オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

14 / 91
前書きに書くことが無くなってきたでごザル。

14話ですよー。戦闘はほぼ無しです、申し訳ない。・・・実は次回もほとんど無くってですね申し訳ない!


14話「え?そうなんですか?」

「バグベアーの爪が1、2・・・4、5。はい!目標数しっかりありますね、クエスト達成です!こちらが報酬になります」

 

「ありがとうございます。・・・15万ヴァリス・・・道中狩った敵の分もふくめれば・・・20万・・・」

 

可笑しい・・・魔石を斬らないように心掛けるだけでもこんなに稼げる額が変わるのか・・・、あ、妖夢です、最近はクエストを受ける方が稼げるんじゃ無いかな?って思ってたのに魔石を斬らないように頑張れば余裕で40万行けそうだなって思った妖夢です。現在は大体正午、ダッシュで19階層まで走って森の・・・迷宮の熊さんと戯れていたら5時間経ってた。あ、ちなみに行っても良い階層が25階層まで増えたぜ。

 

最近はグリーンドラゴンって言う宝石のなる木を守ってる木竜を倒す、もしくは目を掻い潜って宝石を貰えないかなーなんて思ってる。でも推定レベル4らしいしもう少し我慢しよう、もう少しステイタスが上がれば勝てそう。弱点はいくらでも突けるから後は相手の攻撃に対する対策をしなきゃなー、ぐへへ、あの宝石を半霊にいっぱい詰め込んでやるぜ。あと最近になって日課に加わった身体能力を強化する系統の技の練習も意外と楽しい。

 

でもカッコつけて「一刀修羅!」とか言ってる所を千草に見られた・・・死にたい。なんか起こりそうだったけど千草に見られた驚きと恥ずかしさですぐに止めたからまだわからないんだよなー。ちなみに5回目を見られたよ。・・・今までも技を使えば使う程、完成度とか上昇してきたから繰り返せば習得できる可能性が微レ存?

 

「ふむ・・・もう一回行ってきますか・・・ダンジョン」

 

日もまだ高い、目指せ40万!ふふふタケミカヅチよ!余りの大金にひっくり返るがよい!フーハハハはっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・つ、疲れた・・・19〜22階層位をえーと、月があそこにあるから・・・8時間位駆けずり回ってたのか・・・そして外に出るまでに追加で・・・結構潜ったな〜。だが40万はこえなかったぜ・・・精々25万が限界かも・・・大量の魔石とドロップアイテム・・・半霊に入り切らなかったぜ・・・レベルアップすれば半霊もでかくなるから入る量も増えるのになー。まぁ換金したし、きっと半霊の中は今やさぞかし黄金の輝きを放っているだろう、透明化してるからわからないか。

 

はぁ〜疲れた〜、大通りからだと遠いなー、脇道を使って近道しよー。「きゃっ!」ゴンッ!

 

・・・きゃっ?ごん?

 

「あっ、ごめんなさいお怪我は?」

 

やば、小さい子にぶつかっちまった・・・。・・・でも何でこんな時間にこんな女の子が・・・。赤っぽい毛のパルゥムか、暗くて色が良く分からん・・・まぁパルゥムなら大人の可能性もあるか。

 

「ごめんなさい!」

 

あ、走ってどっか行っちまった・・・ま、いっか。

 

・・・・・・・・・・・・いや、いやいや。あれ明らかにリリルカ・アーデさんだよね?どうする?追いかけるのもあれだよな・・・あ、てか何も盗まれて無いよね?!・・・そう言えば刀以外に特に金目の物身につけてないわ。カチューシャもちゃんとあるな。

 

そうか、そう言えばベル君とリリが出会うのはエイナとの買い物の後だったか・・・つまり昨日一緒に帰っていたりとかしたら出会えていた・・・くっ。

 

ま、まぁいいし?全然悔しくないから?千草たちにプレゼントを買えたんだから良し!ヴェルフ辺りと一緒に勝手にパーティーに・・・あでも桜花とか命が居るしなーパーティーに入るのは不味いかもな、でもエイナにお願いされているし・・・。ダンジョンで会ったら少し手伝う位でいいか。

 

何事も無くホームに帰った俺はタケに何故か叱られる羽目になった・・・まぁ殆ど1日中ダンジョンに潜ってたし・・・無断だったし・・・いけないのは俺だな。すみませんでした。とはいえ俺が稼いできた額には驚いてくれたので満足だ!無理をするなよ?と更に注意される事になったが。

 

 

 

 

 

 

時は遡り、正午のギルドホールにて。銀髪の少女はクエストを終え、大金を手にしていた。それを無遠慮に眺める2人の冒険者達が居た。彼らはコソコソと小声で話し合う。

 

「なぁ、知ってるか?」

「何がだ?」

「あそこにいるガキだよ」

 

そう言って銀髪の少女に指を指す男、それに対しもう1人の男は「あぁ」と言って自らが知る情報を話し出す。最も、その量はしがない冒険者が得るに相応しい少量ではあったが。

 

「あいつはコンパクっつー冒険者だ」

「コンパク?どっかで聞いたような・・・にしてもいけ好かない餓鬼だなぁ、すぐさま俺達を抜かしていきやがった」

 

彼らはレベル1、それも10年間にわたってそのレベルを更新出来ないでいる。そもそもこの世界でレベルアップできる人など1握りにも満たない人数なのだが。彼らは血のにじむような努力を続けてきたつもりだ、死にかけた事など一度や二度ではない。しかし、かのコンパクと名のる冒険者はたった2年でしかも子供の癖にレベルアップを果した。彼等が嫉妬してしまうとしてもそれは仕方が無いことだろう、人は自分に無いものを他人に求める生き物なのだから。

 

「・・・どうする?やっちまうか?」

「・・・そりゃあ俺達はベテランだが・・・あんな餓鬼に腹立ててる様じゃな・・・だが・・・」

 

話しが物騒な方向へと傾き始めた時、2人に背後から話しかける者が居た。旅人の様な格好をした優男だ。

 

「お二人さん、それは止めといた方が良いんじゃないかな?」

 

いきなり背後から話し掛けられればたとえ街中だろうと警戒はする、冒険者の自分達が気が付けなかったなら尚更だ。ファミリア全てが仲良しこよししている訳では無い、時に戦争遊戯(ウォーゲーム)として争い合う事すらある。主神同士の仲が悪ければ殺し合いに発展するケースすらあるのだ。流石にギルドホールでそんな事は起らないと思われるが。

 

「てめぇ・・・、ッ!アンタ・・・どこの神だ」

 

優男が纏う雰囲気は常人のそれでは無く神そのもの、それに気が付いた冒険者は言葉を少し和らげる、警戒は続けているが、すると優男はそれを無視し小声で囁くように男に告げる。ウィンクのおまけ付きだ。

 

「・・・彼女はあの【凶狼(ヴァナルガンド)】のお気に入りらしい」

 

「・・・ッ!」

 

息詰まる冒険者達。その一言は冒険者達の考えを改めさせるには十分すぎたのだ、何せ「自分よりも弱い者を認めない」とされる凶狼に認められたのだ、それはつまり・・・・・・冒険者達は自分がどのような事をしようとしていたのかはっきりと理解する、今まで10年間無事に何とか生きてきたのだ、ここで無駄にする必要なんてこれっぽっちも無い。冒険者達は互いに顔を見、肩を並べてダンジョンへと潜っていった。

 

 

この噂は瞬く間に広がるだろう。そう確かな確信を持って優男・・・男神ヘルメスは床を見つめる。いや、睨み付けているのだろうか…その表情は硬い、普段の爽やかな笑みを顔に貼り付けた優男の面影はなりを潜めている。

 

「(ウラノス・・・これでいいのかい?・・・彼女は異物(イレギュラー)・・・そう言ったのは貴方だ。・・・間違いなく彼女は「何か」に干渉されている)」

 

天を貫く塔の地下で、ダンジョンを静めている友を思いながら、しばらくしてヘルメスは普段の調子を取り戻したのか笑みを浮かべ、帽子を少し深く被り直し、そそくさとその場から歩き去る。

 

「(彼女は英雄に成れる可能性を秘めている・・・しかし・・・いや、そこをどうにかするのが俺達の役目か・・・・・・接触を計ろう)」

 

爽やかな笑みは変わらない、これは処世術、初対面で少女に出会うならこちらの方が印象はいい筈だ。食えない神と言われるヘルメスはオラリオの町に乗り出す。

 

「(情報はある程度既に集め終えた。・・・行動パターンを調べ偶然を装って接触しよう・・・神の間で彼女への接触は一部の例外を除いて禁止されている。尤も禁止されたのは最近で知らない神も居るだろう・・・守らない神も多いだろう。・・・アスフィに任せるのも有りかな)」

 

魂魄妖夢への接触禁止・・・それはウラノスからの御触れであり、曰く「彼女を刺激するな」との事、守ろうとしない神も多く居るが本人にはバレてないようだ。

 

「(禁止令を出したくせに・・・なんで噂をばら撒くかなぁ・・・更に注目を集めるだけだそ)」

 

と言うか既に神々の間で魂魄妖夢の知名度は非常に高い、アイズ・ヴァレンシュタインには及ばないものの僅か2年でレベルアップを果し、更にべート・ローガを重症に追い込んだと言われる噂、見た事も原理も不明な剣技。これだけの要素を持ちながら目立たない等有り得ない。神は三度の飯より噂が好きなのだ。

 

「(そう言えば・・・フレイヤがウラノスと接触していたらしいが・・・なにかするつもりなのか?)」

 

彼からすればフレイヤが動くというだけで不安になる。彼女の魅了は子供たちからすればとてつもない驚異だ、ヘルメス自身も本気の魅了などされればすぐにメロメロになってしまうだろう。

 

その事に少し身震いをし、自身のホームに戻る、優秀な秘書・・・アスフィ・アル・アンドロメダに相談事だ。

 

 

 

 

 

 

「エイナ、エイナ」

「ん?」

ギルド本部窓口で、エイナにが仕事をしていると、同じく受付嬢である同僚が声をかけてくる。なにかあった?と尋ねると彼女は「あそこ見て」と換金スペースを指さした。そちらに顔を向けてみると冒険者と職員が声高に口論しているのがわかる。

 

「ほらまた、ソーマ・ファミリアの冒険者だよ」

 

乱暴な怒声が押し寄せてくる、あれだけ大きな声で叫ばれれば耳を傾ける必要なんて無い。

 

「たったの12000ヴァリス?!ふざけるなっ!あんたの目は節穴か!こんな餓鬼があんなに稼いでるんだぞ?!舐めてんのか!?」

「あぁん?何年この仕事やってると思ってんだ!俺の目が狂ってるわけねぇだろ!」

 

冒険者は命懸けでダンジョンに潜り金を稼ぐ、どんな冒険者でも少なからず換金に期待しているのだ、期待よりも少なければ講義したくもあるだろう。しかし「また」なのだ。ソーマ・ファミリアが問題を起こしていると、ありふれた光景は度の過ぎたものとなるのだ。

連日連続、彼らの金への執着は尋常ではない。

 

そして声高に叫ぶ男に指を刺されるのは銀髪の少女。

 

「(うえっ?!妖夢ちゃん!)」

 

驚くエイナに友人であるヒューマンの同僚は不思議そうに話しかける。

 

「エイナどうしたの?そんなに驚いて」

「え?えと、あのー、コホン、私の担当の冒険者のベル君って居るでしょ?あの子はベル君を助けてくれた事があって・・・」

 

友人は、ああーあの白髪の子か、と納得し、妖夢の方を見る、妖夢はギルド職員の間でも結構有名なのだ、礼儀正しいし、何より稼いでくる金額が最近いきなり大幅に上がったからだ。ソーマ・ファミリアの冒険者と口論していた職員は「その子は関係ないだろ!」と妖夢を庇護する様に口論している。庇われている本人は「いえ、あの、その、ど、どうしましょう・・・これは私が悪いのでしょうか・・・」とお金の入った袋を抱えながら、口論する2人を交互に目で追いながら困っている。

 

「(はぁ・・・早まっちゃたかなー、ベル君大丈夫かな・・・取り敢えず妖夢ちゃんを助けないと)」

 

そう思い、エイナがカウンターから出て口論の場に向かおうとすると、水色が視界の端を通った。

 

「失礼ですが・・・そう言った口論に女の子を巻き込むのは止した方がいいのでは?まぁ、別に貴方達がどうなろうとどうでもいいんですけどね」

 

突如として口論に割って入ったのはメガネをかけた女冒険者【万能者(ペルセウス)】・・・名をアスフィ・アル・アンドロメダというレベル2、と言われている冒険者だった。最もヘルメス・ファミリアを疑う人は多く、そのレベルを偽っている人も居るらしいがエイナはその事を深く知らない。

 

「ああ!?何だてめぇは!」

「アスフィさん!」

「なっ!【万能者】だと!」

 

周囲がざわめく、レベル1の冒険者とレベル2のアスフィでは余りに実力差があり過ぎる、喧嘩沙汰に発展するのだろうか?そう周囲の者達が思うのも当然だろう。なにせ、アスフィは明らかに不機嫌だった。目の下には隈があり、疲れているのが丸わかりなのだ。

 

しかしその後もガミガミと2人を叱りつけるアスフィを妖夢は目が点の状態でポカーン見つめていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ど、どうもぉ・・・俺です・・・な、何でか知らないけどアスフィと一緒です。豊穣の女主人で食事中なのです。

 

・・・えー、この状況は何なんだろうね、口論に巻き込まれたと思ったらアスフィに連れ回されてここにやって来てパフェを食べている現状・・・午後からのダンジョンは・・・まぁ時間はたっぷりある筈だ・・・帰してくれればな。

 

「あの〜アスフィ?何故私は連れ回されているのでしょうか?」

 

パクッとパフェを1口食べ「ん〜!」とほっぺを押さえていたアスフィは「ん?」と今気づいたと言わんばかりの反応を示し、話し出す。

 

「私の主神から頼まれまして。・・・確かに警戒心がまるで無いですし危険ですね・・・まさにエサです。少しは私が悪い人だ、とかお考えにならなかったのですか?」

 

正面切ってエサって言われた、悲しい。でも僕は負けないよ。アスフィは悪い奴じゃないってのは知ってるからな・・・全く知らないモブとかなら多少の警戒はした気がする。助けてもらったみたいだし一応お礼は言っておこうか。

 

「そうだったんですか、ありがとうございますアスフィ。」

 

ニッコリと笑顔で俺は頭を下げる。会えたことも嬉しいし、助けてくれるなんてとても嬉しい。いつもの2倍くらい良い笑顔だった事だろう。

 

「・・・はぁ、どういたしまして。にしても貴女も大変ですね、有名になる弊害ではありますが・・・なにもこんな子供に・・・あぁ、パルゥムでは無いですよね?」

 

言葉の後にまた1口食べるアスフィ、やめろ、その一言は俺に効く。・・・なんて言うかこう、凄いマナーとか厳しそうなイメージがあったがそんな事は無いみたいだ。・・・仕事のストレスでヤケになってる可能性は否定出来ないけども。

てか有名になってるのか?別に迷惑とか感じたこと無いよ?寧ろ換金の時とか普段なら優しい人は「君の主神が心配するかもしれないから先にいいよ」とか言ってくれるし。ロリコン神に会ったことも無いし。

 

「有名になった自覚はありませんが・・・皆さん優しいですし、変な神様にも会ったこと無いですよ?」

 

「え?そうなんですか?」

 

え?何?俺ってそんなにロリコン神から追いかけられてるの?俺の知らない所で追いかけっこ始まってるの?俺は鬼なの?強制帰還させればいいの?

コホン、旅から帰ってきたって言っていたしな、情報の食違いだってあるさ。うんうん。

 

「・・・・・・ではその・・・魂魄妖夢に近づくと筋肉質の大男に捕まって意識を失うと言う噂はご存知ですか?」

 

・・・は?え、怖いんだけど・・・いや、結果的に助けてくれてるのか・・・どうしよう「魂魄妖夢は俺の嫁!てめぇら手ぇ出してんじゃねぇぞ!」みたいなストーカーだったら・・・。筋肉モリモリマッチョマンの変態が俺を守ってくれているのか・・・とりあえずその謎の人物は「メイトリ〇ス」と名付けよう。

 

「・・・ふむ、その様子だとご存知ないみたいですね。なるほど・・・。納得がいきました、妖夢さん、この後ご予定は?」

 

妖夢さんって・・・何だか歯がゆいなー。すぐさまダンジョンに潜りたいが・・・なにか用があるのだろうか?

 

「えと、ダンジョンに行こうかと。」

 

「そうですか、わかりました。なるべく帰りが遅い時間にならないようにするといいでしょう。」

 

アスフィは「では、今回は私持ちで、また会えるのを楽しみにしています。」とクールに帰っていった。確か主神はヘルメスだったよな、アスフィは凄いいい人だったけど、ヘルメスもいい人っぽいな。

 

まぁ、いいか、ああ言ったんだし早くダンジョンに行ってこよう。

 

 

 

 

「うふ、うふふふっ」

 

雲の隙間から覗いた月が暗闇に包まれる室内を照らし出す。笑い声の持ち主は遥か下方に見える白い影に熱い視線を送っていた。

 

美しい肢体を黒いチャイナドレスに包んだ女神は月の光によって神秘的に輝いていた。女神は目をほかの所に向ける、そこには銀の影。複数の影と共に歩く銀の少し後方で神がまた1人捕まった。

 

「うふふふ、オッタルったらそんなにあの子が気に入ったの?妬いちゃうわよ?・・・もう冗談よ、アレンってばヤキモチさんなのね?」

 

クスクスと笑う女神、フレイヤ、一応オッタルの名誉の為にここに記すがオッタルはフレイヤの命令で妖夢を守っているだけだ。

 

それがわかっていてもアレン・フローメルは気に入らなかった、そんな任務なら自分でもこなせる、寧ろオッタルよりもバレずに行動できる自信があった。しかし、神とは性格が悪い・・・と言うより楽しい事が好きなので慣れない事をするオッタルを見れて、お気に入りの少女を同時に観察できるとなれば・・・この行動は当然とも言える。

 

「あぁ・・・そうだわアレン」

「なんでしょうか」

魔道書(グリモア)の在庫ってあったかしら」

「・・・調べさせますか?」

「ああ、いいの。そんなに急ぎじゃないから」

 

アレンはまさか・・・と疑うが、自らが慕う神を疑うなど言語道断とその思考を切り捨て、魔道書の確認をほかの者に任せる、現在はフレイヤ様の警護中なのだ、この場を離れるわけには行かない・・・つまりはここに居たいだけなのだが。

 

 

 

「(魂魄妖夢の護衛、もとい監視を続けて早数日、なるほど、彼女の性格はある程度把握出来た。)」

 

オッタルは腕の中で暴れる変態神をきつく抱擁する事で黙らせ、縄で縛ってそこに置く。

 

「驚くべき才能だな・・・」

 

流石フレイヤ様だ、オッタルは内心で更にフレイヤへの信仰を強め、妖夢を見る。

 

「(見初められたお前には強くなる義務がある。まだだ、まだ強くなれる。魂魄妖夢、お前の限界は遥か先だ)」

 

妖夢に心の中で激励を送り、その場を後にする。家まで護衛すればもう十分だろう、流石にプライベートな場所までは踏み込まない。なぜなら既に噂は立ってしまっている。

 

「(噂が広がれば神も手を出し難くなる筈だが・・・本人に気づかれてしまうのは不味い、社会的に不味い。)」

 

捕らえようとした神に「げぇ!ムキムキマッチョマンのロリコン!?」と言われたのは記憶に新しい、オッタルは自分の耳が垂れるのを自覚し意識的に治す。この後はフレイヤ様に会える、そう思えば帰る足は徐々に速くなっていった。

 

 

 

 

 

「ベル様ベル様!」

「ん?どうしたのリリ?」

「向こうから冒険者が来ますよ」

 

ベルが倒したモンスターからリリが魔石を取り出していると、リリの耳がぴくぴくと動き、冒険者の接近を知らせてくれる。

 

「流石だね、僕全然気が付かなかったよ・・・」

「シアンスロープですから」

 

えへん!と胸を張り、ささ、隠れましょう。とベルの手を引き近くの横道に隠れる。

 

「リリ?どうして隠れるの?」

「悪い冒険者に捕まると面倒くさいですから」

 

なるほど、そう呟きながらベルの心はほんの少し傷付く、憧れの冒険者は想像よりも綺麗では無かった、エイナに言われた事を思い出し、表情が少し歪む。足音は段々と大きくなってくる。そして話し声も二人の耳に届いた。

 

「なぁ妖夢、今日は13階層までだぞ?千草だっているんだからな?」

 

「もちろんです。千草が怪我したら悲しいですから、あ、桜花もですよ?」

「なんだよその「あ」は・・・」

「ご、ごめんなさい・・・私が弱いから・・・」

「千草は弱くありませんよっ、それにもうすぐランクアップしそうじゃないですか」

「そうだぞ?気にする事はない」

 

13階層、という事はレベル2、または熟練のレベル1。話だけでも自分達よりも強い冒険者だと言うことがわかる、しかしそんな事よりもベルは聞こえてきた名前に驚いていた。

 

「(妖夢さん?!)」

 

別に冒険者の知り合いとダンジョンで出会う事は珍しい事ではない。なら何故驚いているのか、それはある種の苦手意識。噂は確実に広まり、こうしてベルにも届いていた。曰くレベル2にしてレベル5と同等。曰くレベルを偽っている。そんな噂を聞いてしまったベルは妖夢にあった時どう接すれば良いのかわからなくなってしまったのだ。

 

「モンスターの死体?」

「そのようですね」

「で、でも魔石が残ってるみたいだよ?灰になってないし・・・」

 

シュルル、と武器を鞘から引き抜く音がする。

 

「・・・待ち伏せ・・・か」

「ええ、その可能性が高いかと」

「ど、どうしよう・・・」

 

ベルはその声に慌てる、過去にない程に慌てる。向こうは命の恩人なのだ、これでは恩を仇で返す事になってしまう。それだけは嫌だ、ベルはリリの静止を無視し妖夢達の前に飛び出した。

 

「すみません!!妖夢さ――」

 

そこまで言った所でベルの意識は途絶えた。

 

 




ハルプの!解説コーナー!!
『はい!今回も始まりました!解説コーナー!え?前回は居なかった?・・・さぁ!始めていきましょう!』

『ま、箇条書きなんだけどね。』

【白楼剣】

・魔法及び霊力で召喚可能。切れ味は一級品に劣るが物理的に斬ることの出来ないものを切れたりする。例として迷い等。
・霊体に対してとんでもない特攻を持っており、例えばダンジョンに幽霊のモンスターが居たとしても即サヨナラ!(例、レベル6の霊体のモンスターが居たとしても斬ったら即死、昇天とも言う)
・未だに出番が来ない可哀想な子。

【レベル2の稼ぎについて】

わからないから捏造した、反省はまだしていない。コメントを見て突っ込まれたら反省しようと思っている(真顔)

【次回予告】

今回に続き次回も戦闘が殆ど無い。次次回が戦闘回になる予定。その時妖夢が超強化されます(予定)

【修正しました!】

アスフィのレベルを隠蔽せずにレベル4と表記していましたが、レベル2に直しました。すまぬ。すまぬぅ・・・。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。