オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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さて、お待たせしましたです。53話です。




53話「【汝の命奪い賜いて、かの桜は枯れ果てましょう。】」

戦闘は激化していく、逃れえぬ戦火から逃れようと冒険者達は行動していた。目指すは丘の上、怪我人たちを回収し、そこから更にリヴィラを目指すのだ。

 

丘の上から白い長髪のエルフ、リーナが手を振っている。すると何処からか美しい雨が降り注ぎ、見る見るうちに冒険者達の怪我を治していく。

 

「もうすぐだ!!命!ダリル!モンスターは来ているか!!」

「はい!ですがまだ遠い!!」

「わかった!よしお前達!リヴィラはもうすぐだぞ!!」

「「「おう!!」」」

 

リヴィラまでだいたい1キロも無いだろう、丘に寄って怪我人を助ける事も踏まえれば時間は50分程か。怪我人が多い以上部隊の戦闘はガタ落ちする。桜花の額を疲れとは別の汗が流れる。

 

しかし、丘の上、リーナがドヤ顔で出迎えている事に希望を得て進む。何かを企むその顔に全てをかけるのは余りに危険だが、どの道危険な事に変わりはない。

 

「リーナぁ!なにか秘策はあるのかぁ?!」

 

大声でリーナにその心を聞く桜花。するとリーナは裾で口元を隠しながらニヤニヤしている。その堂々たる様と不敵さに、冒険者達は勇気付けられる。「リーナの元に行けば助かる」と希望に縋った。

 

そのまま歩いて数10秒もしない内に殿を務めるダリルと命が警告を飛ばしてくる。

 

「モンスター、来ますっ!!」「団長!来やがるぞ!!」

 

桜花がけが人を背負いながら後ろを見る、そこには木々の間を駆け抜ける無数の影。正に津波と言って差し支えないその濁流に冒険者達は浮き足立つ。

 

「全員!迎撃体制!!少しずつリーナ達の元へ向かうぞ!」

「「「了解です!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

めいいっぱいのドヤ顔を披露し、胸を張っていたリーナは桜花達がモンスターに襲われ始めリーナを見ていられなくなった辺りでへたり込む。

 

「はぁ――はぁ――はぁ、っ。」

 

リーナの限界は近かった。例え薬で魔力を得ようとも、その薬の副作用はリーナにとってあまりに重い。普段から常人ならばすぐに寝てしまいそうな程の眠気に襲われているのだ、そこに薬による眠気が加われば目を開けることすら辛いだろう。

 

「もう少しの辛抱でごザルよ」

「リーナちゃん、これご飯だよ。」

 

彼女の左手の小指は焼け爛れていた。自ら燃やしたのだ。眠気に逆らうために痛みを自らに与え、アドレナリンを分泌させ意識を覚醒させる。荒業だが効果は確かだ。

 

「うん、美味し、いよ。僕の好みを知ってるね?」

 

少し青ざめた顔でしっかりと肉を噛み締める。リーナは食べる事で魔力を回復できる。故に食べなくてはならない。例え空腹で無くとも、唯一彼女だけに許された回復方法なのだから、有効活用しないはずが無い。精神的に疲れていると食欲が無くなるように、精神力を魔力に変える事で魔法を放つこの世界において、今の彼女は食欲なんてものは全くないだろう。

 

吐き出しそうになりながらも懸命に胃袋に押し込んでいく。

 

「う、うぅ・・・・・ごめんなさい、私がもっと美味しく作れば・・・・・」

「今の彼女には例え極上の甘味でも地獄でござろう・・・・・クルメ殿のせいではござらんよ」

「・・・・・はい。」

 

料理を食べ、丸薬を噛み砕き、マジックポーションをあおる。それを見守り、2人は己の無力さを味わうことしか出来ない。すると、クルメは何かを思いついたのか猿師の前に移動し、両手を胸の前で組みお願いのポーズを撮った。

 

「私も前線に行きます!なので力を上げるお薬を下さい!」

「し、しかし・・・・・」

「生存能力だけなら誰にも負けません!」

「ぇ、えぇ・・・・・拙者に言われても困るでごザルよ。戦場に赴くは自分の好きにすると良いでごザルよ。ほら、力の丸薬でごザル」

「はいっ!行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁぁああああああ!!!」

「くっそ!!カルロが殺られた!」

「クソモンスターがぁぁあ!よくも俺の友をぉ!!」

「ぐっぅ!?だ!だれか!?たすけてくれ!肩を!肩をやられた!」

「畜生!何なんやアイツらはよぉ!!ぬうあ!?」

「き、キバオウ!!あがっ!」

「でぃ!?ディアベルはぁぁあん!!!」

 

前線は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。ゆっくりと後退しつつ襲い来るモンスター達と応戦する冒険者達だったが、度重なる戦闘は容赦なく冒険者達の体力と集中力を奪っていった。

彼らは弱い訳では無い、寧ろ、タケミカヅチ達に僅か十数日とは言え鍛えられたのだ、同レベルの冒険者達と比べれば明らかに強いだろう。なかでも「幹部」と「リーダー」は頭1つ、いや、2つも飛び出る逸材だろう。

 

現に、幹部の3人とリーダーの2人は獅子奮迅の働きを見せている。

 

雷が戦場を行き交い、唯の剣技で数体のモンスターが肉片となり、弓が中でも危険なモンスターだけを正確に射抜き、スキルで味方を強化しつつ斧を振るい、紅い輝きを放ちながら戦場をかける。

 

しかし、それはいつまで持つかわからない。

 

「□□□□□□―!!」

 

遠くに見える白いゴライアスが頭を押さえて屈んだと思えば、力を解き放つように雄叫びを上げた。すると体の至るところから生えていた破城槌の様な水晶が飛び散り、意志を持っているかの如く冒険者達に飛来する。

 

「【弓神ノ一矢】!!」「【国之狭霧神】!!」

 

しかし、放たれた魔法が水晶を打ち砕き、展開された結界がその他を防ぐ。1度目の水晶攻撃は不意を突かれた為に防ぐ事が出来ず、数人の冒険者が死んだ。が、それを無駄にせずに予備動作を確認していたリーナと千草は水晶攻撃に素早く対処を行った。

 

よって死者は0。あくまでも今の水晶による死者は、と言う数値だが。現在の全体での死者は約10人と言ったところか、約、が付くのはモンスターの波に連れ込まれた為に死んでいるところを確認出来なかったからだ。

 

「あと少しだ!!ふんばれお前達!」

 

ベート達がモンスターを蹴散らしているお掛けでモンスターの数は相当少なくなっている。だが、一般的に考えるならとんでもない数が押し寄せていた。

士気がガラガラと音を立てて崩れていく。疲労が限界を越えた冒険者が倒れていく。

 

「くっそ!!・・・・・ここまでなのか!?」

 

誰かが叫ぶ。自分の死を受け入れる事など出来ないのだろう、必死に群がるモンスターに剣を振るっていた。

 

そんな時だ。

 

夥しい数の矢が紅い輝きを放ちながら戦場に降り注いだのは。

重い音と共にモンスターが地面に貼り付けにされ、息絶える。だがその程度でモンスターの大群は止まらない。息絶えた同胞を踏みしめ獲物目指して前進する。だが、モンスターに突き刺さっていた矢が妖しく輝けばそれは中規模の爆発を引き起こした。

 

中規模と言えど数が数だ。戦場を一瞬にして変えて見せた。そしてモンスターが一気にその数を減らしたこの瞬間を見逃す彼らでは無かった。高レベルの冒険者達が一気にゴライアス達の元へと突貫する。

 

「今だ!総員全力撤退!!」

 

タケミカヅチの怒声で冒険者達がモンスターに背を向けて走った。なりふり構わぬ全力疾走だ。桜花がタケミカヅチを抱き上げ、クルメ、命、ダリル、アリッサの4人が殿を務める。

 

「ハァァア!!ガァァア!!ウゥゥウアア!!」

 

クルメが紅い光を纏って獣の様にモンスターに襲い掛かり、正確に肉質の柔らかい場所を狙い、無駄なく殺していく。命がボロボロになりながらも刀でモンスターの団体を吹き飛ばす。アリッサがモンスターの攻撃を受け止め、ダリルが最大火力で焼き切る。

 

そうしてやっとタケミカヅチ達一行は丘の上に到着した。

 

「よく、来たねみんな。みんな大好きリーナさんだよっ。さぁさぁ!早く!」

 

ひいひいはぁはぁと息を上げながら転がり込む。そしてリーナが魔法陣を展開し、詠唱をする。ほんの少しの後、結界が作動した。冒険者が「たすかったぁ」と安堵のため息をついて座り込む。

 

「おーい、この結界はモンスター防ぐやつじゃないよー?やられちゃうから早く防衛してねー!」

「「「「はぃ!?」」」」

 

予想外の裏切りに安心しきっていた冒険者達は慌てふためく。

大急ぎで冒険者達は防御陣形をしき、モンスターに備える。殿を務めていた4人が戻ってきてリーナは再び結界を作動させた。効果は「外からの物理現象の無効化」だ、勿論限界は存在するが、この階層のモンスター程度なら無効化は容易だろう、勿論階層主を除いて。とどのつまりモンスターを防ぐ結界なのだが・・・・・。

 

防御陣形を敷く冒険者達の後方、覚悟を決めたような真剣な顔をしたリーナは1人頷く。その手に微かな震えを宿らせて、再び魔法を紡ぐ。

 

「【平の原にて吹き溜まり、空に架かりて天に座せ。】」

 

魔法陣が足元に展開される。桜花がその様子に気が付き振り返り「リーナ?」と怪訝な表情でリーナを見る。リーナはそれを無視して詠唱を続けた。

 

「【汝は彼方、我は此方。虚(ゆめ)と現(うつつ)を別け隔てよう。】」

 

リーナの真剣な表情に何かを感じ取ったのか桜花はニッと笑い前を向く。眼前に広がるのは丘を駆け上がってくるモンスターの群れだ。そして遠くに見えるのは巨人に立ち向かう勇者達。

 

「【我が閉ざす。我が隠す。我が別つ。我が偽る。

その名は霧。我が御名也。】」

 

魔法陣が一際大きく輝く。

 

「【汝等、甘い虚に身を任せ、其を現と心得よ。

我が名はサギリ!】――――魔法陣起動停止。」

 

「―――二重詠唱始動。【平の原にて吹き溜まり、空に架かりて天に座せ。

汝は彼方、我は此方。虚(ゆめ)と現(うつつ)を別け隔てよう。】」

 

リーナの足元に展開されていた魔法陣が浮かび上がりリーナの背後にてその動きを止める。そして、再び足元に魔法陣が展開されていた。

 

「【我が閉ざす。我が隠す。我が別つ。我が偽る。

その名は霧。我が御名也。】――方位固定、座標登録」

 

再び始まった詠唱に驚く間もなく、モンスターの群れが結界に衝突した。大きな音と共に結界にヒビが入る。

 

しかし、そのヒビは即座に修復され――と言うのを繰り返す。ヒビに驚き武器を構えていた冒険者達はホッと胸を撫で下ろした、体力が限界を迎えていた者は地面に崩れ落ちるようにして寝転がる。リーナの嘘に気が付いた者達はリーナの方に呆れながらも嬉しそうな表情を向け・・・・・固まる。リーナの口元や鼻から血が垂れていたのだ。

 

「・・・・・っ魔法陣解凍!魔法陣同調!・・【汝等、甘い虚に身を任せ、其を現と心得よ。我が名はサギリ!】・・・・・並行処理開始。・・・・・ゴブッ・・・・・ゴホッゴホッ・・・・・っ!」

 

リーナの背後に浮かび固まっていた魔法陣が再び動き出し、二つの魔法陣が重なり合う。凄まじい光と魔力風が辺りを蹂躙する。度重なる吐血の果てに、魔法は完成する。

 

「【天之狭霧神(アメノサギリ)国之狭霧神(クニノサギリ)】!!」

 

結界が2箇所に展開される。「外と中を区切る」ただそれだけの効果を持つ結界が丘とリヴィラに展開された。そして、その結界の中が霧で満たされる。冒険者達は僅かな動揺の後、大人しく指示を待つ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・っ。これを、使えば転移が、出来るんだ、けど・・・・・問題が少しあって・・・・・」

 

口元を拭い、青ざめた顔を晒しながらリーナは言葉を紡いでいく。転移と言う単語にリーナのやりたい事を理解した桜花を筆頭とする冒険者達は僅かなざわめきすら止めてリーナの声に耳を傾けた。区切られた事で外の声すら届かなくなった結界内、リーナは息を整え話し出す。

 

「皆が一つのことを願わないといけない、皆がリヴィラに行きたいと願わないと魔法は正常に発動しないんだ。・・・・・僕はこの方法で昔仲間を殺してしまっている。だから、お願いだよ、確りとリヴィラに行きたいと願うんだ。」

 

「お待ち下さいリーナ殿、願いが纏まらなければ・・・・・失敗した場合はどうなるのですか?」

 

命がリーナに尋ねる。リーナは僅かに間を置いてそれに答えた。

 

「願いによって変わるけど・・・・・例えば皆が【リヴィラに行きたい】と願っている中で誰かが【オラリオの街に行きたい】と願うとすると、不十分な転移が成される・・・・・まぁ簡潔にいうなら身体の何処か飛んでいく事になるよ。」

 

想像してしまったのか少し青ざめる命、話を聞いた誰もが頭の中で必死にリヴィラを思い浮かべる事になったのはラッキーだっただろう。

 

「・・・・・・・・・・よし、皆の願い、確かに聞き届けたよ。・・・・・・・・・・転移!!」

 

眩い光に包まれ・・・・・・・・・・忽然と冒険者達が丘から消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぉぉおおおお!!」

 

オッタルの雄叫びと共に放たれた拳が黒いゴライアスを粉々に粉砕する。

 

「・・・・・これで30回・・・・・やはり死なないか」

「あぁ、死んでねぇな。むしろ再生までの時間が短くなってやがる」

 

粉々になって十秒もせずに黒いゴライアスは再生を終えて再び襲いかかってくる。

 

「ちぃ!危ねぇじゃねえかよっ!!」

 

目の前の地面を黒いゴライアスが打ち据え、陥没する。ベートはそれを躱し、その腕を駆け上がって頭を吹き飛ばした。

 

「■■■■■■■■―!!」

 

二秒もせずに頭の再生を終えた黒いゴライアスが両腕を振り回し暴れ回る。空中にいたベートは向かってくる腕を蹴りながらどうにか回避に成功し、着地する。

 

何度も繰り返し行われる攻撃を見極め、オッタルが黒いゴライアスの腕を掴む。

 

「ぬぅぅうおおおおおおおお!!」

 

体を捻り渾身の力を込めて黒いゴライアスをリヴィラとは逆方向に投げ飛ばす。そこにベートの追撃、更にその飛距離を伸ばし、黒いゴライアスは壁に埋まり込む。

 

「へっ!馬鹿力じゃあ黒野郎に負けてねぇなオッタル」

「それほどでも無い」

「・・・・・ちっ」

 

 

 

「□□□□――――!!!」

 

一方変わって白いゴライアスと戦っているアイズ達はと言うと、結晶咆哮や結晶攻撃に肝を冷やしていた。攻撃の度に発生する広範囲への水晶の散弾がアイズ達の接近を容易では無くしている。打ち払う事は容易だがその為に足を鈍らせれば追撃が飛んでくる。どうにもうまく懐に潜らせてはもらえなかったのだ。

 

「また咆哮!?ひょぇえ!」

「・・・・・魔力は無限?」

「その様ですね・・・・・忌々しい。」

「はぁ・・・・・どうしてこのメンツが居るのに私まで・・・・・大体私は前線で戦うタイプではないのですが・・・・・」

 

前衛・・・・・つまりは壁役が居ない現状で咆哮は驚異だ。攻撃職と支援職しか居ない状況ではまともに戦線の構築など不可能。故に攻め続ける以外に優位を勝ち得る事はできないのだが・・・・・上記の通りの状況であり、アイズ達は二の足を踏んでいた。

 

「・・・出るっ」

「お?じゃあ私もっ!」

「皆さん行きましょう!」

「はぁ・・・・・タラリア!!」

 

誰もが突撃する為に体を屈めた時、怪我人たちが居る丘から強い光が発せられた。

 

「え?」

 

そして間を置かずリヴィラが光り輝く。それは転移が成功した証。それを知らないアイズ達からすれば異常事態ではあるが目の前のゴライアス達を無視するわけにもいかず意識をゴライアスへと戻す。

 

「よぉし!行くよぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬱蒼と茂る森の中、小さな水晶がそこかしこに見え、タケが受け流した衝撃により地割れが所々に見えるその場所に俺は1人で立っていた。自分がこれから使う魔法は【西行妖】。俺が知っている知識だけでも恐ろしい物だとは推測できる。

 

魂を喰らい、花を咲かせる桜。

 

例えば、その通りの魔法だったとして・・・・・・・・・・使っても平気なのか?それがわからない。ただ、確実にあの2匹を殺す事は出来るだろう・・・・・けど、家族も死ぬかもしれない。これが俺を未だに前へと進ませない。

 

進んでも家族をころすかもしれなくて、進まなければ家族を殺してしまうかもしれない。

殺さなければ死ぬ、殺しても死んでしまうかも知れない。

 

先が見えないと言うはここまで恐ろしいものだったのか、そう思わずにはいられなかった。今までは違ったんだ、原作と言うわかりやすい目標があった。けれど今は違う。

 

どうすれば皆を助けられる?・・・・・それは知っている。

 

どうすれば皆が死なずに済む?・・・・・それは知らない。

 

ゴライアスと言う脅威から家族を助ける事が出来ても、西行妖から家族を守れるかがわからない。自分が家族の死因になるのは嫌だった。

 

でも、それと同時にモンスターに殺されるよりは自分で殺した方が・・・・・なんてくだらない考えも浮かぶ。

 

結局の所、何もわからないんだ。転生者としてのアドバンテージを失った今、俺は僅かな可能性に賭けるしかない。全力で家族が死なないことを祈るしか方法が無いんだ。

 

「スゥ―――――はぁ。・・・・・よし。」

 

深い呼吸をして気持ちを整える。大丈夫、行ける。そう心で言い聞かせる。

 

「まずは・・・・・楼観剣を呼びますか【幽姫より賜りし、汝は妖刀、我は担い手。】」

 

魔力を使って刀を呼び出す。ふわりとスカートが花開くように舞うが、血に濡れている為かやや重い。

 

「【霊魂届く汝は長く、並の人間担うに能わず。――この楼観剣に斬れ無いものなど、あんまりない!】」

 

急速に収束した魔力が1本の刀に変わる。柄に馬の尻尾の様な毛を生やし、鞘からは1本の桜の枝。刀身だけでも180近くある。

 

「・・・・・やっぱり少し恥ずかしいですねこれは・・・・・」

 

だが、まだ終わりではない。最後まで詠唱するにはまだまだ魔力も霊力も足りないのだ。ガリッと丸薬を噛み砕き、魔力を回復していく。

 

「【覚悟せよ(英雄は集う)】」

 

あの技は1人だと詠唱出来そうに無いからハルプと意識を半々にして詠唱をすることにする。

 

「【男は卑小、(『此度)刀は平凡、(修羅は顕現す)才は無く、(修羅)そして師もいない。(一刀にて山、切り崩し)頂き睨む弱者は落ちる。(頂きは地へと落ちる。)その身、(時過ぎし時、)その心、修羅と化して(男、泥のように眠る』)】」

 

俺しか出来ないのだろう同時詠唱。まぁ2つ口があるならできるかもだけどな。詠唱が完了して、後は解き放つだけ。【西行妖】の詠唱文を頭に思い浮かべて、確りと覚えていることも確認した。よし、使うぞ。

 

「────一刀修羅。」

 

小さく呟く。全身の筋肉が悲鳴を上げ激痛が体を駆け巡る。だが、それよりも力が漲る高揚感が上を行く。力も耐久も敏捷も魔力も霊力も、全てが十倍近く跳ね上がる。

 

今しか、この1分間しか魔法は使えない。息を吸い込む。

 

「【亡骸溢れる黄泉の国。】」

 

詠唱を始めると共に手の中にあった刀をクルリと下に向け地面に突き刺す。

 

「【咲いて誇るる死の桜。】」

 

上を向く柄の毛に両手を置いて目を閉じる。ハルプは余計な霊力を食うため消しておく。

 

「【数多の御霊を喰い荒し、数多の屍築き上げ、世に憚りて花開く。】」

 

魔力や霊力が恐ろしい速度で体からなくなっていくのが解る。

 

─────────ノイズが、走る。

 

またか・・・・・・・・・・・・・・・うるさい黙れ(・・・・・・)

 

そう思った物の意識は俺の意思を無視して白く濁っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「しゅぎょうですか?」

「ええ、そうよ。修行よ」

 

銀髪の余りに幼い少女が金髪の美女の元にとてとてと歩いていき、そう聞いた。恐らく修行の事について言われ、やって来たのだろう。

 

「なにをするんですか?」

「うーん、妖夢ちゃんは何がしたいかしら?」

「わたしはゆゆこさまとあそびたいですっ!!」

「うふふ、そうよねぇまだあそびたい年頃よね」

「?」

「こっちの話よ」

 

────────ノイズが、走る。眩暈がする。

 

 

「・・・・・剣をもて。」

「ぅうぅ・・・・・もうやだよぉ・・・・・」

「ふん、その程度か。」

「それくらいにしてあげなさいな妖忌。」

「これはこれは姫様。・・・・・いえ、姫様を守る者としては剣位はまともに使えるように成らねばなりますまい。」

 

 

 

────────ノイズが、走る。頭痛がする。

 

 

「ほら、ここはこうするんだ。やってご覧なさい」

「こ、こうですからんさま?・・・・・わ、わかんないです。」

「そこの記号が間違っているな、初歩的なミスはしっかりと治していこう。」

「は、はいっ」

 

 

────────ノイズが、走る。吐き気を催した。

 

 

気がつけば俺は荒い息をしながら膝を付いていた。全身から血を流しているが、力は削られていない・・・・・まだ、1分も経っていなかったらしい。

 

・・・・・何が見えたんだよ・・・・・あれは・・・・・何なんだ?体の記憶・・・・・?いや、それは無いはずだ、だって駄神が用意したものの筈で・・・・・。

 

いや、そんな事を考えている暇はない!魔法を使うんだ。

 

「【嘆き嘆いた冥の姫。】」

 

目を開き楼観剣を地面から引き抜き、ゴライアス達に向ける。

 

「「■□■□■―――――――!!!?!?!?!」」

 

相当離れているはずのここまで届く2匹の悲鳴。前回はここまでしか詠唱できなかったけど、今回は更に先を詠唱する。

ゴライアスの体中から桜の枝が生えているのがここからでもわかる。

 

「【汝の命奪い賜いて、かの桜は枯れ果てましょう。】・・・・・う!?がっ・・・・・は!?」

 

唐突な激痛に思わず声を上げる。モンスターか!?と後ろを向いてみたけどそこには何もいなくて・・・・・視界の端に桜の枝が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

──────それは、俺の肩から生えていた。

 














全く関係ない話しますね、要らない人は飛ばしてください。

最近友人達とアリアンロッドというTRPGにハマっており、めちゃくちゃ楽しいです。何故か女キャラにされたけどね。

プレイヤーは3人で、全員が初心者で、火力特化のツインテールサムライ(男)とショタホムンクルス魔法使いとステゴロゴリラ神官仮面(女)と言うなんかすごいメンツです。

サムライのプレイヤーが記念すべき初ダイスをファンブルと言う奇跡を起こしたり、二回目のセッションでレベル1のゴーストが回避を3回クリティカルしたせいで危うくサムライが死にかけたり、魔法使いは魔法使いでダメージの出目がめちゃくちゃ低かったり、とわちゃわちゃやっておりますw
私の神官キャラレベル2なのに何故かレベル5のダークエレメンタルとタイマンで四ターンだか五ターンだか殴り合いを続けたりしてました(笑)
と言うかゴーストの3連クリティカルが無ければタイマンを続けること無く余裕で倒せてたんですけどねぇ・・・・・
その時の会話が
サムライ「しかたないボルテクスアタック使うわ・・・・・よっし!出目高い!死ね!ゴースト!」
GM「コロコロ・・・・・」
シフシフ「クリティカルっ!クリティカルっ!(ワクワク)」
GM「あっ・・・・・」
サムライ「嘘だろ?!」
ショタ「マジかよぉ!!」
GM「クリった・・・・・(3回目)」シフシフ「きたぁーーー(ガッツポーズ)」
サムライ「・・・・・・・・・・(絶望)」
ショタホムン「はぁ!?なんか細工してない!?」
GM「してないよ、自分のサイコロじゃねぇし細工も出来ない」
シフシフ「つか俺も見てたし。このゴースト絶対にハサン先生だろw風避けの加護持ちだわwww」
ショタホムン「魂だけの状態でこれとかwwwつか風避けって風だけだろ?あっ、俺の風魔法避けてたな二回目」
シフシフ「FateGOだと回避3回なんだよ」
サムライ「はぁ・・・・・」

その後、ゴースト(レベル1)倒した時。

全員「いよっしゃぁぁぁあ!!!!殺したぁぁぁあ!」
(ハイタッチ)
ショタ「後は雑魚だけだな!(HP3)」サムライ「雑魚だけだわ!!(HP1)」シフシフ「そうだな!(HP7)」
シフシフ「はよ援護してくれ、俺ひとりで雑魚(レベル5)受け持ってんだから!」
ショタ「マジゴリラじゃん」
シフシフ「俺いなかったら崩壊してるからな!?」
サムライ「あんな雑魚余裕だしさっさとやろうぜ」
ショタ「お前の攻撃じゃあいつの物理防御抜けねーし」
サムライ「やれるだけやってみるね・・・・・クリティカル!いけー!ダメージは〇ダメージ!」

とリプレイにしても良かったのでは思うくらいには白熱の戦いだった。終わったあともずっとゴーストの話だった
全員「他愛なし、他愛なし、他愛なし」
GM「悪かったって・・・・・」

まぁその日オールだったんで記憶はやや曖昧ですがwww

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