オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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29話「覚悟せよ、我が剣が届くこの場において、例え千の矢が降ろうとも無傷なり」

闇が地を空を覆う。光を放つのは人が住む町や村のみ。この広大な草原を闇夜に紛れて進む者がいた。装束は綺麗に闇に同化し、遠めに見れば決してそこに人が居るなどと思わせない。そして―――。

 

「たのもーーーーーー!!!」

 

大声を張り上げた。更に光り輝く光弾をばら撒き自身がそこにいるのだと主張する。砦から外を監視していた冒険者がそれに気が付かないはずが無い、敵襲を知らせる為に大声で叫ぶ。冒険者達が騒がしく動き始めた。

 

「・・・・・・我が名は魂魄妖夢!!タケミカヅチ・ファミリアが一番槍!!我こそはと思う者よ、前に出てください!」

 

顔や頭を覆っていた布を放り、銀髪青目の少女が現れる。冒険者達はその姿を確りと認識し、それが敵であると判断した後、それぞれが武器を構える。号令があれば何時でも出れる。そんな冒険者達の間を縫ってキュクロが姿を現した。

 

「すまぬがそちらの戯言に付き合う気は無い。自分等が受けた命は此処を三日間守り抜く事、貴様らを此処より先に通さぬ事よ。わざわざ出向く必要もない」

 

あくまでも任務を優先させるキュクロに妖夢が少し顔を顰めた。それをキュクロは見逃さないだろう。

 

「誘い出しは無駄だ、それくらいわかっているだろう武神の子」

 

統率が取れているキュクロの配下は動かずに門を守る事に集中しているが、それを我慢出来ない者も居るのだ、いや彼の仕事がそれである以上仕方がないが。

赤い影が砦の城壁を飛び越え妖夢から20mほど離れた地点、砦の門前に着地する。

 

「・・・呼びかけに応えたのは1人だけですか・・・しかし今の跳躍、並の冒険者ではありませんね。」

 

背に背負った2本の刀を腰に移動させつつ妖夢がその人物をそう評価する。

 

「いゃあ、まさか正面から来るたァ思わなかったぜ?」

 

赤髪に狼の耳を生やし、上半身は裸。左手に剣、右手に槍を持った戦士が長髪的な笑みを浮かべ顔を上げる。僅かに周辺の温度が上がったかのような印象を受けさせる男だ。

 

「名を聞きましょう。」

 

「ハッ!いいねぇ。俺は【爆裂劫炎(ボンバー・フレイム・ボンバー)】・・・・・・まぁこう言えばわかるだろ?」

 

妖夢の問答に槍をくるりと回し脇に挟んだダリルは快活に答える。妖夢が少々苦々しく眉を顰めた。理由は言わずもがな、二つ名である。

 

「さぁてヤルか、嬢ちゃんッ!!」

 

何の合図もなく、ダリルがその槍を投げる。髪の色と同じく赤い槍はしかし妖夢の黒糖による零閃に弾かれる。妖夢が身体を左右に揺らし、一気に接近する。

 

「イイねぇ!」

 

それに口元を歪めさせながらダリルも応じ駆け出す。2人の距離は瞬く間に0となり、互いの剣が交差する。・・・弾かれたのは妖夢、体重体格筋力の違いが妖夢の身体を後ろに押しやった。

 

「おぉらよぉッ!!!―――ハハッ!やるじゃねぇか!」

 

よろめく妖夢にダリルが右手の剣による全力の薙ぎ払いを放つ。しかし、よろめいたのはブラフ。隙を作りそこを攻撃させるための誘導にほかならない。透明化している半霊を自らにぶつける事で通常では有り得ないような動きで後に跳ね、すぐ様斬りかかる。それを見たダリルがそれを賞賛しつつ、続く回し蹴りで黒糖を迎撃する。よく見れば頑丈な金属で足を守っている事がわかる。

 

足から受けた衝撃を独楽の様に回りながら吸収したダリルは驚異的な跳躍力で飛び跳ねる。妖夢の頭上を通り過ぎ、落ちている槍を拾う。互いの距離が再び離れ、しばし睨み合う。ちょうどその時、砦の左手から3人の影が忍び込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・よし、ここから行くぞ」

 

紺色の装束に身を包んだ桜花と命、そして猿師は鉤爪の付いたロープをそれぞれ持ち、砦の壁を見上げる。松明の光をどうにか躱し、ここまでたどり着いたのだ。

 

「始まってるみたいだな・・・」

「はい・・・」

 

桜花と命が妖夢が戦っているであろう方向の空を見る。光り輝く弾幕が時折空へと登っており、戦闘を伝えている。

 

「お二人共、今がチャンスでごザルよ」

 

一足先に壁を登り終えていた猿師が偵察を終え、桜花達に手招きをする。

3人が壁の上から見た光景は、誰1人として人員が配置されていない中庭だ。

 

「まぁ!・・・罠でござろうな。では拙者は役割を果たすとするでごザルよ。いやぁ拙者技量はないでごザルが対人戦は得意でごザルからな?全然心細いとかそんな事はないでごザル。」

 

ちらっ?と桜花達を見た後観念したように中庭に降りる猿師。桜花達を先に進ませるにはここで更に気を引いてもらうしかないからだ。

 

「すみません猿師さん・・・!此処は任せます」

 

聞こえるかもわからない小さな声で桜花はそう告げた後素早く移動し始める。命も何も言わずに頭を下げた後それに続く。1人になった猿師は己が禁忌と定めたある粉末を取り出すだろう。

 

「はぁ・・・薬とは名ばかりの、火がつくから『火薬』等とは流石に拙者も安直だと認めざる負えないでごザルな」

 

この世界で初めて火薬を作り出した男、猿飛猿師。しかし、それが有する余りにも暴力的な性質に、彼はそれを禁忌とし、使う事を避けてきた。まぁしかし、彼の過去にはその火薬をフル活用しなくては生き残れない程の冒険談があるがそれは置いておく。

 

丸薬の形をしたそれを複数掴み放り投げる。そしてそこ彼は『忍術』(何故かステイタスにはニン=ジツと表示される)を放つ。すると火薬は熱に反応し大きな音を立てる、そして勿論多数の冒険者達が現れるだろう。

 

猿師は俯き動かない。神々がその実績を称え、その名を世界に轟かせ、恐らく最も多くの人々を病から救った男・・・・・・【猿顔薬師(モンキー・F・ドクター)】、不治の病を治し、不知の病見つけた男。デュアンケヒトが金貨の山を使って勧誘を試みた人物。

 

「いやぁ〜、戦闘は得意ではごザラんからなぁ〜。・・・・・・20年のブランクを埋めなくては」

 

冒険者達が襲いかかる。例え妖が跋扈する極東を妻の不治の病を治すためだけにたった1人で旅し生き抜き治療法を確立したとしても、その名を世界に轟かせようとも。たった1人の個人を特定するだけの知識が冒険者達にあるとは限らない。

 

冒険者達の攻撃が当たる直前、不自然な程に濃い煙がその場を包んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

おっす、俺だ。今・・・なんて言うか残念な二つ名を持ってる全く知らない奴と戦ってます。なかなか強いけど、残念かな、俺と数合渡り合ったら俺の勝ちです。・・・って慢心はダメ、慢心はダメっと。

 

「やるじゃねぇか!オォラヨッ!」

 

身体を回転させ槍を薙ぎ払うボンバーさん、俺は身体が地に付くほどに前傾させ接近、でもって急停止。俺の鼻先を剣が通り過ぎる。

 

「っ!?・・・・・・へぇ、もう俺のリーチを見切ってやがるのか」

 

まぁスキルのお陰で割と簡単に見切れます。槍は2m15センチ、剣は刃渡り70センチ。初めに槍を投げる事で剣使いに見せかけているが、本当は槍の方が得意で、剣は槍を使う時に発生する隙を潰すためのサブウェポン。魔法を持ってるのかわからないが、今すぐにでも殺れるな・・・・・・って違う違う、戦闘不能にするんだった。それにしても本当にキュクロの奴は何してんだ?なんで弓撃たせないんだろ?ボンバーに当たるからかな?

 

「ええ、貴方が槍使いである事も」

「・・・ハハッ!コイツぁ驚いた。・・・・・・・・・手加減は無用か?嬢ちゃん」

 

へ?手加減してたの?そいつは驚いた。まぁこっちも半分しが出してないけどね、物理的な意味で。あ、本気的な意味だともっと出してない。あくまで様子見に徹してるからね、下手したら弓が雨となって飛んでくるし。

 

「手加減してたんですか?・・・まぁ、こちらも半分しか出してませんが」

 

思わず滑った口元を片手で抑えつつ、チラッとボンバーを見る。そこにはありありと歓喜が顔に出ていた。・・・・・・ロリコンかな?ロリコン死すべし慈悲はない。

 

「なら本気で来いッ!!」

 

凄味のある笑みを浮かべそう言ってくるボンバー。だがコイツ単体に全力出すとか後々響くので嫌です。

 

「嫌です」

 

あ、おい。そこだけ抽出するんじゃないよ。可哀想だろ。

 

「ハハハッ!なら本気を引き出してやらぁ!」

 

なんか元気になり、突撃して来るボンバー。実は頭の中もボンバーしてるんじゃないかなこのボンバー。

 

滴水成氷(てきすいせいひょう)

 

黒糖を上に放り投げ、空いた手で砂糖を握る。そして放つはブラック・ブレットに登場する天童式抜刀術の一の型の1番。抜刀術とは何だったのか問い正したくなる・・・え?なぜ?だって射程・・・6m超えるんだぜ?この技。

 

「ングっぅ!?」

 

肩から血を吹き出しながら横に跳ねるボンバー。まぁ相手からしたら遠くで幼女が刀を鞘から引き抜いたら自分の身体が斬られてるんだから困りものだよな。シュルルンと特徴的な音を立てながら黒糖が砂糖目掛けて落下してくる。それを片手で掴みくるりと回り鞘に収める。・・・なかなか決まったんじゃね?さらにさらに。

 

結跏趺斬(けっかふざん)

 

×状に放たれる剣気がボンバーを切り裂く。何とか回避しようと試みたようで、右脇腹を切り裂くに終わる。

にしても淡々と技名を呟きながら圧倒するなぁ、我ながら怖いぞマイボディ。

 

「ぐっ・・・急に変な技(・・・)使ってきやがって・・・!」

 

あ?今何つった?俺の尊敬する剣豪の技を?変な技?確かに、確かに変かもしれない、なぜならそれは俺が使っているからだ。オリジナルに届いていないからだ。俺を馬鹿にするなら許すが技を馬鹿にしやがるとは・・・・・・ゆ"る"さ"ん!

 

俺は唐突に走り出す。否、たった数歩で距離を詰める、縮地だ。ボンバーの予想を上回る速度だったようで目を見開く、でも口が笑ってんのが怖いなこいつは。

 

「ハハッ!本当に半分も出してなかったかっ!」

 

ん?あぁなるほど。確かにそう見えても不思議ではないな。俺は身体能力を隠していたとかそんな事はなく、ただ歩法を使っただけなのです。

 

漸毅狼影陣(ざんこうろうえいじん)

 

前へ後ろへ横へ斜めへ。縮地多用し、限界までオリジナルに近づける。まるで瞬間移動の様に姿を霞ませながら戦えている事でしょう、と希望を持ちつつ。でもなんだかんだ言って割と防がれてるなぁ、まぁベートには効かなかったし、多数に囲まれる冒険者からすれば割と防ぎやすいのかなぁ。いや、やはり俺の鍛錬不足か。

 

「はや・・・ちぃ!!」

 

負けるか!自分に負けてたまるか!とどんどん速度を上げていく。残像でろ残像。縮地の使い過ぎで地面が酷いことになっていて走りづらいが仕方が無い。

 

頬や腹、肩や額。喉や太股に傷が入っていく。ボンバーが対応出来ない速度に到達したようだ。技も終盤、ラストの1振りまで後少し・・・っ!?

 

俺は悪寒を頼りに後方に反射下界斬を放つ。すると数本の矢が慣性を無視して反転し、撃った張本人達に突き刺さる。やばい、技が止まったっ!前方に飛び跳ね転がる。ほんの少し遅れて俺の耳に槍を振るった音が。

 

「くっ・・・!」

「撃てっ!」

 

反射下界斬が消えた瞬間、キュクロの声が響いた。弓が雨の如く降りかかる。とっさにボンバーの位置を確認するがなんとギリギリ槍が届かない程度の至近距離に居た、やばいなこれは!どうにか切り抜ける手段は・・・あ!あれがあるか!

 

「【覚悟せよ】【我が剣が届くこの場において、例え千の矢が降ろうとも無傷なり】―領域ッ!」

 

即興だけど何とか発動してくれっ!すると頭に自分を中心とした半径3mの範囲全てが手に取るようにわかるのがわかった。つまり成功。

 

槍が、矢が、その範囲に計62。それら全てを――――一息のもと切り払った。魂魄妖夢――無傷。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バベルの塔で神々は鑑賞する、しかし、そこにあるのは熱狂では無い。純粋な驚きと畏怖。

 

「なんなんだ・・・ありゃ」

 

神々の目の前の鏡には妖夢が刀を抜くとほぼ同時に血を吹き出し横に跳ねるダリルが映っていた。

 

「みえねぇー、何が起きたよ、見えた?」

「いや?何も。」

 

神々の疑問をよそに次はクロス状の斬撃が飛び、ダリルが脇腹を斬られる。

 

「おぉ、今のは見えたな」

「おぅ、なんとか見えたな。光ってたしな」

 

そして瞬間移動の如く高速で動き始め・・・・・・神々の目では捕らえられなくなった。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

更には不意打ちの弓矢を察知し、『反射』し、それが撃った張本人を貫く。

 

「・・・・・・」

「・・・」

 

更に更に・・・同時に迫り来る矢と槍を、無傷で凌いだ。なんと1歩も動かずにだ。

 

「・・・ブクブク」

「・・・ホーホケキョ」

 

「フッハッハッハッハ!さすが妖夢!!俺の子だな!」

「タケミカヅチのテンションが壊れとる・・・」

「ミアハ薬は無いのかい?こう・・・熊とか眠らせられそうなヤツ」

「残念だがそのような持ち合わせは無いのだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜花と命はどうにか誰にもバレずに建物の中に侵入した。此処は一階の端の方だ。

 

「命、スキルを」

「はいっ」

 

命がスキルを発動させ、千草の捜索にあたる。その間桜花は命を守りながらジリジリと砦内を探索するしかない。

 

廊下を進む。

 

「お、おい!援護が必要らしいぞ!さっさと行くぞ!」

「はぁ?何言ってんだ、おれらひは酒を飲んでんだよー、今は休憩時間だろぉー?」

「そうらそうら!弓撃ってれば倒せるってー、ヒック」

 

ッ!と急に聞こえた声に驚き桜花達は壁に背をつけて隠れる。残念だが廊下に隠れる場所などなく、こちらを通ったらバレるのは確実。

 

「だぁ!ほんと役に立たねぇな!はっ倒すぞ!?前衛部隊がほぼ全滅(・・・・)してんだよ!!」

 

会話を盗み聞きし、情報を得る。どうやら戦闘は激しさを増しているようだ。

 

「(流石だな、妖夢は)」

「(ええ、そうですね)」

 

妖夢ならば有象無象に囲まれようと切り抜ける所か返り討ちにして全滅させてしまう事も想像に難くない。

 

「早く中庭に急ぐぞ!」

 

「「・・・・・・・・・・・・はい?」」

 

え?中庭?と2人が困惑する。中庭といえば数分前に別れた猿師がいるはず。ならば猿師が前衛部隊を壊滅に追い込んだというのだろうか?

 

「「・・・まっさかぁ〜。・・・」・・・と、言いきれないのが怖いな、あの人は」

 

彼との何でもありの模擬戦を行った事を桜花は思い出す。近づいた瞬間煙が放たれ目を使えなくされたのは予想外だった。だが今回は目潰しではなく、最悪毒物や劇薬の類を使っている可能性がある。・・・そう考えれば全滅もおかしくは無いと思ってしまうのだ。

 

「まぁとは言え、猿師さんの負担を増やすわけにも行かないか・・・・・・」

 

耳をすませる。どれだけ人数がいるかをある程度予測しておく事は奇襲の際に必要だ。命も桜花の小さな呟きに小さく頷き、刀に手を添える。

 

「あぁクソッ!・・・はぁ、なぁジジさん何とか言ってやってくれ」

 

「「!?」」

 

ジジ、その名前が聞こえ、いざ飛び込もうとしていた2人が止まる。何故ならそれは妖夢の担当アドバイザーの名前だからだ。

 

「え、私ガ?・・・・・・私、人質ですヨ?」

「あーまぁそうなんだが・・・・・・そこをなんとか」

「えぇと、頑張っテ?」

「「「「「「行ってきます!うおおおおおお!!!」」」」」」

 

ダダダダダダダダッ!とでかい音を響かせ、10人程の冒険者が走って行った。どうやら酔っ払っていたみたいで桜花達に気が付かなかったようだ。

 

突入するならば今がチャンス。・・・・・・しかし、桜花はGOサインを出さない。今か今かとウズウズしている命の頭に手を載せ、先に進む事を伝える。命が「えっ?」という顔をしているがそれは意図的に無視された。

 

現状ジジを助けるメリットは特にない。千草を救い、砦から逃げ出せばどの道全員が助かるのだから。

 

桜花達はそのまま進み何やら騒がしい2階へと足を踏み入れた。

 

「―――お待ちしておりました。タケミカヅチ・ファミリアの皆さん。」

 

そこには桃色の髪を風に靡かせ、巨大な大鎌を持った女性がただ1人立っていた。その唇が妖艶に歪む。

 

 

 

 

 

 

 

・・・っ!なかなかしぶといなぁ!。あ、俺だよ俺!まだ戦闘中ですわ、ぐぬぬタケに殺すなって言われてるから死なないように致命傷だけは避けてるんだけど・・・・・・そのせいでなかなか倒れない!

 

「うおおおおおおおらああぁっ!」

 

槍が連続で放たれる。それを正面に構えた刀で横に弾き凌ぐが、弓がちょいちょい飛んできで移動が若干制限されている状況・・・、んでさぁ、・・・・・・2階の方、【魔道】の魔法陣が若干見えてんだよなぁ・・・・・・長文だよな、絶対に長文詠唱だよな!くっそ広域殲滅魔法とか反射下界斬じゃ跳ね返せねぇよ・・・。

 

それにキュクロの魔法も怖い、射程がわからない以上詠唱を始めた時点で止められる程度の位置をキープしてるが・・・・・・。もうハルプモードで後ろからザックリイクか?いやいや、それは最後の手段だろう。本当に手に負えないなら後ろから斬る。

 

「だがまずは・・・貴方が邪魔ですッ!龍巻ッ!」

「なっ!?ぐぅ・・・!」

 

ボンバーが龍巻で切り刻まれた後空に吹き飛ぶ、ふっ、浮いたな。ならばコンボを・・・をッ!?

 

「やらせんぞ・・・!」

 

ドボンッと地面が凹み、土煙が立ち上る。・・・大剣が飛来した、持ち主と一緒に。

 

や、やばいなぁ。今ので倒せなかったのは不味い。回復されてまた出てくるのは面倒いぞ・・・。

 

「邪魔を・・・」

 

コイツを先に倒した方が良い。何とも言えない直感を感じつつ、逃がしたボンバーを横目で見ながらキュクロに言う。

 

「いくらでも邪魔をしよう・・・3日耐え忍ぶことが自分の託された命であるが故に。奴を失えばこちらの戦力は大きく落ちるからな・・・失う訳にはいかん」

 

・・・んー、やっぱり武人・・・。ならばソナタのお生命で慰めさせてもらおうか、とか言ってみようか。あ、でも殺しちゃいけないんだった。

 

「・・・その目・・・やはり武人か・・・。」

 

キュクロが片方しかない目を使ってこちらを見ている。やばいな魔法とか発動してないよね?てか全軍でかかって来いよ・・・全く、ハルプモードを敵陣ど真ん中に突入させるぞ?

 

「いざ・・・勝負・・・!」

 

いきなり突っ込んでくるキュクロに、俺はとりあえず対処しなくちゃならない。・・・まぁ取り敢えずは目を潰そう。

 

「魂魄妖夢・・・参るッ!」

 

大剣の大振り、残念だがそれは知っている手札だ。俺は跳躍しキュクロの頭上で体を捻り一線。避けなければ頭が二つになるだろう一撃は首を傾けたキュクロによって肩部分の鎧に掠るだけに終わる。

 

トスッと音を立て着地し、飛んでくる矢を切り落としながらキュクロに向かって走る。

 

結跏趺斬(けっかふざん)!」

「先程見たぞ・・・!」

 

クロス状に放たれた斬撃を片方の大剣で横薙に振り払い消滅させ、残る1本で俺を一刀両断しようと振り下ろす、それに対し俺は小さく飛び跳ね、そこに半霊をぶつけ真横にスライド。あの血濡れのオークだかなんだかからアイデアを得た移動法だ。

 

そのまま黒糖を振り、脇を斬る・・・否、斬れない、アダマンタイトやオリハルコンを使ったその鎧は残念な事にただの掘り出し物では歯が立たない。

 

「ちっ・・・」

 

思わず舌打ちをし、後ろに下がる。時間はあった。もっと強い武器を買う時間は・・・。けれど買えなかった、変えたくなかったから。この二振りは千草と命と一緒に選んだものだから。レベルに似合わない貧弱な装備だが・・・・・・愛があるからね、問題ない。

いや、問題は全く解決してないんだけどさ。・・・うーむ・・・タケが怒るよなぁ、自分が傷付く系の技は・・・あぁ制限が多いなぁ。

 

ハルプを使えばいくらでも奇襲はかけられる。そろそろ奇襲をかけるべきか?・・・・・・ふむふむ、完璧に俺に注目してるな、照れるぜ。キュクロと俺の壮絶な接近戦に目が釘付けって感じか。よし、とりあえず半霊を魔法使い達の後に送っておこう。

 

・・・にしてもこの硬直状態ですよ・・・・・・、殺していいならとっくに終わってるんだがなぁ・・・さっきのボンバー。

 

 




すまない・・・闇討ちはハルプ君の仕事なのだ・・・つまり、次回。

今回の妖夢のお仕事は敵の注意を引きつけること。残念ながらレベル3の3人がかりで戦わないと妖夢は倒されない模様。

レベル3冒険者の魔法のヒント。
エン・プーサ、制圧系。痛そう(小並感)

ダリル・レッドフィールド、一撃必殺系。当たらなければどうということは無い(小並感)

キュクロ
石化の魔眼。危ない((小並感))

誤字脱字、質問等ありましたら教えてくださいな。

【オッタル】

(´・ω・`)「・・・・・・何がどうなっている・・・?」

( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )ダヨネー。(戦争遊戯を見る観客達)

(´・ω・`)「・・・・・・なるほど、戦争遊戯か。うむ。」

(状況を理解。画面を確認。妖夢発見。)

( ゚д゚)「・・・・・・ぇ(フレイヤ様の願いを叶えるため自分なりの考えでベル・クラネルを強くしようと思っていたら魂魄妖夢が戦争していた、何を言っているかわからないと思うが、俺も何を言っているかわけがわからないよ。)」

(´ー`*)「あぁ・・・いい空だな・・・」


オラリオは今日も平和です。

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