オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
『黄昏の館』
そこは都市オラリオ最北端にメインストリートから一つ外れた街路の脇にあるにある、ロキ・ファミリアのホームだ。
その黄昏の館にある訓練場の一角にそわそわとしている集団があった。彼等はタケミカヅチ・ファミリア。
(なんていう事だ・・・)
タケミカヅチは周りの団員と違い静かに目を閉じ、時間を待つ。しかしその思考は実に彼らしいものであった。
(猿師に半ば強引に飲みに連れていかれ・・・帰ってみると置き手紙。ただの置き手紙ならよかったんだが・・・。妖夢、お前ってやつは・・・本当に大丈夫なんだろうな?!)
タケミカヅチがこうなるのも仕方ないだろう、なぜなら手紙にはこう書かれていたのだ。
『明日ロキ・ファミリアで決闘してきます。初めてのレベル5で楽しみ。優しい人だから多分大丈夫。』
一体何処が大丈夫なんだ、とタケミカヅチは内心ため息をつく。ダンジョンに行くために急いでいたのか文章が簡素だが言いたいことだけはすごく良く伝わる文だ。
タケミカヅチ達の対面にはロキ・ファミリアの団員達が控えている。どうやらレベル1から2までの団員の様で戦いの勉強のために来ている様だ。
(妖夢は強い)
タケミカヅチは断言する。
(あいつなら同レベルの奴らには絶対に負けない、それどころか恩恵無しでレベル3を倒している・・・相手の油断とまぐれが重なってやっとだったが。)
妖夢は強い、それは力が特別に強いという訳では無い。妖夢の強さには幾つかある、まずは技量、剣を自身の体のように扱うその技量は凄まじく、タケミカヅチが修行開始二ヶ月目には搦手を使わなくては勝ちづらくなっていた程だ。
もう一つはその集中力。戦いに必要なものは沢山あるがこの集中力が無くては長時間の戦闘には耐えられない。無論例外もあるが。
(妖夢は丸一日戦い続けた時もあった。恩恵無しでだ。戦闘において集中が切れるのは死を意味する)
そして何よりもその『手札』の多さが妖夢の強さだろう。相手、場所、状況、時間帯。それらを吟味し最も扱いやすい武術、技を使用し戦うのだ、だから相手からしてみれば複数の剣豪と戦うようなものだろう。
(それに・・・どうやってるのか全くわからない謎の剣技とか使うしな・・・何をどうすれば平行世界から自分を呼べるんだ・・・なんだ燕さん斬ろうとしたら出来ましたって・・・)
(とりあえず、戦士としてはこれ以上無いほどの才能がある。でもなぁ・・・レベル5は流石に厳しい気がするぞ?)
「タケミカヅチ様、妖夢のやつ何だってこんな事に・・・」
タケミカヅチの隣で眉間に皺を寄せながら落ち着かなそうに周囲に目を配らせる桜花。
「心配なのはわかるが・・・信じてみよう。ま!そもそも負けてもいい経験になるだろ!妖夢が負けた事だって一度や二度じゃないしな。存外妖夢もわかってて挑戦してるのかもしれないぞ?」
「そりゃあ、そうかもしれませんが・・・」
桜花が納得いかないと言ったふうに顔をしかめた時、奥の扉が開かれ、ロキ・ファミリアの幹部と神ロキが現れる。
「みんなー!待たせたなぁ!」
ロキのその言葉にタケミカヅチは体を固くする、桜花もそうだ。千草と命は妖夢の付き添いで武器を選んでいる
ため、ここには居ない。居たとしたら「ひぅっ!」とか言っていただろう。・・・猿師はここには居ない、市場を調べに行った。
「うんうん、よう集まってくれた!今回は皆の勉強も兼ねてるからな。しっかり見とくんやで?」
「「「はい!」」」
ロキの言葉に冒険者たちはハキハキと答える。しかし
「もう、やめーやそういうかたいのはー。いくら他のファミリアが来てるとはいえ、そんな固いのはウチいややでー」
とプンプンと言った感じで腕を組み文句を言う、しかし言っていることはタケミカヅチにとってとても共感出来る事だ。言われた本人達は苦笑いしている。
(命達もそろそろ敬語は辞めてもいいと思うんだが・・・まぁ、本人達が真面目だしいい子だから仕方ないか)
「ロキ、あの事は言わなくていいのか?」
タケミカヅチが自分の家族についてあれこれ考えている時リヴェリアがロキに小声で囁く。
「んお?ああ!そうやったわー。・・・はい!ちゅーもくー!」
ん?とタケミカヅチは考え事から戻ってくる。双方のファミリアの団員達はザワザワしているようだ。
「実はな?いきなりレベル5のベートをぶつけたら危ないってリヴェリアが言うんよ、だからな、最初にレベルが一緒の皆に戦って貰おうと思ってるん。・・・どうやろか?いい経験になると思うで?」
ザワザワとロキ・ファミリアの団員達が違いに目配せしながら話し合う、内容は「誰が戦うか」だ。
「ちゃうちゃう、誰か1人やなくて、同レベルの全員や」
その一言にロキ・ファミリアの団員達は動きを止める。「は?何言ってんの主神様」と言った感じの顔だ。しかしロキ・ファミリアの団員達はすぐに冷静さを取り戻し、幹部達の方を見る。理由は簡単、普段ならこう言ったロキの発言はリヴェリアによって止められるからだ。
「ん、なんでこっちを見てるのかな?ロキが言っていることは本当だよ。」
団員達は驚くが反論はしない、団長が言うなら仕方ない、と思っているからだ。実際フィンが拘束している訳ではなく、団員達はフィンやその他幹部に特別な思い入れがある。それは尊敬であったり恋慕であったり、もっとも多いのは感謝だろう。そんな団長達が決めた事なら逆らう必要なんてない、それに同レベルが相手ならいい経験になるだろう。そう考えたのだ。
「・・・やる気になったな?よっしゃ!じゃあみんな準備してなー、まだ向こうも少し時間がかかる言うてたし。」
おう!とかはい!と返事をして団員達は各々の武器防具を装備しに動き出す。
そんな中ロキはふと思い出し隣のフィンに聞いてみる。
「・・・そう言えばフィン、妖夢たんにもこの事は伝えてあるん?」
「・・・さて、何のことやら」
「・・・悪いやっちゃなー」
「ハハッ!上に立つには色々と必要なのさ」
その声はタケミカヅチ・ファミリアに聞こえていたが誰も何も言わない。・・・よくある事だからだ。
(・・・厄介なことになったな・・・妖夢・・・がんばれよ!)
「うーむ、う~む。むむむむむ・・・」
どうも、俺だよ、妖夢だよ。今俺が唸っているここは、ロキ・ファミリアの使わなくなった武器や防具を保管している所だ。「この中から好きなものを選んで使うといい」とリヴェリアに言われ、選んでいるものの・・・迷う、使わなくなったとか言いながら選り取り見取りじゃねぇか・・・。
「はわわ・・・よ、妖夢ちゃん!・・・は、早くしないと皆待ってるよ!?」
千草が俺を急かす、わかってんねん、急がなきゃいけないって思ってんねん。ただ、俺ってば優柔不断だから一体どれを使おうか・・・刀しか使えないなら刀を選ぶんだけどな~、武器なら大抵使えるし・・・武神の稽古って・・・キツイんだぜ?
「ええ、わかってますが・・・ええい!なら全部持っていきます!」
もう考えるのなんて止めだ!これも、これも!これもこれもこれも!これもだぁ!剣!槍!斧!何だって来いやー!
「妖夢殿!半霊が針山みたいになってますよ?!」
「押し込めば大丈夫です!」
「一応自分の身体なんだよね!?」
「魂は死にません!」
うるせぇ!全部持ってってゲートオブバビロンごっこするんだい!できるか知らないけどな!最後はちゃんと返すけどね!
「もう時間か・・・あわわ・・・バタッ」
「千草殿!?しっかり!」
なぬ!?千草が緊張でぶっ倒れた!ポーション!ポーションは何処だ!
「待っててください!ポーションを・・・痛?!」
そういや針山になってたんだったあぁ!?いってぇ!刺さったよ!なんで鞘に入ってねぇんだよ?!
「妖夢殿?!そんな剣山に手を突っ込んだら怪我をってもう怪我してる?!」
落ち着け!落ち着くんだ俺!深呼吸だ!スーーハーーー。俺は冷静、俺は冷静!よし、まずは命を落ち着かせなきゃいけないな。
「命、まだあわわわわてる時間じゃあわわわ」
「妖夢殿落ち着いてください!」
ダメだあぁー!身体の方が落ち着いてねえぇー!
「落ち着きましたか?」
しばらくして皆落ち着いたので命に話しかけてみる。
「妖夢殿に言われたくはありませんが・・・妖夢殿があんなに慌てるのは久しぶりに見た気がします。」
すんません、ほんと、すみません。ってか、俺って結構普段から慌ててる気がしたんだがそんな久しぶりだったか?
「私は普段から慌ててる筈ですが・・・そんなに久しい事でしたか?」
その質問にうーんと腕を組みながら命は思い出そうと首を傾げ考える。
「うーん。恐らくは最後に見たのは二年前の神の恩恵を貰う時じゃありませんでしたか?」
ああ、あれは慌てたなぁ~。あんだけやったら初めからオールSになるんじゃないかな~とか、初めからレベル2とか3になってんじゃね?って思ってたのにステイタス全部10で、レベルも1だからね。慌てるよそりゃ。
「・・・お恥ずかしい限りです」
命はニコニコしながら昔を思い出すように少し上を向く。
「妖夢殿ってば「ええ?!どうして10なんですか?!タケ!どうしましょう!!今までの全部無駄だったんですか?!」ってタケミカヅチ様に泣き付いてましたもんね、ふふ」
「・・・懐かしいね、ふふふ。」
え、ちょ、おま。なんでそんな事覚えてんの?やめぇや千草も懐かしいとか言わなくていいよ!つか笑うな!・・・知らん!そんな奴は知らん!俺は変わったんだ!
「・・・ふむ、知らない人ですね!」
「ぶふっ、顔を赤くしながらでは説得力が欠片もありませんよっ!」
「あはははっ!」
「・・・・・・うぅ・・・。さ、さぁ!早く行かなくては皆さんに迷惑です。行きましょう。」
「ふむ、来たか」
訓練場の扉が開かれ、銀髪の少女が訓練場に入ってくる。リヴェリアはその姿を確認する。そして驚いた。
「ほう、武器を使わぬのか・・・それとも隠し持てるような小さな武器か」
ガレスがあごひげを撫でながら冷静に分析する、銀髪の少女、名前は妖夢だ。妖夢が着ているのは白いフリルの付いた白いシャツに、緑色のベストに緑色のロングスカート。単色で非常に目立つがまるで身体の一部のように完璧に着こなしていた。その姿に団員の一部が「おおっ!」と声を上げる。
「?・・・ベートは何処ですか?」
コテンと首を傾げ、フィンにそう聞く妖夢。それもそのはず妖夢はレベル2の団員達と戦う事を説明されていない。
フィンはニコリと笑い、説明する。
「実はリヴェリアがいきなりレベル5とぶつけるのは君の命が危ないと言うからね、初めに他の団員と戦って実力をある程度見極めようって事さ。」
実際にこんな事をいきなり言われたら怒っても仕方ないとフィンは思う。何せ本命は格上の相手、少しでも体力は温存しておきたいだろう。それなのに悪戯に体力を減らす行為など嬉しくもなんとも無い。しかし。
「なるほど、わかりました。・・・フィン、全員一気に戦いますか?」
「うん?」
フィンは内心、この子は何を言っているのだろう、と思った。全員?1人ずつとは言わないが・・・全員?20人程いるんだけど?と。
「いや、2、3人ずつの予定なんだ」
その方が見極めやすいし、団員達の経験にも繋がる。モンスターとの戦いはモンスター1に対し冒険者3にサポーターが加わり4人程がちょうど良い人数だからだ。断られたら仕方ないと、そう思って準備したのだ。なのに全員と同時に戦うなど考える訳ないだろう。
「そうですか・・・。」
と何だか悲しそうに返事をする。
この発言には対戦相手のロキ・ファミリアのレベル2の団員達からすれば挑発以外の何物でもない。団員達からは「あんの野郎・・・」や「団長を名前で呼ぶだと?失礼な!」とか「はっ!威勢だけはいい野郎だな!」「女の子でしょ!」だったり聞こえてくる。観客からもそれは同じだ、最も、観客の中で文句を言うのは1人しかいないが。「くぅぅ!なんで呼び捨てにしてるのよ!私の団長をー!」無論ティオネである。
「ははは・・・。それじゃあ、始めようか。」
フィンの乾いた笑い声という、戦いには相応しくないゴングで戦闘は始まった。
戦場は訓練場。対峙するのは武器をその手に持った3人の冒険者と、何も持たない1人の少女。周りのほとんどの観客からしてもこの勝負、どちらに転ぶかなど考える必要すら無かった。
緊張感が漂う中、妖夢は「あっ」と言って何か思い出したようにリヴェリアの方に向いた。
「武器庫の中身ほとんど持ってきてしまったんですけど・・・ダメでしたか??」
「は?」
リヴェリアは首を傾げる、この子は何を言っているんだ?と先程も言ったとおり妖夢は何も持っていない。恐らくはブラフだろう。そう思ったリヴェリアはとりあえず許可する事にした。
「ま、まぁいいだろう。それより早く戦わなくては日が暮れてしまうぞ?」
さっきのお返しだと内心ちょっとスッキリする。【ロキ・ファミリアのオカン】の二つ名は伊達ではない(嘘)、団員を馬鹿にするような発言は気に触るのだ。
「そうですね、リヴェリアの言う通りです・・・さぁ、行きますよ。どうやらモンスター戦を想定したスリーマンセルのようです。モンスターは待ってはくれません。」
しかし全くその嫌味に気がついていないようで、むしろ激励を受けたかのようにやる気に満ち溢れている。しかもフィンの意図をしっかりと把握しているのだから驚きだ。
「ああん?てめぇから来いよ!さっきから聞いてりゃ団長達を呼び捨てにしやがって!」
妖夢の発言に苛立ち、声を荒らげる冒険者の男。成人男性の怒声など妖夢くらいの歳の女の子が聞いたら震え上がり泣いてしまう事もあるだろう。しかし当の本人は首を傾げ「いいんですか?先手をもらっても」と全く怯えている様子はない。
「では行きます。まずは・・・これです!」
その時ロキ・ファミリアの誰もが目を見開いた。何も無い空間からスーッと1振りのロングソードが現れる。
「何しやがった!」「わからないが魔法かスキルだ!」「隠してやがったのか!」
冒険者達は三者三様の反応を見せ、左右に広がる、囲んで攻撃するつもりなのだろう。
ちなみに冒険者達の武器は、剣を持つ者が1人、斧を持つ者が1人、槍を持つ者が1人となっている。
妖夢は囲まれる前に行動を開始した。素早く前方に駆け出し、斧を持った冒険者に肉薄する。
「きやがったか!フゥン!オラァ!」
冒険者は大きく息を吸い、斧を上段から振り下ろす。当たればレベル2といえど無事では済まない全力の振り下ろし。
「シッ!」
ギイィン!と言う金属音が響く。それは振り下ろされる斧に妖夢が鋭い息と共に剣を打ち付けたからだ。
このまま力の押し合いになるかと思われたが妖夢は一瞬力を抜く。
「ぬおっ?!」
力を込めていた冒険者はふらつく、それは余りに致命的なミスだ。ふらついた冒険者に対し、妖夢は剣を斜めにし斧の刃を滑らせ冒険者の横を駆け抜ける。
「コッ!・・・ゴフッ・・・」
斧を持った冒険者は腹部を斬られ、血を吐き出し地面にドサッ、と倒れる。
それは一瞬の攻防。あまりにも一方的な戦いだった。
妖夢はヒュンッ!と血払いをし、2人の冒険者に振り向く。
「・・・さぁ、仲間の1人がモンスターにやられてしまいました。」
その眼差しは真剣そのもの、決して巫山戯ても慢心してもいない。あくまでフィンの「対モンスター戦の戦闘訓練」にそってモンスター役として戦っているだけの様だ。・・・もちろんモンスターがこれ程の技量を持っていたら酷いことになるのだが(何がとは言わない)
「糞が、舐めやがって!おい、連携するぞ。俺が右、お前が左だ!」
「おう!」
冒険者達は左右からの挟撃で妖夢を倒すつもりのようだ。
「オラオラオラオラ!」
「うおおおおおぉぉぉお!」
槍使いの連続突き、剣使いの連続切りを妖夢はロングソードで捌いていく。その表情は先程と何ら変わっておらず、ただ、真剣に真面目に攻撃を弾き、防ぎ、躱す。フィンを含む強者達にはその技量の高さがはっきりとわかった。しかしわからない者達もいる。
「おいおい!防ぐ事しかできねぇのか!」
と観客から野次が飛ぶ。しかし、よく考えてみて欲しい。レベル2の妖夢がレベル2の3人の冒険者と戦い、既に1人倒し、未だ無傷。
野次に苛ついたのか左手を上に上げ、右手で乱暴に剣を横薙に振るう妖夢、冒険者達はその攻撃を避ける。ここだ!と剣使いは思う。妖夢は剣を振り切っており、無防備だ。ここしかない!と剣使いは斬り掛かる。
「そこだぁ!」
しかし、そのわかりやすい隙はフェイク。意図的に作り出された隙だ。上げられた左手にはいつの間にかショートソードが握られていた。そしてそれは剣使いの攻撃よりも速く振り下ろされる。
「ガッ・・・・・・ハッ!?」
「なんだと!?」
肩から腹までバッサリと斬られ倒れる剣使い、槍使いは驚き2歩後退る。それは恐怖による後退では無く間合いを確保するためのもの。その判断はなかなかのものだが、レベル1の冒険者は自分の勝てない相手に出会ったとき、真っ先に逃げる事を教わる。それはどのレベルになっても同じ事だ。勝てなければ逃げる、それは生き残る術なのだ。
妖夢は駆ける。・・・冒険者は基本を忘れてはならない。仲間が2人倒れた時点、いや、1人が倒れた時点で逃げるべきだった。冒険者はモンスターを打倒する、 それは数々の英雄譚が証明している。それと同時にモンスターも人を殺す、それもまた歴史が証明しているのだ。
槍を構え、妖夢を貫こうと一気に前に突き出す。しかし妖夢はするりと躱し肉薄する。
「手合わせありがとうございました」
妖夢は駆け抜け、剣をヒュンッ!と血払いした。ドサッ!と槍使いは倒れ込む。
目の前で妖夢と名乗った女の子が自分のファミリアの子と戦っている。
「うっはー、何やねんあれ。」
現在の戦闘は6対1、6人による連続攻撃を妖夢は短刀2本で凌いでいた。
「なぁ?フィン達はあんな状況になったらどうするん?」
「ははは、まず、あんなふうに囲まれない様に立ち回るから、囲まれる事は稀だね。」
「んん?じゃあ妖夢たんは弱いんか?」
「いや、それはないね。わざと囲まれたんだ。」
「なんでや、アホなんか?」
ロキは戦闘している妖夢の方をみる。明らかに劣勢。フィンの言う通りだとしたら何の為に・・・。ロキは考えながらしっかりと試合を見つめる。時々ファミリアの子に声援も送る。
そこで戦況に動きが、攻めきれないことがわかった冒険者達は攻め方を変えるらしい。1人の女冒険者がバックステップで距離を取り、詠唱を始める。
「うお~!いけぇ~!魔法をうて~!」
「ロキ、はしゃぎ過ぎだ。」
しかし詠唱は中断される事になる。原因は不明だが急に詠唱をしていた女は何かに押されるように体制を崩した。そして詠唱への集中が切れ、暴発する。
「あちゃ~!何やっとんねん!」
後方で発生した爆発音にとっさに振り向く冒険者達。妖夢はその隙を見逃す程甘くは無かった。
「小太刀二刀流―――」
妖夢のその声に冒険者達は振り向き武器を構える。しかし、振るわれた刃はその目に捉えることは出来なかった。
「――回天剣舞六連!」
始動は右、そこから連続で切り刻む。それはまさに一瞬の出来事だった。5人の冒険者達は一斉に倒れ動かなくなる。
「・・・・・・・・・すまん。フィン、何が起きたか教えてくれ、ウチは神威使えへんから何が起きたかわからんかった」
「えーっと・・・高速で六回斬った・・・だけだね」
「いや、意味わからんから。レベル2やろ?あの子。速ない?確実にレベル2の動きやなかったで?」
「・・・速い。」
「アイズたん?もっとこう・・・ウチにもわかりやすくあの娘が何であんなに強いのかーとか・・・ない?」
「わからない・・・です」
何なんや、あの娘。ロキは視線を移す、その視線の先にはベート。
「なぁベート、どう思う?」
「知るか、あのガキがあいつらより強いだけだろ。まぁ、どうせ俺にゃ勝てねぇよ。」
それはそうやけど・・・とロキは呟き目を薄く開く。目の前で残りの十数人と戦い始めた少女は底知れない何かを秘めている。
「まぁ、頑張れ!応援してるでっ!」
しかし、すぐさま表情を元に戻し悪戯好きのする笑顔でベートに向き直る。
「うるせぇ・・・」
ベートはうざったそうに頭を掻いた。しかし、その目には確かな戦意が見え隠れしていた。
しかし、同時刻、女神が動き出す。
ふっふっふ、テンプレにはせんぞぉ!
コメント待ってます!・・・いや、コメントしずらいんだけどさ今回の話笑
ツッコミは多々ありそうですが・・・(震え声)