まぁ言い訳はこの辺にして、六話目をどうぞ。
「男女混合ダブルス・・・」
「勝ったほうがコートの使用権を得る・・・」
由比ヶ浜さんと葉山君が僕の言葉を呟いて反芻する。すると、あることに気付いたのか、雪ノ下さんが僕に問いかけてきた。
「久留米先輩、それでは葉山君達が勝った場合、戸塚君に対してあまりにも酷なのでは・・・?あ、すいません、戸塚君について説明をしていませんでした。戸塚君はーーー」
「いや、説明はしなくていい。僕はもう『知ってる』から。」
「はぁ・・・・・・・・」
「大丈夫。もし葉山君達が勝った場合、彼らには戸塚君の練習に付き合ってもらうから。構わないよね、葉山君?」
「・・・・・・はい、大丈夫です。優美子もいいよね?」
「・・・まあ、別にそんくらいなら・・・戸塚にも悪いし・・・」
「ありがとね。それじゃ、昼休みもうちょっとで終わっちゃうし、さっさとやっちゃおうか。戸塚君、審判お願いするね。」
「は、はい!」
そう言って、戸塚君は元気な返事をしてくれた。僕がその返答に満足していると、比企谷君が急におろおろしだした。
「ちょっと待って?これ、ひょっとして俺も出なきゃいけないパターン?」
「パターンも何も、男子の部外者は貴方位しかいないじゃない・・・」
「いや待て落ち着け。部外者なら他にもいるじゃねぇか!材木座とか久留米先輩とか!」
「久留米先輩はともかく・・・貴方、この大勝負で材木座君に任せられるの?」
「・・・・・・・・・・」
「おい八幡、何故無言なのだ!?そこは『大丈夫さ。俺はあいつを信じる。』とかっこよく決めるべきところであろうがぁ!!」
「・・・・・・・あの、久留米先輩?葉山達からは誰が出るんですか・・・・?」
比企谷君が叫ぶ材木座君を無視して僕に聞いてきた。ああ、それならーーーーーー
「葉山君でいいよね?」
「わかりました、それじゃあ女子は・・・・・優美子、行ける?」
「オッケー隼人!巻かせといて!」
三浦さんは葉山君に頼られたのが嬉しいのか、気合いが入っているようだ。うんうん、恋する乙女ってのは頼もしいね。
「・・・・・・なぁ由比ヶ浜。」
「なに?」
「葉山はだいたい知ってるからいいんだが、三浦ってテニス上手いの?」
「優美子?うん、チョー上手いよ!中学ん時女テニで県選抜選ばれてるし!」
うわぁ・・・・比企谷君の目が物凄い勢いで腐って行ってるよ・・・・由比ヶ浜さんドン引きしてるじゃん・・・・
「・・・・・悪い雪ノ下、さっきの話は無かった事にしてくれ・・・・」
「わかればいいのよ。」
「となると・・・クッソ、久留米先輩に頼むしかねぇじゃねぇか!」
「貴方には競争心というものがないのかしら・・・・・」
「別に僕、出てもいいよ?」
僕の発言に、皆が「は?」という感じで唖然とした顔をしていた。多分冗談で言ったであろう比企谷君が一番驚いていた。・・・・冗談だよね?
「え、いや出るって・・・」
「だからさ、比企谷君が勝負するのが嫌ってんなら僕が出るよってこと。」
「あ、それじゃあお願いします。」
「うん、了解。それじゃあ由比ヶ浜さん、行こうか。」
「へ?ど、どこにですか?」
「いやだから、更衣室だよ。」
「あーなるほどー!って、あたしが出るのおおおおおおおお!?」
「え、駄目だった?」
「え、いやそのダメって訳じゃないですけど・・・」
「・・・・君が三浦さんに対して思うことがあるのは知ってる。でも、今の君は奉仕部の一員なんだ。だったら君は、奉仕部の一員として、やるべきことをやらなきゃいけない。ーーーーーそうだろ、雪ノ下さん?」
「ええ。・・・・由比ヶ浜さん、頼んだわよ。・・・ほら、比企谷君。」
「あー、まぁそのなんだ。お前なら大丈夫だ。俺は信じてる。」
「久留米先輩・・・ゆきのん・・・・ヒッキーまで・・・・うん、あたし頑張るよ!」
「よし、それじゃあ行こっか。」
「はい!」
そして、なんか黒歴史があーだこーだ騒いでる比企谷君はほっといて、僕と由比ヶ浜さんは更衣室に向かったのだった。っていうか、昼休み長いな。かれこれ30分は経ってると思うんだけど・・・もしや、僕がいることで世界の修正力が原子とか素粒子的なアレに時空間制御的なアレを与えているのでは・・・まぁいいや。
そうこう考えている内に更衣室に着いた。由比ヶ浜さんは終始笑顔だった。うんうん、やっぱり由比ヶ浜さんは笑ってるほうが可愛いと思う。って、何僕は少女漫画に出てくるイケメンみたいなこと言ってるんだ・・・気持ち悪。さ、さっさと着替えよう。
「・・・・あれ?なんかいい話っぽい雰囲気で誤魔化されたきがする・・・」
由比ヶ浜さんがなんかぶつぶつ言ってた。
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「ねぇ、比企谷君。」
「あん?どした。」
「貴方、久留米先輩についてどう思う?」
「どう思うって・・・まぁ、格好よくて、人当たりもよくて、しかも頭の回転も速いみたいだし、理想の先輩ってのはああいう人をいうんだろなーとは思うが・・・」
「確かにそれには概ね同意だけれど・・・私が言いたいのは、あの人、姉さんにどこか似ている気がするの。」
「ああ、確かに。性格といいスペックといい、ほぼ同格だな。あの先輩、どうせ頭もいいんだろ?」
「ええ、確か数学は学年一位だったはずよ。フフ、貴方の対極にいるかのような存在ね。」
「マジかよ・・・・ますます苦手だ、あの先輩・・・」
「そういえば比企谷君、貴方『性格といい』と言ったわよね?その発言は撤回したほうがいいわ。あれはーーーーーー」
「表向きのもの、だろ?」
「驚いた・・・・貴方、気付いていたの?貴方が姉さんと話したのはあの事故・・・というより、事件後、検査で病院に来ていた貴方に偶然出会った時だけでしょう?あれだけで?」
「ああ、まぁな。ずっとああいう感じの女の子を好きになって、勘違いしてきたからな。あの人の『裏』に気が付くのは簡単だったぜ。」
「そう・・・これを言ったら、姉さんきっと驚くわね。・・・まぁ、比企谷君が気付いた事を既に気付かれている可能性が高いけれど。」
「ややこしいなおい。で、それが久留米先輩とどういう関係なんだ?」
「あの先輩、どこか『裏』がある気がするのよ・・・それも姉さんとはまた違った『裏』が。」
「何を根拠にして言ってるんだ?」
「知っていたのよ。」
「あ?」
「知っていたのよ、私たちが奉仕部への依頼として戸塚君の練習に付き合っていたことも、葉山君達と揉めていた理由も、何もかも全て。」
「考えすぎじゃねぇのか?あの人生徒会なんだろ?だったらどっかから部活の話は入って来るだろうし、葉山達と揉めてた理由もただ聞いてたからかもしんねぇだろ。」
「ええ、そうなのだけれど・・・どこか、どこか引っ掛かるのよね・・・」
聡明な少女は彼の『異常性』に気付くのか。
いや、もう気付いてはいるのだ。しかし、ただ気付いているだけでーーーーーーーーーー
そのパンドラの箱の中身を知らない。故に、聡明な少女は気付かない。
彼の、『本当の異常性』に。
何故ゆきのんがこの時点でテニスコートにいるのか疑問に思った方もいらっしゃるかと思いますが、それは主人公の存在により発生したイレギュラーということでどうかひとつ。