オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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ヒャッハー投稿だー!最近暖かくなってきましたね。

そんなわけで26話です。




26話『手加減なんて要らねぇ全軍でかかって来やがれ!』

真夜中、エロス・ファミリアの門前で、2人の男が座り込んでいた。

 

「・・・いい月でござるなぁwキュクロ団長w」

 

何時ぞやのスリー変態の1人とキュクロだった。二人は肩を並べ座り、話していた。

 

「あぁ・・・いい月だ。そろそろエロス様も出発なさるだろう」

 

そう呟くキュクロの隻眼は月では無く、闇夜の街を睨んでいた。

 

「デュフフwww警戒しすぎでござるよwww今朝攻めてきたんだから今日はもう来ないでござるよwwwきっと」

 

おどけた調子でそう笑いかける男冒険者。キュクロはフッと笑い、肘で男の脇腹をつつく。その様は長年の友人が見せるものであった。

 

「相変わらず嘘が下手だ、お前のスキルを知らないと思ったか。警戒し過ぎているのはお前だろうに」

「おっとこれは予想外ぃ!拙者のスキルは有名でござったかwww」

 

おどける男のスキルはシリアスを破壊する事で効果範囲内の物理的、魔法的なダメージを無効化または軽減する物だ。つまり彼がふざけてシリアスが壊れているのなら奇襲をかけられても大丈夫。と言う事だ。

 

2人がそうして警戒を続けていると、ふと、キュクロが失った片目があった凹みをまるで痛覚があるかのように歪める。

 

「来るぞ・・・!」

 

手に持った大剣を真後ろに薙ぎ払う。金属音と共に舌打ちが響いた。その声は高く、少女である事が伺えた。月明かりに照らせれ見えたその人物は魂魄妖夢だ。

 

「はぁ!」

 

白と黒の斬撃がキュクロに襲いかかる、それを片方の大剣で防ぎながら、もう片方の大剣で叩きつける様に斬り掛かる。キュクロが防御に使っていた大剣を蹴り、後方に跳ねた妖夢から眩い弾幕が放たれ、キュクロの視界を埋め尽くす。

 

「ぐぅ!?」

 

目潰しを兼ねた面制圧弾幕、諸事情により光に弱いキュクロは思わず目を覆ってしまった。しかし長年の勘を頼りに大剣をクロス状にガードさせる事で追撃の刺突を防いだ。

 

「こっちだ!そこは任せるぞ妖夢!」

 

若い男の声と共に数人が奥へと走っていく、桜花と命だ。しかし。

 

「簡単には通せないよぉwデュフフwそこの黒髪サイドポニーの娘も可愛いでござるなぁw」

 

おどけた調子でホームの入口に立ち塞がり、男冒険者はロングソードと盾を構える。・・・念入りに可愛らしい女の子が盾に描かれている、いわゆる痛い盾だ。

 

「邪魔だ!」

 

桜花が頭の上で槍を回転させ、遠心力と共に振り下ろす。男はそれを盾を斜めに構える事で横にそらし、ロングソードを盾に添える様に構え、突きを放つ。桜花は半歩下がり回避し、突きを主体に攻める。

 

「おっほっ〜上手いなぁwwwもうっ!やめて!拙者のライフはゼロよ!w嘘だけどもwデュフフwww」

 

巫山戯て挑発する男に腕を翻す様にして放たれた槍の振り上げが男の手を思い切り叩く。「なに!?」と驚いたのは槍を振るった桜花だ、本人は腕斬り落としたつもりだった攻撃、しかし、結果は

 

「あいた〜!武器を落とす所でござったw危ないw危ないw。でもでも?平気でござるよ?拙者、耐え忍ぶ事は得意でござるもんでwww」

 

手を摩り、痛いの痛いの飛んでけ〜☆。と思わず攻めの手が鈍るほど男の周りだけシリアスがシリアルになってしまっている。しかし、2人の間に飛び込んで来る者が居た。

 

「桜花殿!此処は拙者に任せるでごザル!」

「猿師さん!」

 

猿だ。・・・猿師だ、クナイを片手に持ち、もう片方の手をレッグポーチに入れて中腰に構える。

 

「おお〜?キャラ被りでござるか!!」

「残念でごザルが、拙者は十年以上前からこの語尾でやって来ているでごザル故・・・・・・同じキャラは許さんでごザルよ」

 

2人の間に何かしらの火がついたのか、同時に駆け出し、互いの得物が火花を散らす。

 

桜花達は猿師は平気と判断し、ファミリアの中に駆け込もうとするが、突然何かが目の前に回り込んでくる。

 

「通さぬと、行ったはずだ・・・!」

 

キュクロが筋力で強引に慣性を殺し、大剣を振り下ろす。咄嗟に命が前に出てその攻撃を防ごうとするものの、大きく後方に吹き飛ばされた。

 

「ぬぅうううん!」

 

嵐の様な斬撃を桜花が必死になって槍で捌く。キュクロは頑丈な鎧である事をいい事に、強引に一歩前に出る。槍を使わせれば妖夢でも勝てない筈の桜花が押されてゆく。桜花は迫る右の大剣を穂先でたたき落とし、左の大剣を石突で叩きあげる事で逸らすが、間合いを確保する為に徐々に後ろに下がってゆく。

 

「此処は通さぬ。ここの門番は自分だ、故にこの生命ある限り通せんぼさせてもらう。」

 

キュクロが肩に大剣を担ぎ、そう言って仁王立ちする。両の大剣を伸ばせば、建物の入口よりやや広く、キュクロを倒さずに中に入るのは困難だ。妖夢がすぐ様追いつき、攻撃を放つが防がれる。妖夢は大剣の攻撃を避けるために下がった。

 

「退いてください。殺しますよ」

 

妖夢が冗談とは思えない低い声で脅す。

 

「退かしてみろ、殺してでもな」

 

それにキュクロは静かに答える。互いに睨み合い、武器を握る力を強くする。すると外野で戦っていた猿師と男冒険者に決着が着いたらしく、男冒険者が苦しそうに喘ぎながらキュクロの隣に落ちてくる。

 

「ぐはっ!・・・ぐ・・・・・・ど、毒を、使うと、は・・・・・・やるなア、イツ・・・」

 

男冒険者の口調は変化しており、スキルを発動させる余裕も無いようだ。

 

「ふっふっ、やはり猿顔でなければごザルはつけてはならないのでごザルよ、もしくは忍者である必要があるでごザル。両方が揃った拙者はまさに相応しい!・・・・・・少し悲しいでごザルが。」

 

勝ち誇った猿顔で猿師が軽やかにタケミカヅチの横に着地を決め、胸を張る。キュクロは男冒険者の様態を危険だと判断したのか片方の大剣を地面に突き刺す。

 

「・・・時間は掛けられんな。友が心配であるし、・・・・・・我が主がこの騒動で起きてしまうやもしれん。決めさせて貰う」

 

そして、魔法の詠唱を始めた。

 

【矗立する巨人、硬直する人々。】

 

低い声が魔力に乗り辺りにこだまする。桜花が目に見えて慌て始め、素早く妖夢達に指示を飛ばす。

 

「撤退するぞ!あの魔法は危険過ぎる!」

「で、ですが!」

 

命が躊躇するなか猿師が素早く撤退する。妖夢も後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。

 

「いいから速くしろ!」

 

桜花の怒声で命は悔しそうにしながらも撤退を始める。

 

【終わりの時が来た。赦しを請え―――】

 

詠唱が終わる前に、素早く桜花達は撤退した。それをキュクロは見送る。そんなキュクロの隣に、エロスがやって来た。顔などを見られないようにローブの様な物を来ている。

 

「逃げられたか、だが良くやってくれたなキュクロ」

 

エロスはそう短くキュクロを褒め、ギルドの建物に向かって歩き始める、しかし途中で立ち止まり呟く。

 

「戦争遊戯を始める、頑張れよキュクロ。俺のためにな」

 

キュクロは跪き頭を垂れ、エロスが見えなくなった所で気絶した男冒険者を担ぎ上げホームへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神会(デナトゥス)とは、神々の会合を意味する言葉である。冒険者達からすれば、「命名式」という印象が強いだろう。3ヶ月に1度行われる神会(デナトゥス)はランクアップを果たした冒険者に二つ名を授ける為に神たちが意見を出し合うのだ。

しかし、神会(デナトゥス)は3ヶ月に1度開かれるもの以外にもある、そもそも、3ヶ月の月日を必要とするのはギルド職員たちの書類整理なのである。神会は神であれば誰でも好きな時に開く事が出来、神であれば誰でも参加可能である。もっとも、余程神々の興味を引く内容でなければ人数は集まらないだろうが。

 

そして、此度神会(デナトゥス)は開かれた。開いた神はエロス、内容は「戦争遊戯(ウォー・ゲーム)を開催する、ルールを決めたいから集まって決めよう」というものだ。神は大いに沸いた。なにせ久しぶりの戦争遊戯(ウォー・ゲーム)だったからだ。ファミリア間の抗争は度々あった、しかし、それは「日常」であり、神を惹き付ける力は余り無い。しかし、「戦争遊戯(ウォー・ゲーム)」にはあるのだ。神々の代理戦争であるそれは原始的な力で全てを決め、勝者が讃えられ、敗者は白い目で見られる一種の競技。それこそが戦争遊戯(ウォー・ゲーム)である。初めにルールを決め、自らの条件を提示する。その時提示した条件が勝利の報酬なのだ。「俺が勝ったらお前のファミリア俺のもの!」と言う条件すら可能である。いや、もっと恐ろしい事だって行える。「粛清」「処刑」「追放」。勝者こそが王であり、敗者はその生命すら税として支払は無くてはならない。

 

血なまぐさく、しかし、だからこそ面白い。娯楽に飢える寿命の無い欲望の怪物(オラリオの神々)達はこの神会(デナトゥス)に涎を滴らせ集まっている。

 

 

 

「いや〜!まさかウォー・ゲームになるなんてな〜!ウチ、てっきり妖夢たんがその日の内にエロスの所壊滅させてまうかと思っとったわー」

 

ウシシシ、とロキは笑う。薄く開かれた目はそれが実際に起こりうるかも知れないと想定していたのだろう。

 

「うへ!?何を言ってるんだいロキ、そんなの無理に決まってるだろう?」

 

ヘスティアはそんな悪戯女神に驚きつつ、反論する。あんなに小さな子では無理だと。

 

「へっ!このドチビ。脳に行く栄養が全部その乳に向かったんやないか?妖夢たんは少なくとも技量だけなら1級冒険者と並ぶかそれ以上や。」

 

ええ?!と驚くドチビことヘスティアにロキは無い胸を張り、自慢げに自らの席に腰を下ろす。

 

「最近仲がいいわね貴女達、何かあったの?」

「「仲良くなんて無い(わ!)!」」

 

鍛冶の女神へファイストスが二神に問いかけると同じタイミングで二神は反論する。

 

「ボクはロキとは違ってタケ達が心配で来たのさ。妖夢君にはベル君が助けられてる、だから何かあれば心配なんだ」

 

ヘスティアのロキとは違っての部分にロキが反応し、声を荒らげる。

 

「ウチやて妖夢たんが心配なったからこうしてきてんやろうが!」

 

しかし、それはへファイストスの頬を緩めるだけだった。

 

「ふふふ、やぱり仲良くなってるじゃない。」

 

ニコニコ笑うへファイストスとウガー!と睨み合う二神。そんな会話が繰り出されている時、会場の扉が開き、エロスが入ってくる。その格好は普段通りの豪華な物だ。

 

「エロい!エロスぎる!」

「ヒューヒュー!」

「エロースマジエロスw」

と男神達がからかう中を悠々と進み、エロスは席に着いた。

 

しかし、からかいの声は次に入ってきた男神を見た瞬間静まり返る。入ってきたのはタケミカヅチだ。誰が見てもわかるくらいに「キレて」いた。

あーあー、と頭をかきながらタケミカヅチは空いた席、エロスの対面に位置する席に腰下ろす。

 

「おお、こわいこわい。余り歓迎はされていないみたいだね?」

「当たり前だ犯罪者」

 

今にもタケミカヅチの怒りが爆発するという時、このままでは会議が始まらないとロキの一喝が入る事によりその場は静まった。

 

「おっし、じゃあウチが仕切っていくで?まずは対戦形式をどうするかやな」

 

戦争遊戯(ウォー・ゲーム)を行う際、幾つかの形式が存在する。時々行われるのが、両者のファミリアの中のもっとも強い者を選出し合い、1対1や3対3などの少数で戦う『代表戦』だ。

 

「代表戦をするならこちらは3人だそう。」

 

エロスが不敵な笑みを浮かべ足を組む。

 

「おお?エロスそれはどういう意味や」

「共に事件を起こした二神の団長達も連れてくるということだ」

「うわせっこ!」

 

ロキの質問にエロスは悪びれもなく答える。最早勝った気でいるのだろう。

そして『総力戦』これは文字通りその神がもつファミリアの全戦力をぶつけ合うもの。そして、『総力戦』は防衛側と攻城側に別けられ、戦闘を行う『攻城戦』や、平地で団員を並べ、正面からぶつける『平地戦』がある。

 

「ならエロス、総力戦にするならどうすんのや?」

「ふむ・・・考えては居なかったが・・・・・・まぁ、流石に三つのファミリアが手を組んでタケミカヅチの所が勝てるとは思えないからな、俺のファミリアだけになるだろうな」

「やっぱりせこいなー」

 

ふん、何とでも言え。とエロスは腕を組む。これ以上は受け付けないというアピールだ。

 

「さて、タケミカヅチ。此処に来たということは勿論戦争遊戯(ウォー・ゲーム)を受けるのだろう?これから団員を奪われる悲しい奴だからな、戦う方法はそちらに任せよう。だからまずは私の条件を示そうか。」

 

そう言ってエロスが出した条件は「俺が勝てば魂魄妖夢は貰う。ただし、他の攫われた人々は返す。」とそれだけだった。

 

「・・・・・・・・・なぁ、ハルプ。どうするか」

 

不敵に笑うエロスを無視し、虚空にタケミカヅチが話し掛ける。すると、何も無かった筈の場所から少女が現れた。

 

『そうだな、まずはソイツ殺そうタケ』

 

 

 

 

 

 

 

 

うっすうっす、俺です。半霊です。今はタケの頭の上にぽふんと乗って会議を聞いてる最中です。

 

 

っぜー、まじうぜぇー。なにあのドヤ顔!なにあの偉そうな態度!むかつくわ、今すぐ斬りに行きたい。錆び付いて切れ味の落ちた刀で斬り裂いてやりたい。

 

もうこれは殺すしかありませんわ。そんなこと思ってたらタケが合図を送ってきた、合図ってか話し掛けてきただけだけど。

 

『そうだな、まずはソイツ殺そうタケ』

 

ハルプモードにモードチェンジ。流石に武装はしないが武器なんて無くても物は斬れる。俺の武装は常に万全なのだ。

 

「お!?ハルプたんやないか!でもいくらスキルっていっても此処は入っちゃダメやろ?」

 

ロキがニコニコと手を振ってくるので目礼で返し、エロスを見る。・・・・・・表情が緩んだ・・・きしょいな。

 

「殺すな、お前達が殺したら大罪だ。」

 

・・・・・・むー、へいへい。タケに頷いて返事を返し、タケの斜め後ろで待機する。

 

「で?ハルプ、どっちがいいと思うって?」

 

タケが俺達に問いかける。そう、俺達、だ。妖夢を通して命や桜花、猿師に伝えている。話し合いの結果から見ると桜花が『代表戦』を推していて、命と猿師が『総力戦』を推してる感じかな?

 

俺が推すのは総力戦だな!全員五体満足では返さん。

 

『多数決なら総力戦の攻城戦、でもって攻め側。少数意見を敢えて選ぶなら団長戦だな』

「まぁ、そうか」

 

俺とタケの会話を聞いていた神達が盛り上がる。まぁ、流石に総力戦を選ぶとは思わないか。でもこっちの方が勝ち目がある。代表戦だと詠唱の長い命の魔法は使いにくいし、個々のステイタスに差がある分勝つのは困難だ。攻城戦なら奇襲その他戦術が使用可能になるし少数の理を活かしやすい。

それに・・・俺の魔法もあるしな。

 

『エロス・・・。少し頼みがある』

 

タケはわかってると思う、俺が何を言うか。・・・確かに、バカな事を言おうとしてるのはわかる。でも、許せないんだ、軽い冗談を交えて笑いあっても。千草が居ない、唯それだけが何よりも許せないんだ。それだけで、何もかもが色褪せる。全てが抜け落ちていく夢の様に、現実までもが悲しくなっちまう。

 

「ほぅ?どうしたのかな?少し力加減をして欲しいのかな?」

 

こちらをみて笑う整った顔立ちのエロスが恐ろしい。家族を奪っていく悪魔に見える。もはや声すら忘れた生前の家族の記憶を奪った駄神よりもタチが悪い。恐らくあれのお陰で俺はショックも少なく済んだし、すぐに前に進み始めることが出来たんだろう、許せないが、同時に少し感謝もしてる。タケ達に出会えたのは駄神のお陰でもあるわけだし。・・・・・・まだ防げるからこそ、防ぐんだ。もう失うのは嫌なんだ。失いたくないから力を求めたんだ。失わない為には迷わず力を振るうさ。

 

『手加減なんて要らねぇ全軍でかかって来やがれ!アンタだけじゃない。他の二神も合わせてな!』

 

左の手の甲から黒糖を引き抜きエロスに向ける。これは宣戦布告だ。いったい自分がどんな奴らに手ぇ出したのか、脊髄の中まで教えてやらァ!

 

「ぉ・・・・・・ぉお、これは参った。そうだな、君を手に入れる可能性がより高まった訳だ。いや、君ではなく、君の主かな?」

 

タケが黒糖をそっと押し、武器を下げるように伝えてくる。俺はそれに従い、黒糖を腹に沈める。大口きって宣戦布告したあたりから神々の興奮が凄い。熱気で部屋の温度が少し上がったきがする。

 

『伝えろエロス。万能薬はありったけ用意しておけよ変態共。五体満足で居られると思うな?ってなぁ!』

「ヒューヒュー!カッコイイぞ嬢ちゃん!」

「俺!俺那珂ちゃんのファン止めて妖夢ちゃんのファンになりますっ!」

「なんでやっ!那珂ちゃん関係ないやろ!じゃあウチディアベルはんのファンやめます!」

「なん(ry」

 

 

お、おお?なんかわからんけど応援してくれるのか?それは有難いが・・・。

 

「攫われた家族を取り戻すため立ち上がる小さな剣士・・・!くー!カッコイイな!」

「応援するぞ頑張れ白髪の嬢ちゃん!」

『いやこれ銀髪!』

 

そんなんで周りが盛り上がっていると。ロキが不意に声を上げた。

 

「でも場所はどうするんや?」

 

それなら俺が考えてあるぜ、原作でも使ったあの場所があるだろ。生憎とワラワラと数が多いに違いないし、きっとすぐ様完成するだろう。

 

『オラリオの近くに少し崩れた砦があったよな?彼処をアンタらが直せば使えるんじゃないか?』

「なるほどなぁーあそこがあったか。」

 

とロキが納得を示し、エロスが頷く事で会場は決まった。

あとはこちらの要求だけだな。

 

『タケ』

「あぁ、・・・こちらが要求するのは「何でも構わん」ん?今何でもっていったか?」

「あぁ、何でもだ。それこそ私の命ですら。だがお前の団員を全てよこせ、俺が勝ったらな。」

 

んだとコイツはぁ!追加してきやがった!俺だけに飽き足らず家族にまで薄汚い触手を伸ばすつもりか。

 

「いいだろう」

『タケ!?』

「いいんだ、お前達の実力は俺が誰よりも知っている。・・・・・・勝ってこい。」

 

そう言ってタケは俺の目を見つめ、頷く。その顔には確かな確信と信頼があった。

へへへ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。よし、やる気がさらに上がってしまった。あいつら全滅させるぞ!

 

「あぁそれと、人質になっている千草と言う子は石化している。石化しているあいだは記憶も無いし安全だ。安心しろ」

 

「・・・・・・・・・・・・話は以上だ、俺達は帰る。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖夢!」

「およ?」

 

この声は桜花だ、何か用かな?俺は武器を研ぐのに忙しいんだけどな。

 

「本当に大丈夫なんだろうな?」

 

と桜花は若干心配・・・いや凄い心配そうに聞いてくる。何故だろうか?作戦はさっき練ったし、1番勝てる可能性が高いのに。

 

「何が心配なんですか?みたいな顔してるが・・・、お前に負担がかかり過ぎてる。それはわかってるんだろうな?」

 

むー、とは言え対大軍なんて俺と命しか技無いし、そもそも街中じゃ無ければ広範囲技も使えるんだ、確かに消費はデカいが、そこは猿師の丸薬でカバーはある程度できる。

 

「平気ですよ、私なら」

 

安心させようと微笑むが、なにやら余計に心配させたみたいだ、桜花の顔が引きつった。

 

「お前は・・・もう少し俺らを頼れ。少なくともレベル3の1人は俺が受け持つから。な?」

 

俺は桜花の魔法は苦手だ、あのビリビリは攻めにくくて仕方がない。確かにレベル3なら桜花も倒せると思うけど・・・桜花には千草を救いに行ってもらいたいなぁ。

 

「桜花は千草を助けに行ったほうがいいと思います。」

「それはさっきも聞いたぞ。だがな?お前に負担がかかり過ぎて潰れでもしたら全てが終わる、わかってくれ」

 

・・・・・・確かにそうだけど、・・・・・・これは俺の我が儘だったな、結果的に救えないんじゃ意味無いか、復讐なんて下らない事は斬り捨てよう。

 

「・・・・・・わかりました。では1人、任せます」

 

桜花に頭を軽く下げ、再び研ぎ石で黒糖と砂糖を研いでいく。・・・引き合う性質のせいでめっちゃやりにくいけど。おい砂糖こっち来んな、いま黒糖研いでるからっ!

 

「あぁ・・・悪いな」

 

桜花がそれだけ言ってその場を後にする。ちなみに俺がいるのは庭にある池の辺だ、このあとはステイタス更新があるから、タケに呼ばれるまでこうして準備をしている。

 

ヘルメスからの連絡だと3日後に戦争遊戯が始まるらしい、随分と早い、砦の修復の手を抜くのか、それとも【鍛冶】スキル持ちの団員が多く居るか。ギルドにあった記録にはスキルの項目は無くて人数しかわからなかった。

 

合計で230人越え、内9割がレベル1だし勝機は十分にある。弾幕は同格と格下に効果的だ、雑魚は薙ぎ払ってしまおうか・・・でも消費を抑えるなら接近戦をするべきか?・・・武器の耐久が無くなるかそれだと。

 

・・・西行妖・・・、でも使えるかわからない不確定要素を入れたくないなぁ・・・今まで使って来なかったつけが回ってきたか。

 

まぁどちらにせよ、正面から俺が突撃し、他の3人が横から千草を救出する。言うは易しって奴だけどさ。

あの後で決まったらしい今回のルールは、そうだなぁ、ケイドロ?ドロケイ?みたいなルールだった。ロキやフレイヤが対等に戦える様にと意見をいって男神達がそれに賛同したらしい。つまり特別なルールが適応された訳だな。

砦の中に捕まった人々が砦の中にバラバラに隠されていて、その中から千草を救い出せば俺達の勝ち、逆に全滅もしくは3日経つとこちらの負けというルールだ。勿論3日なんてかけるつもりは無い。1日目で勝負を決める、命がいる以上こちらが有利、砦に入る事さえ出来ればこちらの物だ。だから精一杯暴れて注意を引き、団長達を誘き出し時間稼ぎ、倒せれば倒す。・・・っと、研ぎ終わったな。うん、いい感じだ。

 

「妖夢、こっちに来てくれ。」

 

タケの声だ。俺ははいと返事をしてタケの方に走っていく。ステイタスの更新、少しでも数値が上がっていて欲しいな。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【魂魄妖夢】

 

所属:【タケミカヅチ・ファミリア】

 

種族:半人半霊

 

【ステイタス】

 

Lv.3

 

「力」:I52→H180

「耐久」:I43→H112

「器用」:H123→E473

「敏捷」:H108→D502

「魔力」:I10→H105

「霊力」:I22→G266

 

アビリティ:【集中:E+】【剣士:H】

 

スキル

 

【半霊 (ハルプゼーレ)】

 

・アイテムを収納できる。収納できる物の大きさ、重さは妖夢のレベルにより変化する。

・半霊自体の大きさもレベルにより変化する。

・攻撃やその他支援を行える。

・半霊に意識を移し行動する事ができる。

・ステイタスに「霊力」の項目を追加。

・魔法を使う際「魔力、霊力」で発動できる。

 

【刀意即妙(シュヴェーアト・グリプス)】

 

・一合打ち合う度、相手の癖や特徴を知覚できる。打ち合う度に効果は上昇する。(これは剣術に限られた事ではない)

・同じ攻撃は未来予知に近い速度で対処できる。

・1度斬ればその生物の弱点を知る事が出来る。

・器用と俊敏に成長補正。

 

【剣技掌握(マハトエアグライフング)】

 

・剣術を記憶する。

・自らが知る剣術を相手が使う場合にのみ、相手を1歩上回る方法が脳裏に浮かぶ。

・霊力を消費する事で自身が扱う剣術の完成度を一時的に上昇させる。

 

【二律背反(アンチノミー)】

 

・前の自分が奮起すればする程、魂が強化される。強化に上限はなく、魂の強さによって変化する。

・使用する際、霊力が消費される。

・発動中ステイタスの強制連続更新。

 

【唯一振リノ釼デ有ル為ニ(ただひとふりのつるぎであるために)】

 

・一刀流の剣術を使用中である時全ステイタスがアップする。

・一念を貫く間は効果がある。

・想いの強さで効果が向上。

 

【弍刀ハ壱刀ニシテ弍刀ニ有ラズ(にとうはいっとうにしてにとうにあらず)】

 

・二刀流の剣術を使用中である時全ステイタスが大幅にアップする。

・戦う意志が存在し、意志が統一されると効果発動。

 

 

魔法

 

「楼観剣/白楼剣」

 

詠唱①【幽姫より賜りし、汝は妖刀、我は担い手。霊魂届く汝は長く、並の人間担うに能わず。――この楼観剣に斬れ無いものなど、あんまりない!】

 

詠唱②【我が血族に伝わりし、断迷の霊剣。傾き難い天秤を、片方落として見せましょう。迷え、さすれば与えられん。】

 

・魔法の武器を作り出す

・発動後、解除するまで魔力及び霊力消費

・魔法の媒体になる

 

詠唱「西行妖」

 

【亡骸溢れる黄泉の国。

咲いて誇るる死の桜。

数多の御霊を喰い荒し、数多の屍築き上げ、世に憚りて花開く。

嘆き嘆いた冥の姫。

汝の命奪い賜いて、かの桜は枯れ果てましょう。

花弁はかくして奪われ、萎れて枯れた凡木となる。

奪われ萎びた死の桜、再びここに花咲かせよう。

現に咲け───冥桜開花。西行妖。】

 

【ーーーーーー、ーーーーーーー、ーーーー。

ーーーーーーー、ーーーーーーーーーー。

ーーーーーーーーーーー、ーーーーーーー。

ーーーーーーーーーーーーーーー、ーーーーーーーーーーー。

ーーー、ーーーーーーー】

 

・召■魔法

・魔力■び■力の■消費

・隠■■詠■あ■

・■■■■■■■

・■■■■■■■■■■■■■■

 

 

「???」

 

【覚悟せよ】

 

・超短文詠唱。

・補助の詠唱が必要。

・技の完全再現。

 

覚悟せよ、代償は存在し、得るのは力。過ぎた力は肉体を滅ぼし、過ぎた欲望は魂を穢す。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

何かタケがボーっとしながらステイタスを俺でも読めるようにコイネーつまり共通語に直してくれている訳だが・・・・・・やっぱり千草の事とか気になるんだろう。何時もより時間かかってるし。

 

「っと、危ない危ない」

 

とタケがハッとして何やらステイタスを消し始めた。

むむむ?なんだ、何か隠してるのかタケ!と俺は素早くタケから奪いステイタスを見た。しかし流石はタケミカヅチ、俺が奪う瞬間にめっちゃ腕動かしてぐちゃぐちゃにしたきがする。

 

「ちょ!ま!まて妖夢!」

 

タケが何かを言っているが俺の目はステイタスに釘付けだ。

 

 

〜ステイタス鑑賞中〜

 

 

 

ぎゃああああ!?急に魔法の説明が増えた!?タケさん今まで何隠してたの!?くっそ真っ黒で読めねぇ!なんて書いてあるんだタケ!

 

「みょおおおおおおぉん!?タタタタケ!何か!何か黒いです!」

 

いや違うだろおお!何が書いてあるかを聞くだろ普通!

 

「あわわわわわあわわわてるな妖夢」

「もちつけ!もちついてくださいタケ!」

「何でもない、何でもないんだ少し緊張した、そう緊張してただけで手元が狂っててて」

「タケぇぇえ!気を確かに!何が見えたんですかぁ!」

「オレハナニモミエテナイ・・・イイネ?」

「アッハイ」




うーむ、魔法を少し早く出しすぎたかなと思っておりますが・・・まぁここら辺でやっとかないと結局使わずに終わってしまうなんてこともあるかもしれないので(使う場所は既に決定済み)やはりここら辺で書いておこう、と書いた訳です。
魔法についてはタケミカヅチが今まで隠してきた設定です、今回は千草の事を考えていた為にそのまま書いてしまい、そこを妖夢に取られて見られてしまったと言う訳です。

戦争遊戯については幾らかオリジナル設定が含まれていますが気にしたら負けです。
原作通りの場所なのは、周りへの被害を考えると西行妖の詠唱すら出来ないですからね、主人公の性格を考えると。だから原作通りの場所になっております。準備期間が短いのは鍛冶師のキュクロさんが頑張ったからだと思われます。

そして何と次回はほのぼの回、ロキ・ファミリアと訓練的なパートになっております。

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