オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
「〜〜♪〜♪」
機嫌良く鼻歌を歌いながら街中を歩く。目的地はホームから少し離れた一軒家、値段は600万ヴァリスほど。なかなか上等な家で、小さいが庭が付いている。妖夢は桜花たちと猿師の自宅を訪ねに歩いていたのだ。
「こんにちはー」
桜花が代表し玄関のドアを開け声をかける。すると「はーい」と若い女性の声が聞こえこちらに走ってくる足音が徐々に大きくなる。
「ああ、どうも!いつも父がお世話になっています」
どうやらこの人が猿師の娘さんらしい、あ・・・どうも!俺です!妖夢です!今は猿師の自宅に来ているぜ!中から出てきた猿師の娘さんは黒い髪を肩まで伸ばし薄い茶色の瞳をした美人さんだった。・・・ふむふむ、スタイルいいなー羨ま妬ましい。・・・てかやっぱり猿顔じゃないのね。
「いえいえ!猿師殿にはこちらの方がお世話になっています!」
命は首を横に振り、手を自分の胸の前でブンブンと振りながらそう言う、命の事だから言っている事はお世辞では無いだろう。・・・お婆ちゃんは何処だろう?
「あの、お婆ちゃんは何処ですか?」
む、そこ、落ち着きが無いとか言わない!五年ぶりに知り合いに会うんだぞ?なんて言うか微妙な緊張感があるんだ!
「あら?もしかして貴女が・・・ええ、お婆ちゃんなら中でお茶を飲んでいますよ、立ち話も何ですし中へどうぞ」
・・・・・・有り得ん、この淑女の父が猿だと言うのか?・・・否!断じて否!いやだって可笑しくね!?ごザルごザル言ってる奴の娘超まともじゃないですかやだー!てっきり「わちきは猿師が娘、〜〜でありんす」とか言うのかと・・・。あ、でもお婆ちゃんまともだったし猿師が異常だっただけか、まぁ三角飛びとかしてたけど。
「はい、お邪魔します!」
「「お邪魔します」」
「お、おお、お邪魔しますぅ・・・」
全員で元気よく返事して猿家に突入!ひとり若干声が小さかったがむしろ頑張った方なので褒め称えて上げてくれ!さぁ、果たしてどんな内装なのか・・・ってまだ引越し途中じゃん・・・内装は無いそうです・・・コホン、娘さんを先頭に少し廊下を進み目的の部屋までやって来る。この先にお婆ちゃんが・・・!襖を開け奥に入る。
「ズズーーゥ!ハァ・・・お茶は美味しいねぇ・・・うんうん。」
おおお!めっちゃお婆ちゃんしてるよお婆ちゃん!うんうん、お婆ちゃんはそうでなくちゃ!あんな無理して三角飛びとかしなくていいんだよ!そうやってコタツでゆっくりとしていてくれ、大丈夫、ミカンも煎餅も俺が買って来てあげるぜ!まだまだ恩は返せていないんだ。そんな事よりもお婆ちゃんだ!のりこめ〜^^と行きたいがやはりここは成長を見せる時、大人っぽく冷静に行こう。
「こんにちはお婆ちゃん。お久しぶりです。」
ふっ、見よ!どうだ!あの時から身長が2cmも伸びたのだ、凄いだろー!あの時とは違うのだよあの時とは!
( ・ˇ∀ˇ・)アハ八ノヽノヽノ \ / \
「ほうほう・・・こんにちは、・・・変わらないねぇお嬢ちゃんは。」
ガビーン!一瞬で否定された!この間約2、3秒!
「ガミョーン!」ガク
ま、まあいい、成長とは身長だけが物語る物では無いのだよ・・・、そう、キビキビと働けばきっと成長に気づいてくれるはず!
「ハッハッハ、手伝いに来てくれたのかい?ありがとうねぇ、アタシも流石に腰に来てねぇ」
うんうん、俺達に任せておけ!・・・ってそう言えばお婆ちゃんの名前知らなかったな俺。聞いてみようか。
「はい!私達に任せてゆっくりしていてください!・・・そういえばお名前を聞いていませんでした、教えてくださいませんか?」
出来ればお婆ちゃんだけでなく娘さんや今ここには居ないようだが猿の奥さんの名前も知っておきたい。お婆ちゃんはニコニコしながら教えてくれる。
「そう言えばそうだったねぇ、アタシの名前は
「うふふ、純鈴よ。よろしくね」
おおー!陽和梨お婆ちゃんか・・・なかなかいい響きじゃあないか!!それと純鈴さんね。うんうん、美人さんだ。名前から滲み出る美人さんだ。本当にエリートなんだな猿師って。妬ましくなんてないやい!純鈴さんを見る限り猿師の奥さんも綺麗な人なんだろうなー。
「ただ今戻りんした、ん?もしかして猿師の言っていた子供たちでありんすか?」
凛と響く高めの声、声だけで確信する、そう、美人だ、絶世の美女だ。お!の!れ!リア充めー!爆刺孔ぶっぱなしてやる~、なんてね。人の家族を引裂くような真似は絶対しないさ。俺は期待を押し込め振り返る、そこには―――
「ふふっ、私は
ゴリラが居た。
いや何でだあああぁぁぁあ!可笑しいだろぉおお!なんだよ美声のゴリラって!?いやゴリラである事を否定しようとは思わん!でも何で猿とゴリラからこんな美人が生まれるんだよ!何算?!足したの?!引いたの!?割ったのか!?√でも使ったのかああぁぁぁあ!?
俺は口を開いたまま固まる、仕方ないだろこれは。一体どこら辺が清美なんだ、清いどころか毛むくじゃらだよ、もうシンプルに剛力羅で良かったのでは?・・・いや、失礼すぎるな例えゴリラでもレディですからね、失礼は駄目だ(白目)
チラリと桜花や命、千草を見てみる、桜花も口を開いたまま固まっており、命はこんな失礼な事を考えてしまい申し訳ない、みたいな今すぐに土下座でもしそうな顔をしている。千草は・・・あ、倒れた。
~少女引越し手伝い中~
「これはこっちですか?」
「ああ、そうだよぉ」
「なあ、猿師さん、これは何処に?」
「ん?そうでごザルなー、そこに置いて欲しいでごザル。」
「ん、わかった。」
「ふふ、千草と言ったか、怖がらせて悪かった、スキルを使うとこの様な有り様になってしまうんだ。悪気があった訳ではないんだ」
「そ、そそうですか、ごごごめんなさい!」
「あはは、お母さん怖がってるじゃない、離してあげて」
「ほれほれ、お前さん達、子供たちばかり働かせるんじゃないよぉ」
「ああ、わかっている」
~少女引越し手伝い終了~
「終わりましたね。」
終わった、まさか丸一日使うとは・・・、家もなんだかんだ広かった、清美さんが「地下室でも作るか」とか言って床に穴開けたのはビビった。意外に丁寧に作っていて驚いたよ。どうやら地下室は猿師の研究室として使うために作ったらしい。まだまだラブラブのようだ。清美さんのスキルは解除され、黒髪ロングの美人さんに変化した。これも驚いた。もう何ていうか驚いてばかりだよ、もしかして猿も実はスキルで猿になってるんじゃ?
「ああ、終わったねぇ。さぁどうだい?タケミカヅチ様や、今夜はうちで夕餉を共にするのは」
おお?お婆ちゃんから夕食のお誘いが!やったー!お婆ちゃんのご飯は久しぶりだぞー!久しぶりに会ったお婆ちゃんの料理って美味しいイメージがあるんだよね、俺だけかな?タケぇ!もちろん食べるよな!?
「タケ!もちろん食べますよね!」
俺ははやる気持ちを抑えてタケに期待を込めた目をむける、命や千草も同じような眼差しをタケミカヅチに向けている。というか千草は清美さんに懐いたらしく抱っこされてる。
「ははは、そうだなぁー、桜花、団長であるお前に聞こう。どうする?」
タケは笑いながら桜花に話を振る。ニコニコしているしタケも賛成なのだろう。
「え!そこ俺に振ります?・・・俺は是非頂きたいですけど・・・」
よっしゃあ!!手伝いはまかせろーバリバリー!命達も頑張るぞ!
「よし!お手伝いしますね!命!千草!頑張りますよ!」
バベルの塔にて、オッタルは女神フレイヤに呼び出されていた。
「うふふっ、オッタル聞いて?私いい事を思いついたのよ!」
(フレイヤ様のテンションが高い・・・可愛い・・・)
オッタルは仏頂面のまま、内心そう思う。一体我が女神は何をするつもりなのだろう、そんな事を一瞬考えるがすぐ様捨て去る、フレイヤが言う事がオッタルにとって全てなのだから。
「貴方があんまりにもシャイだから、仲良くなれるように考えたの。うふふ」
(笑う姿も美しい・・・しかし、・・・やはり見られていましたか)
「・・・お恥ずかしい限りです」
フレイヤの少女のような笑いはしばらく続き、やがて妖艶な微笑みに変わる。
「モンスターフィリアのモンスター達に銀髪の少女と白髪の少年を狙う様に命令するわ・・・そこでオッタル、貴方が少女を助けるの、そうすれば貴方も話しかけやすいでしょう?」
オッタルは頷く、しかし首を縦に触れない部分もあった。
「ベル・クラネルにモンスターを退けるだけの力があるかどうか・・・」
先程言った通りフレイヤの命令ならば即座に頷き決行に移すオッタルであってもフレイヤのお気に入りに何かあってはフレイヤが悲しむ可能性がある、そう考えモンスターを間引く必要性を感じたのだ。
「いいえ、必要ないわ。あの子には・・・そうねぇギリギリ倒せそうな子をぶつけて見ましょう」
「分かりました。」
「じゃあ妖夢の所に行ってらっしゃい?」
「?何故ですか?」
「戸惑うオッタルが見たいからよ?」
「・・・・・・かしこまりました」
タケミカヅチ・ファミリアのホームの玄関先で全員が並んでいた。タケにここに並ぶ様に言われているのである。
「よーし集まったな、今日は怪物祭だ!ちゃんとチケットは取ってあるから皆でいくぞ!」
「「「おーー!」」」
皆、最低限身を守れる程度の武器を携帯し、防具などは外している。俺と千草のおかけで遠足のように思われるかも知れない、・・・そう、今日モンスターフィリアなのだ!俺は普段から防具なんて付けてないし武器も半霊の中だ、つまり俺は戦う準備万端なのである。しかしまさかチケット取ってあるとは・・・。
「おやつは500ヴァリスまでだぞ~」
遠足かっ!ここは乗ったほうがいいよな?
「せんせーバナナはおやつに入りますかー?」
「誰がせんせーだー、バナナはタンパク質が豊富で筋肉にいいからおやつには入りませーん」
「はーい」
のってくれたよ、入らないんだねバナナ。俺は隣を歩く千草を見る、いつもとは違い小さいリュックを背負っている千草は小学生みたいだ。・・・つまりは俺もそんな感じに見られているわけで・・・悲しい。
コロッセオのようになっている闘技場の中心で美しく着飾ったガネーシャ・ファミリアの団員がモンスターの攻撃をひらりひらりと躱しながら攻撃を加えていく。すれすれで避ければ避ける程観客の歓声は大きくなる。
命や千草、桜花までもその巧みな技に驚きの声を上げている。そんな中俺だけはそわそわと辺りを見渡し、耳を澄ませる。もうそろそろかな、まだかな?と。ここにいても歓声がうるさくて外の騒ぎは聞こえない、ならば仕方が無い、自分から外に出るしかないだろう。
「タケ?少しトイレに行ってきますね」
「ん、わかった。早く行ってこいよ?」
「はい」
薄暗い廊下を歩きながら武装を整えていく、背中に長刀を1、刀を1。まぁ、これしか武装する物はないが。外から騒ぎは聞こえない、まだ始まっていないようだな、少し安心した。
外に出る、沢山の出店が並び観光客で賑わっている。事件のキーとなるのは白髪の少年ベル・クラネル。探す―居た、200mほど向こう、僅かに白髪の少年が見える、まだヘスティアには会ってないようだ。もう少しで物語が進む、ここにいては邪魔になってしまうだろう、少し位置をずらそう。俺は回れ右をして歩いていく。―ゆっくりと魔法を唱えながら。
「グオオオオオォオォォオオオオ!!」
爆音と共に現れたモンスターの群れは雄叫びを上げる。何かを探すように左右を見渡したかと思えば不自然なほど全く同時に同じ方向へ振り向いた。彼らの頭の中にあるのは「小さな私を愛して」と言った銀髪の女神だけ。
「グオオオオォオォォオオオオ!!」
1匹を除いて全てのモンスターが一斉に走り出した。
「逃げましょう神様!」「え?ええ?!ベル君引っ張らないでおくれよ~!」
本来の歴史とほんの少しだけ変わってしまった物語、けれどベル・クラネルの物語は大きくは変わらないだろう。彼が英雄である事は紛うことなき事実なのだから。
(魂魄妖夢を発見した―これより護衛任務を遂行する。)
会場から出てきた妖夢をオッタルはすぐ様追跡していた。妖夢は何かに集中しているようでオッタルには気づいていない。
(何故人のいない所に・・・?・・・魔法?)
オッタルは辺りに人がいない事に気がついた、そして妖夢が魔法を唱えている事も。
(・・・まさか・・・・・・気づいているのか?)
人の居ない広場に向かおうとしているのだろう、妖夢の足取りは確かだ。
(もしも計画が魂魄妖夢にバレているのなら助けに出た所で意味は無い。むしろそんな出来レースを仕掛けたこちらに友好的な態度はしめさないはずだ。)
詠唱が終わったのだろう、無言で歩いていく妖夢を遠くの屋根の上から観察する、すると後ろから爆発音がした。始まったか、オッタルは後ろをチラリと確認して妖夢に向き直る。そして驚愕した、笑っているのだ。まるでこれから起こる事が分かっていたかのように。広場の中央に陣取り何かが来るのをじっと待っている。
(やはり・・・気づいていたのか・・・何故気づかれた?気付く要素など欠片も無かった筈・・・気付かれているならば俺が出るのは魂魄妖夢が危機に瀕した時だろう、例え命令をこなせなかったとしても死なれるのは困る。)
地響きが大きくなってく、モンスター達がこちらに向かって来ているのだろう。
「グオオオオオォオォォオオオオ!」
獲物を見つけたと喜びの雄叫びを上げ、種類に纏まりの無いモンスター達が妖夢を囲む。オッタルが調べた情報では魂魄妖夢の到達階層は17階層であり、それ以降のモンスターは知らないはずだ。
現れたのは巨体に似合わぬ俊敏さを持つバグベアー。トンボのような外見のガン・リベルラ。虎を模したライガーファング。170Cを超える身長を持つリザードマン。上級殺しのデッドリー・ホーネット、そしてミノタウロス2匹だ。
レベル2、いやレベル3でも1人では死を連想させるであろう面々が揃ってなお魂魄妖夢はわらっている。
(・・・どこまで知っているのだ、魂魄妖夢)
妖夢は手を目の前にかざす。すると魔力と霊力がそこに集中していく。
(なんだ?・・・魔力ではない・・・?)
「―に斬れない物など、あんまり無い!」
空が光輝き1振りの刀が現れる。そして辺りに霊力がまき散らされる、そして、妖夢の姿が霞んだ。
「急いで!ティオネ!」
「わかってるわよ!」
「お、お二人とも待ってください~!」
ロキ・ファミリアの第1級冒険者であるレベル5のティオネ・ヒリュテとティオナ・ヒリュテは突如逃げ出したモンスターを追って街中を走っていたのだが人混みに邪魔され見失っていた。レフィーヤ・ウィリディスも懸命にその後を追う。
「ったく!何なんなのよあのモンスターども!私らを無視しやがって!」
「なんか変だったね」
「はい・・・」
3人がキョロキョロと辺りを見渡していると光り輝く花びらのような物が空中に光っているのを見つけた。
「みてあれ!きっとあそこだよ!」
ティオナがそう叫び指さす。全員が頷きその方角を目指し走り出す。同じ轍は踏まない、人波に飲まれないように屋根の上を走っていく。
その同時刻アイズ・ヴァレンシュタインも光に向かって走っていた。アイズはギルド職員であるエイナ・チュールにモンスター達が同じ方向に走って行ったと報告を受け、行動していた。彼女の記憶の中に光る花弁を飛ばすモンスターは居なかった、つまりは誰かが魔法か何かを使っているのだろう。そう思い被害を減らすために走る。
「あ!アイズ!」
聞きなれた声がアイズの耳に届く。声の主はティオナだ。
「ん、ティオナ、どうしたの?」
そう聞いてみるがきっとティオナ達もモンスターを追っているのだろう。そうアイズは思う。
「えっとね、モンスターを追っかけてたんだけど見失っちゃって光が見えたからそっちに向かってる。・・・・・・ねぇ、アイズ・・・この感覚って・・・」
「・・・うん」
近づいて行くたびに強くなっていくこの感覚、それはほんの少し前にベートと妖夢が戦った時に感じたものだった。アイズは少し焦る
(あの子には聞きたい事が沢山ある・・・!)
「は、速く助けないと?!」
レフィーヤも何を言っているのか理解したようで焦り始める。アイズは頷き走り出す。ティオナ達3人もそれに続いた。
(待っていて・・・助けるから。)
バグベアーの首が地に落ちる。やや遅れて体も横たわった。
「まずは1体」
バグベアーの首を落としたのは柄に柔らかな毛がついた1振りの長刀、刃は鋭く、謳い文句の通りに斬れ無いものなどあんまりないと主張しているかのよう。妖夢は血払いし、構える。
「グワアァッ!」
妖夢は一切動いていないというのにリザードマンが血を吹き出して倒れ灰になる。その背後には赤い目をした妖夢が刀を振り切った体勢で笑っていた。
『これで2体。・・・包囲したつもりだったか?』
ニヤニヤとそんな言葉を残し消えていく。すると妖夢の隣に現れ刀を肩に担いだ。
「どうしましょうかハルプ」
『ハルプって・・・まぁ自分で自分の名前呼ぶよりいいか。・・・とりあえずうざったいトンボを落とそう。・・・落ちろカトンボ!』
ハルプはガン・リベルラに向かって弾幕を撒き散らす、避けようとするガン・リベルラであったが如何せん数が多く、簡単に羽を切り裂かれ墜落する。
「任せます!」
そう言って妖夢はライガーファングに向かって走り出す。
(・・・助けは必要ないか・・・しかし・・・あの魔法、いやスキルか?あれは危険だな。)
オッタルはその一方的な戦いを見て思う。何のスキルか分からないが分身出来るのであれば並大抵のモンスターなど相手にならないだろう。そして相手の後ろに分身が現れた事から暗殺にも使う事が出来るだろう。
『へいへい!任せておきな!これで3体。』
ガン・リベルラがハルプに切り裂かれ半分になる。
『おそろいだな♪』
陽気に笑うハルプに対し妖夢は真剣そのものだ、さっきまで笑っていたが。走って突っ込んでくる妖夢に対しライガーファングは爪を振り下ろす。それを楼観剣で受け流しながら横に跳ねる、振り下ろされた爪は地面を砕き動きを止める。
「4体・・・。」
そう言った瞬間ライガーファングの首が地に落ちる。横に跳ねた瞬間に切り落したのだろう。
『いやー、楼観剣切れ味すげー、張り合い無いだろ。予想より沢山モンスター来たけどよー?』
「もしかしたらあの蜂が強いのかも知れません。」
『・・・シルバーバックが見えねぇな・・・ベルの方に行ったか?』
(・・・!そんな事まで知っているのか・・・侮れんな)
オッタルが妖夢への警戒心を更に高めていると、人と思しき足音が複数広場に向かっているのをオッタルの優れた聴力が捉える。
(速い・・・音が軽いな・・・金属音もする、女冒険者か・・・)
「大丈夫!?助けに・・・あ、あれ?」
アマゾネスの少女が大声を上げると同時にミノタウロスの両腕と首が同時に吹き飛ぶ。血しぶきの中から妖夢が現れる。
「およ?ティオナにティオネ?それにアイズにレフィーヤも・・・どうしたんです?」
まだ敵が残っていると言うのに刀をしまいこちらに歩いてくる。無論モンスター達もその隙だらけの背中を狙おうと迫ってくる。
「危ない!」
レフィーヤが叫ぶ、デッドリー・ホーネット、そしてミノタウロスが妖夢の背後に迫っていたのだ、猛毒を秘めた毒針、あの細い体を破壊するには十分すぎる拳。そして妖夢はよそ見をしている、レフィーヤの敏捷では間に合わない、ギュッと目を閉じる。強烈な風が吹き荒れ―しかし恐れた事態は訪れない。
「・・・大丈夫?」
モンスター達は一瞬にして体中に線が走り、次の瞬間には細切れになった。そしてそれを行ったのはアイズだ。助けられた妖夢はと言うと若干残念そうな顔をしている。
「むー、振り向きざまにギガスラッシュでなぎ払おうと思っていたのですが・・・」
あー、アイズに獲物を取られたよ。俺ですよ。ったくさー花のモンスターと戦ってなさいよ、俺の獲物を取るんじゃないよー、タケに言われて17階層よりした行けないんだぞ!・・・あぁ折角20階層より下の敵と戦える機会が・・・いやまぁ助けてくれたのは嬉しいけどさ・・・。ん、所で花のモンスター以外ほぼ全部俺のところ来たけど・・・ちゃんと花のモンスター倒したのかな?アイズ普通に剣持ってるんだよね・・・。聞いてみるか
「アイズ達は他にモンスターを倒しましたか?」
アイズは首を横に振りティオナ達は互いに顔を見合わせた後首を横に振った。・・・へ?
「私達はモンスターを追いかけていたのよ、でも貴女とアイズだけで十分だったみたいね」
ティオネが呆れたようにそう言うがら俺は刀を抜き周囲を警戒する。アイズ達は俺の行動に違和感を覚えたのか周囲を確認し始める。
「・・・まだいるの?」
「音は・・・聞こえないけど」
アイズ達は俺の方を見る、そりゃそうだ、あの怪物が来ることを知っているのは俺だけで、奴は突然現れたし。・・・確か奴は魔力に反応してやって来るんだったか・・・つまり今さっきまで魔法を使っていたここに現れるのは当然と言うわけで―――。突如地面が揺れ始め、蛇のような何かが舗装された広場を突き破り現れる。
「蛇のモンスター!?」
来たか・・・相手は確か植物・・・なら・・・あの技だな・・・!
俺は再び笑みを深めた。
来年も頑張りますね!