生きているのなら、神様だって殺してみせるベル・クラネルくん。   作:オティヌス

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#39

 オラリオの外れにある古びた教会。

 そこはヘスティア・ファミリアのホームになっている。

 現在、団員は主神であるヘスティアを含め、二人(正しくは一柱と一人)しかおらず、居住スペースとしては地下の一室を利用している状況ではあった。

 過去にはこの教会でも神へ祈りを捧げていた(存在する神ではなく、ある架空の神が信仰対象であったらしい)らしいが、今ではその光景も過去の栄光の如く寂れてしまっている。

 そんな教会の寂れた"聖堂"には、珍しく(・・・)多くのもの達が集まっていた。

「そうか、ベル君が......」

 祭壇の上で脚をぶらぶらさせながら、そう言ったのはヘスティアであった。

 その表情は、ぐぬぬと難しい表情をしており、両腕はしっかりと組まれていた。

『申し訳ありませんでした......!』

 彼女の前には床に頭がつく勢いで、謝罪をする冒険者達がいた。

 全員の表情は見えないが、声から申し訳ないという気持ちが痛い程に伝わってきている。

「......本当にすまない! 俺の判断ミスだった!」

 そして、その後ろから同じく謝罪をするのは髪を角髪(みずら)にした長身の男_______いや神だった。

 彼からも同じく、先程の冒険者達のようにその気持ちが伝わってくる。

「......ヘスティア様。そろそろ良いんじゃないですか?」

 そう横から口に出したのは、ミアハ・ファミリア団長、ナァーザ・エリスィスだった。

 彼女はちょうど(・・・・)薬の調合を頼まれ、あるファミリア(・・・・・)に出向いていた。

 そこで偶々状況(・・)を知り、現在ヘスティア・ファミリアホームにいたのだ。

「......ああっ! そうだった! もう頭あげていいから!」

 長考し、すっかり忘れていたと、ヘスティアは彼らの頭を上げさせる。

「で、ですが......!」

 そう言ったのは髪をポニーテールに纏めたヒューマンの少女で、中々に整った容姿をしていた。

 そして彼女に続くように、ガタイの良いヒューマンの青年、その他冒険者達はヘスティアの顔をジッと見つめた。

 彼らの不安気な顔が一気にヘスティアへと突き刺さる。

「......ヘスティア、責任は許可をした俺に全てある。だから、こいつらを責めないでやってくれ......!」

「タケ......」

 彼の渾名を口にした。

 タケミカヅチ。

 ヘスティアの神友にして、雷神であり剣神である極東の神格、それが彼である。

 昔からの付き合いで仲が良く、ヘスティアが心から親友と呼ぶ一柱だ。

「タケミカヅチ様! 貴方は悪くありません! 悪いのはリーダーである俺です!」

 タケミカヅチの言葉を否定したのは、ガタイの良い長身の男で、タケミカヅチ・ファミリアの団長であった。

「待ってください! 桜花殿一人の責任では......!」

「そうだよ、桜花......!」

 続いたのは先程のポニーテールの少女と、前髪で顔が隠れているヒューマンの少女であった。

「......いや、あれはお前達の体力をきちんと把握していなかった俺に責任がある。命や千草達のせいじゃない」

 ギュッと拳を握り締めるガタイの良い青年_____カシマ・桜花からは後悔の念が溢れていた。

 髪をポニーテールに纏めた少女_____ヤマト・命、前髪で顔が隠れている少女_____ヒタチ・千草はそれをひたすらに否定し続けていた。

「......ねぇ、そんな下らない慰め合いなら後でやってくれない? 今はそんなことしている場合じゃないでしょ?」

 その光景に呆れたナァーザは、鋭い視線とともに彼らへそう言い放つと、タケミカヅチ・ファミリアの団員達は苦々しい顔になった。

 普段表情があまり変わらない彼女ではあったが、その表情は酷く冷たいものであるように思えた。

「......まあ、でも。うちの馬鹿もついて行ってるから、大丈夫だとは思うんだけど」

 冷静にそう言ったのは眼帯をした赤髪の女神、ヘファイストスであった。

 彼女は今回、ベルに同行しているヴェルフの関係者であったために呼ばれたのだが、別段何も心配しているようなことはなさそうだ。

 それほどに彼の実力を信頼しているのだろう。

「......例え、第一級冒険者が居ても、今の(・・)ダンジョンでは何が起こるか分からないんです。もし、ベルに何かあったら......」

 そのまま、ナァーザの視線はタケミカヅチ・ファミリアを貫いた。

 温度を感じさせない絶対零度の視線だ。

 それを向けられた彼らは身震いしていた。

 怒りの感情もあるが

冒険者としての格差(・・・・・・・・・)もその恐怖を助長するものだった。

「......また女......ベルの奴め」

 ヘファイストスは溜め息を吐きながら、今度会ったときにどうしてやろうかと考えていた。

 いつもはいつものようにお茶をしつつ、ベルに膝枕をするというものであったが、今度はその逆(・・・)を敢行してみようなどとも脳内で会議中であった。

「......まあ、ナァーザの心配はともかくとして、ベル達は大丈夫だ。心強い第一級冒険者がパーティにいるのもあるが、ベル自身強い(・・・・)。何も心配はないはずだ」

 ナァーザの隣で、ミアハは彼女達を宥めるようにそう言った。

 何故、ミアハがここにいるかと言えば、帰りがけをナァーザに連行されたというのが正しい。

 最初、何事かと戸惑っていたミアハではあったが、話を聞いてみれば今の事情であったため、立ち寄っている。

 彼にとって、ヘスティアは神友ではあるが、ベルも大切な友人の一人なのだ。

 気にならないわけがなかった。

「ミアハ様!」

「......ナァーザ、落ち着け。お前らしくもない。ベルの実力はお前もよく知っている(・・・・・・・)だろう? 大丈夫だ。ベルは強い」

 珍しく声を荒げるナァーザに、ミアハは語りかけるようにそう言った。

 ナァーザが目に見えて慌てる時は二つしかない。

 ミアハに何かあったとき、もしくはベルに何かあったときだ。

 それらを除けば、彼女は極めて冷静な人物であった。

「......ミアハ達は、ベル君の実力を知ってるのかい? というか、知り合いだっていうのもついさっき知ったばかりなんだけど」

 ヘスティアがふと先程から疑問に思っていたことを口に出した。

 ベルとミアハ・ファミリアの関係である。

「ああ、少し前に色々あって知り合ったのだ。その際、私とナァーザは少し世話になってな(・・・・・・

・・)

 そこからだよと、ミアハは続けた。

 色々とぼかした言い方に、ヘスティアは訝しげな視線を向けるものの、それにミアハは苦笑するだけで答えることはなかった。

 その隣ではナァーザが何故かムッとした表情を浮かべヘスティアを見ている。

 どうしたのだろうかと、ヘスティアは首を傾げた。

「......ヘスティア。この件に関してはしっかりと此方でけじめはつける。そして、お前の判断に全てを委ねる」

 だから煮るなり焼くなりしてくれて構わないと、タケミカヅチは顔を伏せた。

 後ろにいるファミリア団員達も同じ様子で、裁きを待つ罪人のようであった。

 ヘスティアはそんな彼らを見て、はあと息を吐いてこう言った。

「......別に何もしないよ」

 その言葉が耳に届いた瞬間、彼らはざわめいた。

 想像していたものと、声色も内容も違うからだ。

「へ、ヘスティア......?」

「まあ! 確かに! ベル君に怪物進呈なんてして、ボクの前に顔を出すなんて良い度胸だとは思ったけども!」

 先程とうって変わって、ぷんぷんと頬を栗鼠のように膨らませ、ヘスティアはそっぽを向いた。

 やはり怒っているか、いや当たり前だなとタケミカヅチ・ファミリアの団員は次の言葉に備えた。

 自分のファミリアの冒険者が命の危機に瀕し、尚且つその原因が目の前に現れれ自白すれば、思うことなど一つしかない。

 故に、例えどんな罵詈雑言が飛んで来ようと、それはしっかりと受け止めなければならない。

 それがけじめという奴だ。

「......でもね。ベル君のことをちゃんと分かってないボクの責任でもあるんだ。これは」

「......責任?」

 いや責任の有無なら此方にあるはずだと、タケミカヅチは言おうとしたが、ヘスティアは更に続けた。

「うん、責任。分かると思うけど、ボクのファミリアはベル君しかいない。ボク自身、主神としてはあんまり優秀じゃないからね」

 だから、最初ベル君が入ってくれた時凄く嬉しかったんだ、ヘスティアは自嘲するような笑みでそう言った。

 彼女から発せられる雰囲気に、周囲のもの達は皆黙り込む。 

「でもね、ボクは結局それっきりだったんだ。強いベル君に頼りっぱなしで、ボクはただステイタスを更新してその成長に驚くだけ。それならボク以外のファミリアに入った方が断然良いに決まってる。こんなボロボロのホームで、お金も無いのに。なのにベル君は嫌な顔せずにここに居てくれる。......自分が嫌になるんだ」

 あの子にあんな感情(・・・・・)を抱いてしまうなんて、ヘスティアは最後、最早誰にも聞こえない声でそう言った。

 もしそれが露見すれば、自分は何て無様な神だと罵られることになってしまうだろう。

 そして何より、ベルにそれ(・・)がバレてしまうのだけは避けたかったのだ。

「ヘスティア......」

 ヘファイストスはそう名前を呟くが、それ以上言葉が続かない。

 彼女自身、ベルのことを全く理解出来ておらず、少なくとも疑問に感じていることはあり、不確定なことを今のヘファイストスに口に出すのは憚られてしまったのだった。

「っ......! それなら______」

 ナァーザが一体何を言おうとしたのか。

 ミアハにはそれが分かった。

 それを言ってしまえば、先程ナァーザがタケミカヅチ・ファミリアへ言った今は"そんなことをしている場合じゃない"というのに触発してしまう。

 故にミアハはナァーザの前に出て、それを言わせないようにしようとした。

「でも、だからこそ! ボクは理解したい! ベル君のことを!」

 ヘスティアの言葉が叫びとなって、聖堂に響き渡る。

 それは魂からの叫びであり、その声は酷く心に染み込んできた。

 ナァーザはこれによって、言葉を呑み込まざるを得なくなってしまった。

「少し遅いかもしれないけど、ボクは向き合わなければならないんだ、ベル君と」

 ヘスティアはそう言って、タケミカヅチ・ファミリアを見た。

 彼女の目は覚悟を決めたものの目で、一切の曇りがなく、タケミカヅチ・ファミリアを貫いている。

 そして、徐に。

 彼女の口が開かれた。

 

 

 

「だから、ボクをベル君の(・・・・・・・)ところまで連れてって欲しい(・・・・・・・・・・・・・)!」

 

 

 

 ヘスティアのその言葉に、この場にいる全員の時間が停止した。

 

 

 

 

 

 その頃。

 ダンジョン内第十八階層『迷宮の楽園』、某キャンプ地の某天幕にて。

 

 

「_______やあ、歓迎するよ。クラネル君」

 

「久し振りだな。息災だったか?」

 

「ガハハハハッ! 話しは聞いているぞ! 今話題の《ビッグ・ルーキー》よ!」

 

「あははは......皆さん、お久し振りです」

 

 

 そこでは《勇者(ブレイバー)》、《九魔姫(ナイン・ヘル)》、《重傑(エルガレム)》、《光を掲げる者(ルキフェル)》が一同に会し、挨拶を交わしていた。




すみません、今回話しはあまり進みませんでした!
次回はロキ・ファミリア一同との再会(仮)。
まあ、主神であるロキは居ませんが!

それでは次回、またお会いしましょう!









ちなみに現在のベルに対する好感度(女性から)を数値に表すとこんな感じです。


ヘスティア 80
アイズ 60
エイナ 130
リリルカ 120
シル 120
リュー 110
ティオナ 140
ティオネ 60
レフィーヤ 30
ヘファイストス 110
ナァーザ ?
アスフィ ?
リヴェリア 60
ロキ 50
フレイヤ ?
アーニャ 70
クロエ 70


※並びは適当です。
※数値も適当です。よく分かってないです。
※?はアレです。色々配点し辛いからです。
※あと、150越えると危ないはずです。
※この数値は当てになりません。ガバガバです。
※ステータスみたいに、数値化するのって楽しいですよね。型月ファンの方なら!
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