オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
と思っていたのか!!!
今回はリーナが活躍してますねぇ。あとはアイズが遂にあの技を・・・・・
煌々と燃ゆる焔と濛々と天井へと伸びる煙、そして余りの威力に大きく抉れた大地が今起きた超常現象の非常識さを物語っていた。
爆風によりなぎ倒された木々、爆発により吹き飛んだ岩が十八階層を蹂躙する。人よりも動物的な本能の強い獣型のモンスターは我先にと爆心地から遠ざかった。
未だその威光を弱めない青い猛火が茫然としたまま動けない冒険者達を照らし出す。そこに有るのは恐怖ではなく疑問だ。何をどうしたらこうなるのか、何がどうなったのか。レベルの差により見えたものも違ったであろう冒険者達の思いは見事に一つだった。
((((((((もうコイツだけで良いんじゃないかな))))))))
弓を放った姿勢から変わらず佇んでいた妖夢が、未だに吹きすさぶ爆風の余波にスカートを靡かせながら振り向いた。
「・・・・・少し威力が出ませんでしたね。やっぱりイメージ力がバトラーのサーヴァントには劣るようです。劣化版の劣化版ですねこれでは・・・・・」
そんな事を宣う妖夢であるがこの場にいた一同は最早呆れるしかない。あれ以上の威力を求めて何がしたいというのか。タケミカヅチでさえ頭を押さえて苦笑いしている。
「んだよ・・・・・俺いらねぇじゃん・・・・・つまんねーことしやがって」
べートが不満そうに目の前の石をける。ティオナは未だにポカーンと炎を見つめており、アイズはポケーと眺めている。ダリルが苦々しく笑い、その背中におぶられていたリーナは爆発で目が覚めたようだ。千草とクルメ、リリルカは驚いてひっくり返り、ベルとヘスティアはアングリと口を大きく開け目を見開いている。
蹴られた石が高台になっているその場から落ちていき・・・・・・・・・・・・・・・それを目でおっていたべートは気が付き、目を見開いた。
「やろう・・・・・あれで生きてやがんのか?」
・・・・・・・・・・未だ衰えぬ猛火を突き破り黒く太い巨腕がコチラに伸びていた。その表皮は高温に耐えられず絶えず溶け続け、しかし赤黒い燐光を発しながら再生を繰り返す。溶け、治りを繰り返しながらその黒い巨人は立ち上がって見せた。
腹に空いたはずの風穴は既に塞がっており、爆発で弾けとんだ筈の四肢は健在だ。その目は爛々と赤く輝き、今も尚苦しみを与え続ける原因を作り出した銀髪の少女へと憎しみと害意を持って向けられていた。
「■■■■■■■■■■■■■■■■―ッ!!!」
猛火を背に赤黒い燐光を放ちながら黒いゴライアスは絶叫する。その姿は威圧感に溢れ、並の精神を持つならばその威風を目の当たりにしただけでもたちどころに気絶してしまうだろう。
「馬鹿な・・・・・魔石は打ち抜いた筈だったのに・・・・・」
妖夢が顔を顰めながら目の前で起きあがった黒いゴライアスを睨む。するとそれを挑発とでも取ったのか黒いゴライアスは黒い残像を残し加速、その剛腕を戦艦の主砲の如く勢いで撃ち放った。
「【平の原にて吹き溜まり、空に架かりて天に座せ。
汝は彼方、我は此方。
その名は霧。我が御名也。汝等、甘い虚に身を任せ、其を現と心得よ。我が名はサギリ!
それは正にまぐれに過ぎない。リーナが何となしに防御結界を張っておこうと詠唱をしていた矢先にたまたま黒いゴライアスの攻撃が飛んできたのだ。張られた結界の効果は「物理ダメージを大幅に軽減」するという物。結界はリーナの裾の中から取り出された複数のお札が場を囲むように展開され、結界を成していた。
大きく威力を削られたその豪腕は尚も人を殺す事など容易だろう。しかし、この場に居るものでこれを対処できない者など1人として・・・・・ヘスティアを除いて居ない。
「神様っ!!」「うわあ!?」「ひぃ!!」
ベル、ヘスティア、クルメが悲鳴やら何やらを上げつつ拳から逃れようと横に回避する中、ひときわ大きな声で雄叫びを上げるものがいた。
「いっくよぉおおおおおおおおおおおおぉ!!」
黒いゴライアスの豪腕と余りに頼りない華奢なティオナの腕がぶつかり合い・・・・・黒いゴライアスの腕がはじけ飛ぶ。
「いよっしゃああああ!」
勝利の雄叫び、しかし、その破壊された腕が数秒と待たぬうちに完治する。
「あ、あれぇ?」
そして横薙ぎの1振り。「あぶ!?」と声を上げながら自らに急速に迫る一撃に身を固くするも、大きな金属音とその衝撃がその一撃を防いだ事を物語る。
「・・・・・ぐっ・・・・・リーナ!結界は正常に稼働しているようだ!」「おー、それは良かった。僕も援護するから頑張ってね!」
いつの間にかアリッサが大盾を構えティオナの盾となっていた。振られた豪腕の威力を物語るように、アリッサの踵が地に埋まっている。
「おー!ありがとう!えと、名前なんだっけ?」
「ぐっ・・・!いいから早くそこから退いてくれ!」
「え?あぁ!ごめんごめん!!」
ティオナがその場をどくとアリッサが飛び跳ね後方に下がる、いつの間にか振り上げられていたもう片方の腕が数秒前までアリッサ達のいた所に振り下ろされる。
「チィ!おいべート・ローガ!」「あぁ?!んだてめぇ!」「ダリルだ!ここからあのデカブツを遠ざけねぇと不味い!」「わあってんだよ糞が!」「なんで喧嘩してるのー?」「「黙れ白エルフ!!」」「リーナさんだし!リーナお姉さんでも可!」
凄まじい呼吸音の後、3人に向けて咆吼が放たれる。三方向に飛び跳ね回避した3人はそれぞれ行動を開始した。
「来い赤野郎!」「ちっ!俺の提案だろうが!」
ダリルとべートが黒いゴライアスを引き離すべく黒いゴライアスのすぐ近くをわざと通過していく。黒いゴライアスもそれに気がついたのか拳を振り下ろす。が、その時結界がダリルを中心に張られた。リーナの投げたお札がダリルの元へと向かったのだ、結界の効果は「敵対者の行動を鈍く」する物だ。べートは持ち前の敏捷を持って回避できるとしても、ダリルはレベル3、とてもでは無いが回避などできない。
これまでの数10秒の攻防で黒いゴライアスの推定レベルは4〜5程度、最悪の場合6レベルであると予測される。リーナはその事も踏まえてダリルの方に結界を張ったようだ。
「ははっ!こっちだ黒ゴキブリ野郎っ!」
「■■■■■■■■■■―!!!」
「・・・・・はは、地雷踏んだか?」
黒いゴライアスが「ゴキブリだとこらぁぁぁ!」と言わんばかり咆吼を連射する。「ぬぅうううあ!!」とダリルがボールの様に地面をはねながら吹き飛ばされていく。残念な事にリーナの張った結界は敵対者の動きを遅くする物で敵の魔法攻撃は遅く出来ない。
「ちっ!あの野郎役立たねぇじゃねえか!」
黒いゴライアスの連続攻撃をどうにか回避し続けるべート。流石はレベル5最強も名高い戦士と言ったところか。そして。
「――!!??」
黒いゴライアスが横転する。足元を見れば金と銀の影。妖夢とアイズだ。それぞれがそれぞれの武器で片脚ずつ斬り飛ばした。驚くべきはその断面、まるで豆腐でも斬ったかのように美しく斬られている。
「魔法・・・・・うてぇ!!!」
リーナの勇ましい掛け声で魔法を使える冒険者達が一切に魔法を放つ。原作と違い、魔法を放てる冒険者の数は余りに少ないが。リーナ自身も魔法を使ったようで小さな太陽とでも言うべき炎の玉が放たれる。
火、氷、雷、幾つもの魔法が立ち上がろうとする黒いゴライアスに襲いかかった。しかしまるで鬱陶しいと言わんばかりにそれを跳ね除け既に再生を終えた足で立ち上がる。
「うっそ、僕の魔法も効かないか・・・・・ランダム入れるしかない?」
リーナ・ディーン、オラリオ最高の【魔道】アビリティランクを誇る超一流の魔法詠唱者。並のモンスターならば軽く屠るその魔法を持ってしても黒いゴライアスには痛みを一時的に与えるに留まるようだ。しかし、彼女とて全力では無い、全力の魔法ならばダメージを見込めるとリーナは確かに確信した。
「でも・・・・・」
少しばかり分が悪い。結界を神々と自分を含めた後衛職、そしてサポーターを守るために1つ。ダリルを援護するために1つ発動している。高い【魔道】アビリティがもたらす「魔法の安定力増加」による恩恵が結界の二つ同時維持と言う見方によれば明らかな異常行為を発生させ、その上で更に他の魔法を放って見せている。
先天的な魔法適性を持つエルフである事を含めても、かのリヴェリアに劣らない確かな猛者であると見るものが見ればわかるだろう・・・・・もっとも本人がこうである以上気が付く人は少なそうだが。
「ん〜。まぁ火力なら妖夢ちゃん居るし僕は守りに徹しようかなー。」
今は温存する事を選んだようでリーナは更に妖夢へとダリルと同じ結界を展開する。そんな時だ、再び大きな揺れがあったと思えば上層に繋がる坂道が落石で塞がれてしまった。命と千草が驚きの声を上げたことによりその場の全員がそれに気がつけた。
「どうしよう!?あ、どうしましょう!?」
千草が助けを求めるようにタケミカヅチを見る。撤退を考えていたタケミカヅチ達神々は唖然としながらも行動を開始した。
「千草!奴の目を狙ってくれ!桜花と命は周辺の警戒!猿師!倒れている冒険者達を頼む!」
「「「はいっ!」」」「わかったでごザルよ」
そう言ってタケミカヅチは
前線に飛び出した。
「いやちょっと待てタケミカヅチぃいいいいいい!?」
「タケェ!?」
ヘルメスとヘスティアの叫びを背に受けながらタケミカヅチは黒いゴライアスに向かって走っていく。
自らが倒すべく最大の
「神は人の身にまでその身体能力を落としている・・・・・」
タケミカヅチが迫る咆吼の砲弾を睨みつけながらそう言葉にし・・・・・
「つまり!当たらなければどうということはない!!」
「いやその理屈は可笑しい!!」
当然の如く回避しながら黒いゴライアスへと駆けていく、ヘルメスの常識的な叫びを無視して。ちなみにタケミカヅチはどうやって回避しているのか・・・・・それは所謂「見てから回避余裕でした」というやつだ。すなわち、魔力が口内へと溜まり、咆吼として打ち出されるそのわずかな時を見定め着弾点から体を逸らしただけに過ぎない。
元気に飛び出していったタケミカヅチは置いておくとしてサポーター達にもやる事はあった。
「みんな!ポーションをありったけ集めて来るんだ!リヴィラから取ってきてしまうんだ!」
「そ、それは窃盗では!?」
「今はそんな事考えている場合ではありません!妖夢様のあの攻撃を耐える化物ですよ!?」
「た、確かに・・・・・!!」
ならば仕方ないとリヴィラの街に数人が走る。しかし、その時だ。
「■■■■■■■■■■■■■■■ーーーー!!!」
目に数本の矢が突き刺った黒いゴライアスが天高く咆吼を上げた。魔力の込められたソレは音速で飛翔し―――――天井に着弾。着弾点から罅が伸び・・・・・割れ目からモンスターが降り注ぐ。それは正に地獄絵図だ、十八階層を埋め尽くさんとするかのようにボタボタとモンスターが落下してくる。
「くっ・・・・・!俺達で前線を構築するしか無い!クルメ!アリッサ!それとマシューは怪我人を連れて後方に下がってくれ!お前達も頼む!」
「了解だよ団長っ!」「はっ!お任せを。」「た、退却ぅ!!」
桜花を筆頭に十数人の冒険者が神々の元に雪崩込もうとするモンスターを押し止める。数の差は甚大で身体能力の差はあまり無い、絶望的な状況のはずだが、モンスターの動きには特徴があった。二つに別れるのだ、流れが。
それはアリッサと桜花の持つスキル又はアビリティ。モンスターからのヘイトを集めると言うある種自殺スキルだが、モンスターの動きがわかれば動きやすくなる。冒険者は各々の武器を持って迎撃に全力を注いだ。
クソッ!どこにある!?
「■■■ーーーー!!!」
天高く掲げられた拳がブレて一瞬にして叩き付けられる。スキルの【集中】の2倍化とリーナの結界が発動してなければ避けることも出来ないだろう。
そんな中俺は未だにわからない魔石の位置に酷く狼狽していた。
斬っても斬っても魔石の場所がわからない。いや、違う。わかるんだ、魔石の場所は。でもそこを狙って斬った時、その場に魔石が無い。手応えは有るのに無くなってほかの場所に反応が出る。
・・・・・・・・・・動いている?魔石が?
「真・刹那五月雨切り!!」
連続で切り裂き、魔石の位置を
沢山の魔石を持っている。という説は無しだ。同時に斬っても一つしかわからなかったしな。やっぱり動いてるのだろうか。魔石が動くとか・・・・・でもゴライアス系統の魔石はとても大きかった気がする、どうやって動いてる?まさか魔石を斬られても欠片が寄り集まって再び魔石を形成している?
「はあぁ!!」
不用意に近付いてきたモンスターを斬り捨てながら考える。どうすればコイツを倒せる?そんな時だ、あの声が聴こえてきたのは。
――「やぁ。難儀しているね?うんうん、それもまたアイカツだね。」
殺したくなってきたので近くのモンスターに八つ当たりで首を刎ねる。
――「少しヒントあげようか?それともじゃが丸君揚げるかい?」
斬る、斬る斬る斬る。モンスターをぶっ殺す。何故ここまでイラつくのだろうか、傍観者気取りのセリフがイラつくのかな。
――「ほんとにかい?なら僕も君たち目線で話すか・・・・・くっ!なんて恐ろしい魔物なんだ!?ひいぃ!?もうダメだ・・・おしまいだぁ・・・」
もっとウザいんでやめて下さい殺したくなるので。
――「ははっ!ワロス。この僕を殺すなんて一年早いね!」
早いな!?びっくりするぐらい早いな!?
っと止まるわけには行かない、目の前に立ちふさがるモンスター達を斬りながら進む。黒いゴライアスの咆吼は近くのモンスターを投げつけて威力を軽減したところを反射下界斬で反射しているが、焼け石に水だなこりゃ。
てか早くヒント教えろよ!!
――「ふむ・・・・・まず、雑魚モンスターは無限湧きだ!!これは面白いね!沢山斬れるな!良かったな!」
良かねーわ!全然良くねーよ!俺の求めてるヒントと違うんだよ!どうやったらあいつ殺せんの!?
――「えーー、魔法使えばーー?ハナホジ。あー。そうそうモンスター達はある程度の数に減らしとかないとレベルの低い彼らは全滅しちゃうぞ☆」
なんだと!?まじかよ!!ハルプをまわすしかないか?
――「ガタッ!ハルプを回す!?・・・・・あ、もうこんな時間か!急がないとカプ麺が!」
テメェ!!おいこらぁ!!くっそ逃げやがった!?何やってんの!なんで神様カプ麺なんて食べてんの!?
ああーー!もうどうでもいい!おのれシリアスブレイカー!!・・・・・とりあえずモンスターをどうにかしなくちゃな・・・・・!!この黒ゴライアスを倒すには俺じゃ火力が足りない、もしくはこれはイベント戦闘的な物でベルクラネルしか倒せないのかも知れない。
ならベル君が英雄ビーム打つまでの時間を稼ぎながらモンスターを減らし続けるのが俺の仕事ってわけか・・・・・!
つっても、そういった戦闘じゃない可能性もあるんだよな?普通に絶対にしにましぇーん的なゴライアスの可能性だ。不死身の階層主とか何それ怖い。
「二手に分かれます!」
『おうさ、俺は右やるね!』
「あ、じゃあ私は左ですね!」
「『頑張るぞー!おー!』」
とりあえずやる事はわかった。黒いゴライアスを足止めしつつベルのビームを当てればいい。そのための舞台装置的な役割をこなす。それだけだ。
「はあぁ!」
「アイズ!!」
黒いゴライアス・・・・・変異体?特異体?強化種?ししょーの話だと神様の力に反応して呼び出された「悪意及び害意」の塊、もしくは「殺意と怨み」の塊・・・・・だったかな。
ティオナの声に頷いて私は後方に跳ねる。目の前に大きな拳が突き刺さり地面を砕いた。
ししょーはすごい。私達でも速い、と思う攻撃を華麗に躱してモンスターを斬り捨てて戦場を駆け回っている。お陰で私達は階層主に集中出来る・・・・・けど・・・・・
決定力が欠けている。
私達には階層主を一撃で倒せる手段がない。ししょーもそれを理解してるんだと思う。さっきまで分かっているかのように特定の場所を狙っていた。「斬った相手の弱点がわかる」そうししょーは前に言っていた。
つまり、判明した弱点をすべて斬ったのに、あの黒いゴライアスは死ななかった?
諦めた?
ううん、違う。何かわかったんだと思う。
「ッ!!」
剣を振るい、足を斬り飛ばす。フラ付き、倒れる前に足が再生し体勢を直しながら踏みつけてくる。回避は出来る。けど、埒が明かない。ししょーは何を見つけたの?
「オラよぉ!」
ベートが黒いゴライアスの咆吼を吸収して威力の上がったブーツで蹴りつける。黒いゴライアスの膝が真逆に曲がってその後吹き飛んだ。
「いっくよぉおおおっ!」
ティオナのパンチがもう片方の足を吹き飛ばした。大きな音を立てて倒れる黒いゴライアス、チャンス。頭を吹き飛ばしたら倒せる?ししょーは頭を狙ってなかった、でも、1度はやってみるべき。
「・・・。」
風で加速する全力の一撃。それが私の本気の技・・・・・だった。でも、今は違う。ししょーとの修行の成果を見せる時が来た。
あの辛い修行を思い出す―――剣を振るう、けれどじゃが丸は食べない。剣を振るうけどじゃが丸は食べない。
辛かった。でも、楽しかった。最後にじゃが丸食べた。
まだ完璧じゃない、ししょーには遥かに劣る。けれど、見失いかけた「上」が見えたっ。これが、私の学んだ、新しい、一撃!
「
速度が足りない、なら、加速するだけ。威力が足りない、なら、速度を乗せるだけ。再現できていない?なら、全力を注ぐだけ。
高速で突きを放ち続ける。時間的には一瞬で、私は笑うピエロを象ったその突きを放ち切る。
凄い大きな音と共にゴライアスが弾け飛ぶ。頭だけ吹き飛ばすつもりだったのに、殆ど全身が消えちゃった。・・・・・でも、別に、倒してしまってもいいと思うし・・・・・、!!?
「倒せ・・・・・ない?」
「うっそ!?あれで倒れないの!?」
「おいおい・・・・・マジかよ?」
起き上がった。赤く全身を輝かせながら。まるでそれが当然と言った風に。それよりも赤く光る目が、私を睨みつけた。
・・・・・なるほど。ししょーがどうして周りのモンスターを優先したかわかった。
「あれは・・・・・死なない・・・!!」
「ちっ!めんどくせぇ・・・・・アイズ!ティオナ!この雑魚の相手は任せられるか?」
ベートが悪態をつきながら聞いてくる、それにティオナと頷くとベートは踵を返してモンスターを倒し始めた。
・・・・・そういえばモンスターもずっと降ってくる。
昔ロキが言っていた「無限湧き」?このままだと前線が危ないからベートはみんなを助けに行ったんだね。なら私は全力を尽くしてこの黒いゴライアスを止めなきゃ。
ズキズキと痛む右腕を耐久のステイタスで押さえ込み、黒巨人を睨んだ。ニヤリと笑った、そんな気がする。
振るわれた拳を剣で打ち払う。時間は稼ぐ、ししょーが何とかしてくれるかも知れないから。
リン――リン――リン。
握り込んだ拳が光を集めている、鈴が鳴るような音が鳴り響く。此処はまだリーナさんの結界の中。僕は、僕はまだ此処から出られずにいた。
(何やってんだよ、僕は・・・・・。皆、戦ってるのに)
けれど、理解もしていた。僕の持っている技ではこの攻撃でしか、あの黒いゴライアスにダメージは与えられない。いや、ダメージを与えたとして倒せるかわからない、アイズさんの攻撃でも妖夢さんの攻撃でも死なない敵を僕が倒せる訳がない。
(でも、それでも。)
リン―リン―リン。
鈴の音のペースが早まった。いつもとは違う反応に少し驚きつつも、こんな事もあるんだなと納得して、少しでも早くチャージしようと念じる。
「グルルルルゥアアゥ!!」
うなり声と共に結界の中にバグベアーが入ってくる。大丈夫だ、見えている。駆け出し、斬り裂く。ヘスティアナイフと牛若丸の二刀流で喉を突き刺し斬りおろす。
「【燃え尽きろ、外法の技】ウィル・オ・ウィスプ!!」
「■■■■■■!?」
咆吼を撃とうとした黒いゴライアスがヴェルフの魔法で阻害され咆吼の為の魔力が口内で爆発した。
「おー!すごいね君の魔法!僕関心しちゃうよ〜。僕の天敵かっ!?」
リーナさんがそれを見て興奮気味に話す。彼女の後ろでは傷付いた冒険者達が猿師さんによって治療されていた。ああやって調子のいい事を言っているのは皆を励まそうとしているんだろう。
(はやく、たまれ!お願いだから僕にも戦わせて!)
リンリンリン。
さらに早くなる音色。僕の腕は隠しきれない光を放っていた。リーナさんが袖で口元を隠しながら僕腕を見て目を細めた。
「・・・・・君のそれは凄いね。もう僕の本気と同じだけの威力があるよ。」
「―――ありがとうございます。」
その言葉で僕の心は決まった。お礼を言って、崖の前に立つ。腕を真っ直ぐ伸ばして狙いを定める。頭を吹き飛ばしても治る、ならはずさないように体を狙うしかない。
「よぉし、リーナさんもこの波に乗っておこうっ。【平の原にて吹き溜まり、空に架かりて天に座せ。
汝は彼方、我は此方。
我が閉ざす。我が隠す。我が別つ。我が偽る。
その名は霧。我が御名也。
汝等、甘い虚に身を任せ、其を現と心得よ。
我が名はサギリ!
鈴の音が止まる。僕の体が薄い霧に包まれる。
「こ、これは?」
「それは君の願いを叶えるもの、君の想いを力にする魔法だよ。願い給え、其方の虚を現と成すこの魔法に。願え、『倒したい』と。」
突然真剣な表情になったリーナさんに驚き、僕は目を見開き、強く頷く。これが僕に放てる最高の一撃。
(・・・・・僕は・・・・・僕はアイツを倒したい!)
偽らざる僕の今の願い。霧が風に巻かれ望遠鏡の様にゴライアスを映す。円を描くように、狙いを定めろと言っているかのように。光がより強くなる。
(倒せ!倒せ!倒せ!)
望遠鏡の先、第一戦級冒険者と互角もしくはそれ以上の力で暴れ回る巨人を睨みつける。放て放てと急かす心を押さえつけ、しっかりと狙いを定める。その時―――
黒いゴライアスの赤い目と目が合ったような気がした。
「ッ!!避けろぉおおおお!!!【ファイアボルト】!!!」
一瞬の硬直の後、放たれる極太の光。黒いゴライアスが飲み込まれ・・・・・・・・・・視界が白く染まる。
次回:チート(誰がとは言わない)が・・・・・・・・活躍する。
今回のピックアップと言う事で
リーナのドヤ顔をドゾ。
【挿絵表示】
ちなみにかかった時間は15分。
シフシフ「トレース・オン。」
―追記―
描写はされていませんがリューやアスフィーも勿論戦ってくれています。黒いゴライアスとではなくモンスターとですが。