機神咆哮 リリカルなのは   作:ルオト

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第二話 出会いと魔法少女

「………………何なんだ! この世界は!!」

 

 少年・ユーノ・スクライアは悲鳴交じりの叫びを上げた。

 この第97管理外世界に落ちた、ロストロギア・ジュエルシードの回収に来たのだが、四日たった現在もいまだに一つのジュエルシードを回収できていない。

代わりに無数の怪物と遭遇し、撃退または逃走しながら、この四日間を過ごしてきた。

 

(…………一体何なんだ、この世界は!? 無数の魔力を持った怪物が普通に跋扈しているなんて、これじゃあ、ジュエルシードが本格的に発動しないと見つけられっこないぞ)

 

 この海鳴の町の異常な状況に、ユーノは完全に心が折れかけていた。

 元々ユーノは戦闘に適した魔法を得意としていなかった。彼が得意としていたのは防御や回復などの戦闘補助がほとんどだった。

 その中にはジュエルシードを封じる封印魔法も含まれているが、今の状況ではさして役に立たない。なにせこの海鳴に出現する怪物は皆、貪欲に魔力を欲し、攻撃的で凶悪だった。

 魔力の痕跡を追ってユーノは探索していたが、その大半が怪物の気配ばかりで、肝心のジュエルシードを全く発見できなかった。

 発見できたとしてもすでに誰かが封印し、持ち去った後だった。

 

(………………本当にこの世界は魔法文化のない世界なのか!? )

 

 ユーノは本気でそう考え始めた。なにせこの街には魔力に満ち過ぎている。

 そのうえ、自分以外にもジュエルシードの回収者がいるこの現状。どう考えても事前情報であるこの世界に魔法文化が無い。という情報は間違いのように思える。

 そして夜、ユーノは当ても無く町を散策していると、強烈な魔力を感じた。

 

(!!…………この魔力…………ジュエルシード!!)

 

 ずっと探し続けていた探しもの反応に、ユーノは一目散に反応のもとに向かった。

 この時ユーノが冷静だったら気付いていただろう。

 通常のジュエルシードの発動時の魔力よりはるかに大きな魔力反応だと、そして禍々しい魔力だと………………

 

 

 

 

 

 それは強烈な飢餓に支配されていた。

 この街に産み落とされる自分と同種の存在をいくつも喰らったが、それはさらなる飢えを覚えただけだった。

 だがそれは数日前の話だ。それは青い魔力を秘めた宝石を喰らい。初めて充たされたがそれは一時的なモノだった。

 すぐさま飢えに支配され、それはより上質な魔力を求めるようになった。

 同種の宝石を幾つか喰らったが、飢えはしばらく収まるがそれでは足りない。もっと意思を伴った質の良い魔力を喰らわねばならない。

 この地で最も上質な魔力は、自分の同種を狩る自分達の天敵だ。事実ここ数日、執拗に狙われた。

 今は力が足らず喰らう事は出来ない。

 だが質は落ちるが、上質な魔力を秘めた存在が複数存在する。

 その中で最も強い秘めた魔力を持ちながら、もっとも無防備な存在に目をつけた。

 今日このモノを喰らう。

 そうすれば他の魔力を秘めたモノを喰らう大きな助けとなる。

 そして最終的には、自らの天敵を喰らいつくし、そこで初めて飢えが満たされるだろう。

 それはそう確信すると、躊躇無く魔力を秘めたモノを喰らう為に行動を開始した。

 

 

 

 

 

 ユーノが辿り着いたのは海鳴の住宅地にある一軒の家だった。

 その家を破壊し中に侵入しようとしていた、ジュエルシードの思念体。

 その姿を見て驚愕した。

 

(何だ!? あれは…………あれが本当に思念体なのか!?)

 

 ユーノは目の前の化け物の姿とその魔力の禍々しさに戦慄した。

 化け物はまるでこの街に現れる、怪物の体が幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも折り重なった文字通りの怪物。

 そしてその魔力。どう考えてもユーノ一人では手に負える魔力の大きさでは無い。

 このクラスの魔力を秘めたロストロギアを相手にするならば、確実に時空管理局の一個中隊は必要になる。

 もしユーノが一人だけだったら逃げ出していただろう圧倒的な化け物。

 だがユーノは逃げださなかった。化け物が襲っている家の中に、微かな魔力の波動を感じたからだ。

 おそらく目の前の怪物は、この家の中にいる人物を狙っている。

 もしここでこの人物を見捨てればここに来た意味が無くなる。

 ユーノは決死の覚悟で家の中に突入し、すぐさま化け物に対し、

 

「チェーンバインド」

 

 渾身の拘束魔法をかける。

 化け物は煩わしそうに、緑色の鎖を砕こうとするが、ユーノの全力のバインドはそう簡単に砕かれない。

 

「今のうちに逃げて!」

 

 ユーノは傍らに膝をついている少女に逃げるように言ったが、少女は、

 

「ん~そうしたのはヤマヤマ何だけどな。生憎、車椅子が壊れてしもうてな動けないんや。ちゅうかあんた誰や!」

 

 少女のマイペースな雰囲気もそうだが、少女の足が動かないという現実にユーノは頭が痛くなった。と、同時にある事に気付いた。

 家の外からでは微かにしか感じられなかったが、この少女の魔力はユーノと同等かそれ以上の魔力を秘めている。この少女の協力があればもしかしたらこの場を逃げる事が出来るかもしれない。

 

(………………仕方が無い)

 

 ユーノは苦渋の決断をすると、少女に自分の待つ赤い宝石を手渡した。

 

「君、今から僕の言う言葉を言ってくれ」

 

「ん? なんや一体?」

 

「我、使命を受けし者なり」

 

「?…………なんや一体? 我使命を受けし者なり」

 

「契約のもと、その力を解き放て」

 

「契約のもと、その力を解き放て」

 

「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に」

 

「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に」

 

 少女はそこまで口にして、自分が手にしている宝石に確かな鼓動を感じた。

 そして自分の中の何かと赤い宝石が繋がる感覚。突然現れた少年が言うであろう最後の言葉が自然と口からこぼれた。

 

「「この手に魔法を! レイジングハート、セットアップ!」」

 

 瞬間、少女を白い光が包み込んだ。

 宝石は機械仕掛けの杖へと変化し、少女の服装も変化する。

 この近所の小学校の白い制服に似た服に、頭には白い帽子、背には白い半透明の翼。

 自身に起きた変化に少女は驚愕した。

 

「な、なんやこれ!?」

 

 少女は驚きながらも自分の変化に興味深そうに服装や杖を見て一つ確信した。

 

「私、私、魔法少女になったんやな!!」

 

 少女ははしゃぎながら、宙に浮いた。

 

「うぉ!! と、飛んだ!! 本当に飛んどる!!」

 

 はしゃぎまくる少女に、ユーノは、

 

「ごめんいきなりで、本当に申し訳ないけど僕に力を貸して!」

 

 ユーノの必死の声を聞き少女は決意したように、頷く。

 

「わかったわ。八神 はやて、八歳。魔法少女デビュウや!! レイジングハート力貸しな」

 

『イエス。マスター』

 

 機械仕掛けの杖・レイジングハートの声を聞きはやては、先程感じた力をイメージする。

 そしてレイジングハートがそれをサポートする。

 はやての周囲に白い魔力の弾丸が出現する。

 はやてはそれを化け物に向けて一斉掃射した。

 ユーノのバインドによって動きを封じられていた化け物を大きくのぞけさせた。

 

「よっしゃ! ばんばんいくで!」

 

 はやてはレイジングハートを構えながら、無数の魔力弾を出現させた。

 

 

 

 

 

「ん~これはどうゆう事なのかな?」

 

 マギウス・スタイルのなのはは眼下に繰り広げられる、未知の魔術らしき力を使う少年と少女が、怪異と戦っている光景。

 傍らに浮かぶチビアルに思わず訊ねてしまった。

 

「ううむ。あれはどうも我らが使う魔術とは根本的に術式が違うようだの」

 

「魔術じゃないの?」

 

「そのようだの。なによりあ奴らは魔術師特有の昏い匂いがせん」

 

「…………そうだね」

 

 なのはは再び下で戦う二人を見る。

 金髪の少年もそうだが、白い服の少女。『八神 はやて』からもなのはのような魔術に関わる人間特有の雰囲気が欠片も感じられない。まぁそれは今はいいのだ。問題は…………

 

「アルちゃん……私たちここで見てて、いいの?」

 

「うにゃ? いま行って助けても有難味が無かろう? ピンチの瞬間に助けに行ってこそだ」

 

「………………いいのかな」

 

 アルが呑気に言っているが、はやて達が戦っている怪異はここ数日なのは達が回収していた青い宝石を複数取り込んでいる。

 防御や補助的な力を使うあの少年と、魔術的力を手に入れたばかりのはやての実力では、いずれジリ貧になるのは明らかだった。

 現状は余裕があるように見えるので、なのはもアルもこんな呑気に宙を浮いていられる。

 

「まぁ、我らにかかればあの程度の怪異如きには後れは取らん。なら興味本位で闇の世界に関わろうとしておるあ奴らに、少し現実を見せねばな」

 

 アルの言葉になのはは反論せず、戦いの様子を見守った。

 

 

 

 

 

 怪物とユーノ・はやての戦いはやがて拮抗状態へとなる。

 怪物ははやての魔力弾に傷つけられた端から自らを魔力にモノをいわせ修復し、怪物の攻撃はユーノが防ぐという展開になっていた。

 はやての魔力は膨大ではあるが、レイジングハートに記録されている魔法が簡単な射撃魔法、防御魔法、そして封印、飛行魔法の四種のみだった。

 今のはやて・ユーノ組には、あの怪物を打倒できる大威力魔法が無く、戦況は拮抗状態となる。

 だがそれもいつまで続くか分からない。相手は疲れているのかどうかも分からない怪物。こっちは生身の人間。そのうえ魔法に触れたばかりの素人に、ここ数日ジュエルシード探索の為に昼夜を問わず動き続け疲労のたまるユーノ。

 拮抗状態は長くは続かなかった。

 

「あっ!?」

 

 はやての魔力弾が外れ、怪物は一瞬だけ修復の魔力を攻撃に向ける。

 絶えず拘束し続けていたユーノのバインドを力ずくに砕くと、真直ぐはやてに突進してきた。

 突然の戦況の変化にはやては対応できず、防ぐ事も逃げる事も出来ず怪物の動きをただ見ている事しかできなかった。

 その主の様子に、レイジングハートはとっさに防御プログラム・プロテクションを発動させようとしたが、圧倒的に時間が足らず、結局何もできなかった。

 死ぬ。はやてはそう思った。あとコンマ数秒後には、自分はあの怪物に喰われる。

 

(…………やっぱり、私には無理やったな。私が、魔法少女なんて…………私の憧れる、あの

カッコイイ魔法少女になんて…………)

 

 はやては諦め、目をゆっくりと閉じようとした瞬間、

 

「この子を喰らう前に、まずこれを喰らってみる? クトゥグア」

 

 膨大な熱量と、凛とした声。そして悲鳴を上げる怪物の声に、はやてはゆっくりと目を開けた。

 漆黒のドレスに、銀色の髪。右手には黒に赤い装飾を施された無骨な自動拳銃を構えた少女が、はやてを護るようにそこに存在した。

 はやてはその少女を知っている。何度か怪異に襲われた時に颯爽と助けてくれた、はやての憧れ。

 この町、海鳴を怪物や超常現象から護る正義の味方…………

 

「…………う、〝海鳴の魔法少女〟!!」

 




 ユーの君の苦労と、はやてさんの覚醒的な話の今回です。
 なのはさんが魔術師でアルちゃんの契約者なので、必然的にレイジングハートさんに出番がなくなってしまう。
 しかしユーノに持たせたままなのも勿体ない為、はやてさんに無印参戦してもらいました。
 闇の書事件編では大幅な場原作改変になりそうな挑戦ですが、現状無印も大幅改変しているのでこの先原作乖離が酷過ぎる事になりそうです。
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