オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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遅くなってごめんなさいっ!18話ですー!

今回は戦闘シーンばっかりですぜ!ちゃんと書けているか非常に不安ではありますが!

どうか暖かい目で見てくださいな!orz


18話「この魂魄妖夢に!斬れない物など全くない!」

時間は妖夢が紅いオークと出会った少し後まで遡る。

 

 

 

俺、ベート・ローガは暇を持て余していた、遠征が終わったばかりだというのに馬鹿ゾネス姉妹とアイズは再びダンジョンに突撃しちまったからな。

 

初めは付いていこうとした俺だったが武装は手入れに出してしまっていたし、ロキに「いい機会やし休んどき〜」と言われて休暇を貰っている。

 

「(はぁ・・・暇だぁ・・・そういや今朝妖夢の奴が顔出したらしいな、何しに来たんだか・・。)」

 

俺が危惧していた事はやはり起きた、そう、「噂」だ、なんでも「ベートはロリコン」だとか「凶狼(子連れ狼)」とか言われている始末・・・、別に他のファミリアの奴に何を言われようと気にしないが、やはり仲間に言われるときつい物がある。特にあの馬鹿の2人組には色々と言われてる、いつかぶっ飛ばしてやる。

 

少し街にでも繰り出すか、そう思って準備を進めていた時だ、黄昏の館が騒がしくなったのは。

 

「なんだ?」

 

怪訝に思い自分の部屋からでて騒ぎの中へと向かっていく。そこには妖夢の主神が――冒険者相手に大立ち回りしていた。俺は見なかった事にして体を180度回転させる・・・が、逃げる事は出来ず、呼びかけられる。

 

「おいっ!そこの銀髪!あぁとベート・ローガだったか!?妖夢が大変なんだ!!クエストを出す!助けてくれないか!」

 

俺は耳を疑った、1級冒険者である俺にクエストを寄越すって事は、相当な一大事なのだろう、だがアイツはタダの雑魚じゃねぇ。それが大変?クエストを出す程の何かに巻き込まれたか?まさか、フレイア・ファミリアが関係してたりするんじゃねぇだろうな・・・。

 

「何があったんだ?少なくとも雑魚に殺られるような奴じゃねぇだろうあの餓鬼は」

 

「詳しくはわからないがどうやら強化種が現れたらしい、11階層で推定レベル4のモンスターと戦っているらしいんだ、現状頼めるのはベート、お前しかいない。頼めるか?」

 

強化種・・・、あぁなるほど、そりゃキツイな。何せ常識が通用しない相手だ、ゴブリンですら強化種は化け物みたいに強くなる。

まぁ、むしろファミリア間の抗争とかじゃなくて良かったか。つっても簡単にクエストを受けるわけにもいかねぇ、それこそ噂が更に大きくなっちまう。俺だけが言われるならまだしも、ロキ・ファミリアそのものに嫌な噂が立つかもしれねぇ。

 

「なんで俺なんだ、別の奴に頼めねぇのか?アンタの所の冒険者じゃ駄目なのか?」

 

「俺のファミリアの主力は妖夢達なんだ、それにベート、お前には妖夢が一際懐いているからその方がいいと思ってな。ロキに伝えてくれないか?」

 

なんだそれ、まぁ、どうでもいい。ギルド間のクエストなんてめんどくせぇ。

 

「あぁそうかい」

 

「あっ!おい待ってくれ!助けてくれないのか!?」

 

「ああ?んなもん――――」

 

 

 

 

 

 

 

「ベル様・・・」

 

ダンジョンの七階層、ベルとリリはゆっくりと上を目指していた。もちろん妖夢の助けを呼ぶ事を忘れている訳では無い。ポーションが品切れとなり、リリの怪我が治りきっていないのだ。

 

「どうしたの?リリ」

 

ベルがリリの方を向いて首をかしげる、するとリリは頬を染め俯く。

 

「な、何でもないです・・・」

「そう?ならいいんだけど・・・怪我は平気?」

「大丈夫です、それより妖夢様を助けなくてはいけません。」

 

そんな会話をしていると、前から3人の冒険者が歩いてくる。そしてベルとリリはそんな冒険者の中に知り合いが居ることがわかった。桜花と千草だ。

 

「ん?あぁ、ベル・クラネルか。ってどうしたんだ!?」

 

桜花達はベルが「お姫様抱っこ」しているリリを発見したのか駆け寄ってくる。

 

「桜花さんに千草さん!実は「ベル様!」ひょえ!?何リリ!?」

 

驚くベルを尻目にその耳に小さな声でリリは囁く。・・・少し耳が赤くなっている、両者とも。

 

「妖夢様が戦っているのはレベル4です、あの冒険者様方が向かっても無駄死になるだけです。」

 

ベルはその言葉にハッとしたように目を見開く。あの僅か数十秒で妖夢の異常さを思い知ったばかりなのだ。とてもでは無いが目の前の彼らがあの戦いについていける様には見えない。

 

そんな時ベルがギョッとする事が起こる。頭に百合の髪飾りを付けた黒髪のポニーテールの女の子、命だ。

 

「妖夢?妖夢殿に何かあったのですか?」

 

き、聞こえてた〜・・・。と顔が引き攣るベル。リリはすぐ様次の案を思いついた様でその質問に答えた。

 

「実は・・・」

 

今日1日の出来事を都合の悪い事以外伝えるリリ、どんどん顔を険しくする桜花と命、どんどん青ざめていく千草。

 

「・・・という訳でし「助けに行かなきゃ!」」

「千草殿?!」「おい!千草!」

 

突然大きな声を出して走り出す千草、止めようとする2人に振り返り早口で話す。

 

「妖夢ちゃんが助けを呼んでない訳ないよ!きっともうハルプで呼んでる筈なの、きっとベルさんやリリさんに助けを呼ぶように言ったのは2人を逃がすためだよ!」

 

その説明は命と桜花を納得させるには十分だった様で、2人は頷き千草と共に走り出す。リリとベルはその展開の速さについていけず唖然としていた。二人からしてみれば「助けを呼べるのは自分達しか居ない」と思っていた。

 

「色々とあったけど、妖夢さんには感謝しないとね?・・・リリ、取り敢えず上に行こうか」

「はい、そうですね」

 

2人はギルドに急いだ。ー

 

 

 

 

汗が地に落ちる、血しぶきは舞、肉片が踊る。壁、地面、全てが赤く染まったここは11階層。数十体のモンスターが鳴き声を上げながらある一つの方向に駆けてゆく。

 

煌めく銀閃、舞うは銀色、纏うは緑。ただ、ただひたすらに2本の刀を振り続ける。その目に迷いは無い。

 

必要最低限の力で持って完璧にその大軍を捌いていく。しかしそれは長くは続かない、何故なら相手はただの大軍ではないのだ、敵には将がいた。この部屋の様に紅い将が。

 

紅いオークが叫び声を上げると周辺のモンスター達の動きが良くなって行く、そう、これは指揮。モンスター達は鬨の声を上げながら二つの刀が織り成す斬撃の嵐に盲目的に突撃していく。モンスターを斬る度に、死に際に放つ最後の抵抗が妖夢の体に擦り傷を付けてゆく。

 

「はぁ!はぁ!ッ―!」

 

肩で息をしながら楼観剣と白楼剣を振り回す妖夢、既に洋服の至る所に血が付いている、最早どれが自分の血でどれが返り血なのかもわからない。しかしそれでも撤退と言う考えはないのか10階層に上がるための階段前から動かない。

 

逃げ道はすぐ後ろ、されど退かず、その目はただただ冷酷に目の前の異型達を睨むばかりだ、間合いに入った瞬間にモンスターの体はその数を増やしていく。

 

壁と言う壁が、床という床が、罅割れ抉れモンスターを吐き出してくる。妖夢が魔石を切り裂いていなければこの場は全てモンスターの死屍で埋まっていただろう。

灰がつもり、血を被さり固くなる。

 

「ブヒイィィィイイイイ!!!!」

 

再び金切り声のような咆哮、それに応えるように百にも及ぶモンスター達が咆哮を上げる。

 

「オォォオオオオ」「ギャギャキキキキ!!」

 

強大な個を倒すなら、さらに強大な個をぶつけるか、数で押し潰すしかない。しかし、例えばここにいるのが妖夢ではなくアイズやベートなら、この数で押す、などという戦法は何の意味も持たない。強力すぎる個に数で挑んでも無駄なのだ。しかし妖夢は違った、妖夢は強く無かったのだ。レベルはたったの2、数で十分に押しつぶせるレベルだった。

 

「はあぁっ!」

 

たった一振りで3体の首を跳ね、二振り目で魔石を切裂く。

ここで、きっと疑問に思うだろう、「何故、技を使わないのか」と。それは簡単だ使いたいが使えない、それが答え。技を使うには何らかの構えや隙が生じてしまうのだ。敵の数は無限に近く、何の考え無しに突っ込んでくる敵に隙を見せたら最後、数で押されて圧殺されてしまう。

 

かれこれ既に戦闘開始から40分が経とうとしていた。

 

妖夢の剣は速く鋭い。・・・しかしそれがいつまで持つかはわからない。

 

そして―――――「銀」は躍り出る。

 

 

 

 

 

 

私達はダンジョン内を走る、何故か行く先々モンスター達は全て潰れたような破裂したような惨めな姿になっていた。だがこれは妖夢殿の戦闘の痕跡では無い様に見える、何故なら痕跡は下に向かっていくからだ。

 

「命!どうだ?妖夢は見つかったか?」

「いえ!まだです!」

「千草は?」

「見て、ない!」

 

少し息を切らしながら十一階層を目指す、妖夢が逃げている可能性も考慮し、有り得ないとは思いながら軽く周りに目を走らせながら移動する、最もその走りは千草に合わせているものの相当な速度である。

 

もうすぐで、そう思って速度を上げる、けれどそれは防がれてしまう。モンスターの壁に。

 

「くそっ!命!千草!戦闘態勢だ!」

「はい!」

「うん!」

 

待っていてください!妖夢殿!

 

 

 

 

 

迷いを切り捨てる。俺です、白楼剣を振っているおかけで常に迷いを切り捨てる事が出来る。

 

つまりは自身に迫る最も危険な物を斬り落とし、戦闘に支障が出ないものを無視する、断捨離が出来るのだ。そんな訳で戦っているが・・・見てくださいこの死屍累々、もう腕に力が入らなくなってきたぜ・・・!

 

だが此処を引けばベル君達が危ない。せめてあと2時間は稼がないとな。

 

「グワァァア!!!」

 

ひぃーまた増援ですか、まったく邪魔くさい!薙ぎ払いてぇー!月牙天衝で薙ぎ払いてぇ!ギガスラッシュも可!

 

タッタッ・・・ん?何か背後から足音が・・・まさか助けが・・・いや、敵の可能性も・・・。

 

そんな足音を奴も感じ取ったのか叫び声をより大きくする。そして奴自身も動き出した。これは・・・不味い!

 

「プギィ!!!」

 

低い爆発音をたてて地面が陥没する。咄嗟に避けて居なければ即死だろう。そのまま振り上げ、楼観剣でガード、しかしガード事吹きとばされ空中へ、奴は腰を落とし身体をひねる。一撃で殺るつもりだっ・・・!俺は首を捻る事で回転を加えながら落下する。奴がタメている間にこちらも大技をぶち込む!本来とは撃ち方が全然違うが・・・・・・!

 

自分の体に半霊を上から直撃させ落下速度を加速させる。それと同時に楼観剣を逆手に持ち構える。

 

「!?」

 

余りに急な加速、それに驚いた奴の動きが僅かに遅れた。とった!

 

そう、思っていた。

 

「キキキッ!」

 

バットパットの体当たり、威力も速度も弱い、ただ空中で当たれば機動をずらす事くらいは出来た。

 

「なっ!?」

 

アバンストラッシュは狙った頭部から逸れ左腕を吹き飛ばすだけに終わった。そして・・・次は奴のターンだ。左腕を吹き飛ばされて尚その腕を振り抜いた。

 

二刀を交差させガードするも・・・それは殆ど無意味だった。ガードの衝撃で両腕がへし折れる。そのまま振り抜かれ吹き飛ばされる。折れた腕と2本の刀が盾となり下半身とサヨナラはしないですんだものの、壁に叩きつけられ、腰と背骨がイカレタ。おうふ、体が動かないぜ・・・・・・現実逃避は止めようか、状況は・・・両腕は死に、背骨と腰をやられたせいで下半身は動かない・・・白楼剣と楼観剣はさっきの一撃で吹き飛んで俺から離れた事で消えかけている・・・と。あー・・・終わっちまうかな、これは・・・。

 

・・・いや、終わらないさ。こんな所で終わってたまるか。

 

現実を見据え状況を理解すれば自身の身に迫る危険を明確に理解した。そしてそれを脱するには気合などではどうにもならないと理性では分かっていた。

 

「ぅ・・・うぅ・・・う、動け・・・動いて・・・!」

 

弱々しい呻き声が口から漏れる、紅い絶望が目の前に迫る。リリルカ達は・・・無事に帰れたかな?・・・オークは己が得物を振り上げる。諦めが・・・自分を支配しようと魔の手を伸ばす、それを意思で斬り伏せ相手を睨む。そして

 

――――――――――紅いオークは横に吹き飛んだ。

 

「ぇ?」

 

そこには・・・銀狼が立っていた。

 

「ったく、これだから雑魚がでしゃばるのは嫌いなんだ」

 

べ、ベートーベン・・・あれ?違ったかな?どうやら頭を打ったらしい。にしても・・・これで助かったかな。どちらにしろチョーーーカッケッーーーー!!!

 

しかしそんな甘い狼ではなかった。

 

「口開けろ雑魚が」

 

強引にポーションと思われる液体入の瓶を口に突っ込まれる。俺はケホケホッと蒸せりながらもそれを飲み干した、これは・・・万能薬?みるみるうちに体中の傷が塞がっていく。潰れた両腕をその腕で整えるベート。そしてこちらに意地悪な笑みをして話しかけてくる。しかしその目は真剣だ。

 

「選べ、このまま俺に助けられるか、自分で立ち上がってアイツを殺すか」

 

・・・ベートの奴・・・解ってて言ってるだろ・・・。

身体に走る痛みを無視して立ち上がる。そうだったな、アンタはそういう奴だったな、ベート。

 

「おら、行けよ。相手さんも待ってるぜ?」

 

ニヤリと挑発的な笑みをこちらに向け顎で敵を指すベート、片腕だけのオークなどいくらレベル4だとしてもベートには敵わないだろう。

 

「フゴッ!ブルルルルル・・・フーッ!」

 

恥ずかしいな、こんな姿を見せることになるとは・・・。家族と友達以外には情けない姿は見せないぞ、なんて思っていたんだが・・・これは頑張ってベートと友達にならねば。

 

「お恥ずかしい姿を見せましたベート。絶対にお友達になってくださいね」

 

そう告げて消えかけている白楼剣と楼観剣に手を向ける。すると刺さっていた両方の剣が消えて手の内に

現れる。くるりと回し、構える。

 

「この2振りに・・・この魂魄妖夢に!斬れない物など全くない!」

 

第2ラウンドの火蓋が切って落とされた。

 

 

全力で走り、牙突零式を放つ。変態起動で躱され後ろに回り込まれる。回転斬り、跳躍で回避され振り下ろしが迫る。右足を軸に半回転、鞘に刀を納め零閃。轟音。さっきとは逆でオークが空中に浮かんだ。それに奴の大剣を半ばまで断ち切った。足元まで潜り込み、真上に向かって月牙天衝、大剣を盾に防ごうとするオークの真上にハルプを登場させ月牙天衝。

 

霊力の暴風が吹き荒れる。しかし奴は避けて見せた、下からの月牙天衝の方が僅かに到達が早く、大剣に月牙天衝が当たった瞬間大剣を蹴って横に逃れたのだ。

 

オークとは思えない身軽さ、敏捷で残像を作りながら回り込んでくる。白楼剣で迎撃する、これで腕を盾にしてくれれば楼観剣で首を跳ねる。が、白楼剣の特徴を先の戦闘で理解しているのか防がずに突進してくる。上に待機させていた半霊を反転、全力で自分の胸にぶつけて後方に飛び退く。

 

呼吸が難しいが気にしない。オークはそれを見て飛び退き半ば折れた大剣を再装備する。弾幕が効かないことは分かっているので刀しか無い、何の技を使うべきか・・・そこまで考えてなかったふと思い出す。最近自分の背中に書き込まれた魔法があるではないか、と、考えろ、どうすれば使えるのか。自分はこと魔法をどういう物だと理解している?・・・自分を強くする魔法だ。・・・視点を変えろ。どうすればいい?どうすれば・・・気が付ける?使ってみればわかるかもしれない。

 

「【覚悟せよ(英雄は集う)】ッ!!?」

 

背中が熱い焼けるように熱い。背中を何かが蠢く様に、這い回るような、そんな感覚。これは・・・二律背反?

 

ステイタスが・・・動き始める。そして頭に声が響く。

 

―――「ぽいすー^^」

 

・・・刀を構え、こちらを伺うオークと向き合う。やはり魔法を唱えただけじゃあ無理らしい。

 

―・・・「こほん。・・・ぽいs」やらんでいい!

 

オークは地面を這うような低さから切り上げを放つ、真横にステップを踏み回避、振り上げてガラ空きの胴体に斬撃を・・・と思わせての1歩タイミングを遅らせた袈裟斬り。オークは無難に大剣を盾に使い俺の攻撃をガード、そのまま大剣を蹴り上げる。俺はその大剣に飛び乗り空中へ。

 

―「おお〜。あ、そうそう最近さ〜仕事の方がキツくてね?もう俺っちやってられなくてさ!なぁ聞いてる?」

 

五月蝿い駄神を無視して刀を最上段に構える。オークは右肩を引き、突きの構え。

 

―「まぁいいか、で、君の魔法の事何だけどさ?」

 

とても気になるがとりあえず狩る!オークの背後に半霊をハルプとして召喚、んで『ツインスタップ!!』両手の刀で連続突きを放つ。馬鹿め!そいつは囮だ!後ろを向いてハルプを薙ぎ払ったオークの頭を蹴り飛ばし後ろに跳躍。

 

―「さあ!詠唱するんだ!」

 

いや!なにをだよ!?魔法の事なんも説明してねぇよ!馬鹿じゃねぇの!?だから仕事でミスるんだよ!?

 

―「やりたいことを言葉に!僕も手伝うからさ!」

 

やりたい事?・・・と、とにかくステイタスの差が埋められるものが欲しい!一刀修羅とかさ!

 

―「おっ!いいねぇ!ジャが丸くん召喚魔法も捨てがたいけど。さぁ詠唱だ!」

 

うるせぇ、ジャが丸くんは置いておけ。

 

「【男は卑小、(此度)刀は平凡、(修羅は顕現す)才は無く、(修羅)そして師もいない。(一刀にて山、切り崩し)頂き睨む弱者は落ちる。(頂きは地へと落ちる。)その身、(時過ぎし時、)その心、修羅と化して(男、泥のように眠る)】」

 

異変を感じとったのか紅いオークは突貫してくる。だが――もう遅い・・・余りにも、遅過ぎる。

 

「一刀―――修羅ァァアアア!」

 

 

 

 

戦いは加速する。妖夢全身の擦り傷から血が溢れ出す、目は充血し赤く輝いていた。踏み込んだだけで地面はひび割れ双方の距離は零となる。ベートは目を見開いた、なぜならその初動を彼は捉えられなかったのだ。

 

戦場の至る所で炎が煌めき、吹雪が吹き荒れ、竜巻が起き、地面が盛り上がる。

 

壁は穿たれ、地面は抉れ、天井は崩落する。見る見る間にオークの身体は斬られ突かれ焼かれ冷やされとひどい有様になってゆく。時には三つ同時、時には九つ同時に刀が振るわれる。腕がもげ、足がもげ、腸がこぼれ落ちる。

 

 

 

 

やがてオークは息をするだけの肉塊となり果てる。残り斬るところは首か魔石か。鼻から、口から血を流しながら刀を掲げる。狙いは首、そして一切の迷いなく、それを振り下ろす。

 

勝者は魂魄妖夢。

 

圧倒的だった、1分にも満たない僅かな時間で格上を削りきった。切り倒してみせた。ベートは動けないでいる、目の前の存在に、触れてはならない様な、そんな気がしたからだ。

 

しかし、ベートは歩き出す。なぜか、妖夢が倒れてしまう、そう、思ったから。歩きは徐々に走りに変わり。

 

倒れる妖夢を受け止めた。

 

「ベー・・・ト。」

 

緑色の服は血に濡れて最早緑ではない。彼女の手は小刻みに震えており、そして武器を取り落とす。そして徐々に呼吸すら浅く、小さくなってゆく。武器が弾けるように桜色の光になって消える。

 

彼も、彼女も知りはしないが。あの魔法は「デメリットが存在する技をデメリットを更に大きくする事で完全再現する」魔法なのだ。魔力を使う行為ならば使用する魔力はより大きくなり。肉体に負担をかける行為ならばその負担はより大きく。

 

唯でさえ肉体に負担のかかる一刀修羅はその負担を更に倍近くまで引き上げられ肉体を破損させたのだ。

 

「おい!くっそ!」

 

ベートは焦り、ポーションを妖夢に振りかける。そして抱き上げ上層に駆け出そうとする。

 

「妖夢殿〜!何処に居られますかー!」「妖夢ー!返事しろー!」「妖夢ちゃ〜ん!どこなのー?!」

 

ベートの耳が誰かの声を捉えた、僅かに逡巡した後、そっとそこに妖夢を横たえた。そしてバレない内にと下層に向かって駆け出す。

 

「妖夢?!」「妖夢ちゃん!?」「妖夢殿!?」

 

自分らしくない、そう思いながら。

 

「(はぁ・・・何やってんだか・・・)」

 

何故か意気消沈している自分を自覚し、呆れながら12階層に向かう。きっと彼らは上の階に向かうだろう、それに下にはアイズ達が居る。なら下に向かってアイズ達と合流しよう。

 

そう考えたベートは気が付かない。あの瞬間、ベートすら捉えられない速度を出された瞬間に、無意識に妖夢を認めてしまった事を。

 

故に、変わるだろう。強者と弱者という関係から、1歩だけ。けれど、その1歩は大きな前進である。




【オッタル】

(´・ω・`)「ん?誰だあの猿顔は」

ヾ(゚Д゚*)ノウキー「大変でごザルっ!大変でごザルっ!強化種が出たでごザルよっ!」

(`・ω・´)「ほう、強化種か・・・珍しいな最近は出てきていなかったのに」

ヾ(゚Д゚*)ノウキー「妖夢殿のお知り合いは助けて欲しいでごザル!妖夢殿か今は時間稼ぎをしてるでごザルよ!」

(´°Д°`)「え?」

ヾ(゚Д゚*)ノウキー「どなたかー!どなたかー!助けてはくださりませぬかー!」

(`・ω・´)「フレイヤ様に報告だ!」


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