オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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タイトル通り、ハルプ形態で助けを求めるお話し。

そういえばタイトルつけたんですよね。妖夢かハルプのセリフを抜き出してタイトルにするって事にしたんですが・・・・・どうです?



47話『だから、守って欲しいんだ』

テントの中を外と隔てる布切れの僅かな隙間から光が差し込み、再び世界に朝が訪れたのだと知らせてくれる。

 

あぁ、そういえば此処は地下深く。届いているのは太陽の光ではなく水晶の輝きだったか。

 

ふわぁ~・・・・・おはよ。おれだよ。

 

「ふぁ・・・・・ぁ・・・・・ふぅ。ん~~っ!!」

 

朝目が覚めたら布団の中で、ゆっくりと伸びをする。仰向けになり、手を組んでバンザイをして両腕を伸ばします。息を吐きながらその状態を5秒間続けて、そのあと力を抜く。朝イチで伸びをすることによって、体に「動き出すよ」とサインを送くる。体が準備するので体を傷めにくなる効果もあるらしい。

 

朝一に全身を伸ばすことで血流が良くなってそれだけで代謝が上がり、ダイエットにもなるとか、伸び万能説を唱えたい。

 

起き上がろうとして何かに引っかかる。ん?と思いながら見てみれば千草とリーナが俺に絡みつくように寝ているではないか。

 

「・・・・・ふふっ」

 

起こそうと思って手を伸ばすが、その手を二人の頭に置いて撫でる。もう少し寝かせてあげたかったからだ。・・・・・もうすぐで黒いゴライアスとの戦闘が始まる・・・・・なら、少しでも準備しておかないとな。という訳でハルプモードになって行動を開始する。肉体の方ももう少し寝ておこうか。

 

『うっし、行くか。』

 

本体が寝ている間に、実は全ての館を巡ってタケミカヅチ・ファミリアの精鋭を集結させようと行動した。結果として戦闘を行える、もしくは自信があると言ったレベル2が15人、サポーターとしての能力が期待できそうなレベル1が8人。それぞれ限界までポーションと武器を持ってもらった・・・・・人と、そしてモンスターとも戦うことになる。

 

まずはベートの元に向かう。友人でもあるベートはレベル5。単身で通常のゴライアスを子供扱い出来ると思う。ならば戦力として捕まえないわけには行かない。どんな手を使ってでもコチラに引き入れる。

 

それとオッタル、ある程度の友好関係は築けていると踏んでの彼だ。こちらを監視もとい護衛している彼だが戦力としては何よりも上だろう。・・・・・例え協力してくれないとしても、俺がピンチになれば助けてくれる可能性が高い。利用するようで悪いが家族のためだ。駄神は言った、「原作通りに進めた方が可能性が高い」と。あの時俺が考えたのは桜花たちを救えるかどうか・・・・・つまり、下手に俺が手を出して黒いゴライアスの出現を未然に防いだ場合・・・・・何か桜花たちが死ぬ事態になる、という事なのだろう・・・・・例えばウダイオスの白バージョン的な何かが出てくるとかね?

 

・・・・・・・・・・・・・・・必要なら【西行妖(切り札)】を切るつもりだ。魔法を吸収できるベートが居れば多少は安全になるかもしれない。だがそれ以外の冒険者達はまだ魔法の効果が完全にわかっていないから危険に晒される可能性が高いな。判明している特性だけでもえげつないのに。

 

ベートと数人の男性冒険者が泊まっているテントに俺はたどり着く。そして入口に垂れている布を押上げ中に入った。・・・・・今は4時くらいか。

 

『ベート。起きてくれ。ベート。』

「ぅ・・・・・ぅあ?・・・・・・・・・・ん、・・・・・んだよ、もう少し寝かせろ・・・・・」

 

ベートを揺するが耳がピクピク動いて、尻尾を2回振ったが起きてくれない。ふむ・・・・・。俺は一つ思いつき、ベートの耳に口を近づけた。

 

『ポーション挿すぞこら』

「・・・・・っ!?誰d『大声は出すな。』てめっ・・・・・妖夢、じゃねえなハルプか、何しにきやがった・・・寝かせろ」

 

眠そうにあくびをした後布に包まる狼、の、ケツを蹴り飛ばし起こす。怒鳴ろうと開けた口を抑え要件を伝える。

 

『ベート。ここは人が多い。少し離れたいんだ・・・・・来てくれないかな』

「・・・・・てめぇ・・・・・何考えてやがる」

『・・・・・大事な要件なんだ、来てくれ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前を歩く銀髪のチビ・・・・・ハルプに続いて歩いていくと、むしろ巨大水晶の近くの開けた場所でそいつは止まった。

 

なんでついてきちまったかなぁ・・・・・。

 

頭をガシガシと掻く、理由なんてわかってる。『来てくれ』そういったアイツの目が確かに「怖がっていた」からだ。

 

・・・・・何を怖がってんのかわからねぇが、取り敢えず俺を連れてくるだけの事なんだろう。自慢でも自惚れでも無いが、アイツらは俺に懐いている。昔から何故か子供にはなつかれやすいが・・・・・それとはまた少し違う感じだったか。まぁだから俺を頼ろうってのはわからなくもねぇ。

 

どんな敵に対しても恐怖を抱かず戦っていたアイツらが怖がるとすれば「仲間の死」か「家族の死」くらいだろうが、こんな雑魚どもの溜まり場(リヴィラ)であのタケミカヅチ・ファミリアの団員を殺せるとは思えねぇ、それに幹部になった・・・確か、桜花、命、千草・・・だったか?を倒すのは正直あり得ねぇだろうな。

 

じゃあ何に怖がってんだよアイツは・・・・・なんだ、家族が死ぬ怖い夢でも見たか?

 

『・・・・・・・・・・なぁ、ベート』

「んだよ、さっさと要件いいやがれ」

 

立ち止まってから何も言わずに止まっていたハルプが口を開いた。考えてもわからねぇなら聞くしかない。

 

『俺が今から言う事は、その・・・・・あり得るかもしれない可能性の話だ。』

 

俺に背を向けたままそう話し始めたハルプ。そして、俺は思い出す。

いつだったか、デカ花野郎と戦ってぶっ倒れた妖夢は俺達のホームに運ばれた。そして、ハルプがお礼にと秘密を俺達に話した。もしも、という可能性の世界から技を学び扱うのが自分の秘密、そう言っていたハルプだ・・・・・何かが起ころうとしてんのか?

 

「おう、聞いてやる。」

『・・・・・・・・・・今日、神ヘスティアが攫われる。』

「!」

『そして、ベル達は攫った奴らと戦うだろう。そして、ヘスティアはそれを止めようと神威を開放する。』

「・・・・・・・・・・たとえ、それが起こるとして、何が起きる?タケミカヅチ達が巻き込まれて死ぬってのか?」

『・・・!・・・・・ダンジョンは神を嫌っている、憎んでいる。だから殺しに来る。』

「はぁ?」

 

何を言ってやがる?ダンジョンが神を憎んでいる?・・・・・・・・・・いや、なるほどそういう考えもあるか、あのロキがダンジョンにコッソリ入らねぇのは疑問だったからな。人の身にまで力を落としているならバレねぇって事か。つかなんでそんな事知ってんだ。

 

「なんでわかる」

『・・・・・平行世界だ』

「まーたそれか。んで?平行世界ならどーなんだよ?」

 

信じていない振りをして聞いてみる。

 

『・・・・・・・・・・言っていいのかわかんないけど・・・・・黒いゴライアスが落ちてきて、ここが壊滅する。死者は0名』

「・・・・・はぁ?誰も死なねぇならなんで『ここが、その世界じゃないからだ。』!・・・・・それで?」

『死者が0名の世界でないならば死者が出るかもしれない。それが何人かもわからない、誰が死ぬのかも、そもそも黒いゴライアスが落ちてくるのかもわからない。・・・・・未知だよベート。冒険者が何よりも怖がるものだ。』

 

そうか、だから可能性の話だって言ったんだな。

 

『だから、守って欲しいんだ』

 

ハルプらしくない、弱々しい表情。だがわかる、なんでか知らねぇがわかった。男の矜持に似た何かだってのは。

 

「・・・・・アイツらを守ればいいんだな?」

 

コイツは家族を守ろうとしている。だが、そこに自分が入っていねぇ、妖夢すら入っていねぇ。自分達が死んでも家族は守る。そう思ってるみたいだが・・・・・。だっせぇなぁ。

 

『!!・・・協力してくれるのか・・・・・?』

「あぁ?うるせぇ。ダ・・・・・いや。何でもない。」

 

ダチだろ、そう言いかけたが止める。今コイツは下心を持って俺に対応している。それは俺が実力者で知り合いだからだ。まだ俺が声を大にして「友達」だと言っていないからだ。でも、ここで言えば『友達を危険に晒すなんて』とかほざくに決まってる。

 

妖夢が死んでもどうでもいい・・・・・なんて事はもう言えなくなっちまった。今更気がついたが、もうアイツらの事を仲間だと思っちまってる。

誰にも進めない道を1人で歩くアイツの姿勢を好ましいとすら思っちまってる。がむしゃらに力求めて踏ん張る姿が昔の何処ぞの誰かさんに重なりやがる。

 

「あ~あ、めんどくせぇ」

 

―――だが、おもしれぇ。

 

戦ってみたくなった。天才剣士が恐れるその何かを見てみたくなった。そこでこのチビ助が何をするのかを。その為なら、こいつの場所を護るくらい片手間にこなしてやらァ。

 

『ご、ごめんな?でも、ベートが居てくれた方が皆が助かる可能性が高くてな?だから・・・』

「わあってるよ、でしゃばんなガキ」

 

にやりと笑って頭を叩く。『ふぎゅ!』と変な声を上げた後頭を押え、俺を睨む。

少しだけ試したくなった事がある。コイツの芯はしっかりしてんのかを、確かめたくなった。だから揺さぶる、コイツの甘えがどれくらいなのかを。

 

 

『なんで叩くんだよ!俺は真剣なんだぞ!わかってんのか!』

「ははは!ざまぁねーなぁ!てめぇは布団に包まって明日が来るまで怯えてやがれ!」

『なにおぅ!!』

「だからよ」

『・・・だから?』

 

 

「―――――――俺が全部、終わらせてやろうか?」

 

ニヤニヤと笑うのを止めて、本気であるとわからせるために真顔で正面から見つめる。この手の提案は前に1度弾かれた。紅いオークとの戦いでぶっ倒れた妖夢に同じ事を投げかけた時に。

コイツがスキルであったとしても、記憶の共有をしてる以上は考え方も似てくるだろう。現に、今までコイツらが意見の本筋を違えた所なんて見た事はねぇ。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・例え・・・・・例えお前が本気で言っているとしても、その提案には頷けない。』

「・・・・・どうしてだ?」

『・・・・・・・・・・はは、かっこ悪いだろ?・・・・・家族守る為に強くなったんだ。なら、家族守るために使いたいだろうが。』

 

そう言ってニヤッと笑った。

 

「そうかよ。まぁ、そう言うと思ってたけどな」

『おう?以心伝心か?遂に友達になるか?』

「はっ!抜かせガキ」

『むむむ、き!きっと俺の方が年上だし!』

「うるせぇ2歳児」

『んだとゴルァア!』

 

なら、構わねぇ。俺はアイツの家族を守って、アイツがその何かと戦うんだろう。少しばかり気に入らねぇが、獲物を奪うのは無粋ってもんだしな。ま、殺さなきゃ守れねぇようなバケモンだったら俺も参加するが。

 

・・・・・安心しろよ、例えテメェが死んじまっても守り切ってやる。

 

襲いくるハルプのわざとらしい幼稚な突撃を軽く躱しながらテントに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ、はぁはぁ・・・・・うぐ、・・・・・おのれベート、一瞬でもカッコイイとか思った俺が馬鹿だった。だけどまぁとりあえず仲間に出来たかな。

 

んで、オッタルだけど・・・・・護衛対象である俺と、監視対象である俺とベルがいるから多分ここに残るはずだ。なのでスルー!

 

という訳で次に落とす城は・・・・・ふむ、・・・・・ふぃん?かな?

 

と思ったわけでやってきましたフィンのテント!デカイ(確信)まぁそんなに大きさは変わらんけど。

 

バサッと布を押しのけ中に入る。

 

「ん?誰だい?」

 

っと。流石は団長、もう起きてたか。本来なら桜花たちも起きてる時間だけど、強行軍のせいで疲れが溜まってるんだろう。まだ起きる気配はない。

 

『こんな早くにごめんなさい。ハルプだよ』

「・・・ええと、何か用かな?」

『あぁ、用がある。・・・・・とても大事な話なんだ。それこそ、ここ(十八階層)にいる全ての冒険者に関わることだ』

「・・・・・・・・・・で、それは一体?」

 

謝罪から入り、すぐさま本題へ。声を落とせばほかのテントには聞こえないだろう。

 

『もう既にベートには言ってあるんだけどな・・・・・。これは可能性の話なんだが――――』

 

 

 

 

 

 

「すまない。首を縦に振る事は出来ないよ。」

 

断られた、あっさりと。

 

「僕には団員たちを守る義務がある。なのにわざわざ事態が起こるのを見過ごせと?何が起きるかわからないというのに?」

 

反論の言葉が出てこない。原作の流れを壊したところで結界が悪い方に転ぶとは確定していないんだ、所詮可能性に過ぎない・・・・・けど、その可能性を無視出来ない。

 

「君を見ているといつも指が疼く。危険だ、離れろ。そう僕に伝えてくるよ。」

 

・・・・・きっと、フィンの予感は正しい。・・・・・もしかしたら何をしても、どんな選択肢を取っても危険かもしれない。イレギュラーが混ざり込んだ世界だ。原作と最早乖離が過ぎている。本来ならいない人が居すぎている。

 

「だから僕の個人的な感情では団員たちを君に貸す事は出来ない。」

『・・・・・そう、だよな。』

「だけど。」

『?』

「自らの意思で残る、そういう者達がいるなら、僕は止めないかな。・・・・・僕は後ろで指揮をとる、けど現場での判断は各々だ。ベートの様に残る人がいるなら僕は止めない。」

『フィン・・・・・ありがとう・・・・・!』

「けど、僕はもちろん参加出来ないよ。ファミリアの団員たちを地上に送り届けないと行けないからね。」

『うん!ありがとうございます!』

「ははは、僕にお礼を言われても・・・」

 

フィンに要請を取り付ける事は出来なかったけど、各々の意思を尊重してくれるらしい。なら早速アイズ達にも助けを求めるべきだろう。

 

『ありがとうフィン!!』

「うわっ・・・ははは驚かせないでくれよ、まいったな」

 

フィンに一瞬ではあるがハグをしてすぐさまテントを飛び出す。

 

さぁ次は・・・取り敢えずアイズに助けを求めるとしよう!一応弟子らしいし、きっと助けて・・・でも待てよ?師匠のくせに弟子に助けてって言うのか・・・・・うぅ、しかし恥など捨て置け!家族のためならなんじゃらほいってんだ。

 

と!言うわけで到着!

 

「アイズ?誰か来たみたいだよー?」

 

おっと、ティオナの声だ。ここは中にいきなり入らずに外から声をかけるべきか。

 

『ハルプだよおはよう。アイズに用があって来たんだけど・・・・・いや、他にも揃ってるならそのほうがいいか』

「う?妖夢ちゃん、じゃなくてハルプか!声おんなじだからわかんないな~、入っていいよー」

 

ティオナの声に従い中に入る。そこにはちょこんと座るアイズと寝っ転がって足をパタパタしているティオナ、少女座りするティオネがいた。なんて言う恐ろしい空間か、この狭い空間に合計16レベルも居るなんて。

 

「ししょー?どうかしたの・・・?」

 

アイズが首を傾げこちらをジッと見つめてくる。ティオナ達も同様だ。ティオナが少し驚いた表情をした。

 

「・・・・・なんか、ハルプ焦ってる?」

『!!・・・・・俺って焦ってる様に見える?』

「あー、うむ!多分ね!」

 

励ましてくれてるのかな?まぁ同情してくれた方がコチラとして嬉しい限りなんだけど・・・・・。利用するようで罪悪感がひしひしと湧いてくるけど仕方ない。

 

『実はな・・・・・―――』

 

~魂事情説明中~

 

「かくかくしかじか」

「「「まるまるうまうま」」」

 

~魂説明終了~

 

 

「いいよ。」

 

はっや。即答ですか。

 

『疑わないのか?』

「ししょーだから」

『あー、それは妖夢の事だろう?』

「ししょーは沢山いてもいいと、思います」

『お、おう。』

 

謎理論に押されるが負けるなハルプ少年(少女)

 

『本当にこれが起きるかなんてわからないんだ。所詮ほかの世界ではこうなった、だからこっちの世界はこうなるかもしれない、ってだけの推測に過ぎない。』

「信じる。」

『・・・・・・・・・・ありがとう』

 

無条件の信頼。・・・・・きっついなぁ。利用しようとしてるのにこれはキツイ。分かっててやってんなら俺の師匠になってくれよ。

 

「私は無理ね」「え!?」

「だってそうでしょう?遠征の荷物とかどれだけあると思ってるの?団長だけじゃ守りにくいでしょうが。・・・・・地上に帰ったらまた潜ってきてあげるわよ」

『ありがとうティオネ!』

「はいはい、わかったから抱きつかないの」

「私も行くよ!楽しそうだもん!」

『ありがとうティオナ!』

「あれ?私には抱きつかないの?」

『・・・・・仕方ないなぁ』「酷い!?」

 

よしよし、沢山仲間が増えてきたぞ・・・・・!これなら並大抵の敵が現れた所で撃退できるはずだ!!

 

さて、少し戦力を整理しておこうか。

 

まず仲間になるかは不明だけどLv7がオッタル1人。確定してるLv6がアイズ1人。確定してるLv5がべート、ティオネ、ティオナの3人。Lv4はリューとアスフィを巻き込むつもり。Lv3が取り敢えず4人Lv2以下は沢山ってところか。

 

過剰戦力・・・・・だといいんだけど・・・・・。なんでここまで不安になっているのだろうか?

わからない。そう、だから怖いんだ。「原作とは違う」それだけでここまで恐ろしくなる。

 

・・・・・・・・・・この中から死者が出ないとも限らない。すべては可能性の話。故に断言できない。何が起こるかなんてわからない。ダンジョンが押し潰れて全員死ぬかもしれないし、突然床が最下層までぶち抜けて落下死するかもしれない。可能性は0じゃない。

 

・・・・・不安を和らげなきゃな。俺がいざと言う時に動けないなら意味がない。

 

さて、どうするか、・・・・・鍛錬でもしようかいつも通りに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で俺が目を覚ますと、既にアリッサと命が起きていた。・・・・・そして、まだ俺はリーナと千草に引っ付かれたままだ。

 

「はぁ、わざわざ二度寝までしたのにまだくっ付いてますか。」

 

呆れた溜息と同時にニヤリと頬を緩める。が、やめた。

 

「起きないのなら・・・いや、やめておきましょう。」

 

今のうちに寝てもらった方がいい筈。全力全開で頑張れる状態にした方がいい。

 

「おはようございます妖夢殿。ふふ、随分と微笑ましい状態ですが」

「むむっ」

「おはよう妖夢・・・さん、か?・・・・・慣れないな」

「おはようございます。命にアリッサ。それと、私の事は妖夢、で構いませんよ。」

「すまない、これからはそうさせてもらう」

 

命達と爽やかな挨拶を交わし、2人に手伝ってもらいながらどうにか拘束から抜け出した俺は早速鍛錬に向かう為に入口の布を押したのだが・・・・・何かにぶつかった。

 

「どうかしたのですか妖夢殿」

「いえ、壁が・・・・・」

「・・・はっ(これはまさかまたオッタル殿が!)」

 

既知感に襲われながらも布をどかせばそこには―――

 

「よう、妖夢。」

 

ベートがいた。

 

「あ、ベートですか。良かった。「お?」いえ、何でもないですよ」

「違うんかい!・・・こ、コホン・・・オッタル殿は何処に?と言うか叫ぶのはオッタル殿だけなのですね・・・」

 

ふぅ、ベートで助かった。これでもしオッタルだったらまーた叫び声を上げるハメになって千草とリーナが起きてしまう。

 

「あっ、そうですそうです。ベート私達と鍛錬に行きませんか!」

「いや。まてよ昨日ハルプが―」

「早く行きましょう!」

「おっおい!押すんじゃねえよ。」

『鍛錬だ!鍛錬の時間だ!(・・・・・てかベート、みんなの前でそういうこというなよ。感づかれるだろうが。流れに持っていくには皆に知られるわけには行かないんだよ)』

「(そういうことかよ・・・・・悪ぃな)」

「いえいえ。・・・・・アリッサはどうしますか?」

 

ベートと帳尻を合わせ、着いて来るのかわからないアリッサに予定を聞く。このまま鍛錬につい来るのか、自由に動くのか、一応上司として聞いておかねば。

 

「む、・・・・・・・・・・いや私は少しばかり用があってな。」

 

とのことだ。まぁいいか。さて、鍛錬に赴くとしようじゃないか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡り・・・・・・・・・・夜。リヴィラにある酒場で人々は盛り上がっていた。

 

「あんのガキィ・・・・・どうやってここまできやがった!どんなインチキをすりゃここまでこれる!あの短時間でヨォ!」

 

怒りに任せ拳を叩きつけたテーブルは粉みじんに吹き飛んだ。店主からの怒声を無視して冒険者――モルドは憤る。ベル・クラネル。魂魄妖夢。どちらも自分よりも後に冒険者になり・・・・・自分を片や軽く超えていき、片や既に追いついている。解せない、それが彼らの感想だ。

 

「・・・・・・・・・・潰すか」

 

誰もが声を潜めた。聞こえた単語に興味を持ったからだ。

 

「やめとけよ、ここまで来れたってんならそれだけの実力はあったんだろ?」

「テメェ知らねぇのか?あの野郎は【剣姫】と一緒にいやがった!・・・・・糞が、一体どんな手を使いやがった。」

 

 

徐々に過激な方に会話が傾いていく。殺す。までは行かないが、それでも「冒険者ってものを教えてやる」程度には過激になっていった。そして

 

「その話し・・・・・聞かせてもらったよ。」

 

原作通り、神ヘルメスが現れ、事態は妄想から現実に変わった。現実味を帯びてしまった。透明化できるヘルム、神をさらい、人質にする計画。

 

不備はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

「そうか・・・・・・・・・・貴様ら・・・・・外道の類いだな?」

 

彼らにとって馴染みある、鋼鉄の騎士がそこに立ちはだかった。





さてさて、話しを進めていこう!過去編に話を割いたので加速の術でござる。

さて、何かもうメンバーがえげつなくなってますなぁ。こんだけ強いのがいれば黒いゴライアスとかまじ余裕のよっちゃんだぜ。

次話、アリッサとモルドとベルが主役。え?妖夢達?あぁ、少しだけ出てくるよ(めそらし)

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