オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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いやぁ。40話になりましたね、記念すべき40話・・・・・・何かやろうか、なんてそんな事は無かった。

ダンジョン「・・・・・・・・・・・・今ですっ!―――――――└( ・´ー・`)┘」




40話「『主人公が出ないとかシフシフお前・・・』」

ベル達は初めての中層に心を踊らせると同時に、緊張もしていた。

 

「ここが中層か・・・」

「はい、上層よりも暗いですね」

 

至るところに岩が転がり、壁も床も岩で構成されている此処は十三階層。ここからが中層の始まりだ。

 

「十三階層はルームとルームを繋ぐ通路が長いようです、安全に戦うには素早くルームに到達しなくてはなりませんね」

 

リリの説明を聞きながらベル達は頷く。こういった通り道に陣取ると、何処から湧くかわからないモンスター相手に後手に回る可能性が高い。退路を絶たれ、無限に湧くモンスターとの戦闘・・・・・・そこまで考えてベルは身震いした。

 

「モンスターに合わないうちに前進しましょう。ヴェルフ様、一本道ですがガンガン行きましょう。」

「わかった、はぐれるなよリリスケ」

「たった今一本道ですって言いましたよね!?」

 

緊張を他愛のない会話で解しながら一列になって中層を進んでいく。そんな一行の身を包むのは『サラマンダーウール』だ、精霊の護符、つまり精霊が魔力を編み込んで制作した特別な装備品だ。

 

「リリはこんな立派な護符を着れる日が来るなんて夢にも思ってませんでした。ありがとうございますベル様!大切にしますね!」

 

ベルはそんなリリに苦笑いだ。ベルはそのサラマンダーウールは割引してもらった物だという事を伝えるが、それでも値段は軽く0が五つ並ぶ程。

 

「こんなヒラヒラした服が上級鍛治師の防具を凌ぐ耐火性ってんだから困りものだよな・・・ったく、本当に精霊って奴は」

 

精霊に若干の拒否感を持つヴェルフはそう口にする。

 

「ですがありがたいです。これで全滅の憂いは大分なくなりました」

「・・・・・・ヘルハウンドだよね?」

「はい」

 

『ヘルハウンド』【放火魔(バスカヴィル)】の異名を持つ犬型のモンスターだ。並の防具を容易く溶かす火力、決して低く無い身体能力。群れに遭遇し、一斉放火されれば僅かな灰しか残らない。

 

十三、十四階層における死者の大半はこのヘルハウンドによる焼死だ。レベル2にランクアップした冒険者ですらことごとく焼き尽くされる。

 

「十分に承知してるとは思いますが・・・」

「わかってる、ヘルハウンドが出たら優先的に倒す、だろ?俺だって火葬はゴメンだ」

 

中層と上層の違い、それは身体能力だけではない。モンスターが明確な飛び道具を使ってくる事、モンスターの湧きが早いことなど、難易度が急に上昇する。

 

「・・・・・・来た!」

 

ベル達がタタッタッタ、という軽い足音を聞き取った。

 

「早速か・・・」

 

現れるのは黒一色に真っ赤な両目を爛々と光らせるモンスター・・・ヘルハウンド。

 

「よし―――行くよ!」「おう!」「はい!」

 

ベル達が選んだ行動は速攻。戦闘態勢に移られる前に倒すこと。これは妖夢から学んだ事だ、準備をさせてはならず、相手の行動が限られているうちに最大火力を叩き込む。モンスターにはほぼ確実に効く攻略法だ。と教えられている。

 

「キャィィイン?!」

 

一切の迷いなく突貫してきたベル達になす術なくヘルハウンドは八つ裂きにされる。

 

「うーん、これってさ・・・・・・」

 

ベルはその戦果に唸る。

 

「チームワークが磨けないような・・・」

「確かに、な。」

 

中層以降、チームワークは何よりも大事だ。個々がいくら優れていようと、死ぬ時は一瞬だ。だからこそ団結し、互いの死角を無くす必要がある。

 

「ハハハ・・・妖夢さんは魔法も反射できるし・・・1人で何でもできちゃうから・・・」

「みょんきちは凄いよな」

「はい!流石は妖夢様です!」

 

三者三様に妖夢を褒める。そのままに通路を進んでいくと再びモンスターが現れた。名前をアルミラージ、白い兎が二足歩行している様なモンスター。特徴的なのはその額にある角だろうか。

 

「あれはベル様!?」

「違うよっ!?」

 

どこら辺が!?やっぱり白いから!?とベルがツッコミを入れる。

 

「ベルが相手か・・・・・・冗談キツイぜ・・・」

「いや完璧に冗談だから!!」

 

巫山戯ているとアルミラージ達は近くの大岩を砕き、破片の中から天然武器を取り出した。片手でも装備ができる石斧。

 

三人VS三匹、しかし、1人が1匹を受け持つ何て愚策はしない。三人VS1匹を三回繰り返す。

 

「いくよ!」「おう!」「それにしても可愛いです。ベル様みたいで殺す事に抵抗が・・・」「まだからかうの!?」

 

計六つの影が正面からぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゅいいいい!?」

 

悲鳴が響く。悲鳴の元は刀で斬られたアルミラージだ。命達に追いついたアルミラージは10数匹で同時に攻めかかり・・・・・・その数を減らしていた。

 

往なし、逸らし、受け流し。返す刃で切り裂いていく。攻めているのはモンスター、攻められているのは命達、しかし、殺られているのはモンスター達だ。

 

命の一刀が素早く生命を斬り飛ばし、クルメが巧みに敵の動線から逸れてすれ違いざまに首を一突きする。このまま行けば・・・・・・そう命が考えた時、それはやってきた。ゴゴゴゴゴ、と何かが高速で転がってくる。それはハードアーマードと言うアルマジロの様なモンスターだ、命や妖夢の鎧にも使われている非常に頑丈な体を丸め、高速で転がることで冒険者をぺしゃんこにする。

 

それが2体。

 

「不味いかも!?絶対美味しくない!」

 

クルメがフードの奥の顔を青ざめさせ、少し飛び跳ねるようにして背負う千草の位置を調節する。歩術を利用する時に落ちないようにするためだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

命が固まる、いや、ハードアーマードを見据える。クルメが慌てて命呼ぼうとするが

 

「牙突―――」

 

命が右足を後ろに下げ、体を横に向け、刀を体の横に水平に構え、重心を下げる。放たれるのは命の最大火力。ゴロゴロと岩を砕き、砂埃を巻いあげ迫るハードアーマードにその切っ先が唸りを上げた。

 

「零式ッ!!!」

 

放たれる一突き。全身全霊を乗せた最高の一撃は高速回転する硬質なその装甲をいとも容易くぶち抜く。しかし、残りの1匹が迫る。命は肩盾を前に構え、踏ん張る。

 

「ううぅ!っ・・・!」

 

周辺を破壊しながら迫るハードアーマードの突撃を1人で押さえ込む。肩盾とハードアーマードの装甲がぶつかりあい火花を散らす。回転に巻き込まれないよう全身の筋肉を使って反抗する。盾を持ってくるべきだったと後悔する、回転する装甲に触れた腕の肉がごっそりと持っていかれた。

 

「ぁあああっ!!」

 

力任せに腕を振り抜く。ビキリ、と罅割れた音が耳に届くが意識的に無視する。ヒビが入ったのは利き腕ではない。なら、まだ戦える。命は壁にぶつかりもぞもぞと体制を立て直すハードアーマードに駆け寄ると「はぁ!!」と装甲の隙間に突き刺し、魔石を破壊する。

 

「命さん!!」

「クルメ殿!どうかしましたか・・・・・・・・・っ!」

 

クルメの声に振り向くと、クルメが指を指していた。そこは自分達が走ってきた一本道、桜花達が追いついたのか、そう期待した命は裏切られる。

 

「ヘル・・・ハウンド・・・!!」

 

黒い()そう見えてしまうほどに数が多い。

 

「撤退します!!!」

 

命の判断は速かった。黒一色の群れを見て、クルメの顔を視認し、判断を下した。逃げる、他に道は無い。

 

 

走って、走って、走った。後ろから追いすがる無数の足音から逃げる為に。けれど・・・・・・・・・・・無情にも、クルメの体力が切れた。ステイタスの中で、体力を決めるのは耐久だ。元摂食障害であるクルメは尚更スタミナが無かった。

 

「はぁ―――はぁ―――!」

 

荒い息遣いとじんわりと服を濡らす汗が体力の限界をこれでもかと伝えていた。

 

「バウッバウ!ウォオオオオオオオン」

 

獲物の衰弱を見て、命と千草から垂れる血液の匂いを嗅いで、猟犬(ヘルハウンド)達がその勢いを更に増した。

 

不味い、不味い、不味い!命は酸素の足りない頭で懸命に策を練る。しかし・・・・・・策は無かった。顔を二つの意味で青くしながらも最後まで足掻く。体力の無いクルメから千草を受け取り、走る。

 

(諦めて・・・なるものか・・・・・・!)

 

 

 

すると

 

 

 

 

「ヴェルフ避けて!」

「うおっ!?」

 

2匹のアルミラージに集られそうになったヴェルフに大声で知らせ、ベルは屈んだヴェルフの上を越え、横斬りに次ぐ蹴りの一撃。一連の動作で2匹のアルミラージを行動不能にしたベルは冷や汗をかいた。疲れが、影のように付きまとってきている、次第に濃くなるそれをベル達ははっきりと自覚していた。

 

そんな時、ベルはとある人物を視界に捉えた。

 

「・・・命・・・さん・・・・・・?」

 

ルームをベル達目掛けて一目散に走ってくる命達にベルは首をかしげ・・・・・・その後に蠢くものを見て青ざめた。

 

「逃げて下さい!!!ベル殿!!リリルカ殿!!」

 

目を涙に濡らしながら、命は懸命に叫ぶ。後ろに大凡20匹のヘルハウンドを連れて。目の前のアルミラージを倒したヴェルフが振り向き目を見開く。リリが驚きつつも冷静に支持を下した。

 

「おいおいおいおい!!冗談だろ!?」

「退却します!!ヴェルフ様っ右手の通路へ!!命様も早く!」

「はいっ!」

 

ベルが残りのアルミラージを蹴り飛ばし、強引に通路を確保する。邪魔しようと飛び出た最後の1匹を息を切らしながらクルメが一閃の元、魔石を破壊した。

リリの指示の元、素早く冒険者達が通路になだれ込む。

通路を駆け抜けるが、ステイタスの低いサポーター、息切れを起こし青ざめるクルメ、怪我を庇いながら千草を背負う命。逃げられる道理などなかった。

 

(追いつかれる・・・!なら!)

 

「っ!?ベル様!!」

「おいベル!」

「ベル殿!?」

「先行って!」

 

判断は一瞬だった。反転し、モンスターに向き合ったベルはその左手をモンスターに向け、叫ぶ。

 

「【ファイアボルト】!」

 

放たれる雷炎の数は三つ。瞬く間に通路を駆け抜け制圧する。モンスター達の断末魔が響く中、ベルは炎の前に立ち尽くした。通路の奥に人が居たなら巻き込まれる事は必須。間違いなくダンジョン内における違反だったが、仕方が無いだろう。そう思いヴェルフ達を追おうとして、聞こえた音に目を見開いた。

 

 

 

炎の壁を突き破り、大量のヘルハウンドが飛び出してくる。ベルは肩越しに、自分を食らおうとその顎を大きく開く無数のヘルハウンドを目撃する。

 

(反転が・・・・・・間に合わない・・・・・・!殺られる!)

 

「うぅっおおおおおおおおおっ!!」

「グオオア!ギャン!?」

 

唸る様な咆哮と共に何かがベル達の後ろから残像を作るほどの勢いで突貫してきた。ヘルハウンド達が串料理の様に一気に貫かれ、壁に縫い付けられる。そして、それら全てが魔石を殺られたのか灰に姿を変え崩れていく。

 

ヘルハウンドを貫いたままの姿勢で、肩で息をする男。着物に和鎧、そして何故が鎧を着た戦士を肩に抱えている。そして、その顔を上げた。

 

「間に合ったか、命達!」

「桜花殿!!ご無事でしたか!!」

 

命が駆け寄る。ベル達はそれを見て思い知る。自分達よりも数段上の実力者たちが、ここまで追い詰められている『中層』、その恐ろしさに。

 

「これが・・・・・・中層」

「っ!!ベル様!まだ来ます!」

 

壁がひび割れる。モンスターの手足が壁から突き出てきた。

 

「どうやら・・・本当に俺らを返す気は無いらしいな・・・・・・。命、猿師さんは?」

「・・・ヘルハウンドの炎に飲まれて・・・そこからは・・・」

「・・・・・・・・・・・・そうか。おいベル」

「は、はい!」

 

天井がひび割れる。

 

「協力して上を目指す、いいな?」

「は、いっ!?」

「なっ!?」

 

そして、床が・・・・・・・・・抜け落ちた。

 

「落ち!落ちる!?」

「くっそ!?」「ベル様助けてください!!」

「くっ・・・・・・桜花殿!クルメ殿!!アリッサ殿!どうかご無事で!」

「うぉおおお!?南無さん!!」

「落ちる~!!鍋の中身が―!!」「鍋など捨て置け!体制を整えろぉ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン上層。一人の男が衣服と思われるものを纏い、血の後を全身にこびりつかせながら、フラフラと上を目指して歩いていた。

 

「〈火防の塗り薬〉が無ければ死んでいましたね・・・・・・。それにしても・・・・・・戦闘の痕跡が殆ど無い・・・。命殿達は地上に出られたのだろうか・・・」

 

元は藍色だった装束は焦げ破れ、ただのボロきれの様な状態になっていた。猿師は足を引きずりながら、仲間達想い、しかし、生存を優先する。

 

〈火防の塗り薬〉はそのままに炎から身を守る塗り薬だ、他にも火傷に塗ることでそれを効率よく治すことが出来る。そこに〈癒しの丸薬〉を使う事で傷口自体は一切無い。しかし、失った血液や、体力は回復出来ない。勿論ほかの薬で血液も体力も戻す事が出来るが、生憎とクルメの持つバックにそういった物は入っている。

 

あの後、毒薬を散布し、毒消しを飲んで何とかモンスターを殲滅した猿師は、道行く敵を倒しながらここまで歩いてきていたのだ。しかし、もう手元に薬も薬を作る材料も無い。

 

(たとえ、命殿達が上に戻れない状況だとしても、私がタケミカヅチ様にお伝えすればまだ助かる可能性は・・・・・・)

「くっ・・・!」

 

可能性は、低い。

 

中層で行方不明になったとしたら生存は絶望的だ。まだ、そうと決まった訳では無いが、有り得るものとして考える。違うのであればそれでよし、だがもしそうだったなら手を打たねば手遅れとなる。

 

「早く・・・・・・お伝えせねば・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床が抜け落ち、落下した僕達はどうにかその命を繋いでいた。神の恩恵が無ければ絶対に死んでいたと思う。

 

「ゴホッ・・・ゴホッゴホッ・・・クソが・・・・・・!!大丈夫か、お前達・・・?」

「は・・・い・・・。」

 

桜花さんがあまりの土埃に咳をしながらも、皆の安否を確認する、命さんが返事をした。鎧の人も片手を挙げて応え、赤いフードの女の人も岩に寄りかかりながらくたびれた表情で手を挙げた。・・・・・・そうだリリとヴェルフは!?

 

「リリ!大丈夫!?ヴェルフ!生きてる!?」

「リリは大丈夫です・・・・・・」「勝手に・・・殺すな、ベル」

 

二人の名前を叫びながら辺りを見渡すと、リリは大きなバックがクッションになる形でどうにか怪我はないみたいだ、ヴェルフもこれと言った外傷は見受けられない。僕はホッと安堵の息を漏らす。

 

「お前達、さっさと移動するぞ。さっきは壁も天井もひび割れていたんだ。早く動かないと降り注ぐぞ」

 

桜花さんの言葉に僕達は顔を青くする。なにせ降ってくるのは岩だけじゃない、いや、岩だけでも即死級の脅威だけど、更に大量のモンスターが降ってくる何て考えたくもない。

 

「は、はい!」

「ベル様起こしてください!」

 

桜花さんに返事を返し、バックのせいでひっくり返っているリリを助け起こす。けどリリならスキルのおかけで普通に動けるんじゃ・・・まぁいいか。

 

「悪いな、クルメ」

「いいよアリッサちゃん、気にしなーい気にしなーい」

「あ、アリッサ・・・ちゃん?」

 

アリッサと呼ばれた人は鎧がお腹の部分だけ罅割れ欠けている。1体どれだけの攻撃を受ければああなるのか僕にはわからない。けれどあの損傷具合を見る限りだと大型のモンスターの一撃をもらったんだとおもう。と言うか、女の人だったんだ・・・胸の部分が大きく膨らんでるからわかったけど、さっきまではそんな事を気にしている間もなかった。

 

クルメさん?がアリッサさんに肩を貸して2人で歩く。それをぼんやり見ていたらリリが僕の太股をガシガシと肘でつついてきた。そうだった、早く移動しないと。

 

「ごめんリリ、早く動かなきゃね」

「そうですよベル様、女の人を見ている場合ではありません!」

「あ、あはは」

 

 

 

暫く移動して、僕達は休憩を取ることにした。怪我の治療やアイテムの整理、情報の整理が必要だったから。

 

「申し訳ありません、ベル様、桜花様。落下の衝撃でポーションが・・・」

「そんなに落ち込まないでリリ、大丈夫だから」

 

リリのバック入っていたポーションの殆どが割れてしまっていた。リリが項垂れるのをなだめて自分のレッグポーチに入っているポーションも目の前の風呂敷に出す。

 

「僕はこれだけです。」

 

デュアル・ポーションが1、普通のポーションが2。他のは割れてしまった。寧ろよくこれだけ残っていたな、と思う。下手すれば一つもないなんて事になりかねない。それでは生存は絶望的だ。

 

「そうか、これだけあれば十分だな。」

 

けど、桜花さんは満足気に頷いた。そして、腰から袋を外し、風呂敷に置く。なるほど、と僕は思った。

 

「これは〈癒しの丸薬〉だ。瓶に入ってないからな、割る心配はない。いや、割れても問題ないか」

 

ニッ、と笑みを浮かべる桜花さん。〈癒しの丸薬〉それは現在オラリオで唯一猿顔薬師(モンキー・F・ドクター)と言うタケミカヅチ・ファミリアの団員が作ることの出来る特別な回復薬だ。

 

ポーションと違って液体じゃないから瓶が要らない、割れても別に問題は無い、沢山持てる、とメリットが多い事で高値で売れる薬なんだけど・・・正直僕にはまだ手が届かない。飴玉サイズの薬1粒が数千ヴァリス。安く思えるかも知れないけど、この薬はポーションと違って即効性じゃない。

 

でも、こう言う状況だととても心強い。僕達の顔色が明るくなる。

 

「ですが、あの落下時間だと・・・・・・ここは・・・・・・」

「ん~?16、15?階層位かな・・・?」

 

クルメさんが細い手を顎に当てながら首を傾げ、そういった。本当によく生きてたな僕達・・・。

 

「リリスケ、本当よく生きてたなお前。」

「はい、どうして普通に歩けてるのか不思議でなりません」

 

不思議そうに首を傾げるリリに鎧の下からアリッサさんが答えを教えてくれる。

 

「私のスキルに味方の耐久を上げる物がある。それのお陰だろう」

「なるほど・・・」

 

便利なスキルだなぁ、と思いながら、それが無ければ僕達も怪我をしていたんじゃないかと身震いする。お礼を言って頭を下げるけど、アリッサさんは片手を少し挙げてそれを止めた。無口な人なのかも知れない、でも悪い人じゃないと言うのはわかった。

 

「では治療を行いましょう」

 

命さんが自分の腕の治療を終えて、アリッサさんの治療に移った。僕らも軽い怪我を負ってるから治療を行った。

 

「さて、どうするか」

「上に戻るのか?」

 

治療も終わり、桜花さんとヴェルフがどうするかを話し合う。僕はすぐそばで会話を聞いてるだけだ。アリッサさんが周囲を警戒している中、話は進む。

 

「・・・・・・・・・十八階層」

「ん?何か言ったかリリスケ?」

「十八階層はセーフポイントと呼ばれる階層です。」

 

リリが真剣な顔つきでセーフポイントと口にした。セーフポイント、エイナさんの話だとモンスターが産まれない階層なんだとか・・・・・・行ったことは無いけど、確かにそこに行けば安全なのかも。

 

「・・・階層主はどうするつもりだ小人族」

「む、私にはリリルカ・アーデという名前があります!」

「・・・・・・誤解を招いたな、名前を完全に記憶していなかった。謝ろうリリルカ・アーデ」

「別に構いませんが・・・・・・階層主・・・ですか」

「ああ」

 

アリッサさんが言う『階層主』、ダンジョンのとある階層に存在するほかのモンスターを凌駕する強さを持った強者。ファミリアが一団となってやっと倒せるかも知れない・・・くらいに強い怪物。

 

「それをこの人数で打倒できるか?私では5分程しか耐えられんぞ」

 

あ、5分も耐えられるんだ。

 

と思ったけど口にはしない。だってタケミカヅチ・ファミリアの人だし、普通と違うのは覚悟していた。

 

「俺達なら倒せるかも知れないが・・・・・・千草がな・・・」

 

千草さんは未だに目を覚まさない。大量に出血したからなのかも知れない。たしかに、1人動けない状況で階層主は危険だ。

 

「ですが、今ならあるいは・・・」

「どう言うことリリ?」

 

リリが顎に手を当て考え込む。集めた情報を整理整頓し、断捨離して導き出している。

 

「階層主の再出現は一定間隔です。ロキ・ファミリアがゴライアスを討伐してからまだ・・・・・・いや、ギリギリ出現していないかも知れません!」

「なるほど・・・・・・」

 

全員がリリの提案に考え込む。現在は恐らく15~16階層。

 

「上に戻る道は地図も無ければそもそもどこに落下したのかもわからない以上難しいな。」

「下に行くなら、縦穴に飛び込むだけで済みます。」

「なら、決まりだな。さっきみたいに強化種が襲ってこなければ問題なく行けるはずだ」

「桜花団長桜花団長、そういう事を言うと実際に起こるって私の元主神さま言ってましたよ?」

「おいおい、やめてくれよクルメ。縁起でもない・・・」

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオォォォオオオ!!!!」

 

「・・・・・・縁起でも・・・ないなぁ」

「ほら!見ましたか桜花団長!やっぱりなんか来ました!」

「そんな事を言っている場合では・・・!」

「迎え撃つぞ!」

 

 







『桜花は鬼畜』

ハルプ『桜花は鬼畜、はっきりわかんだね』
桜花「な!?俺なにかしたか?!」
ハルプ『内蔵をやられているアリッサを肩で担ぐとかおま、おま殺す気か?絶対に痛いぞ?』
桜花「いや、アレは仕方ないだろう。あのままじゃあ、ベルがやられていたし」
ハルプ『・・・・・・せやな。その場にいない俺がなにか言うなんて可笑しいよな。はい、帰ります』


【挿絵タイム】

ハルプ『説明しようっ!』
妖夢「説明しましょう!」
ハルプ『挿絵タイムとは!』
妖夢「新たに仲間になった新キャラ3人の」
ハルプ『イメージが固定されるように』
妖夢「シフシフが頑張るコーナー!」
ハルプ『ワーパチパチ!』
妖夢「初回にして最終回!?」
ハルプ『なんと!終わってしまうのですか!』
妖夢ハルプ「(^q^)」


アリッサ

【挿絵表示】


クルメ

【挿絵表示】


リーナ

【挿絵表示】


作者の一言。
【鎧が描けないよ・・・・・・。誰か描いてください(唐突なむちゃブリ)】

あ、そうですそうです。一度試してみたいことがありまして、「殆どセリフだけ」のお話し(番外編:デート的な物)とかどうですかね?本編には絡んでこないと思いますが。

べートとオッタルとのデートなんておもろいかもな(小声)

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