生きているのなら、神様だって殺してみせるベル・クラネルくん。 作:キャラメルマキアート
_______《黄昏の館》。
オラリオ最大最強勢力を誇るロキ・ファミリアのホームである。
オラリオの最北端に在る赤銅色のその館は、高層の搭がいくつも重なり、まるで剣山のようになっていた。
その高さは、バベルには及ばないものの、見上げるだけで首が痛くなってしまう程だ。
最も高い中央に座す搭は、空の闇に侵されており、全体が炎のように揺らいでいる。
そう感じさせてしまう程に《黄昏の館》は荘厳な雰囲気を醸し出していたのだ。
「凄い大きいですね......」
ベルは只一言、口をポカンとさせてそう言った。
自身の住んでいる廃教会と比べるのは烏滸がましいにも程があったが、あれはあれで良い味を出しており、慣れれば結構住みやすいのである。
ベルはそう自身を納得させながら、いつかきちんとしたホームに住もうと、あるロリ巨乳の女神様を心に浮かべながら誓っていた。
「そうだな。確かに他と比べても大きいとは思うが、最初は此処もとても小さかったのだぞ?」
口を半開きにしているベルを見て、苦笑しながらリヴェリアは、懐かしむようにそう言った。
「最初、ですか......」
どんな英雄も生まれたばかりの時はとても弱い存在だ。
それと同じようにこの最大最強とも呼ばれるようになったロキ・ファミリアにもそういう長い歴史があるのだと、ベルは感心していた。
「あれ? でも......」
ロキ・ファミリアがいくら最大最強と呼ばれていたとしても、すぐにここまでの規模になった程
それは、ロキ・ファミリアが
そして、リヴェリアはこのホームの過去、最初を知っている。
つまり、リヴェリアの年齢は見た目よりも_______
「......クラネル? 何か余計なことを考えてはいないか?」
「......いえ、何も」
隣から恐ろしいまでの殺気を感じ、ベルは思考を完全に停止し、それを放棄した。
もう少し止めるのが遅かったら手遅れになっていただろう。
何がとは言わないが。
女性に対して、その辺の話は酷くデリケートな問題なのだ。
ベルは二度とそんな愚考はしないと誓ったのだった。
「......全く。ほらこっちだ、着いてこい」
リヴェリアは軽く溜め息を吐くと、ベルを導くように歩を進めていった。
そんなリヴェリアを、ベルは少し駆け足で追いかけた。
『お帰りなさいませ、リヴェリア様』
門の前に辿り着くと、そこには門番らしき男女が立っており、リヴェリアの顔が見えた瞬間には、寸分狂わぬ息の合い具合で挨拶をしていた。
「ああ、今戻った。二人ともご苦労」
『はっ!』
まるで、どこかの軍隊みたいだと、ベルはリヴェリアの後ろでそんなことを思っていた。
やはり、大規模ファミリアにでもなると、ここまで規律が取られるのだろうか。
「すいません、リヴェリア様。後ろの者は一体......?」
すると、男の方の門番がリヴェリアの後ろにいたベルを指し、怪訝そうな表情でそう言った。
「ああ、彼は私の知り合いだ。通して構わない」
「あははは、どうも......」
ベルは苦笑しながら、軽く頭を下げる。
何故、苦笑しているのかと言えば、門番二人の視線が痛いからであった。
察するに、「誰だ、こいつ?」「リヴェリア様に近付くなんて......」等というものを想像できた。
まあ、尊敬する副団長が素性も知れぬ男と一緒にいたら、こんな反応してしまってもおかしくないだろう。
しかし、門番の二人はリヴェリアの許しを得ているのを確認すると、すぐに門を解錠した。
そして、二人は(ベルは歓迎されている感は全く無かったが)門を通り、《黄昏の館》へと入ったのだった。
「......流石に超リッチですね」
「何だそれは......?」
ベルが入ってそうそう、思ったのは自身のファミリアとの貧富の差であった。
案内された部屋は橙色を基調とした落ち着いた装飾が施されている。
置かれているソファやテーブルなどの家具は皆、ベルでは到底手が出せない程の額だろう。
ベルはなるべく部屋のものには触れないようにしようと心に決めていた。
「......ところで、本当に良かったんですかね。部外者が入っても」
適当に座ってくれと、リヴェリアに言われ、ベルは遠慮がちにその高級そうなソファに座ると、同じく遠慮がちにリヴェリアへそう聞いた。
やはり、初めての場所というのは今一勝手が分からない。
「良いに決まっている。私が許可を出している時点で、君は
リヴェリアはそう言いながら、持っていた手提げの袋をテーブルに置くと、中から二本の酒を取り出した。
「ほら、これは君のだ」
「あ、ありがとうございます」
リヴェリアから、《マイホーム》と袋を受け取り、礼を言うベル。
それを確認すると、リヴェリアはもう一つの酒、《神酒》を手に取り、蓋を開封した。
「これは、良い香りですね......」
開けた瞬間に漂ってくるのは、果物系とも、穀物系とも言えない、そんな
今まで見てきた、飲んできた酒の中で間違いなく一番と言える代物だろう。
「飲んでみるか?」
すると、ベルの隣に座ったリヴェリアが注いでくれたのか、グラスを渡された。
「いや、でも......」
「気にするな。それにこうしていれば、もう少しで誘き寄せるだろう」
後半意味深なことを言うリヴェリアに疑問符を浮かべつつ、ベルはそれでは遠慮なくと、《神酒》を口に含もうとした、その時だった。
「この匂い、《神酒》やなっ!?」
バンッと部屋の扉が荒々しく開かれ登場したのは、綺麗な赤髪と細目がちの双眸をした美女だ。
まるで、職人に造り込まれたようなその肉体の造形は間違いなく神のそれであった。
_______ロキ。
最大最強と呼ばれるロキ・ファミリアの主神である。
「思ったよりも早かったな......」
リヴェリアの発言に、ベルは誘き寄せるとはこういうことなのかと、納得していた。
まあ、自分のファミリアの主神に対して結構酷いとは思っていたが。
「それを、よこせや!」
すると、ベルの持っていたグラスを横からかっさらうようにして、ロキは奪うと、それを一気に嚥下する。
素直に良い飲みっぷりだと、ベルは思っていた。
「ぷっ、はぁ!! くぅ......やっぱ《神酒》は最高やなぁ!!」
ロキは焼けた息を吐くと、グラスをテーブルへ叩き付けるようにして置いた。
その姿は完全におっさんと化しており、間違いなく見るものをドン引きさせるだろう。
「......ふんっ」
「痛っ!?」
リヴェリアはそんなロキの頭部にに拳骨を振り下ろした。
ゴツンという音ともロキの悲鳴が木霊する。
「いきなり、何するんねん、リヴェリア~。めっちゃ痛いんやけど......」
「それはこっちの台詞だ。失礼にも程があるだろう」
はぁと、頭を抑えながら溜め息を吐くリヴェリア。
もしかしたら、何時ものことなのかもしれないとベルは予測を立てていた。
「って、うん? あんた、もしかして......」
「あ、どうも。お久しぶりです。ロキ様。ベル・クラネルです」
漸く意識がベルへと向いたロキ。
ベルは挨拶をすると、軽く会釈をした。
「あの時の礼をしたいと、私が呼んだんだ。別に構わないだろう?」
「......あ、なるほどな。それなら問題ないわ。歓迎するで、《
ようこそ、ロキ・ファミリアへとロキは腕を広げてそう言った。
しかし、最後の言葉のニュアンスを聞く限り、あまり歓迎はされていないようにベルは思えていた。
「てか、それよりも! 何で《神酒》があるんや? まさか、リヴェリアが、うちの為に買うて来てくれたんか? 流石、ママやなぁ」
「確かに買ったのは私だが、お前の為ではない。あと、ママ言うな」
「何や、ツンデレやなぁ。でも、うちはそんなママもウェルカムや!」
とても良い笑顔でサムズアップするロキ。
リヴェリアは深い深い溜め息を吐いて、申し訳なさそうな顔をしてベルを見た。
これが平常運転なんだと言わんばかりの表情だった。
「ママ、僕もありがとうございます」
「......クラネル、君もか」
取り合えず、ベルは流れに乗っておくことにした。
リヴェリアに買って貰った《マイホーム》を挙げながら、ベルはそう礼を言ったのだ。
リヴェリアは溜め息をまた吐くと、もういいと諦めたような表情をした。
『イエーイ!』
パンッと、ベルとロキはハイタッチをしていた。
「なんや、自分。あの時もそうやったけど、結構ノリいいんやな」
「そうでもないですよ。ただ空気を読んだだけで」
そんな風に会話をし始めるベルとロキ。
元々、少々挑発ごしだったロキではあったが、《神酒》が入っているわけか、ノリが合わせやすくなっていたのだ。
酒に酔っているもののノリ程面倒くさいものはないが、分かりやすいものもない。
まあ、酔った祖父に付き合っていたら慣れただけではあるが。
「よーし! 特別にこの《神酒》を飲ませてやる!」
返杯や返杯と、ロキは強引に自身の使っていたグラスをベルに渡してくる。
まあ、実は結構飲んでみたいという気持ちはあったのと、これを断ったら色々面倒だというので、ベルは受け取ることにした。
「......美味しい」
口に含んだ瞬間に、訪れる何とも形容し難い涼やかな香りと、濃厚で甘い、しかししつこくない味わいがベルの鼻孔と喉を突き抜けていく。
酒として最上級の代物だと確信するのにそう時間はかからなかった。
「やろ? ごっつ旨いんや、《神酒》って酒は」
にひひと、笑うロキはまるでいたずら好きの子供のような表情をしていた。
「......ロキ」
リヴェリアはコホンと咳込むと、ロキへ視線を流す。
それを感じたのか、ロキは悪い悪いと言って、またベルへ視線を移した。
「さて、《
そう言うと、ロキは表情を引き締め、頭を深く下げた。
酒に酔っていたとは思えない豹変っぷりだった。
リヴェリアもロキに続き、頭を下げていた。
「......気にしないで下さい、と言っても無理ですよね?」
「ああ、それは無理や。仲間を助けられて、それに恩を返さないなんてことは出きひんよ」
おちゃらけている印象が先行しがちのロキではあるが、彼女はオラリオ最大最強のファミリアのトップである。
故にファミリアを束ねるリーダーとしての気質は持ち合わせているし、そういうところはきちんとしていた。
「......そこでだ、ロキ。クラネルはお前に聞きたいことがあるらしい」
「聞きたいこと? なんや、うちの3サイズか? それともリヴェリ______」
響いたのは拳骨が炸裂した音だった。
ロキは頭部に発生している激痛で、身悶えていた。
「うーん、ロキ様のではなくて、アールヴさんので」
「......クラネルも大概だな」
流石に客人、というより男だからか、拳骨を振り下ろされることはなかったが、流石にこれ以上言うとやばそうだったので、ベルは慎むことにした。
「うちのには興味無いんか! ってとこは置いとくとして。本当に聞きたいことってなんや?」
復活したロキも気を取り直してと、表情をキリッとさせて言ってくるが、先の醜態を知っている分、あまり気を取り直し切れてないようにベルは見えていた。
「実はですね_______」
ベルは聞きたいこと、つまりはソーマ・ファミリアの件について、リヴェリアにしたものと同じ質問をする。
その中で、ベルはエイナから聞いたことも交えながらロキへと話した。
「......そーやな。まずは《神酒》についての認識なんやけどな」
ロキはうーんと考える素振りを見せると、瓶に入っている《神酒》をグラスへ注ぐと、それをベルの前へ見せるようにして持ち、こう言った。
「今、飲んだこれは、所謂"失敗作"っていうやつなんよ」
ロキはそのまま、《神酒》_______"失敗作"を飲み干し、グラスをテーブルへと置いた。
「"失敗作"って、これがですか?」
この極上の旨さを誇る酒が失敗作だとすれば、一体何が"完成品"なのか、ベルには分からない。
「そう、失敗作。まあ、製造過程で出来た"残り滓"みたいなもんやな」
意味が分からんやろと、ロキは言いながら同意を求めるような視線をぶつけてくる。
失敗作ですら、これほど美味な酒になってしまう《神酒》とは一体と、ベルは思考を回転させた。
「で、や。完成品がどんだけ美味いのか気になってな、ある日な、うちが態々ソーマんところに出向いてやって、玄関前でこう言ったんや、『ソーマ! 結婚してくれー!』って」
リヴェリアの溜め息が聞こえる。
現にベルも少し頭が痛くなってしまった。
本来なら情報漏洩を防ぐためにも、他ファミリアの面子を自身のファミリアには入れないのが普通だ。
ベルはこうやって理由があって招かれている所謂
「でもな、全く反応がなくてな。私、めっちゃ恥ずかしくて、ムカついたから入口の扉思いっ切り蹴ってやったんよ」
やっている行動は明らかに他の人からしてみれば、ドン引きも良いところであったし、実際ベルは少し引いていた。
いくら美人とは言え、ここまで残念だと補正も掛かりきらない。
しかし、そこまで騒がれているのにも関わらず反応が無いというのは、ベルも疑問に思っていた。
「んでな、反応無いから変やな思うて、針金をちょちょーって使って、鍵開けて入ってみたんよ」
「......ロキ。これ以上、身内の恥を晒すのは止めてくれ」
リヴェリアは我慢出来なくなったのか、そう提案するがロキの口は止まらない。
もしヘスティアがロキのような性格だったらと考えると、流石に同情してしまうベルであった。
「そしたら、人っ子一人居らへんのよ。閑古鳥が鳴いてるっていうか、とにかく気味悪くてな、流石にうちも引き返_______さずに物色してみたんよ、ホーム中」
「どうして、そこで引き返さなかったんだ......」
リヴェリアのストレスが既に限界に達しそうで、顔色が悪い。
ヘスティアの所で良かったと、確信するベルであった。
「でも、なーにんも見つかんなくて、うちも帰ろうかなと思うた時や。居たんや、ソーマが」
《神酒》をグラスに注いでは、それを煽り嚥下するのを繰り返すロキ。
完全に出来上がっている状態だった。
「......ソーマ様は何をしてたんですか?」
「裏庭で畑を耕してたんよ。なんか《神酒》の材料は自家製の秘伝のものらしくてな。あ、別に《アーヘン》や《レッド・チップ》みたいにヤバいもんちゃうからそこは安心しときな」
店に普通に売っているのと、既に飲んだ時点でそこは気付いてはいたが、まさかそんな"薬"と比べられるとは思わなかった。
まあ、もしそれが本当ならば、ソーマは地上に居られなくなってしまうのだが。
「そんで、うちはソーマに色々話を振るわけや。『最近、どうや?』とか、まあ色々言ったんよ。でも、ソーマの奴は『うん』とか『あぁ』とかそんな空返事ばっかで、あぁぁぁ、もうアホちゃうか! 思い出しただけで腹立ってきた!」
かなりご立腹の様子のロキ。
どうやら、相当無下にされていたのだろう。
ベルはほんの少しだけ同情した。
ソーマに。
「でもな、うちはあの見るからにヘタレ臭漂う優柔不断、糞童貞(仮)のその態度を見逃してな、誠心誠意を込めて極東に伝わる最終奥義、《土下座》を敢行したんよ!」
その"ドゲザ"が何の事かベルには分からなかったが、取り合えず、ボロクソ言い過ぎだろうと、ベルは思っていた。
しかし、それを言ったところでロキが止まるわけでもないし、更に言えばソーマなど、
「そしたら、あのアホは『だが断る』って、オタク臭丸出しの言葉返してきよってな、あぁぁぁ......! マジでふざけんな! お前みたいな奴に言われるのが一番腹立つねん! しばき倒してやろうかと思うたわ!!」
「......ふざけているのはお前だ、ロキ。もう少し真面目に話せ」
話がどんどん脱線し続けるロキに、リヴェリアが痛い頭を抑えながら釘を刺す。
ご苦労様と、後でリヴェリアに言ってあげようとベルは思っていた。
「......あぁ、つまりな。あのアホは自分の趣味にしか興味が無いんよ。オタクって、居るやろ? この分野だけは異常に詳しくて、周りを引かせてしまう奴。あれの究極形がソーマなんよ。趣味の極致に至った完全な趣味神って奴」
「趣味にしか、興味がないって......」
「そうや。あいつは自分のファミリアすら興味がない。ただ、ファミリアの団員はあいつの趣味の為の金を稼ぐ道具に過ぎないんよ」
ああいう趣味ってのは偉い金がかかるからなと、ロキは続けた。
しかし、ベルはそこである答えに辿り着いていた。
「......そこで、その"完成品"の《神酒》が出てくるんですね」
「正解や。なんや、自分頭もキレるんかいの? やるやないかい。その通り、団員に金を稼がせる為に完成品の《神酒》をちらつかせるんや。
確かに《神酒》を起爆剤にするのは理解できた。
しかし、いくら完成品の《神酒》とは言え、
「失敗作の《神酒》、美味かったやろ? 本物は比べ物にならないほどに美味い。そして、酔うんよ。酒自体にな」
「酒、自体にですか?」
「そう、所謂、心酔って奴や。ソーマ・ファミリアの連中は皆、ソーマやのうて、《
めっちゃ、気持ち悪いやろ? と、《神酒》を更に煽りながらそう笑うロキ。
「一種の宗教みたいですね。ソーマ教、とでも言うべきでしょうか」
「確かに、気味の悪い宗教団体と言ってもいいかもしれへんな。でも、あいつは自分の趣味さえ全う出来れば、周りがどうなろうとどうでもいい奴やから、人心掌握みたいなのは起きないやろうけど」
でも、とロキは突如表情を真面目なものに変えそう言った。
「もし、あいつに支配欲なんてもんが出てきたら、めっちゃ怖いよなぁ。酒だけで、自分の思うがままに動く人形が出きるんやで。多分、オラリオ以外の街とかなら余裕やと思うで」
流石にオラリオはうちらが居るから無理やけどと、ロキは言う。
確かに最上級の冒険者達が集うオラリオで、そのようなことを行うのは難しいだろう。
しかし、オラリオ以外の町なら余裕という言葉にベルは戦慄を隠せなかった。
「まあ、とにかく。そうやって団員達は、《神酒》の為ならどんな汚いことでもやるアホに成り下がったっ中わけや。な、胸糞悪いやろ?」
そう言うロキの目は、本当に少しだけ悲しそうにも見えた。
地上の人達は皆、神の子供と言える。
そんな子供達が、こんなことになっていると知れば、そんな表情になる気持ちも分からなくもなかった。
「......ありがとうございました。すいません、只の興味本意なだけだったのに」
「ええよええよ。うちも子供等を助けて貰っとるし。それにあんたがいなかったら、レフィーヤは間違いなく死んでしもうてたからな」
ほんまにありがとうと、ロキはそう言った。
「......大切になされてるですね。ファミリアの人達を」
「当たり前や。うちの子供達や、家族も同然。愛さないわけがないやろ?」
カッカッカッと、笑いながら酒を飲むロキ。
おちゃらけてはいるが、彼女からは母性というのが流れ出ているようにベルは思えた。
「......ふっ、全く」
リヴェリアも、何処と無く嬉しそうな表情を浮かべていた。
こんなにも愛してくれる神様はそうはいないだろう。
恐らく、この関係性故にロキ・ファミリアは、この規模までに成長したのだろう。
「ま、完成品の《神酒》を飲んでみたいっていう時点で、うちも人のことは言えんのやけれどな」
ロキはそう言って、《神酒》の最後の一滴を飲み干した。
そうですかと、ベルは言うことしか出来なかった。
そして、それと同時に
「何か湿っぽくなってしもうたな。いや~、こういうのは苦手なんやけどな~」
「いえ、そんなことはありませんよ。子供達への愛、深く心に染みました。貴方は素晴らしい方です。神ロキ」
照れたように笑うロキへ、ベルは笑顔で称賛を送った。
人である身で、神へこのようなことを言うのは烏滸がましいと思ってしまったが、言わずにはいられなかったのだ。
「ちょ、やめーな。照れるやろ? そういうの言われ慣れてへんのやて......」
顔を赤くして動揺するロキ。
「......私も日頃、お前には感謝している。ありがとう」
「り、リヴェリアまでか!?」
どうやらリヴェリアもこの流れに乗ったのか、追い討ちをかけるようにそう言ったのだ。
しかし、その感謝の気持ちは間違いなく本物で、リヴェリアからはそれが溢れ出ていた。
「あーもう! 調子狂うなぁ!」
うにゃあああと、ロキは頭を掻いている。
それを見て、ベルとリヴェリアは吹き出してしまった。
「......それじゃあ、時間もあれですし、そろそろ」
ベルは立て掛けられている時計に目をやると、そう言って立ち上がった。
「なんや? もう少しゆっくりしてってええのに」
「いえ、晩御飯の準備がありますので」
家事出来るんかいな、優良物件やなと、ロキは言うとベルはそこまでではと謙遜する。
まあ、ベルにも苦手なことはあった。
例えば、洗濯は主に面倒だという理由で。
しかし、それを伝える必要があるか無いかを考える労力も惜しかったので、取り合えず流すことにした。
「それなら、私が入口まで送って行こう」
そう言うと、リヴェリアも同じようにソファから立ち上がった。
「大丈夫ですよ? 通路は覚えましたし」
「気にするな。招いておいて、見送りもないのはな」
それに一杯とは言え、酒を飲んでいるのだしなと、リヴェリアに言われ、耳が痛くなるベルであった。
まあ、酒程度で酔うことはないのだが、お言葉に甘えることにした。
「......あ、そうや」
すると、ロキが思い出したかのように声を上げた。
「今回は助けて貰ったから、多目に見るんやけど。うちの子達があんたのこと気になってるのは知っとると思うけどな、手を出したらマジで殺すから覚えといてな? 特にアイズたんは!!」
「はははは......分かりました。記憶に留めておきますよ」
最後の最後で親馬鹿が炸裂するロキに、やはり苦笑してしまうベル。
まあ、可愛い子や綺麗な子が好きなのは自分も同じなので、もし
「あ、今度、一緒に飲みにでも行きましょう? ロキ様」
「はっはっはっ......! 随分と生意気やね。それなら、うちの行き着け連れてってやるから覚悟しとけな?
そう言って、笑い合うベルとロキにリヴェリアはやれやれと頭を抑えるが、口許は笑っているように見えた。
「それじゃあ、失礼します」
「気を付けてな~。ま、そんな万が一なんてないやろうけどな」
ソファ越しに手を振って、言うロキ。
それを見たリヴェリアが見送りの挨拶くらいちゃんとしろと、注意しようとするが、ベルが良いですよとそれを制した。
その後、ベルはリヴェリアの見送りのもと、《黄昏の舘》から出たのだった。
「随分と気に入ったみたいだね。ロキ」
「まあ、付き合っていくのは楽しそうやな。まだ信頼までは出来ひんけど」
「まだ会って二回目だしね。それで信頼出来るなら誰も苦労はしないよ」
「......あの子は、あんたと同じ匂いがするわ」
「
「あんたも大概同じやろ。 なあ、
みんなベルの童貞に興味ありすぎです!
感想全部それに関することって......
まさか、ホモですか!(確信)
fgoにフィンが実装されたのは嬉しいんですが、神殺しの逸話が分からないのは私だけですかね。