オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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ダンジョン「お前達は逃がさん、絶殺(ぜっころ)だ」

ダンジョンさんの殺意がMAXになっているようです。

新キャラ達の強さが伝わるかどうか・・・・・・不安じゃのう。


39話『・・・・・ぐぬぬ・・・』

東の空に輝く太陽がオラリオを照らし出す。1日の始まりに人々は既に活気付き、多くの人が街路を行く。

 

「朝からすまんなぁ、ファイたん。押しかけるような真似して」

「何時もは1人だし、こうして誰かと朝食ってのも良いわ」

 

北西と西のメインストリートの間の区画に建つ館では二柱の女神がすこし遅めの朝食をとっていた。朱色の髪を揺らすロキ、紅髪に眼帯を纏った女神ヘファイストスは微笑する。銀髪のメイドが物音をいっさい立てずに料理をテーブルに並べていく。

 

「ウチのとこの遠征に鍛冶師貸してくれてありがとうなー、ほんま助かったわ」

「気にしないで。深層のアイテムを優先的に分けてもらってるだけで充分だもの。それで、遠征はどうだったの?進展はあったのかしら」

 

ロキからの感謝の言葉を受け止め、唐突に消えたり現れたりするメイドに目を白黒させながらも質問を投げかける。

 

ロキ達の他に人はいない。時折消えるメイド以外に動く者はロキ達のみである。ナイフとフォークを動かす。

 

「今回はいろいろとハプニングがあったんやけど、「次は頑張るっ!」って意気込んでたし、次の遠征で到達階層増やしてくると思うで」

「そう」

 

ロキは手に持ったナイフとフォークを目を瞑りロキの斜め後ろに控えていたメイドに渡す。するとメイドは慣れた手つきで素早くステーキを切り分け、ロキの口へと運ぶ。グラスに入った透明な水を口の中に流しこむ。

 

「ねぇ、ずっと気になっていたんだけど・・・・・・。その子・・・えっと・・・【剣士殺し(ソード・ブレイカー)】よね?」

 

ガシャン!と厨房の方から音がした。目の前のメイドの顔が真っ赤に染まり、顔よりも赤い瞳を涙目にしてヘファイストスを睨みつけた後、霧のように消えていく。下界の子供たちは神が授ける所謂「痛い名前」に感激し、それを誇りに思う。それを考慮し、ヘファイストスは躊躇いながらも二つ名で呼んだのだが、どうやらメイドは二つ名に不満があるようだ。

 

「あ〜あ、ファイたんやってもうたな。今の娘は妖夢たんやないで、ハルプたんや。神の恩恵から生まれたスキル、つまりは感覚もウチらに近い・・・・・・かもしれん。だから二つ名で呼ぶと怒るで。ちなみにハルプたんと妖夢たんは知識の共有も出来るらしくてな?妖夢たんも二つ名で怒るで」

 

うしし、と笑いながら、切り分けられた肉を口に運ぶロキ。しかし、困ったように頬をかくその仕草が、ロキも同じ轍を踏んだのだと理解させる。

 

「いや〜そのせいなのか全然話してくれへんのや・・・もうウチダメかもわからん・・・」

 

弱気になるロキをよしよしと呆れながら撫でるヘファイストス。しかし、妖夢は怒っているのではなく、紅魔館の瀟洒なメイドを参考に行動しているだけで、話しかければしっかりと返事を返すつもりなのだ。

 

「それにしても、なんであの子がメイドなんか?コンバージョンはありえないだろうし・・・」

「それはなファイたん・・・・・・」

 

ヘファイストスは妖夢達がロキのメイドをやっている事に対する疑問をようやく吐き出した。ロキがいい笑顔で答える。

 

「二人が両想いやからやねん」

 

厨房でガクッ!と音がした。ロキが小さく「聞こえてもうたか?」と厨房の方に首を回し確認する。しかし妖夢が出てくる事はない。ヘファイストスが唾を飲み込む音がロキの耳に届く。

 

「なんやファイたん、そんなに緊張せんでも・・・・・・」

 

ロキか振り返るとメイド服姿のハルプがロキを睨んでいた。

 

「はっハルプたん!?」

『ロキ・・・・・・!』

 

上擦った声で悲鳴のような歓声のような声を上げたロキにハルプは睨みをきかせ、両手を握り込んでいる。

 

「な、なんでや本当の事やろ?ウチは妖夢たん達が好きで、妖夢たん達はウチの事好きって言ってくれたやん」

 

ロキの必死の弁解にハルプは項垂れる。そして漸く口を開いた。

 

『それはそうだけ・・・ですけど、やはり、そういう言葉で表されると恥ずかしい物があります。どうかお戯れを』

 

彼女は瀟洒なメイド、間違ってもタメ口など許されない。意識してそれを直しロキに注意するハルプ。ロキは寧ろハルプが言葉を発した事が嬉しいようで全く気にせず、下げられたハルプの頭を撫でる。

 

『・・・・・・ぐぬぬ・・・』

 

やるせない思いを抱きつつ半分ずつの1人はロキに奉仕するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗いダンジョンの中を進む1団、タケミカヅチ・ファミリアの団員達だ。団長と幹部三人、そして弓と雷のリーダーの6人で中層を楽々と進んでいた。現在は十四階層を進んでいた。

 

全員がサラマンダーウールを身につけ、周囲を警戒しながら一定のペースで進む。

 

団員たちの構成は、前後衛共に務まる桜花、命、千草、猿師、純粋な前衛のアリッサ・ハレヘヴァング、遊撃兼サポーターのクルメ・フートだ。

 

桜花が先頭に立ち、猿師が最後尾を進む。ここまで殆どトラブルもなく進めている、しかし桜花達に慢心はない。

 

「きゅいいぃ?!」

 

ダンジョンの横道から唐突に飛び出してくるアルミラージを桜花の槍がいとも容易く貫く。レベルが3に上がったとは言え、防御力に乏しいタケミカヅチ・ファミリアの団員達は中層でも油断はできない。

 

「ふぅ。特に問題もないな。飯にするか」

「はいっ、私が作るよっ!」

「あぁ、頼む」

 

桜花の声にクルメが応え、素早く料理の準備が行われる。赤いフードから可愛らしい顔を覗かせながらクルメは材料を取り出した。

ダンジョンの中だと言うのに料理をのんびり作れる理由は一帯のモンスターを狩り尽くしたからだ。油断なしにモンスター達を屠る桜花達にダンジョンは諦めて他の冒険者にモンスターを差し向けたらしい。

桜花がそんな事を考えながらも警戒を緩めないでいるとアリッサが桜花を呼ぶ。

 

「団長、警戒は私が。」

 

アリッサ・ハレヘヴァング、彼女は全身を鎧に包み込み、盾を持った重戦士だ。敵の攻撃を引きつけ、時間を稼いだり、その筋力を利用して攻撃を繰り出す。道中でその実力を見ていた桜花は頷き警戒をアリッサに任せた。

 

背中のリュックから鍋を取り出したクルメは持ってきた食材を入れて鍋を火にかけて、鼻歌を歌いながらぐつぐつと煮えさせる。香ってくるいい匂いにモンスターが釣られないとも限らない、と真面目で堅物なアリッサは考え、より一層注意を払う。

 

何事もなく時間は過ぎ、料理が完成する。全員で同時に素早く食事を済ませる。

 

「・・・!うまい!」

「ええ本当に!」

「うん!」

「・・・・・・!これは、美味しいです。」

「美味でごザルな」

「おお~っ!ありがとうございますっ」

 

5人のそんな反応にクルメが顔を輝かせ、嬉しそうにスプーンを進めた。依然としてダンジョンにこれといった動きはない。食事と合間に行われる会話のみが音としてそこに響いていた。

 

 

他に音はない。

 

 

 

「・・・・・・おかしい。」

 

ポツリと桜花が呟き立ち上がる。周りの団員達がそれに習って立ち上がる。

 

「どうかしたのですか」

 

一転してキリリと眉を引き締めた命があたりを警戒しながら確認する。彼女のスキルには遭遇したモンスターを記憶し、範囲内に入れば知覚出来るようになるスキルがある。それを使用し、しかし何も知覚出来ずにいた。

 

「わからん・・・・・・・・・だが余りに静か過ぎる」

 

冷や汗が頬を伝う。声が反響し響く中、一切の音を発せずダンジョンはその牙を今か今かと研ぎ澄ます。

 

無音の空間は獲物を狙い息を潜める猛獣を思い起こさせた。桜花が槍を手に取り構える。アリッサが盾を構え、前方に注意し、命が千草を守るように動く。

 

千草を中心とした五角形の陣形で意識を研ぎ澄ます。

 

「命!どうだ!」

「いえ!何も反応は・・・・・・・・・っ!!来ます!」

 

最も高いステイタスを誇る桜花の耳が、ズシリ、と重い足音を捉えた。桜花は急いで命に確認を取ると同時に槍をその音の方角に向け、足に力を込める。

 

「何かが・・・来るぞ・・・・・・!」

 

目線の先、十字路のようになっているその場所。右側の通路から

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオアッ!!!!!」

 

ソレは現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タケミカヅチは前方をげんなりした表情で見つめる。そこには爽やかな微笑みを浮かべるヘルメスの姿が。

 

「・・・・・・何しに来たんだ・・・?」

 

ファミリアの主神をひとりにするわけにはいかないので、残っている最高戦力のリーナとダリルが側近としてタケミカヅチのすぐ近くに控えている。最も方や柱に寄りかかり赤い槍を研ぎ、方や山のように積み上げた食料を貪りながらであったが。

 

「なにって酷いな。俺はタケミカヅチに会うためにわざわざ出向いてやったんだぞ?」

「そうか、じゃあな」

 

おどけるヘルメスにタケミカヅチは立ち上がり突き放す。なぜならヘルメスはタケミカヅチを馬鹿にする神の1人だからだ。「そんなひどいな!?」と縋るヘルメスにタケミカヅチ角髪頭を掻いた後再び座り込んだ。

 

「俺が来たのは他でもない。・・・・・・でもタケミカヅチ、そこの2人が居ても平気なのかい?」

 

ヘルメスが未だにモキュモキュとご飯を頬張るリーナ。その目に鋭さを湛えにらみ返すダリルを見る。ダリルは今しがた変わった雰囲気や、少し前の会話等からある程度内容を察したようだ。彼が追い抜こうと目標に定めた宿敵の内容であると。

 

「構わない。コイツらは俺の家族だ。ただ背中に文字を刻んだだけの関係じゃ無い。俺のファミリアに入ったらなら、俺はソイツの父親なんだ」

 

それらに一切の巫山戯も虚言も含まれていない。そう判断したヘルメスは開き掛けていたその目をニッ、と戻した。

 

「じゃあ聞くけど・・・・・――――――――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――来たぞっ!!」

「はっ!」

 

桜花が右方向に飛び跳ねる。アリッサが前に出て盾を構えた。そして轟音。

 

「ブオオオオオオオオオォォォオオオオ!!!!」

 

現れたのはただのミノタウロス。

 

の筈だった。

 

「ぐっ!?うおぉ!!!」

 

振り切られる豪腕。全身金属鎧(フルプレートメイル)を着込み、大盾と大きな斧を持ったアリッサがただの膂力で宙に浮く。その筋力はやはり怪物その物。ただ、ひとつ違うとすれば―――――ミノタウロスはこれ程までに力強くは無い。

 

「ぬっ!?ぐうっ!!」

 

レベル2最高クラスの耐久、筋力が役に立たない。着地狩りの突進を踏ん張り受け止める、にも関わらず押されていく。

 

「ぐ・・・・・・なっ!?」

 

アリッサが驚愕の声を上げた。盾が掴まれた、丸太のような指が盾をアリッサから引き剥がそうと力む。

 

「させるかっ!」

 

桜花が雷の様な素早さで接近し、盾をつかむ腕にその槍、〈針槐(ハリエンジュ)〉を振り下ろす。既の所で腕を引き離し、回避するミノタウロスは3歩ほど下がると頭を低くし突進の構えを取った。

 

「【穿て、必中の一矢】『弓神一矢(ユミガミノイチ)』ッ!!」

 

突進が始まるその瞬間、眉間に向けて以前より速くなった矢が放たれた。ミノタウロスがそれを角で弾こうと頭を振る。が矢はあらぬ方向へと機動を変え、横っ腹に突き刺さる。

 

「ンブゥォオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

怒鳴り散らす様に咆哮し荒々しくラッシュの様に拳を連続で振り回す。それを桜花が槍で防ぎ、往なし、受け流す。激流に逆らっては力尽きる、ならば流れに乗って進むまで、穂先で受け流し、石突きで顎をしたたかに打ち据える。

 

「―――ッ!!」

 

声にならない悲鳴を上げたミノタウロスの頭に槍が振り下ろされる。角で迎撃したミノタウロスだが角ごと頭部の半分近くを切り落とされる。止めを放とうとしたその時。

 

壁が、天井が、罅割れる。

 

「「「「――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!」」」」

 

怪物達の産声が爆音となって空間を押し出した。

 

「・・・ッ!!」

「・・・まずい・・・!」

「これ・・・は」

「数が多すぎる・・・それに毒薬はダンジョン内では危険でごザル・・・」

「どうするの!?」

 

声にならない悲鳴が、言葉にできない絶望感が全員を支配する。壁が、床が、モンスターで埋め尽くされている。後ろも前も横も真上も。

 

桜花は選択を、迫られる。

 

(どうやって切り抜ける?!・・・・・・最も成功率が高いのは・・・・・・・・・一点突破か・・・)

 

選択の余地などなく、はじめから選ぶものは1つ。怪物達が壁を作り囲うなら、それを突き崩し突き進むだけ。単純で明快。

 

しかし、それゆえに難しい。

 

「俺が前を切り開く!命!アリッサ!殿は頼む!」

 

スキル『勇往邁進』によって活力を得て突き進む。払い、突き、叩き、吹き飛ばす。空を飛ぶモンスターは千草が射落とし、後ろから来るモンスターをアリッサの斧が叩き切り、命の刀が切り裂く。クルメが器用に味方の邪魔にならないように動きながら敵を攻撃する。猿師のクナイや手裏剣がヘルハウンドなどの厄介な相手を牽制をする。

 

「オオオオオオオオオオォォォオオオオオオ!!!!」

 

しかし、暴風のように両腕を振り回しモンスターを吹き飛ばしながら片方の角を失ったミノタウロスが迫る。それはさながら津波を割って現れる怪物。唐突に現れたそれに気が付けた者は全員、動けた者は1人。

 

「がっ!?」

 

命に迫る豪腕をその身で防いだアリッサの全身鎧は大きくひしゃげ、余りの衝撃に内臓をやられたのか血反吐を吐きながらモンスターの中に吹き飛ばされる。

 

「くそっ!!」

 

相手が強化種である事など、初めの一撃で気がついていた、だからこそ一点突破で早急にこの場から離れようと踏んだのだ。だが1人が分断された。桜花が踵を返す。後ろを走っていたクルメが「あぶっ!?」とぶつかるのを危うく回避する。

 

「命!先頭は任せた!俺はアリッサを連れて後から追い付く!!」

「桜花殿!?」

 

桜花がモンスターを切り飛ばし、その中を突っ切り命達の視界から消えた。残った中で最も強いのは命だ、経験で言うならば猿師だが、ダンジョンの経験ならば最も長いのは命だ。

 

「命ちゃん!」「命殿!」「命さん!」

 

団員からの指示を求める悲鳴。武装を弓から刀に持ち替え、前衛として戦う千草、二刀の小刀で何とかモンスターを押さえ込む猿師、双剣と巧みな歩術でどうにか前線を維持するクルメ。命の動悸が速まる。まるで早鐘の様に高らかに鳴り響くそれを強引に押し殺し。命は臨時のパーティーリーダーとして決断を下す。

 

「撤退しますっ!!」

 

悲痛な表情で言い切った。体は桜花が消えた方向を向き、刀はやるせなさに震えていても、団員を守るための判断を下してみせる。

 

「よくぞ仰られた・・・!!お見せいたそうか、忍びの忍術を・・・!」

 

飛び掛ってきたアルミラージを高速の回し蹴りで頭蓋ごと破壊した猿師が、その手を重ね、数回の印を結ぶ。 普段は常に笑顔である筈の猿顔に笑みは無く

 

「【自由は奪われた、檻の中にて余生を過ごせ】『檻猿籠鳥(かんえんろうちょう)』ッ!!」

 

有るのは怒りだった。

 

超短文詠唱から放たれる小型結界。対象の動きを強制的に止める魔法の檻。小型のモンスターしか捕まえられずとも、その効力は絶大だ。そして、それで終わることは無い。

 

「フッ!!」

 

竹で出来た筒を紐で複数個つなげ合わせた様なそれは、竹の中心部に炸薬を配置し、その周りに金属片や爆薬が詰められている、所謂「手榴弾」、それを複数個つなげ合わせた物をモンスター達の中央に放り投げ、そこに糸の繋がったクナイを投げつける。

 

「燃えつきろ、それがお似合いというものですよ、怪物達が」

 

炎が糸を取り込むように高速で手榴弾へと向かい・・・・・・そして爆発。薬師Sが作り出した火薬の類はその限りない火力を存分に引き出し、モンスター達を粉砕し焼き尽くした。

 

「今です!」

 

黒い煙と肉が焼ける匂いが鼻をくすぐる中、命は後ろ髪を引かれる思いでその場所から撤退を始める。しかし、黒煙を突き破り、大量のモンスター達が突撃してくる。

 

「走って!」

 

命の悲鳴とも取れる声に、団員達は応じる。

 

――が風を切って石斧が飛来する。そして「あ」と言う声と共に倒れ込み地面を滑る音が。命は振り返る、声で誰がやられたかわかったからだ。

 

「千草殿!!」

「任せてくれでごザルよ!」

「救出は私が!」

 

猿師とクルメが素早く動き、石斧を肩と背中から生やした千草をクルメが抱え上げる。猿師が小刀二刀と忍術でアルミラージやヘルハウンドの大群を押し留める。上の階層に行くための坂道までほんのわずかと言うところでモンスター達が追いすがってくる。

 

「くっ・・・!猿師殿!早く上に!」

 

十三階層へと続く坂から命が声を投げかける。しかし、猿師はモンスターに囲まれ満足に動くことが出来ない。敏捷値と器用値に偏ったステイタスを持つ猿師では満足に動けなければ戦闘力は大きく低下する。

 

「それはこっちのセリフでごザルな。」

 

跳躍しモンスターの顔を蹴り命の前まで来た猿師は助けようと向かってきた命の胸に蹴りを打ち込み、坂の方へと吹き飛ばす。ヘルハウンドが腰を高く上げ頭を下げる、ブレスの予備動作だ。並の上級冒険者が灰しか残らないとされるブレスの一斉砲火。

 

ハッと顔を上げ命が猿師の方を見る。

しかし、そんな危機的状況に猿師は命に背中を向け、モンスターに取り囲まれながら片手をヒラヒラと揺らし、手を振った。

 

「命さん!!」

 

命の手をクルメが取り、強引に駆け出した。そして、命達の背に爆音と熱風が激しくぶつかった。

 

「猿師殿!!!!」

 

涙に顔を濡らしながら、けれど命達は走り出した。生き残り、伝えなくては。助けを呼ばなくては・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜花はモンスターを倒しながら、タケミカヅチとの会話を思い出していた。それは廊下ですれ違うほんの一瞬の会話だった。

 

――

「なぁ桜花、少しいいか?」

「?どうかしましたか」

「怒らないでくれよ?」「はい」

「俺は、お前達を家族だと思っている。血が繋がっていなかろうと、な。・・・だからこそ、ファミリアに入ったヤツらは全員俺の子供と思う事にした。」

「!」

「だからな、助けてやって欲しい。団長として、時には冷酷な判断も必要だろう。だが、少しでも助ける努力をしてやってくれ。頼む・・・。」

「・・・・・・はい。」

「そうか・・・・・・ありがとう桜花」

―――

 

 

「うおおおおおおおおぉぉおおおお!」

 

ダンジョンの中は壮絶な戦いが繰り広げられるコロッセオ。勇ましい雄叫びが人魔問わず発せられる。

 

斬る、払う、薙ぎ、突き刺し、蹴り飛ばす。正に無双の働きでモンスターを倒しながら、桜花はどうにかアリッサの元に辿り着く。

 

「手を伸ばせ!」

「っぅああっ!!」

 

痛みに悶絶しながらも桜花が差し伸べた手を何とか掴むアリッサ、そして腕力だけで引っ張られる。その痛みにヘルムの中の顔を歪めながらどうにか立ち上がった。

 

「オオオオオオオオオオ!!!」「ぎゃぎゃーーー!」

 

モンスター達の雄叫びが心を摩耗させる、囲まれているという状況が戦意を萎えさせる。アリッサが息を呑む。先程の一撃で体が形を保っている事が奇跡的だったのだ。だからこそ自分達がこの場から生きて帰れる未来が見えなかった。いや、雄叫びと状況が勝利を見えなくさせている。

 

「――ーお前は、俺が守る。だから―――」

 

しかし、目の前の男、桜花は見据えていた。勝利へと続く活路を。その背中があまりに大きく見えて、アリッサは目を細める。心が憧憬の鐘を鳴らした。

 

「お前は俺を守れ!」

「っ!もちろんっ!!」

 

アリッサは立ち上がる。こんな所で倒れていては一向に彼に追いつけない。斧の柄を握りしめ、盾を構えた。詠唱を開始した桜花を守るために。

 

「こっちだっ!!!!!お前達の敵はここにいるぞ!!!」

 

大きく叫ぶと同時に盾を斧で思い切り叩く。金属同士が強くぶつかりあい甲高い音を響かせ、モンスター達の狙いがアリッサに移った。

 

「【剣の上にて胡座をかけ、眼前の敵を睨め。汝が手にするわ雷の力なり】『武甕雷男神(ライジンタケミカヅチ)』!!!」

 

短文詠唱が完了し、雷を纏った桜花は敵を薙ぎ払う。その勢いは正に雷の様で、圧倒的なステイタスがモンスター達をあっという間に葬り去っていく。斬られれば死ぬ、触れれば痺れて動きが止まりそこを突かれ死ぬ、逃げようにもステイタスが更に上昇した桜花から逃げられるはずも無ければ、そもそも逃げる事などモンスター達の頭になかった。

 

時間にして数分、ミノタウロスを含めた数十体のモンスターの殲滅に成功した桜花は魔法を解除し、アリッサをお姫様抱っこしながら全力で上を目指した。全員を救う為に。

 

「こ、これは・・・・・・!団長・・・!」

「嫌だとは思うが少し我慢しろ・・・!!」

「・・・・・・・・・了解。」

 

 




アリッサさんの強さが伝わるかな?という訳でまとめて見る。

・普通のミノタウロスと外見が全く変わらない強化種の一撃(ある意味初見殺し)を体を浮かせられるが無傷で耐える。
・着地狩りの突進を押されるが受け止める(ミノタウロス系の必殺技が突進)。
・強化種ミノタウロスの奇襲に反応して身を呈して命を守る。
・その一撃を受けても死なない。
・内蔵がやられているのに立ち上がれる。

・・・・・・・・・原作的に考えると凄い強いです、レベル2の耐久じゃないなぁと思いましたが、『タケミカヅチ・ファミリアなら仕方ないね!』で終わらせたい。



ハルプ『そんでもってここでいきなりのリーナ・ディーンさんのステイタス紹介っ!!アリッサじゃないんかい!』

名前リーナ・ディーン

レベル2

ステイタス
力G
耐久G
敏捷E
器用H
魔力A

発展アビリティ
【魔道D】・・・魔法の効果上昇
【睡魔B】・・・寝た時の魔力回復量が上昇する。眠くなる。

スキル

『魂癒食事』(ソウルフード)
・食べ物を食べることで微量だが魔力を回復する。
・回復量は食べた量、味、本人の好みによって変化する。

『魔力同調』(チューニング・スペル)
・魔法の効力を高める
・お腹が減りやすくなる。

『鬨声詠唱』(バトル・クライ)
・魔法の効果範囲を広める。
・魔力消費が少し上昇する。

『魔法』

【阿弥陀籤】(あみだくじ)

【千差万別魔の嵐。月。火。水。木。金。土。日。雷。風。光。闇。毒。酸。何が当たるか知る由もなく。引かれた線の導くままに】

・無作為選択魔法
・十三種類の中からランダムで選択され発動する。
・更に魔力を使用し、ランダム要素を追加する事で効力が上がる可能性がある。
・ランダム要素は『魔力/5×変数1~3×レベル』の計算をおこなう。


・月・・・光及び魔法を反射する鏡を生み出す。
ランダム要素『鏡の耐久力』

・火・・・所謂ファイアーボールを放つ。
ランダム要素『火力』

・水・・・癒しの効果を持つ水を湧かせる。勿論飲める。
ランダム要素『水の量、回復量』

・木・・・地形操作、植物を自在に操れる。何も無いところから生やすことも可能。ただし土の上じゃないと無理。
ランダム要素無し。

・金・・・アイテム探索魔法。魔石やドロップアイテムが光る。ランダム要素なし

・土・・・地形操作、土や岩を操れる。
ランダム要素なし。

・日・・・お洗濯がはかどる。寒さに強くなる。
ランダム要素『陽光の強さ、耐寒性』

・雷・・・電撃を放ち攻撃できる。電撃は近くにいる生物に向かっていき連鎖する。
ランダム要素『連鎖数、威力』

・風・・・自身の後ろの方から風を吹かせ、矢や敵の魔法を逸らす若しくは到達を遅くする。移動速度が上がる。
ランダム要素『風力、移動速度』

・光・・・光の玉がフワフワと周囲を浮かぶ。個数はランダム。そしてその玉を操れる。威力は半霊パンチの2倍位。
ランダム要素『光玉の数』

・闇・・・暗視状態を味方に付与し、敵を盲目状態にする。
ランダム要素『効果時間』

・毒・・・毒液を霧状に噴出する。風に吹かれると自滅するかもしれない。
ランダム要素『毒性の強さ』

・酸・・・強酸性の液体をボール状にして放つ。
ランダム要素『酸性の強さ』

【天之狭霧神(アメノサギリ)
/国之狭霧神(クニノサギリ)】

【平の原にて吹き溜まり、空に架かりて天に座せ。
汝は彼方、我は此方。虚(ゆめ)と現(うつつ)を別け隔てよう。
我が閉ざす。我が隠す。我が別つ。我が偽る。
その名は霧。我が御名也。
汝等、甘い虚に身を任せ、其を現と心得よ。
我が名はサギリ!
天之狭霧神(アメノサギリ)
or
国之狭霧神(クニノサギリ)】

・長文詠唱
・霧が発生するor結界を張る。
・霧の中の人間の願望により効果を変化させる。
・結界はある程度の融通が効く。

ハルプ『うん、すごい魔法の数だね!スロット的には二つしか使ってないのがもうね・・・・・・てかさ、これ電撃とか引いちゃったら前衛が全滅するのでは・・・?』
リーナ「・・・その時はその時~。まぁ、うどん食べて元気だせよ~」
ハルプ『!?・・・・・・・・・で、雨と国の狭霧は普通に使いやすそうだな?』
リーナ「結界は食べ物の確保に役立つよー。まずは結界で食べ物と僕を囲みます~、そしたら霧を出します~、僕は【沢山食べたい】って願うの~、するとzzzzzzz」
ハルプ『すると・・・・・・・・・ぇ?寝てる・・・。』
リーナ「はっ!・・・すると食べ物が増えるの~。んー、お団子いる?」
ハルプ『いる。モキュモキュ・・・・・うまし!』
リーナ「うまし!」


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