トップアイドル(男オリ主)は346プロダクションで日常を過ごす。 作:全てが蒼になる
主の妄想で出来た自己満足のお話が始まります。
「あー……、熱い。ライブなんて、やっぱり見に来るもんじゃないよな……」
ライブは終盤、最早すし詰め状態でペンライトやらサイリウムを振り回すお客様に揉まれながら、目をぐるぐるさせる男が一人。――そう、俺だ。
ある三人に頼まれて、今日のライブに来た。正直、いつでも見られるものをわざわざ会場まで足を運びこの状況という苦行を味あわないといけない理由はよくわからないが、どうにもあの三人には弱いみたいで俺は断ることが出来なかった。つまるところ、こんな場所にいる本当の要因は三人だとしても、断ることの出来なかった俺に原因があると言える。
「しっかし……、真っ青だな。会場一面とか凄い一体感だよ、全く」
このライブ会場を一面覆い尽くすのは青――蒼。
イメージカラーをペンライトや照明で照射するのはよくあるが、常に青一辺倒となると話は別だと思う。俺、この会場出たら目がおかしくなる自信がある、マジで。
と、そんな他事を考えている内に、鳴り響いていた曲が終わりを迎えた。舞台上では、どうやら合間をつなぐトークをするようだ。
「皆!! 楽しんでる!? 私は楽しんでるよ!! 改めまして、今日はトライアドプリムス結成一周年ライブに来てくれてありがとう!! 知ってると思うけど、自己紹介。私は渋谷凛です!!」
センターに立っている黒髪の大人びた子がまず先に挨拶をした。
ダジャレのつもりはないけど、名は体を表すとは正にこの子のためにあると思えるくらい、凛には凛としているという表現が似合うと思う。
「私は神谷奈緒だ!! 皆楽しんでるかー!? そうだったら凄く嬉しいぞー!!」
俺達の客席から見ると左側に立つのは、ふわふわとした灰色の髪を伸ばした太眉がチャーミングな女の子。
彼女も可愛らしいフリフリが付いたゴシック調のドレスに身を包んでいるが、その格好に相反した男勝りな口調はどうやら直すつもりはないようだ。それはそれで、良いと思うけど。
「皆、今日は本当にありがとう!! 私は北条加蓮です!! 皆のお陰でここまでやってこれました! 本当に感謝の気持ちでいっぱいです!!」
向かって右に位置する茶色の髪を肩辺りまで下ろした線の細いイメージを感じる女の子。グループ発足前は本当に身体弱かったって話だもんな……。元気になって良かった、良かった。
「私達三人で、トライアドプリムス。この一年間、前だけを見据えて走ってきました」
「最初は目標にしてた凛と一緒にユニットが組めるってだけで満足してたのに。正直、こんなとこまで来れるなんて思ってなかったってのが本音なんだよな」
「ええ、私達の目標だったものね、凛は。……でも、私達はとある人と出会い、更なる飛躍をすることでここまでこれたと思っています」
確かに凛は島村卯月、本田未央と三人組のユニット『ニュージェネレーションズ』というユニットで既にブレイクしていた。加蓮と奈緒は同じ
……そんなユニットを更なる飛躍させる人なんているんですかね?
というかかなり嫌な予感がする。
「それでは、そのある人をご紹介しましょう!! ――晴人先輩!! よろしくお願いします!!!」
凛がバッと手を挙げながら、晴人――俺の名前を呼んだ。
瞬間、スポットライトが暗転した客席の一部――俺がいる席を照らす。
深くニット帽を被り、マスクを付け、サングラスをした俺を照らす。
瞬間、会場の空気は凍りついた。
「…………あの、先輩? なんでそんな格好してるの……?」
「なあ、加蓮。もしかしなくても先輩に何も伝わってなかったんじゃないか? 今日ステージに上がってもらう話、誰か伝えた?」
「私は、凛が伝えてると思って……」
「え……? 奈緒が伝えたんじゃないの……?」
「……おいおい、じゃあ完全にこれ、サプライズ状態なのか……?」
ステージ上で頭を抱えてアタフタする姿を晒している三人なんてレアな場面だというのに、会場の熱気は完全に冷えきっていた。というより、警備員までこっちに来てる。やべえことになった。
いや、話からして連絡ミスだとは思うが、とりあえずこれをなんとかしないと、俺の立場もトライアドプリムスもヤバイだろ…っ!!
そう思い立った途端、俺はヤケになり気味に帽子とマスク、更にサングラスを勢い良く外す――!!
「はいはいはい! 皆様お邪魔しております!! 毎度お馴染み、
早口でまくし立て敵意はないことを伝える。
いや、だってあんな可愛い三人のアイドルのライブに来ている熱狂的なファンだよ!? 男の俺をわざわざライブに呼んだなんて言ったら絶対深読みされてしばかれるでしょ!! コレ!?
「……あんなこと言ってるぜ? どう思う? 凛」
「晴人先輩ってなんであんなに自分を低く見るんだろうね……。あの人、この業界では伝説的なトップアイドルなのに」
「あはは……、謙虚って言葉じゃ測れないくらいだよね。自分のことに超が付くほど鈍感っていうか……」
そう、天石晴人はこの業界切ってのトップアイドル。
写真やインタビューが載った雑誌はバカ売れ間違いなし。出演番組の視聴率はいつだってトップ。近年の紅白離れの関心を取り戻した立役者なんて話まで。
アイドルファンをしている人間で彼のことを知らない時点で、そいつはモグリだと言えるほど。
そして凛達トライアドプリムスの三人が考えた通り、そんなトップアイドルを隅っこに出来る人間がこの場にいるわけもなく。
――割れる程の歓声が、会場を包み込み、彼はステージに誘われるように立ち、三人とライブを楽しんだ。
――◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇――
「…………んで、申開きのほど、あるか?」
今、俺の目の前には、三人の可愛い女の子――トライアドプリムスの三人がジャージ姿でレッスン室の板場に正座している。
一応ライブは大成功したものの、俺は突然の出演に戸惑いっぱなしでよくアドリブで切り抜けたなと自分を褒めてやりたいくらいだった。
そして、そんな状態で参加させた原因にはしっかりと反省してもらいたい。
それが今この目の前で行われている正座に繋がるわけで、要は反省会だ。
「あ、あの。先輩……? 私達、ほ、本当に申し訳ないと思ってるよ? だからその姿勢をですね……崩さしてもらっても……」
「……ツンツン」
「わひゃあ!? ちょ!! ちひろさん!? さ、触らないで下さいって!?」
「いえ、正直私も聞いていなかったので、こう、思うところが……ね? わかりますよね?」
「く、黒いよ笑顔が!! ちひろさん怖すぎ……ヒっ!?」
「え? 何が怖いんですか、加蓮さん?」
「嫌!? その笑顔こっちに向けないで!! 怖すぎるからあああ、いやごめんなさい!! そんなことないですからあああ!?」
「……突然、凛達の背後から千川さんが来たと思ったら、やりたいこと全部持って行かれた件について」
「晴人先輩、あの、もういいですか?」
「ああ、凛。いいぞ。というか、なんかこう、興が削がれた。うん」
「私も、正直そんな雰囲気より、あっちの黒いえが――むぐ」
「うん、それ以上はいけない」
加蓮の二の舞いになりそうだった凛の口を手で塞ぐ。
いや、間違いなくその続きを続けたら
しかし、これで、俺が反省を促すよりもしっかりと身に刻み込めることだろう。
「晴人先輩。その、本当にごめんなさい。元々、先輩とのことはちゃんとした場所で紹介するつもりだったから、今日のライブでしようと思っていたんだけど、肝心の先輩に今日のプログラムの内容が伝わってなくて、迷惑をかけるだけになっちゃったね……」
目を伏せ、少し悔しそうな表情をする凛。
俺としては、こんな大ブレイク中の可愛い女の子達と肩を並べて仕事ができるだけで光栄なんだけどな……。
そりゃアドリブで凌ぐのは辛かったし、それを当たり前みたいに思われるのは嫌なんだけどね。
それでも、彼女達のようなキラキラしたアイドルと一緒にライブが出来たのに、ここまで落ち込まれるのはあまりよろしくない。
「凛。君たちの想いは凄く嬉しい。今日の一緒にライブしたのはとても楽しかった。なんだかんだで指導とかするようになったけど、一緒にライブに出演することはなかったもんな。ありがとう」
「……折角謝ったのに、何でお礼で返すかな。もう」
ぽんぽん、と頭に軽く手を載せる。
フイっと顔を逸らすが、耳まで真っ赤ですよ、凛さん。
思わずクスクスと笑みが零れてしまう。
「あー!! 凛ズルい!! ちひろさん、あれ!! アレ見てくださいよ!!」
「そ、そうですよ!! 凛も同罪じゃないんですか!! って、頭! 頭なでられてる!!」
「あらあら、いい空気ですね。でも天石さんとあんな空気になる人って結構多いですからね、お二人もでしょう?」
「「うぐ……」」
お、あっちはあっちで終わったかな。
それじゃ、今日の打ち上げにでも行きますかね。