オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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遅くなってすみません!

お絵かきアプリで挿絵を描けるか頑張っていましたぜ。後書きに載せときますね。

今回から完全オリジナルストーリーに突入!いやぁ桜花さんやタケミカヅチ様をちゃんと書けるか心配でございます。


22話『鼻唄三丁 矢筈斬り――――ってな。』

ギルドから帰ろうとする妖夢達を1人のギルド職員が止めた。彼女はエイナチュールと同じく冒険者の対応を任された職員だ。名前をジジ・ルーシャ。キャットピープルの女性で、魂魄妖夢の担当を任された者だ。

 

「気をつけて帰りナヨ?」

 

独特な訛りのある話し方と他のアドバイザーに引けを取らない美貌は冒険者達からの人気を集めている。

 

「はい、わかりましたジジ。それでは」

 

ペコリと頭を下げる妖夢とそれに続いて頭を下げる命と千草、そんな光景に小さくため息をつくジジ、彼女は少し怒っていた。なぜなら妖夢は「頑張りすぎている」とジジは考えている、レベル2になってから3ヶ月もしない内にまたランクアップ・・・・・・、異常だ、あまりに異常。過去に「冒険は駄目ダヨ」と伝えたジジであったがもしや聞こえていなかったのではと思ってしまう。

 

しかし、そんな怒りも妖夢が生きているからこその物だ。妖夢が死んでしまったのなら怒りではなく悲しみが先に来てしまう・・・・・・死んだ者に憤るには余りに同じ事を経験し過ぎたからだ。ジジは20を既に超え立派な大人のキャットピープルだ。誰かが死ぬ経験などそれこそ片手では足りなかった。

 

彼女の怒りの理由は他にもある。三ヶ月に1度位の頻度で開かれる神々の集会、そこではランクアップを果した冒険者達に神々から二つ名が送られるのだ。ランクアップを果した冒険者なら誰もが憧れ、それを得たのなら誰もが胸を張る。

 

しかし、担当のアドバイザーには仕事があった。ダンジョンでの出来事を担当冒険者に聞いたり、担当冒険者の話題を集めたり・・・・・・つまり、二つ名を決める為の元となる情報を集め、資料を作らなくてはならないのだ。

 

ジジはコツコツとその仕事を全うし、レベル2になった妖夢の資料は完成しかけていた。しかし、ランクアップ。本人から聞いた時、喜びに溢れたものの、仕事を思い出し、呻いた。ジジがどんな仕事をしているのか知らない妖夢は心配そうに「大丈夫ですか?ジジ」とジジを見上げていた。

 

「はぁ・・・・・・私も頑張ルカ」

 

そう言って仲良く並んで帰る3人組の背中を少し眺めた後踵を返し、カウンターへと向かう。

 

「ジジさん?どうかしたんですか?」

 

彼女の後輩に当たるエイナ・チュールがジジに話しかけてくる。きっと疲れが顔に出ていたのだろうとジジは気を取り直しエイナの隣の席に座った、何時もならここはミイシャというエイナの友人が居るのだが今日は非番らしい。

 

「実はネ・・・・・・妖夢がランクアップをしてタヨ・・・あぁ、仕事がまた増えタ。」

 

また、と言うのはジジが妖夢の担当である事が関係している。妖夢をつけ狙う神々がオッタルやタケミカヅチに秘密裏に倒されていたとして・・・・・・接触を禁じているギルドからすればそれは違法行為、度が過ぎれば罰せられるのだ、ジジに。そう、仕事は増えた、オッタルやタケミカヅチが倒した神を縄で縛って持ってきたのならささやかな報酬を用意し、神をウラノスの変わりに叱らなければならないのだから。しかし、神は一筋縄では行かない、時折ジジにセクハラを行おうとする時だってある。そのせいか彼女の腰には常にナイフが備えられている。

 

「あー、その、大変そうですね、アハハ。」

 

困ったような笑顔でジジを励ますエイナ。その笑顔に励まされながら仕事に就くのだった。

 

 

 

 

仕事もある程度の区切りがつき、しかし、もうすぐで開催される集会にはこのペースだと間に合いそうに無いので家に持ち帰ることにしたジジは帰路に付くために準備を始める。

 

制服を脱いで、普段着に変わる。これが彼女のスイッチになっている。どっと疲れが増したかのような感覚にため息をつきながら家路につく。

 

夜も遅い、魔石灯が照らす街中をジジは急ぐ。・・・・・・なぜなら何か嫌な予感がするからだ。音に対して敏感なキャットピープルの耳は、夜目が利く目が、警戒してキョロキョロピクピクと辺りを警戒する。

 

しかし、――――――その警戒網をいとも容易く突破する者達が居た。

 

『シュコー……シュコー……こちらΑ……シュコー……ターゲットを発見シュコー……警戒されているが気付かれてはいないようだ……どうぞ』

『こ、ら……B、通信……が悪い……少しせっ……んする。ど、ぞ。』

『了解だ、Bは通信状況が良くないらしい。機器の故障のようだ、だが問題は無い……任務を遂行する。』

『こちらD、了解』

 

そう特殊部隊(ロリコン神)だ。彼らはその神業レベルのチームワークやステルス技能を持ってしてジジに接近する。彼ら特殊部隊を目以外で知覚するには恩恵による援護が無ければ無理だろう、なぜなら神ならば無意識に辺りに漏れ出てしまう神威を完全に封じ込める事に成功しているのだから。

 

そもそも、ジジを誘拐しようと言う考えに至ったのは、妖夢を襲う算段を計画している最中Dが不意に「そうだ!妖夢たんと仲が良い人を人質にすれば俺らの好きに出来るんじゃね!?」と言ったことである。

彼らは様々な考えを約0.1秒の間に巡らせ、神からの啓示を受けたかのような衝撃を受けた。そして誰もが声を揃え言ったのだ。

 

「「「「「「「「それだ!!!!」」」」」」」」

 

最早手の施しようがない。

 

ジジは辺りを見渡し何もいない事を確認した後自分の家に向かって小走りに走る。ジジ位の年頃ならヒールを履いていてもおかしくは無いのだが警戒心の強いジジはちゃんとした靴を履いている。

 

しかし、その程度計算されていた、前方にあった街路樹から黒いローブの男が音を立てずに飛び降り着地する。

 

「うわっ・・・・・・誰でスカ?私に何か用?」

 

それに驚くジジは目の前の男から目を離さないようにしながらナイフに手をかける。しかし。そのナイフはあるべき場所になく、ジジの首に押し当てられていた。

 

「ひっ!」

 

息がつまり、恐怖に足が震え出す。幾ら冒険者を見てきたとしても実践など全く経験が無い。それこそ命の取り合いなど。

 

『シュコー……シュコー……ジジ・ルーシャか?』

 

ポタポタと液体が地面に落ちる、それは血ではない、水だ、近くの用水路に隠れていたのだろう、そこまで考え彼女は恐怖をより強めた。水場から上がる際に一切の音を立てなかったその技術に。

 

「そ、そうデス・・・私は何か恨まれるような事をしましタカ?」

 

ジジには身に覚えがなかった、私は何か彼らを怒らせるような事をしたのだろうか。とジジは考えを巡らせる。しかし、何も思い浮かばない。あるとするならば告白され、しかし断った冒険者位だろうが……彼らはダンジョンから帰ってきていない……3年ほど。

 

『シュコー……いや、恨んではない……シュコー』

「では、どうシテ・・・・・・」

『全ては我らが手中に魂魄妖夢を収めるため……フッ!』

 

ジジの意識は此処で一旦区切られた。

 

 

 

 

 

妖夢、命、千草はホームに向かって歩いていた。そこに会話は無い。新しい装備を身につけ、新しい武器を手に入れて、話題は多いだろう、それほどホームまでの距離がある訳でもない、話しなど幾らでもできる。

 

しかし、彼女達もまた、嫌な気配を感じ取っていた。

無言なのは牽制なのだ、「私たちは警戒しているぞ」と言う警告。では彼女達は自分達が誰に追われているのか知っているのかと言われれば答えはNO、しかし、オラリオの常識として「闇討ち」は存在する。夜、不自然な視線を感じたのなら、それは生命の危機だ、故に警戒を最大限まで引き上げる。

 

 

『あーあー。こちらB……通信器が直ったみたいだ……予定通り行動を開始する』

『了解……少し待ってろ……今団員に指示を出す。』

『……あぁそうだ、Α?アドバイザーは捕らえられたか?』

『こちらΑ、もちろんだC。ではB、Cとともにミッションを完遂してくれ。』

『『了解』』

 

 

警戒する妖夢達の耳にいくつもの足音が届いてきた。それぞれが戦闘態勢を取る。

 

「対象、人型!予測・・・・・・約15!」

 

命が足音の重さ、数でおおよその人数を把握すると妖夢たちに知らせる。魔石灯により明るかった周囲が魔石に矢が射られ、月明かりだけとなった。しかし、夜空は雲に覆われている。明かりは無い。

 

「―――シッ!」

 

不意に、鋭い呼吸が。それと同時にビチャビチャと何やら液体が滴り落ちる様な音が辺りに響く。

 

「ぐ、糞が・・!」

 

そんな声と共に誰かが倒れた、低い男の声。敵が倒れたのだと聞く前から知っていた命と千草は見えない虚空へと何の躊躇いもなく刀を奮った。すると風切り音と共に何かが斬れた。

 

「な!・・っ!」

 

驚きの声が上がる。まさか、見えているのか、と。しかし、彼らの戦法は確かに彼女達の目を封じる事に成功している。魔石灯に照らされ明るかった場所からいきなり暗くなった為、目が慣れるまで少しの時間が必要だった。普通の冒険者だったなら、奇襲だとわかっていたとしても、いや、だからこそ慌てふためき適当に武器を振り回すだろう、しかし、彼女達は違う。

 

武神の子、それが彼女達だ。足音、呼吸音、衣服の擦れる音すらも、その耳は聞き逃さない。

 

「―――ふっ!」

 

千草の振り向きざまに放った突きは見事に男の脇腹を貫く。命の放った袈裟斬りは綺麗に男の肩から脇腹を切り裂く。妖夢が振るった刀は見えなかった、特別速かった訳ではない、その刀は黒く、闇夜に紛れていたのだ。腹を横一文字に斬った。

 

「ぐあぁ!」

「こんの、糞ガキィ!」

 

呻き声を意識から外し、足音に集中していた3人は素早く移動し互いの背を守れるように固まる。そして、やっと妖夢が口を開く。緊張が走る場面では常に妖夢が軽口や冗談めかした言葉で緊張を和らげてくれる。

 

「命に千草、目は馴れましたよね?」

「はい、無論です」

「うん。大丈夫」

 

口元を緩め、しかし、意識は引き締める。突然飛来する矢を命が切り落とした、どうやら襲撃者達は飛び道具を使うことにしたらしい。飛んでくる矢や、ナイフを弾きながらじりじりと下がる妖夢たち、周囲に家は無いものの、少し進めばそこには住宅地が存在している、そこまで行けば襲われる心配はないだろう。近道をするために妖夢達は路地の方へ走る。

 

『シュコー、シュコー、どうだ?シュコー……順調か?』

『あぁ、順調だ、もう少しで裏道に入ってくれる。』

『そうか。もうすぐこちらも予定の位置につく。』

 

妖夢達が逃げ込もうとしている路地には無数の影が、屋根、ゴミ箱、小屋の中、至る所に冒険者。否、ロリコン共が隠れているのだ。事案だ、これは事案だ。

 

「そっちに行ったぞー!」「追えー!」「射て!うてぇーー!」

 

妖夢を殿に矢を弾きながら路地に走る。そして路地以外に逃げられないように扇状に広がって追いかける男達。

しかしそこで男達は不意に後ろから気配を感じた。

 

『〜〜♪〜〜〜〜♪』

 

鼻歌が――その場に響く、鈴のような可憐な声が。聴く人が聴けば分かるだろう、その曲は魂魄妖夢のテーマ曲「広有射怪鳥事~Till When?」である事を。しかし、この世界にその歌を知る人は1人しか居ない。

 

「命、千草、行きますよ!」

「はい!」

 

妖夢達が逃げるのをちらりと確認した男達が振り向くとそこには妖しげに目を赤く光らせる妖夢にそっくりな女子。もちろん邪魔されてはたまらない、と冒険者の一部が赤い目の妖夢の足止めをしようと立ち塞がる。

 

『ーーー♪〜〜〜♪』

 

刀を自らの腹から引き抜いて、薄く笑う。鼻歌はまだ止まらずに流れていた、そんな綺麗な鼻歌に一瞬気を取られながらも構え直す、しかし、その時にはもう彼女は後ろにいたのだ。そして―――その場の全員が突如吐血し、倒れた。

 

『鼻唄三丁 矢筈斬り―――ってな。』

 

とある骨身の海賊兼音楽家?が使う、摩訶不思議な斬撃、歌に魅せられたのなら・・・・・・そこはもう、黄泉の国だ。

今回は手心を加えてもらえた様ではあるが、もし、次があるのなら、生命は無いに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

路地裏に駆け込んだ俺は突如現れた何故か麻縄や目隠しを手に持った男達に囲まれてしまった。やばい、と内心思う。とにかく千草達を守らなくては。

 

「命!千草は任せますっ!足止めは私が!」

 

ここで俺がコイツらを引き付けて時間を稼ごう、そうすれば千草達は逃げれる筈だ。てかオッタルさんまだですか!?

 

「・・・・・・く、はい!」

 

命が逃げ道と俺の顔を見合わせ・・・迷った末逃げる事を選択した。

 

「必ず助けを呼んできます!」

「ええ、お願いします――フッ!」

 

会話をそこそこに男達に突っ込む、コイツら怖い、なんか息荒いし、まさか、アスフィやオッタルが言っていたのはこいつらなのか?

 

「デュフフコポォwwwオウフドプフォwww フォカヌポウwww」

 

ひいぃぃぃいい!?怖い!怖いよこの人達!?白楼剣!白楼剣を呼ばなきゃ!太刀筋が寝ぼけてしまう!というか、近づきたくねぇ!!

 

「デュフフこぽぉ王府度プふぉふぉかぬぽうwww」

 

未だによくわからない言語で笑う?男達。それに思わず突撃をやめて一歩後ろに下がってしまった、すると男達は一歩間を詰めてくる。

 

「デュフフww幼女でござるwww幼女でござるぞぉwww某のインスピレーションがフルパワーでござるwww」

「ポカヌポォwww吾輩のブラック・ロード・ランスが研ぎ石を求めておるわwww」

「おいそのマッキーしまえよwww」

 

だ、だめだ、こいつらに正面から突っ込んではいけない!ま、迷うな!恐怖を切り捨てろ!で、でも勝てる気がしないよ!お、おのれ・・・・・・捕まったら乱暴されるぞ!○○同人みたいに!

 

「わ、【我が血族に伝わりし、断迷の霊剣。】」

 

なので捕まらないように魔法で応戦しよう接近戦だけど。目を閉じて詠唱を開始する。

 

一工程、白い光の粒子が周囲を舞い始めた。

 

「お?おっ?何でござるかwww魔法少女でござるかwww」

「大丈夫だ、吾輩の守備範囲は広いぞwww」

「僕と契約して○○○になってよ!」

 

「【傾き難い天秤を、片方落として見せましょう。】」

 

二工程、白い光の粒子は掲げられた俺の右手に渦を巻くように集中し始める。

 

「おおー!すごいでござるなwww止めないとまずいのでは?www」

「大丈夫だと言っただろう?吾輩は受けるぞwww」

「おうふ、強気な子もタイプだぜwww」

 

そして、三工程。光は実体をもってその手の中に顕現した。

 

目を、開く。

 

「【迷え、さすれば与えられん。】白楼剣ッ!」

 

何も無い所で袈裟斬りに白楼剣を振り下ろす。思考がすっきりした、今俺のやることはコイツらを止めること、二人の元に行かせないことだ。

 

「お、おおぅ怖い目だ、流石にびびってしまうでござるよwww」

「くっ、ふぅぅ!!・・・・・・だ、だめだ、既にやばいぞ吾輩は!」

「おいドM、なんで立候補した。このバカwww」

 

そんな会話を聞く必要は無い、俺は突撃し、八芒星を描く様に斬撃を放つ。これは原作妖夢のスペルカード。

 

「人鬼「未来永劫斬」ッ!」

 

ガガガガガガガガガガガガガッ!

 

と鈍い音と共に狭い路地裏に桜色の八芒星が幾つも咲き誇る。

 

「あぶっフブッ!がハッ!ヘムッ!」

「あっ!くっ!はぁっ!!ふぅ」

「いだだだだ!アダっ!あふん!」

 

ふぅ、60回位切った気がする、これだけやれば倒せたはず。・・・・・・は?

 

「いやぁ痛かったでござるなwww」

「ま・ん・ぞ・く!したぞ!吾輩はwww」

「痛てぇ、すげぇ痛てぇ。でもまぁ耐えられないほどでもないか」

 

なん、だと?平然と立ち上がりやがったぞ!?そういえば、手応えが変だったな、ガガガッ!って言ってたし、まじかよ、あれに反応して来たってのか?それとも頑丈な装備を着てるのか?どう見てもパンツしか履いてないんだけど!?よく見ると怪我してないんだけど!?

 

「「「これがギャグ補正の力だっ!」」」

 

もう月牙天衝ブチかまそうかな、とか光が消えた目で考えていると遠くから悲鳴が聞こえてくる。女性・・・・・・それも若い。まさか・・!

 

「ふっ!どうやら作戦は成功したらしい。」

「そのようだな。では向かうとしよう。」

「おいおい、斬られたんだぞ?もうちょっとゆっくりしてこうや」

 

え?何この人達、急にイケボになったんだけど。急に真面目になったんだけど。今なら死ぬ?今なら殺せる?あ、白楼剣握ってr斬る!

 

射殺す百頭(ナインライブズ)ッ!」

「え?」

「へ?」

「Why?」

 

低い悲鳴が、路地裏に響いた。

 

 

 

 

 

 

「うふふ・・・・・・みんな我慢が出来なくなってしまったのね。」

 

銀色の長髪を靡かせて、バベルの塔の最上階の窓辺に立つ女神、フレイヤは笑った。

 

「あの子には子供達を送ったけれど、この子にはどうしようかしら?」

 

アイズとベルに刺客を送ったフレイヤ、しかし、同時刻に起きた神々の違反に、出せる手札がもうなくなってしまった。

 

「オッタルはダンジョンに行ってしまったし・・・・・・これは見ている事しか出来ないかしら?それとも私も出向く?いいえ、駄目ね、我慢すればする程、手に入れた時の快感は凄いもの。」

 

唇に手を当て、妖艶に微笑む。頬は赤くなり、息は荒い。興奮した眼差しは銀と白に向けられている。

 

「あぁもっと、もっと強くなりなさい。・・・・・・私に相応しい、強き者になってちょうだい」

 

 

 

 

 

 

 

 

ぞわり。と悪寒が俺の足元から駆け上がってくる。以前も感じたこの感覚。オッタルの行動から見るに俺はフレイヤに気に入られてしまったらしい。

 

首から下が地面に埋まってしまった変態達をそのままに、俺は悲鳴の方へ走る。さっきの声は恐らく千草だ、くそが、千草に何かあったら犯人は粉微塵にしてやる。

雲間から月が覗き、星星がその姿をちらつかせている、明るくなった路地を俺は走り抜ける。

 

路地を曲がり、砂煙を巻き上げながらブレーキを掛け止まる。剣戟の音がする、まだ戦っているようだ、つまり千草が斬られたのか?・・・・・・おのれゆ"る"さ"ん!

 

剣戟の方へ走る、曲がるのが面倒だったので跳躍し、屋根の上に。すると、屋根の上から下に向かって矢を放つ奴等が見えた、恐らく矢を向けているあの場所に命達が居るに違いない。

 

「はあぁぁあ!結跏趺斬ッ!」

 

Xを描く様に斬撃が相手に向かって飛んでいく。それを何度も放ってゆく。相手もそれに気がついたようだが反応が遅れた、体に×を刻まれて下に落ちてゆく。

 

倒し損ねたひとりの足を斬り飛ばし顔を踏みつけ跳躍。上から見る事で戦況がよく見える。・・・・・・命が、敵に囲まれ必死に応戦していた。

 

「千草が……居ない!?」

 

その事に驚愕を覚えながら相手の上をとった、今は何よりも敵を倒す事が優先だ、上空に待機させた半霊から弾幕をばら撒きながら俺は落下しながら回転し、斬撃を放つ。

 

「くっ妖夢殿・・・・・・!申し訳ありません!千草殿が、攫われてっ!」

 

悔しそうに顔を歪めながら相手の攻撃を捌き、隙を伺う命。それよりも命からもたらされた情報が俺を一瞬混乱させた。

 

「千草が誘拐?!なぜ・・・・・・!いえ、それよりもまずは此処を乗り越えましょう。」

 

千草を救うにはコイツらは邪魔だ、ならば斬る。それだけ!

黒糖を高々と最上段に構える。ステイタスの上昇を感じる。スキルが発動したらしい。発動条件がいまいちピンと来なかったがまぁいい。

 

「去ね・・・・・・私達の前から!断命剣「冥想斬」ッ!」

 

霊力と剣気によって形成された炎の様な巨大な刃が刀に宿る。やり方は簡単だ、霊力を練り合わせ刃を形成し、剣気で固定する。そうする事で霊力と剣気で出来た巨大な刀となる。でもこの技は消費が重い、この一段階上の技があるがそれはもっと重い。

 

「撤退だ!撤退しろ!」

 

光り輝くその剣は辺りを眩く照らし出し、幻想的な雰囲気を醸し出す。しかし、見とれるのはあまりに危険、そうはっきりとわかる程の危険性を秘めている、撤退しろという命令はすぐさま行き渡り撤退をしようと背を向ける。

 

そこに、断命の剣が振り下ろされる。

 

敵を吹き飛ばし、一直線の道が出来た、呆然としている命の手を引っ張りそこを駆け抜ける。千草を探さなくては!

 

 

 

 

しかし、その日千草を見付ける事は叶わなかった。俺は命と共にホームに戻ってきた。互いに会話は無い。今はもう朝になっている。

 

「申し訳ありません、妖夢殿・・・・・・私が、不甲斐ないばかりに・・・・・・」

 

命が拳を指が白くなるほど強く握り締める。その顔には悲壮な決意が垣間見える。このままだと命が1人で突撃しそうだな、どうにかしなくちゃな。

 

「命、今回の件は命のせいではありません、謝るのは私です、殿はハルプに任せるべきでした」

 

俺の言葉に命は目を見開き、歯を食いしばる。

あれ、やばいな、今のは地雷を踏んだっぽいぞ。

 

「そう、ですか。やはり私はまだ・・・・・・妖夢殿の足を引っ張っている。」

 

命はそう小さく呟き、頭を下げてから部屋に戻った。やってしまったぜ・・、全然足とか引っ張って無いんだけどなぁ・・・・・・とりあえずタケに報告しなくては。




【オッタル】

(。+・`ω・´)シャキーン「よし、早速護衛に赴くとしよう。」

フレイヤ「あら、少し待ってオッタル、白髪のあの子の事で相談があるのよ」

(´。・ω・。`)「わかりましたフレイヤ様。して、如何様な相談で?」

フレイヤ「実はね?あの子が燻ってるみたいで・・・・・・どうしたらもっと輝けるかしら?」

(`・д・´)「それはトラウマを解消するしか有りませぬ。」

フレイヤ「トラウマ?」

(・ω・)「ええ、あの者はミノタウロスに含む物がある様子、つまりそれが壁となっている。強くなる為にはその壁を崩さなくては。」

フレイヤ「なるほどね・・・・・・それも、貴方がいう『冒険者は冒険しなくては成らない』かしら?クスクス」

(〃・ω・〃)「少し、大きく出過ぎました。ですが、そのとおりかと。」

フレイヤ「ねぇオッタル?じゃあ彼に見合う特別なミノタウロスを用意してもらえないかしら?」

( ー`дー´)キリッ「わかりました。フレイヤ様の御心のままに。」


戦闘シーンを描いてみた。色付きだよ!でも作者は目が少々特殊で正確な色を見分けられないから多分色が変だよ!気にしないでね!

【挿絵表示】

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