まれていた。
今日は世に言うバレンタインデー......の前日、バレンタインイブと呼ばれる(?)日であった。
女性が意中の男性に自身の気持ちを伝えようと、それをチョコに乗せて届けるという二つの意味でも"甘い"日だ。
元々これは某お菓子メーカーの策略だと言われていることだが、浸透してしまえばそれが正しいことになってしまう。
嘘も最後まで通せば本当になるのだ。
ちなみに最近では義理チョコだったり、友人同士で交換する友チョコだったり、男性が女性へあげる逆チョコだったり等、色々な種類がある。
まあ、チョコに縁の無い者には全くもって関係の無い話ではあるが。
「取り合えず、お二方はきちんとチョコを溶かしてから、型に嵌めて固めるところから始めてましょう」
「それは最早、意味があるのですか?」
「溶かしたチョコをまた固めて、手作りって凄く痛いというか、残念というか......」
「何を言っておられるのですか! 基礎が出来ていないのに、応用に向かおうとするなど、言語道断です! あらゆる技術はそれの土台となる基礎があるからこそ確立されているのです!」
「確かにそうですね......」
「それにもし、この腕でチョコをどうにか作れたとして、果たしてあなた方の意中の男性は心の底から美味しいと言ってくれるのか!? 断じて否です! 貴方達はそれに甘えても良いんですか!」
「......私が間違っていました。認識を改めます」
「......うん。私、料理が出来ないことを言い訳にしていたのかもしれない。これからはもっと頑張ってみますね!」
和装のヒューマンの少女が、緑を基調とした服にエプロンを着けた格好のエルフとヒューマンの女性に説教をし、それに二人が応え、熱い少年漫画のような展開になっていた。
何が違う気がするが、まあ、ヒューマンの少女の言うことは正論なので、何も間違ってはいない。
「出来ました! ミルクチョコクッキー!」
「うん、良く出来てると思います。私のはビターにしてみたんですけど、多分今まで一番の出来です!」
「ふふ、お姉様との連係プレーで、甘いのと少し苦いのを両方楽しむことが出来、更には飽きずに食べることが出来る。正に完璧ですね!」
「もう、そんなに褒めないで下さい! でも、これならあの人も......」
えへへと何かを妄想して、ニヤニヤしている
種族は違うものの、姉妹と言われても違和感が無いほどにその表情は一致していた。
「身体にチョコを塗るのは駄目か~」
「塗っても塗らなくても肌色的に変わらないと思うんですけれど......」
「うわー何気に酷いこと言うなぁ。まあ良いけど。あ、それならチョコの口移しなんてどうかな? 生チョコ辺りで」
「く、く口移しですか......!? ......あ、止めてくださいご主人様。焦らさないで下さい。欲しいのです、ご主人様の唾液と混ざったそのチョコがぁ......」
「何時もの妄想モード入っちゃったなぁ。でも、キスかぁ......えへへ、激しいのが良いなぁ......」
アマゾネスの少女とメイド服を着た
途中あげるのではなく、貰ってしまっていることにどちらも気付いていなかったが。
まあ、乙女の妄想に余計なことを口出しするのは、不粋だろう。
「出来た......うん、良い感じ。これなら喜んでくれる」
「初めてにしては、中々のものじゃないか。ああ、安心しろ。お前から貰って嬉しくないやつはいない」
「......そっちこそ。流石お母さん。料理が出来るって、初めて知った......そうかな......ふふっ......」
「まあ、まだ弱小だった頃は私が作っていたからな。まあ、今はそんな機会はないが。あと、お前もそう呼ぶのか......」
「今度、別の料理食べてみたい......ママの方が良かった?」
「呼び方の問題じゃないのだがな......まあ、考えなくもないがな」
金髪のヒューマンの美少女と、同じく金髪のハイエルフの美女は仲睦まじげに、会話を繰り広げていた。
ハイエルフの美女は、ヒューマンの美少女にお母さんと呼ばれたことに対して満更でもない表情を浮かべており、更に言えば二人の容姿から親子にも見えなくもない。
しかし、二人の意中のお相手は同一人物で、ある意味親子間闘争もありえるのだった。
「出来たで! このアルコールたっぷりというか、最早アルコールのボンボン・ショコラであいつもイチコロな筈や。そして、その後は......ぐへへへ」
「あー! お前、あの子に何てものあげようとしてるんだ!」
「うっさいわ! ドチビ! 手段なんて選んどる場合とちゃうんやで、今は!」
「た、確かにそうだけど! それって、只の既成じじry」
「ストップ。あんた、それでも一応三大処女神でしょうが。てか、あの子はこれくらいの酒じゃ酔わないってことくらい知ってるでしょ?」
「た、確かに。酔わせてやろうと思ったら逆に酔わされてるなんて、ボクらの間じゃざらだもんね......」
「あいつ、前一緒に飲みに行ったときに、五時間くらいぶっ続けで飲み合いしたんやけど、結局うちが面倒見てもらうはめになったんよなぁ......」
「私も、酔わせて一回くらいぶち込んで貰おうと思ったんだけど、いつの間にかあの子の膝の上だったわ」
「今、不穏なワードが聞こえたんだけど! あと、膝枕すごい羨ましいんだけど!!」
三柱の神達は、かなり残念なトークを繰り広げていた。
一部ではロリ神様と呼ばれている髪型をツインテールにした女神は、エプロンからその豊満な双丘がはみ出しそうになっており、それに対して無乳と呼ばれる赤髪細目の神は、平原、平野、ステップという文字列が浮かぶ程に何もなかった。
更に言えば、もう一人の赤髪の鍛冶神は、無乳と違いかなりの巨乳であり、圧倒的格差社会が展開されていた。
「これで、良いのかしら?」
「はい、上出来です! これなら作る際にチョコにツヤが出て綺麗に見えますし、味も良くなります」
「ふふっ。たまにはこういうことに手を出してみるものも、良いものね」
「やっぱり、料理とかそういうのはされないんですよね?」
「そうね、お付きの者が全てやってくれるから。でも、これを機に始めてみようかと思ったわ」
「それなら、嬉しいです! もし良かったら今度一緒に料理やってみませんか? 私もそこまで、上手なわけではないですけど......」
「ありがとう。貴方に教えられるのはその、嫌ではないわ」
ハーフエルフの美女と美の女神は、意外にも意外に仲良さげな雰囲気を醸し出していた。
普段料理を行わない女神をハーフエルフの美女がサポートする形だ。
全くもって、逆の性質を持つ彼女達ではあったが、それが逆に良かったのかもしれない。
無論、二人の意中のお相手は同一人物であるのだが。
その先にある未来は誰も知らないだろう。
いや、知りたくもない。
「仕上げに、____を入れてって、完成! 私の団長への愛が籠った、《血酊股隷賭刑鬼》!!」
「......流石の手前も、何も言えぬ。何が入っているのかもな......」
「ふひひひひ......団長、私。私、団長。合体接続結合融合癒着接着密着連結接合結魂!!」
「突っ込みどころしかないが、最早お主は誰なのだ......」
狂乱に陥るアマゾネスの少女と、それを悲しそうな表情で見つめるハーフドワーフの美女。
何がそこまでさせるのかと、彼女の思い人へ合掌するハーフドワーフの美女は、今ここにいる面子でもトップクラスな豊満な双丘を揺らしながら、自身の作ったチョコを眺めていた。
武器や防具を造るのにかけては、彼女は達人とも言える腕であったが、菓子を作ることに関してはてんで素人で、出来たものもトリュフチョコであった。
実は意外に簡単に作れてしまうのがこれで、素人の方にもおすすめ出来たりする。
ハーフドワーフの美女は、このチョコを渡すある人物の顔を想像して、すぐに顔を横に振って、雑念を消し去ると、ラッピングに取り掛かることにした。
どうせ、あれは大量にチョコを貰うのだろうなという、少し諦めの入った表情をしていたが、同時にうっすらと微笑みが見えた。
意中の男性がモテるのは、全くもって気が気ではないのだが、それと同時に嬉しいものがあるのだ。
色んな人達に魅力的だと思われているということが。
故にハーフドワーフの美女は、渡す際には思い切り気持ちと皮肉を込めてぶつけようと決心したのだった。
これが彼女達のバレンタイン前夜。
一人一人が思い思いに気持ちを込めたチョコレートを作り、翌日の決戦へ向けての準備の日。
恐らく当日は、どんちゃん騒ぎで酷く大変なことになるのだろう。
渡される当人が(死人が出るかもしれない)。
しかし、きっとそれらは笑顔に溢れていて。
きっと、皆が幸せな日になるのだろう。
チョコレートの甘い香りは漂わせながら、この時間は過ぎていく。
「......こんなところで、何をしている?」
「うわあっ!? って、君か......驚かせないでくれよ」
「......それはこちらの台詞だ。何故、こそこそと隠れているのだ」
「ああ、うん。何か凄く嫌な予感がするんだよ。親指が酷く疼くんだ」
「......そうか。では、俺はここで退散するとしよう」
「ちょっと、待ってよ! お願いだから、一人にしないでくれ!」
「人の、恋路に、関わると、録なことに、ならないからな......!」
お願いだからと、小柄な金髪の美少年が、2mを越える身長の大男の腰に掴まりながら、ずるずると引きずられていく。
しかし、それでも大男が中々進めていないのを見ると、美少年の筋力は相当なものと言える。
まあ、両者は身体スペック的にはほぼ互角であるので、こうなっても仕方がないことではあるが。
ちなみに金髪の美少年は、親指の疼きの通り、困難に立ち向かうことになったらしい。
「あ"ぁ? 今なんつった糞猿!!」
「うっせぇなぁ。キャンキャンと。だから、てめぇじゃチョコ貰えねえつったんだよ、駄犬」
「んだとゴラァ!!」
「そういう態度がモテねぇんだよ。てめぇが旦那に勝ろうと思うなんて1000年早ぇ。犬は犬らしく、しっぽ振っておねだりしてれば良いんだよ。そうすればお零れで貰えるかもしんねぇけどな! ふははははっ!!」
「ブチ殺す!!」
白犬と赤猿が喧嘩をしているだけなので、特筆することはなかった。
しかし、喧嘩の規模が規模(地形が変わる程の)だったので、後に双首領に粛清される嵌めになるのは決定事項ではあったが。
ちなみに両者、バレンタインは収穫は"0"だったとかじゃないとか。
それを知るのは当の本人達だけであった。
さあ、今日は念願のバレンタインデー。
恋人や奥さん、旦那さんや仲の良い友達、職場の方達から、チョコは貰えましたでしょうか?
街の中が少し浮わついているように感じますが、この独特の雰囲気は嫌いでは無いです。
恐らく今日は、たくさんの愛が生まれる日なのでしょう。
それを考えるととても幸せな日だと思いませんか?
ですから、作者から皆様の幸せを祈って、この言葉を送らせていただきます。
リア充、絶滅しry(掠れてしまって読めない)