オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
そして漸く二つ名が付きます。どんなやつか予想できたかな?
ステイタスは変更点があった場所だけです。
35話「二つ名なんてどうでもいいのです!プリンこそ至高!他は邪道ですっ!」
ワイワイガヤガヤと、ギルドは普段よりも賑やかだった。冒険者が沢山押しかけているのだ。
「はい、そうですね、ええ、ですが・・・」
「はい?いいエ、・・・そうでス」
エイナ、ジジ、ミーシャの3人は仕事に追われていた。ギルドにある掲示板、そこにはダンジョンでの出来事の他にファミリアの勢力状況などが記される。つまりそこに冒険者が集まるのは必然であり、今日はそれが躊躇だった。
原因は三日前に終了した戦争遊戯。コンバージョンを申し出る者、冒険者になりたいとやって来る者。皆その目を輝かせカウンターに押しかける。
「おわっ!うおっ!?あ、危ない・・・!?」
そんな人混みに揉まれる兎。それを目にしたエイナは頬を緩ませる。エイナが対応していた男がそれをみて惚けている。
しばらくして、ようやくベルはエイナの元にやってきた。行列に列んで順番を待っていたのだ。
そしてエイナに告げられる衝撃の事実。
「僕っ!レベル2になったんですよ!!」
それは悲鳴と共にその場にいた者達に共有された。
それは俺が庭で朝の鍛錬をしていた時のこと。千草の悲鳴が響き渡った。けど、その悲鳴は恐怖と言うよりも喜びの悲鳴だった。まさか桜花が告白でもしたのか?
「どうかしましたか千草?」
走って千草の元まで行くと上半身を裸にした千草と、普段通りのタケの姿。ステイタスの更新には上脱がなきゃ行けないからね仕方ない。
「みてっ!見て見て!私もついにレベル2だよっ」
なん・・・だと・・・!?
「うおおおぉ!やりましたね千草!」
「「バンザーイバンザーイ!」」
と喜ぶ俺らだが、タケの顔が険しい。なんでだろうか?
「くっ・・・・・・神会の日に・・・レベルアップだと・・・いや、隠蔽すればまだ先延ばしにできるはずだ・・・」
・・・あぁなるほど。命だけでもキツいのにそこに俺と千草まで加わればそりゃあ胃が大変な事になりますよね。わかります!
「どんな二つ名を貰えるんだろう!可愛いのが良いなぁ」
「そこはタケに頑張って貰うしか無いですね」
「うぐっ!」
純粋な喜びと高まる期待。そして悲鳴を上げるタケの胃、なるほど、神とは何とも大変な仕事ですね。にしても・・・・・・二つ名かぁ、嫌な予感しかしないな。ハルプで乱入しようかな・・・。
ん、タケと目が合った。
「「無難な物を勝ち取ろう(って来てください)」」
互いにぐっ!と親指を立てて誓い合う。ただし、1人でも救えない者がいた場合は諦めて全員恥ずかしい名前で我慢しよう。見るに耐えない。
「あぁ・・・そうだな」
神会、偉業を達成しランクアップを果たした物に、二つ名を授ける儀式。・・・と一般的に解釈されているがその実冒険者に恥ずかしい二つ名を付けて楽しむ娯楽である。
「くっくっく、今回は豊作だと聞いている。楽しみだぜ」
「あぁ楽しみだ。」
涎を滴らせ神々がにやける。そんな中タケミカヅチは口元を引き締めガチガチに固まっていた。
「なぁタケ、ずいぶんと緊張しているじゃないか。緊張するだけ無駄だろう?そんな姿勢を見せていると狙われるぜ?」
「そんなことを言われてもな・・・俺のファミリアからは3人も参加するんだぞ・・・?」
「へ!?3人もかい?・・・って戦争遊戯でランクアップをしたのか」
「あぁ、桜花、千草、が戦争遊戯でランクアップした」
「あれ?妖夢君はどうなんだい?」
「妖夢は三ヵ月前にレベル2になっている、そして10日ほど前にレベル3になっている」
「・・・は、ははは。・・・人のファミリアの事は言えないけど・・・妖夢君も大概だね・・・はは」
「・・・・・・ん?待てよ?ベルクラネルだよな、ヘスティアの所は。・・・冒険者になってからどれくらいだ?」
「・・・一ヶ月半・・・かな。」
「そうか、互いに頑張ろうなっ!ほんとっ!頑張ろうな」
そして、この日同盟が2人の間で結ばれた。
「さーて!今回の司会はウチが努めさせてもらいます。ロキやでー!」
ロキが名乗りを上げ、ヘスティアが「うっ」と唸る。神々が軽い拍手をした後ロキは満足げに資料を手にその場を仕切り始める。
「何か手元の資料で報告がある奴はいるか?いないんやったら次に行くで」
ロキの後に続いて神々は近況報告や噂話を披露していく。
「いや〜、あのタケミカ何とかとか言う天然ジゴロロリコン過保護ファザーの所に移りたいとか、そういう団員が出てきてさー」
「「あー、確かに確かに」」
「でもさ?親の心境としてはさ、あんまり拒否したくないじゃん?だけど主力が抜けるのはなー、やっぱりダメッて言うかー?心が痛むぜ・・・」
戦争遊戯が世間に与えた影響は強い。数値的な戦力差は勿論、傍から見れば幼い女の子が家族の少女を救うべく立ち上がり、家族と共に囚われの少女を救い出したのだ。
英雄譚の様なその戦いは見るものを釘付けにし、その姿に憧れを抱かせるには十分すぎるものだった。神様達は言う「これがギャップだ」と。
その後はラキアの軍がどうのこうの、隣の田中さんがどうのこうの、と、たわいの無い報告が進み。ついにお待ちかねの時間がやってきた。
「さて・・・・・・準備は出来たか?」
ゴクリ、と新参者達が唾を飲む。
「ホームの隅で痛い名前に喜ぶ団員を見る準備はOK?」
「「「OK!!!」」」
始まるのは地獄。ここで付けられた痛々しい名前は、その者が新たにランクアップするまで変わることは無い。つまり、ダークフレイムマスターとかエターナルブリザードとか、そういった名前を眷属が誇り、自慢してくる苦行に耐えねばならない。ランクアップするまで。そして一般的にランクアップをするのには早くて数年かかる。
「ほい!まずはコイツや!んーと?」
その後は痛々しい名前が飛び交い、自らの眷属に付けられた名前に神が悲鳴を上げる、それだけが繰り返された。そして。
「ぐぅふっふぇぅへ!タァケェミィカァズゥチィ・・・きぃさまぁの番だぞぉぉおおお!」
憎悪がタケミカヅチに向けられる。それは明らかな嫉妬。なぜならば、タケミカヅチのファミリアには『美少女』が沢山いる。
まずは命、年齢の割に発育が良く、神々にささやかな人気を博していたが、この場の神々にもしっかりと知れ渡った。手元の資料には似顔絵が付いており、その絵は非常に精巧だ。
そして千草、普段は顔を前髪で隠しているが、時々見える素顔は非常に整っており、庇護欲を刺激すると、男神女神問わず一定の人気を誇る。
極めつけは妖夢だ。整った顔立ち、少し雑に整えられた美しい銀色の髪。全身緑と言う奇抜な格好でありながら驚くほどに似合っている洋服。あざといリボン付のカチューシャ。
ついでにハルプ。妖夢と同じ外見。しかし話し方に大きく違いがあり、妖夢が丁寧に接するのと違い、ハルプはずいぶんとフレンドリーだ。口調も男らしく快活。妖夢もハルプも老若男女問わず高い人気を誇っている。
さらに戦争遊戯でタケミカヅチ・ファミリアの女性陣を知らないものは殆どいなくなった為に、人気は爆発している。
・・・つまり。
「だけどなぁ・・・・・・あの子達が恥ずかしい名前で喜ぶのは・・・・・・見てられねぇよぉ!!大人として恥ずかしくなってきちゃうだろ!!俺この前落とした財布わざわざ手渡ししてもらっちまって・・・・・・」
意外と有利に進んでいる。このまま行けば無難な名前を勝ち取れるかも知れない。タケミカヅチが内心で期待を強くする。
「だぁがしかしっ!貴様はタケミカヅチっ!どうせこの3人のheartもゲットしてんだろぉ!糞が!このロリコンが!」
「そうだそうだ!万死に値する!妖夢たんに斬られろ!」
「つけちまおうぜ!はっずかすぅぃ二つ名をヨォ!」
「やめっ、ヤメロォーーー!!!!」
「【
「「「それだっ!」」」
「
「ルビが被ってんじゃねぇか!」
「
「おお!中二っぽい!」
「やめろ、やめてくれ・・・お願いだァ・・・」
「まだだ!まだ俺のターンは終わってないぜ・・・!ドロー!14歳スピリット!効果により二つ名を特殊召喚するっ!」
タケミカヅチが絶望に暮れた時、1人の女神が助け舟をだした。
「その辺になさい。貴方達はあの娘が可哀想とは思わない?・・・・・・誇れる物を付けてあげてね?」
「「「「はい!フレイヤ様!」」」」
それは美の女神フレイヤ。タケミカヅチは予想通りといえば予想通りの展開にホッと一息ついた。
そして導き出された答えは・・・・・・
「【
【✟絶影✟】ヤマト・命
【
【
「「「「「「ないっ!」」」」」「ある!」「ないなわかった。」「そんな!?」
誰かが叫ぶ。これが神の所業なのかと。
タケミカヅチはホームに戻り、暗い顔で妖夢達に対面した。緊張の面持ちで正座し座る家族にタケミカヅチは神会で起こったことをほぼ全て語った。
「・・・・・・という訳なんだ。」
タケミカヅチが暗い声でそう答えると、千草と命、桜花が目をキラキラとさせて、何かを噛み締めるように瞳を閉じる。
「「「かっ、カッコイイ・・・」」」
そのつぶやきに妖夢とタケミカヅチはずっこけた。
いや、それにしてもさ・・・嫌味か!?
どうも妖夢だよっ!こんにゃろうこんな二つ名つけやがって・・・、あれだよね?これって毎回この二つ名で呼ばれるんだよね?毎回毎回「武器をよく折るヤツ」って呼ばれるんだよね?!最悪だろ・・・厨二病云々じゃなくて普通に恥ずかしすぎるだろ、二つ名呼ばれる度にショックを受けるわ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ほらみろ!身体が硬直してんぞ!なんだよこれはって理解に苦しんでるぞ!反応に困るよなこれは。だがタケの手前こんな事を口走るわけにも行かない。やはり多少の気遣いをするべきか・・・
「・・・あー・・・そのぉ・・・・・・か、カッコイイ・・・んじゃ・・・ないですかね・・・。グスン、どうせ私なんて武器をすぐに折っちゃう悪い子ですよ・・」
あぁ、もう悲しみが全力で表現されてるぅ!感情の制御が難しい!なぜなら俺も悲しいからだよ!
「そ、そのような事は・・・妖夢殿の技が強すぎるだけで・・・」
気を使う所か使わせてるよ。どうすんだよ俺の肉体の心の剣は既にひび割れた後にへし折られてるよ。治らねぇよ、接着剤なんかで治る程やっすい心してないからね、これはよっぽどすごい何かが必要だよね、そう!例えば壊れない剣とかさっ!!
「妖夢そう落ち込むな・・・。プリン、買ってやるからさ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・プ、プリンだと・・・?今プリンと言ったか桜花・・・?あの柔らかな質感に確かな弾力を持つ高級デザート・・・の、プリン・・・だと?このオラリオに置いて、最高品質を誇るプリンと成ればその値段は跳ね上がり・・・・・・ご!5千ヴァリスぅ・・・(エコー)。
「そ、それはまことですか!!」
くっ、涎が止まらねぇ・・・。しかしだ、しかし。あのプリンの柔らかさ、スプーンを入れた時の弾力・・・そしてあの優しい甘さ・・・。喉を通るつるんとした喉越し・・・ゴクリ。・・・これほどの誘惑に勝てるだろうかいいや勝てない!(反語)この誘惑に勝つには白楼剣を抜かざる負えない!いや!抜く!
「お、おいおい。涎を拭けよ。ほら、お金渡すからプリンでも何でも買ってこい」
「おお!ありがとうございます桜花!さぁ命に千草!二つ名なんてどうでもいいのです!プリンこそ至高!他は邪道ですっ!ゴーゴー!行きますよ!」
さあ早く進むんだ!ハーリーハーリー!プリンは待ってはくれないぞ!値段の割に売り切れるの速いんだから!どこの世界でもプリンは人気なんだ!
「・・・・・・妖夢は5千ヴァリスで立ち直る。これはメモしといた方がいいですねタケミカヅチ様」
「あぁ、ベートにも教えといてやろう」
「え?教えるんですか?買収されて情報とか漏らしてしまう可能性が」
「いや、流石に・・・・・・無いとは言いきれない・・・それにしても凄いステイタスだな・・・」
Lv.3
「力」:H180→F365
「耐久」:H112→G218
「器用」:F473→B748
「敏捷」:E502→B795
「魔力」:105→E404
「霊力」:266→D580
アビリティ:【集中:D+】【剣士:G】
【半霊 (ハルプゼーレ)】
・アイテムを収納できる。収納できる物の大きさ、重さは妖夢のレベルにより変化する。
・半霊自体の大きさもレベルにより変化する。
・攻撃やその他支援を行える。
・半霊に意識を移し行動する事ができる。
・ステイタスに「霊力」の項目を追加。
・魔法を使う際「魔力、霊力」で発動できる。
・ハルプで戦闘を行った場合も経験値を得られる。
「上がりすぎだろ・・・」
ベルはボロボロになった装備を更新すべくギルドの7階に来ていた。
(ヴェルフ・クロッゾさんの防具は売ってるかな)
前回の買い物で目を奪われた兎鎧。それの製作者「ヴェルフ・クロッゾ」防具に詳しくないベルでもわかる確かな腕を持つ鍛治師。ベルは期待に胸をふくらませエレベーターに乗り込んだ。
「・・・・・・うぇ!?」
視界の下方向に映る銀色の髪の毛。誰か子供が乗ってるんだろうと当たりをつけたものの。ギルドに通常子供は来ない。だからこそチラリとその人物を見たベルは驚いた。
「妖夢さん!?」
「・・・ん、なんです。」
そこにはほっぺたを膨らませコチラを睨む可愛い顔が。
(って!いやいやいや!確かに可愛いけど!この人を怒らせるとやばい!?てかなんで怒ってるの!!?)
その身に確かな危機感を覚えベルは1歩後ずさる。しかし此処はエレベーター、逃げ場などない。
「ど・・・・・・どうか、したんですか?」
ベルは恐る恐る聞いてみることにした。どうにか解決しなくては、そう思ったからだ。
「・・・別に。何でもありません」プクー
(あ、明らかに怒ってるよ・・・。僕もよく言われるけどもしかして妖夢さんも顔に出やすいのかな・・・?)
此処は話題を変えるべきだ!とベルは話題を探す。
(前回ここで出会った時は防具の探し方を教わったんだったかな。きっと妖夢さんも武器か防具を探してるんだ)
そして、ベルは武器や防具の話をしようと思い至るが・・・それはちょっとした地雷であった。
「あ、アハハ。実は僕
頭の後ろを掻きながら情けない笑い方で妖夢に話をふるベル。しかし、妖夢は拳を握りこみ、プルプルと震えている。
「そう・・・ですよね。・・・鍛治師さんに申し訳がたたないです。・・・すぐに武器壊すし、プリンは買えませんでしたし・・・すぐに武器壊すし・・・」
(武器壊すしって二回言った!?)
「ハハ、ハハ・・・そうですよ、私は悪い子ですよ。鍛治師さんの仕事を徒に増やす悪い子ですよ・・・せっかく千草達が選んでくれたのに簡単に壊す薄情者ですよ・・・」
ベルは妖夢の落ち込みようにドン引きしつつ、小さな女の子が落ち込んでいる姿にいてもたってもいられなくなる。
「そ!そんなことないですって!妖夢さんはレベルが高いから武器が付いてこれないだけですよ!」
ベルの励ましに妖夢は顔を上げジト目でベルを見た後「はぁ」とため息をこぼし、続けた。
「武器は悪くありません。使いこなせば木の枝だって敵を殺せる武器になる。つまりは私の技量が圧倒的にたりない。簡単な話です、修行あるのみですよ」
(へぇ、木の枝で・・・え!?木の枝ってあの木の枝・・・?普通に考えて振ったら折れちゃうよね?!)
ベルはダンジョンに潜っていたため、戦争遊戯を観戦していない。しかし今回に限りベルの言う木の枝であっている。西行妖ではない。
エレベーターがカチャーンと言う音と共に8階に着いたことを知らせてくれる。
(僕は此処で降りるけど・・・妖夢さんはもっと下かな?僕と話してたら8階に来ちゃったけど)
と思ったベルだが、妖夢は同じく8階で降りた。
「え?妖夢さん此処で降りるんですか?」
「はい。今は暇なのでベル・クラネルさんについて行ってみようかと」
ベルは妖夢さんも子供っぽいところが有るんだなぁと意外に思い、ニコリと微笑む。それは妹に対する笑みのような柔らかい笑みだ。妖夢はそれを一瞥するとくすっと笑う。
「変な顔ですね」
「ひどいっ!?」
8階を歩き、ヘファイストス・ファミリアの経営する武具屋に向かう。
「おお〜、だいぶ品揃えが変わってますね」
ベルが妖夢に話しかける。しかし返事はない。「ん?」とベルは周囲を探すと妖夢は何故かカウンターの方を見つめている。そこからは喧騒の声が。
ベルがそちらに向かってみると、防具の入った箱を手に赤髪の短髪の男が店主に抗議しているようだ。そして、ベルはその男の手荷物に見覚えがあった。
白い、兎のような鎧だ。ベルはハッとして耳を澄ませる。
「なんであんな隅っこに置くんだ!」
「今は戦争遊戯の影響で売れ行きがいいんだ、なら売れる商品を目立つ所に置いた方がいいだろう?」
どうやら男の作った鎧を何処に置くかで言い争っているようだ。
(あの人が・・・ヴェルフ・クロッゾ・・・さん?)
ベルが話しかけるか迷っていると、横からツンツンと誰かに指で触られた。ベルが横を向くとそこにはやはり不機嫌そうな妖夢が。
「行かないんですか?随分と物欲しそうに眺めていますが」
「えっ・・・・・・は、はい!」
ベルはそう言ってヴェルフ・クロッゾに話しかけた。そして兎鎧を購入し、ヴェルフに連れ出された。・・・何故か妖夢も一緒に。
「はて、私は何故此処に連れてこられたのでしょうか」
妖夢がブスッと顔を不満げにしかめながらヴェルフに問いかける。
「まぁまぁ、そんな事より俺はヴェルフ・クロッゾ。よろしくなみょんきち!」
ヴェルフはそんな表情を気にもとめず笑う。しかし、そんな事よりも妖夢には気になることが。
「"みょんきち"・・・?わ、私の事ですか?」
戸惑い焦る妖夢に「ははは、気に入らなかったか?俺はいいと思うんだが・・・どう思うベル」「え!?ぼ、僕に振りますかそこ・・・ええと・・・本人が決めるべきかと・・・」と話し合う2人。
「気にいらない・・・いいえ、あだ名は初めて付けられた気がします。みょんきち・・・悪くは無いですね。・・・良くもないですけど」
テンションが低かった妖夢が若干テンションを取り戻す。
「おっ、だいぶ元気になったみたいだな。この前の戦争遊戯と違い過ぎて別人かと思ってたぜ」
ヴェルフがそう言うと妖夢は気恥ずかしそうに顔を逸らす。ぷいっ、と言う効果音が似合うくらいにわかりやすく背けるのでベル達は思わず笑ってしまう。
そして和気あいあいと束の間の笑いを楽しんだ後、ヴェルフは真剣な顔で2人を見る。
「なぁ、俺と専属契約結ばないか?」
ヴェルフは少し緊張しながらもそう言い切った。
「専属契約?」
ベルが頭に疑問符を浮かべながら首をかしげる。そこに妖夢から補足が入った。
「冒険者に対して絶対数が少ない鍛治師は貴重な存在です。さらに冒険者の武具以外にも一般の方の生活用品なども鍛治師は制作しています、ここまではわかりますか?」
妖夢の説明を聞き、なるほど、と理解したベルは頷く。
「そのように仕事が沢山ある中で、『貴方の依頼を優先します』と言う契約です。もちろん変わりに珍しい素材や、それに見合う対価を払う必要はありますが、ギブアンドテイクと言う関係を作れるのです」
「なるほど・・・ってええ!?僕なんかいいですって!妖夢さんに付いてあげてください!」
「それはどういう事ですか!!私が使うとすぐ壊れるからと!?そういう事ですか!?」
「ひいいぁ!?違います!」
遠慮が一瞬で言い合いに変わる。ヴェルフは目を点にしながらも、しばらくそれを見つめ・・・大きく笑いはじめた。
「な何がおかしいですか!」
「いや、はは、何でもないんだ・・・くく。それにしても、みょんきちは結構説明上手いな、驚いたぞ。」
ヴェルフは話しを逸らす。クロッゾ。その名を聞いて、なおかつ専属契約をしようと持ちかけられて、大した反応もしなかった2人に、ヴェルフは驚いたのだ。
「ぐぬぬ、話しを露骨にそらしましたね・・・。まぁいいです。私が説明上手なのは練習しているからですよ。もうすぐ私達のファミリアに入りたいと言う人達がきっと来ます。何人か、まではわかりませんが。入ってきた後輩に教えられないと言うのは恥ずかしいですから。」
「なるほどな、良かったじゃないか」
「ホントですよ!羨ましいなぁ・・・!」
ファミリアの団員が増える、それは一般的には朗報で、喜ぶべき事だ。しかし妖夢は表情を曇らせる。
「私はファミリアを家族だと思っています。いえ、きっと今居る皆を
妖夢はこう言っているのだ。ある日突然父親が「家族が増えたぞ」と名前も顔も知らない、年齢すらバラバラな集団を連れ帰ってきたとして、それを家族と呼べるのか。そう言っているのだ。
だが、彼女は断らない。それは『家族』だから。妖夢は人手が増える事で何が起こるか、それを理解出来ていた。猿師の仕事ははかどり、ファミリアは豊かになり、きっとタケミカヅチも笑ってくれると。ならば疑問等必要無かった。少なくとも、理性ではそう思っている。
「そうか・・・・・・確かに、みょんきちみたいな歳だとキツイかもなぁ」
「そこ、子供扱いをすると斬りますよ」
「ひどいっ!?」
「専属契約については願ってもない事です、タケに聞いてみますね」
「おう!!」
『英・・・雄・・・?』
あんなむごたらしい戦いをして、英雄扱いっぽい感じ一般人に見られている理由は、エロス連合が一般人にもわかりやすい完全な悪役であったこと。妖夢達の目的が人の救出だったこと。少人数で僅かな時間で攻め落としたことなど。
『二つ名』
言わずもがなヒロインXの真似のせいである。剣士殺すと笑ながら突き進む様はまさにバーサーカー。いや、セイバーだったか。ちなみにソードブレイカーとルビつけたのはゴブニュ。
『プリン』
妖夢の好物の1つ。とても美味しいが高級品。現実でも昔は高級品だったらしい。最も高いもので5千ヴァリス。プリンをあげると簡単なお願いは聞いてもらえる。
はよ、タケミカヅチはよベートに教えてあげて!
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