学校までの道を歩いていると、学生の姿が全く見えないことに気がついた。どうやら家を早く出すぎたみたいだ。別にこのまま向かってもいいけれどーーーーー
「まぁたまには、ちょっと散歩していくのもいいかな。」
僕は学校が見えてくる道に出ず、そのまま進む。今は春。桜の季節だ。川沿いに植えられている桜の木の下を歩くと、心が澄んでいくように感じるのは僕だけだろうか。
いい気分になって、心なしか歩く速度も速くなる。今にも鼻歌を歌い出しそうだった僕は、見慣れない背中を目にした。クマの柄が入ったパジャマを着ていて、髪の色は黒。手には紐が握られており、すぐそばの犬に繋がれている。犬の散歩中だろうか。ん、なんかあの犬見たことあるな。確か名前はココなんとかだったような・・・ココナッツ?でも、飼い主の方は見たことないな。
・・・・・いや、道歩いてりゃ見慣れない背中なんて何度も見るだろって思うのは仕方ない。それが普通だもんね。でも僕は、残念ながら普通じゃない。だって僕は、この道を何百回何千回と歩いているんだから。それも同じ期間に。しかも僕は、何かこの世界から抜け出すヒントはないかと注意深く歩いてたから、覚える必要のない人だって覚えてしまう。
つまりそんな僕にとって、「見慣れない背中」ってのは興味の格好の的だったのだ。
あの子(推測)についていけば、何かヒントを得られるかもしれない・・・!
そんな淡い希望を抱いた僕は、あの子の後を追った。学校?知らない子ですね・・・・
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ただついていくのも暇だったので、一か八か、僕はその子に話しかけてみることにした。
まずは深呼吸。
「おはよう。犬の散歩中?」
「ほぇっ!?え、えっと、おはようございます。そ、そうですけど・・・」
この可愛らしい声と反応、どこかで・・・・・・・あ。
「・・・・・・ひょっとして、由比ヶ浜結衣?」
「ええっ!?な、なんで私のこと知ってるんですか!?しかもフルネームの上に呼び捨て!?」
ああ、やっちゃった。全く僕も懲りないな、何回目だよこの失敗。それにしてもこの反応の面白さ、やっぱり由比ヶ浜結衣だ。髪染めて無かったから気付かなかったよ。
「あはは、ごめんごめん。君って総武高狙いだろ?僕は生徒会なんだけどさ、説明会の時に何となく目に入って覚えてたんだよ。」
「そ、そうなんですかー。って生徒会!?さ、最悪だーあたし・・・・入学式当日からパジャマ姿を生徒会役員に見られるなんて・・・」
「あははは・・・って入学式!?それ本当!?」
「え、そ、そうですけどって速っ!?」
由比ヶ浜さんが肯定の言葉を口にした瞬間、僕の体は駆け出していた。やばい。本気でやばい。絶対生徒会の仕事あるよこれ。完全に遅刻だ。何が「まぁ、たまには、ちょっと散歩していくのもいいかな。」キリッ だよ。馬鹿じゃねぇの僕。ああ、本気で急がないとーーーーー
キキイッッッッッッッッッッッッ!!
「!?」
後ろから急ブレーキをかける音が聞こえ、僕は咄嗟に振り返る。すると、高級車の前に小さな影が飛び出していた。
「あれは・・・・・ココナッツサブレ!?」
ココナッツサブレが急ブレーキをかける高級車に向かって吠える。すると、自転車に乗った男の子がそちらに向かって行くのが見えた。
「畜生!!」
僕は今来た方向とは逆に走り出す。久々の全力疾走だったが、このループ世界を利用して鍛え上げた身体能力は衰えていないようで、3秒ほどで着いた。いや速すぎるだろ僕。そのまま勢いを緩めずココナッツサブレを抱いた男の子を抱き抱え、僕は垂直に飛び上がった。無理な姿勢でジャンプしたため、足が車に当たりそうになる。
「舐めるなああああああああ!!」
僕はそうはさせまいと体を空中で回転させ、そのまま着地する。
取り敢えずココナッツサブレを抱いた男子を歩道に降ろし、僕はそのまま座り込む。つ、疲れた・・・久しぶりに全力を出したからってのもあるけど、それ以上に、精神的に疲れた・・・
僕がぜえぜえ言っていると、由比ヶ浜さんと、高級車に乗っていたのであろう高そうなスーツに身を包んだ男性が駆け寄って来る。
・・・・もしかしてあれは都筑さんか?ってことは・・・・あの高級車に乗ってるのは雪ノ下姉妹か。
・・・・・・さて、どうしたものか。何せ初めての展開だ、慎重に行かないとね。
あ、入学式準備。
1日に2回投稿、たぶん稀。