オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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前半少し、中盤に少し、シリアスが含まれています。ご注意を。

ハルプ視点になったら途端にシリアスになるのでこれからは注意してくださいな。次話ではシリアス要素が完全に死んでいるのです。
リーナさんを動かし回るだけで文字数が凄まじく伸びる。オッタルと同じく話させるだけで文字数が稼げるいい子です。

誤字脱字、コメントお願いします。














60話「リーナ?仕事は良いのですか?」

□名前 魂魄妖夢

□二つ名【剣士殺しソード・ブレイカー】

□Lv.4

□ステイタス

 

「力」:E412

「耐久」:C605

「器用」:B701

「敏捷」:C620

「魔力」:E404

「霊力」:S912

 

 

□発展アビリティ

【集中:C+】・・・・・集中力を上昇させる。「+」・・・アルファベットの位を倍にする。

【剣士:F】・・・・・剣士としての技量を上げる

【乖離:I】・・・・・繋がりの脆さを表す。数値が高ければ高いほど対象との乖離が広がっていることを表している。

 

 

□スキル

【半霊 (ハルプゼーレ)】

・アイテムを収納できる。収納できる物の大きさ、重さは妖夢のレベルにより変化する。

・半霊自体の大きさもレベルにより変化する。

・攻撃やその他支援を行える。

・ステイタスに「霊力」の項目を追加。

・魔法を使う際「魔力、霊力」で発動できる。

・ハルプで戦闘を行った場合も経験値を得られる。

・半霊に別意識の介在を確認。自立した行動を取る。

 

【刀意即妙(シュヴェーアト・グリプス)】

 

・一合打ち合う度、相手の癖や特徴を知覚できる。打ち合う度に効果は上昇する。(これは剣術に限られた事ではない)

・同じ攻撃は未来予知に近い速度で対処できる。

・1度斬ればその生物の弱点を知る事が出来る。

・器用と俊敏に成長補正。

 

【剣技掌握(マハトエアグライフング)】

 

・剣術を記憶する。

・自らが知る剣術を相手が使う場合にのみ、相手を1歩上回る方法が脳裏に浮かぶ。

・霊力を消費する事で自身が扱う剣術の完成度を一時的に上昇させる。

 

【二律背反(アンチノミー)】

 

・前の自分が奮起すればする程、魂が強化される。強化に上限はなく、魂の強さによって変化する。

・使用する際、霊力が消費される。

・発動中ステイタスの強制連続更新。

 

【唯一振リノ釼デ有ル為ニ(ただひとふりのつるぎであるために)】

 

・一刀流の剣術を使用中である時全ステイタスがアップする。

・一念を貫く間は効果がある。

・想いの強さで効果が向上。

 

【弍刀ハ壱刀ニシテ弍刀ニ有ラズ(にとうはいっとうにしてにとうにあらず)】

 

・二刀流の剣術を使用中である時全ステイタスが大幅にアップする。

・戦う意志が存在し、意志が統一されると効果発動。

 

【怪異異能】

 

・『剣術を扱う程度の能力』を持っている。

・─────────程度の能力を持っている。

・それらが合わさり『剣技剣術を模倣し扱う程度の能力』となっている。

 

 

□魔法

 

「楼観剣/白楼剣」

 

【幽姫より賜りし、汝は妖刀、我は担い手。霊魂届く汝は長く、並の人間担うに能わず。――この楼観剣に斬れ無いものなど、あんまりない!】

 

【我が血族に伝わりし、断迷の霊剣。傾き難い天秤を、片方落として見せましょう。迷え、さすれば与えられん。】

 

・魔法の武器を作り出す

・発動後、解除するまで魔力及び霊力消費

・魔法の媒体になる

 

詠唱「西行妖」

 

【亡骸溢れる黄泉の国。

咲いて誇るる死の桜。

数多の御霊を喰い荒し、数多の屍築き上げ、世に憚りて花開く。

嘆き嘆いた冥の姫。

汝の命奪い賜いて、かの桜は枯れ果てましょう。

花弁はかくして奪われ、萎れて枯れた凡木となる。

奪われ萎びた死の桜、再びここに花咲かせよう。

現に咲け───冥桜開花。西行妖。】

 

【揺蕩うなかれ、流離うなかれと、乞い願う。

我が腕に抱かれて、汝の罪は赦されましょう。

例え死して骸と還ろうと、私の愛は色褪せず。

血の通わぬ死体の体であろうとも、傍に寄り添い共にあろう。

血染花・禍津桜木西行妖】

 

 

・召喚魔法

・魔力及び霊力の超消費

・解放詠唱あり

・対象は死滅(消滅)する。

・記憶を知り1人は二人となる。

 

 

「???」

 

【覚悟せよ(英雄は集う)】

 

・超短文詠唱。

・補助の詠唱が必要。

・技の完全再現。

 

─────────────────

 

「終わりましたか?」

 

鈴のような声がタケミカヅチに投げ掛けられる。タケミカヅチはその声に暫くして再起動した。今見たものをそのままに伝えるべきなのか、迷ってしまったからだ。

 

(こうなることは、ある程度予想していたが・・・・・・・・・・想定を遥かに超えてるな・・・・・。)

 

まさか人格が二つもあったなんて。まさにタケミカヅチの想定外だった。いや、正確には人格も魂も二つあったのだが。

 

「タケ?」

 

目の前の【少女】をタケミカヅチは見る。上半身は裸で、背中をこちらに向けて布団に寝そべっている。

 

(・・・・・・・・・・お前は・・・・・妖夢なのか?俺の知る、あの?)

 

答えなど出ない。どちらかが本物、偽物、なんて簡単な話ではないのだろう。タケミカヅチは迷いに迷ってステイタスの紙を妖夢に渡す。しかし、見られたくない場所は全て修正して渡した。

 

「ありがとうございますタケ!」

 

ニコニコと笑う妖夢。タケミカヅチは優しく微笑むが、その目は鋭い光を僅かに帯びている。

 

(・・・・・字が読めていない?・・・・・試してみるか)

 

「妖夢、少し読んで見ろ。凄いことになってるぞ」

 

勤めて明るく声をかけるタケミカヅチ。その様子に妖夢は一瞬固まったあと、視線をさまよわせて慌て出す。

 

「えっと・・・・・その・・・・・す、凄いですねっ」

 

あはは。乾いた笑いがタケミカヅチの疑念を確信へと導いた。

 

「妖夢・・・・・何か隠してるな?」

 

妖夢はタケミカヅチの言葉にただただ恐縮するばかりだ。

 

「お前は・・・・・妖夢なのか?」

「はい・・・・・ただ、記憶が戻って混乱してるだけで・・・・・」

「真実か。だが・・・・・隠しているな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タケなら信頼できますし、話しておきます。私は───────貴方方の知る『魂魄妖夢』ではありません。」

「そうか・・・・・」

 

妖夢の真剣な顔を見て、タケミカヅチの顔に皺がよる。

 

(解決を急がなくては。)

 

彼は招集を決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッザッザッと音がする。私は刀を振るう。

 

「よーうーむーどーのー!」

「なんですかーー!」

 

私が武錬の城の中庭で鍛錬をしていると、命が私の名前を呼びながら走ってきました。今日も笑顔が素敵な命ですが、私に何のようでしょうか?

 

「妖夢殿!お買い物に行きましょう!」

「お買い物ですか?」

「はい!」

 

どうやら命は私とお買い物に行きたいようです。確かに記憶を辿れば、あの子は良く命たちとお買い物に出かけていたようです。・・・・・ふふ、ずいぶんと楽しい記憶ですね。みんな笑顔です。

 

「わかりました、行きましょう。」

 

私も微笑んでまずは館の中に入ってお財布を取りに行きます。・・・・・あの子がいないとこういう所が不便ですね。今まではあの子が持っててくれたのですから・・・・・早く帰ってきて欲しいです。

 

「・・・・・?妖夢殿、半霊にしまってあるのでは?」

「あはは、家族でのお買い物ですから。たまには、って事ですよ」

「なるほど。では皆さんも呼んで参ります!」

 

命は今日も何だか嬉しそうですね、まぁあれ程の戦いの後ですから喜びたいのもわかりますが。

 

・・・・・ここ数日間である程度は慣れてきました。皆さんの呼び方にも気を付けて、変な言動を取らないように頑張っています。タケには事情を話してあるので少し重荷が取れた気分です。

 

「いやっほー!リーナさんだぞー!妖夢ちゃんがお買い物に行くと聞いて!」

「リーナ?仕事は良いのですか?」

「ふっ・・・、大人の女に出来ない事は無いのよ・・・・・。」

「甘い物要りますか?」

「欲しい!」

「・・・・・大人?」

「それは言わない約束さ!」

 

いつも通りのリーナさんに若干苦笑いな私ですが、事務仕事の殆どはリーダー達がやってくれているので邪険には扱えません。それに扱う気もありませんし。なので大福とお茶を準備して、リーナさんが待っている縁側へと向かうとリーナさんは当然のように寝ています。

 

「・・・・・リーナ、起きてくださーい。大福食べちゃいますよー」

「Zzzz・・・・・コレは・・・・・甘い香り・・・・・!リーナさん覚醒!僕の大福はどこー?」

「ここにありますよ。」

「・・・・・なんだか妖夢ちゃんの方が大人に見える・・・・・!負け・・・・・た・・・・・だと?」

 

大袈裟な反応に私が苦笑いしていると、ザッザッと足音が聞こえてきました。なかなかに重量感のある音なので男の人でしょう。

 

「んあ?なんだ、リーナこんな所で何やってんだ」

「リーナさんは休憩中〜。僕の生命を補充しているのさ」

「あーそうかい。でだ、妖夢、俺と戦おうぜ!」

 

火の粉を散らしながらやって来たのはダリルさんです。家が燃えるのでやめていただきたいのですが、感情によって発動してしまうらしいので無理だとか。つまり火の粉を出してない普段は凄い落ち着いている、ということなんでしょうか?

 

「申し訳ないですダリル。私達はこれからお買い物に行くことになっているんです。あっダリルも行きますか?」

「はぁ?買い物だァ?・・・・・おれはパス。んな事より鍛錬積んでるわ」

「そうですか・・・・・なら仕方ないです」

 

ダリルさんはそう言って少し肩を落としながら何処かに向かいました、恐らくはダンジョンでしょう。

 

「よーうーむーちゃーん!」

 

すると再び私の耳に声が届きます。この声は千草ですね、いつも可愛らしく、私に甘えてくる妹みたいに思える少女です。おっと、他にも居るみたいですね。

 

「妖夢ちゃん!皆呼んできたよ!」

「本当ですか?ありがとうございます千草。」

「呼んだのは私です千草殿!」

「まぁまぁ、喧嘩はよせ。折角タケミカヅチ様から許可を頂いたのだ、仲良くしよう。・・さて、ここにいる皆が今日買い物に行く者達だ。」

 

仲睦まじくじゃれ合う2人を嗜めるアリッサさん。まるでお母さんですね、それかお姉さん。クルメさんは居ないようですが・・・・・お店の準備に忙しそうだから仕方が無いですね。

 

「クルメは店を構える為に精を出している、来れないが許してやって欲しい」

「はい、理解しています。」

「それから、クルメからの伝言だ「私のお願いを聞いてくれてありがとうございますっ」だそうだ。」

「いえ、お金は余っていましたし、欲しいものを与える、と言うのがリーダーに対する報酬ですから。」

 

そう、クルメさんはお店を欲しがった。リーダーとしての仕事や、ダンジョンの探索が入る為、毎週2日間しか開かない特別なお店の予定です。【料理】のランクも高いですからきっと人気のお店になります。その時の収入はタケミカヅチ・ファミリアに少し入れると言っていました。

 

「よぉし!皆行こー!私が寝ない内にzzzz」

「こら」

「あいたぁ!?」

 

言ったそばから・・・・・いえ、言いながら寝たリーナにアリッサがチョップを入れて目覚めさせ、みんなで歩き始めます。

 

「お買い物・・・・・上手くできるでしょうか・・・・・」

 

私個人として初めてのお買い物です!ワクワクしますが・・・・・少し緊張しますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?・・・・・18階層で街を作る・・・・・?ハルっち正気か?」

 

どうも俺だ、ハルプだ。目が覚めたらグロスの隣でぐーすかぴーしていた俺は、自分がいつ眠ったのか覚えて無くて若干混乱したが何とか持ち直した。そんでもって昨日のお話の続きとなったわけだが・・・・・。

 

『そうだ、18階層は床が抜けちまって、今はセーフティーエリアとは呼べない。分かるよな?』

「アァ、ダガソレデモ多クノ冒険者ハオトズレルダロウ。」

『うん、だから街を作るんだよ。街を作って俺達が安全だって教えてやればいい。生憎と俺は人間に顔が効くからな。』

「・・・・・フム・・・・・」

 

アルミラージを抱き抱えてモフモフしながらの会議。簡単な話し、崩壊したセーフティーエリアを俺達で建て直すことが出来れば・・・・・ある程度の認識の改善が出来るかもしれない。最悪俺が全部テイムしましたー!っていえば何とか・・・・・

 

『悪くは無いと思うんだよ、冒険者達は寝床が戻って嬉しいし、俺達は人と触れ合えるから嬉しい。もちろんそこに行くまでに大変だと思うけど・・・・・。』

 

皆がうーむ、うーん、と悩んでいる。それもそうだ、だって今まで隠れて暮らしていたんだから。

 

いきなり変えるのも大変だよなー。とアルミラージの頭を撫でてモフモフする。

 

「なぁ、ハルっちはそれでいいのか?」

『ん?何でだ?』

「いや、そのぉ・・・・・ここに居る理由は地上に有るんだろ?」

 

リドが心配したようにコチラを見る。固まったのがわかったのかアルミラージもコチラを見上げている。体が痛い。まるでヒビでも入っているかのように。

 

『そんな事か、心配すんなってリドっち。まずは恩返し、だろう?』

 

ニヤリと自分では男前だと思う笑みを浮かべて親指を立てる。

 

リドは少し迷ったみたいだけど、困ったように笑った・・・・・と思うんだけど、表情わかりにくいな。

 

「やるだけ、やってみるか!」

『おう!』

 

どうやらやる気を出してくれたらしい。俺は嬉しくなって今すぐ修繕に向かいたいくらいだが、ここは我慢だ。まず色々と決めなきゃいけない事は多いのだから。

 

「反対ダ。」

 

そう、一つ目は意見の一致。慎重な奴。大胆なヤツ。色々といる中でこの案を納得させるのは厳しいかもしれないけど、頑張るしかないな。

 

『なんで反対なんだ?』

「ナンデダト?・・・・・人ハ決シテ我々トハ共存出来ナイ、最早ワカリキッタ事ダ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・何故だろうか、それを否定することが出来ない。そんな俺の態度をどう取ったのかグロスは「フン」と踵を返して歩き出す。話しても無駄だってことなんだろう。

 

『で、でも・・・・・』

 

何とかして引き止めなきゃ、そう思う俺の心を見透かしたように、グロスは立ち止まり呟く。決して大きくなかった声、でも、確かに聞き取った。

 

「オマエガ一番ワカッテイルダロウ。」

 

否定が出来なかった。俺の居場所は地上には無い。地上に夢を見る彼等とは根本的には違ったんだ。地上を見たことが無くて、そこでの暮らしを夢見る彼等と、地上を知ってそこで暮らして、でもそこから追いやられた俺じゃあ。

 

「ハルっち・・・・・あいつだって悪い奴じゃないんだ・・・・・許してやってくれないか?」

『・・・わかってるよリド。』

 

彼らの願いを叶えてやりたい。なぜそう思うのか・・・・・それはきっと、友情とかそういったものが欲しいんだ。叶えた結果貰える彼等の喜びの感謝の気持ちが、きっと欲しいんだ。

 

『少しづつでも進めていこう。』

「・・・・おう。」

 

そう言って歩き出す俺の耳には、確かに氷が罅割れるようなパキッという音が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、バベルの塔に来ています。お買い物ですから、きっと可愛い洋服とかを買うのかと思っていたんですが・・・・・流石は冒険者です、真っ先に選ぶのは武器と鎧なんですね。

 

「妖夢殿!!!これは如何ですか!?」

 

お店に入ると同時に駆け出した命と千草、そして数分もしないうちに防具や武器を私の前に持ち寄ります。そして「ぐるるる」「ふしゃー!」と争うんです。正直これを見ているだけで1日を終わらせられるほどに面白いですが、それは可哀想なので私も真剣に2人の持ってきたものを吟味します。

 

「ふむふむ・・・・・」

 

今回の命が持ってきたのは1振りの剣。剣の内側に穴が幾つも開いているようです・・・・・相手の剣を捕らえて奪う目的なのでしょう。しかし、私が戦うのはモンスターのはず、このような剣を持ってこられても・・・・・。

 

しかし、あの子と私の記憶には確かに驚く程に対人戦の記憶が多いのです。それこそモンスターよりも戦ってる気がします。なので命はそれを踏まえて持ってきたのでしょう。

 

こう見えて剣選びには自信があります。あの子と記憶を取り戻す前の私は苦手だった様ですが、伊達に剣に囲まれて育った訳では無いのです。という訳でこの剣の切れ味は非常な悪い事がわかります。

 

「切れ味が悪そうですね・・・・・」

「妖夢ちゃん!!これは!?」

 

私が残念ながら、と命に返すとしょんぼりしながらも、すぐ様再起動して次の物を探しに向かってしまいます。そうすれば入れ違うように千草がやって来て今度は軽そうなバックラーを渡してきました。

 

ふむふむ、バックラーですか。小さくて使いやすいバックラーですが、盾としても、武器としても使える優秀な装備です。小さいので盾として使うには若干の練習が必要ですが、どうやら私はタケに教えこまれているようで使い方も完璧です。

 

しかしながら私には盾の善し悪しなんて分かりません。正直中身とか見ないとわからないと思うんです。なぜ千草は見抜けるのでしょう・・・・・あ、透視能力がありましたね・・・・・!ならば信用度は高いでしょう、うん、高いはずです。

 

「これは買いですね!」

「いー!ヤッッッターーー!!」

 

そ、そこまで喜んでいただける様な事なのでしょうか?対照的に、地面に座り込み体育座りしながらへのへのもへじを描く命。私は若干苦笑いですが、そんな命の姿も愛おしいと思います。

 

「ねーねー!妖夢ちゃん、これはどうかな?」

「みょん?」

 

呼ばれる声に振り向くと、リーナさんが私に向かって「ちょいちょい」と手招きしています。何か面白いものでもあったのでしょうか?

 

「どうかしましたか?」

「これこれ!面白そうじゃない?リーナさんは好きなデザインだよ!」

 

そう言って指さすのは・・・・・なんでしょうか?・・・・・えっと・・・・・竹槍の先端が・・・・・タケノコ?

 

「えーっと・・・・・タケノコ?ですよね?でもタケノコって竹の先端には生えない筈じゃ・・・・・」

「いいじゃん!美味しそうだもん!」

 

あ、そこですか。リーナさんの人間性を再確認しながら、乾いた笑いを上げる。

 

「・・・・・ふむ・・・・・どうだ?これは・・・・・うーむ。少し装甲が薄いか?・・・・・しかし、これ以上に重厚な鎧は此処には無いし・・・・・」

 

リーナさんが竹の子やりの購入を検討している中、するりと抜け出した私は、何やら唸っているアリッサさんを見かけました。どうやら自分の求める性能の鎧がこのお店には無いようです。すると私の脳裏を一人の人物がよぎります。ヴェルフ・クロッゾ。どうやら魔剣鍛冶師で、腕は非常にいいようです。更には私と契約を結んでいたらしいです。

 

それは不味い、と千草の方を見ますが、バックラーを嬉しそうに抱き抱えていて、とてもでは無いですが「契約していた鍛冶師を思い出したからそれは要らない」なんて言えません。バックラーの事は仕方ありませんが、アリッサさんの鎧や、私の他の装備はヴェルフさんに頼むとしましょう。・・・・・呼び方はヴェルフ、ですね。なんであの子は人を呼び捨てにする事が多かったのでしょうか?

 

「アリッサ?」

「む?妖夢か、どうかしたか?」

「いえ、アリッサが鎧で悩んでいるようなので、ヴェルフの元に行けば解決できるのではと思いまして。」

「ヴェルフか、あの時鎧を手直ししてくれた」

「・・・・・そうです、その人ですよ」

 

記憶を辿ればどうやらアリッサとヴェルフは顔見知りのようです。円滑に進められそうで良かったです。結局このお店ではバックラー(2万ヴァリス)竹の子槍(6万ヴァリス)その他研ぎ石など(5万ヴァリス)を買い、終了です。

 

「ではヴェルフの元に向かおうと思うのですが宜しいですか?」

 

少々丁寧に言葉を選びます。ですがそれだと違和感を与えてしまうので、少しだけいたずらっぽい笑みを浮かべておくと、お巫山戯してるんだな、と思ってくれます。実際はまだ記憶の整理がついてないので中々砕けた感じに出来ないだけですが。

 

「リーナさんは満足してるから何処でもいいよー!」

 

と竹の子槍をもって御機嫌なリーナ。・・・・・先端が欠けてますが・・・・・食べれたんですか?それ。

 

「私も異議は無いです。」

「私は妖夢ちゃんとお出かけなら何処でもいいよ!」

「むしろお願いしたいくらいだ。彼の腕は信頼できる。」

 

命は微笑みながら、千草は抱きつきながら答えてくれます。アリッサは少し頭を下げてますが、鎧で顔が見えないのでどんな表情なのかはわかりません。喜んでくれているといいのですが・・・・・。

 

「では行きましょー!」

「「「「「おーー!」」」」」

 

平均身長が150に届くか届かないか、と言う低身長組である私達を街ゆく人々が微笑ましく見ていますが、この時の私は気がついてません。アリッサが「人の視線が怖いな。この中に敵が混じっていたら・・・・・守れる、守るぞ絶対」と小さく決意しているのを聞いて初めて気がついたのです。

 

さて、この中でもメキメキと成長して、私達の中でも最高の身長とプロポーションを誇る命、まるでお姉さんです。実年齢では私が大きく勝りますが、あの子が居なければ私の精神年齢は外見相応、つまり私は家族の中では妹という訳ですか・・・・・。あっ!お母さんかも!

 

さてさて、そんなことを言っている間にいつの間にかヴァリス・・・・・じゃなくてヴェルフさんの工房にやってきました。カンカン!と速いリズムで金属音がします。仕上げの最中でしょうか?

 

「失礼します。妖夢です。ヴェルフ今時間空いてますか?」

 

音がやんだ所を話しかけ、ヴェルフさんに確認をとると、間もなくして工房の扉が開き、ダリルさんより来い紅い髪のヴェルフさんが顔を出しました。

 

「よお!みょんきちか!・・・・・あー、この前は悪かった・・・・・!」

「「「「「みょんきち?」」」」」

 

私を含め全員が頭にはてなを浮かべます。が、少し記憶を辿れば、ヴェルフさんが私の事をみょんきちと呼んでいたことにたどり着きました。

 

「あ、はい。私みょんきち。です?」

「ほんと悪い。怒ってないか?」

「怒るようなことしたんですか?」

「・・・・・あぁ。」

 

首を傾げる私と、頭を下げるヴェルフさん。記憶を辿れば・・・・・おぉ・・・・・ど、どうやらヴェルフさんは私を殺そうとしてたみたいですね、原因は私の様ですが。勘違いって怖いんですね。

 

「えっと・・・・・何も無かったんですよ。アレは夢みたいなものですし」

「そう言ってくれると助かるっちゃあ助かるんだが・・・・・納得がいかないんだよな。」

「えと、じゃあ皆の武器とか鎧作ってくれます?」

 

私がそう言えばヴェルフさんは顔を輝かせて頷きます。

 

「あぁ!任せておけみょんきち!」

 

その後はみんなで、あーでもない、こーでもないと話し合い、それぞれの鎧や武器を決めたのです。

 

 

「全部完成させるのは・・・・・3日くらいかかっちまうんだが・・・・・いいか?」

「はい。・・・・・はい?え?大丈夫ですか?速すぎませんか?」

 

ちょっと何言ってるか分からないので思わず聞き返す。五人分の新装備を3日?食わず寝ずでずっと打ち続けるつもりでしょうか?

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

これが鍛冶馬鹿と言うものですか。

 

「は、はい、分かりました。」

 

本人が大丈夫だと言うのなら大丈夫なのでしょう。私達は次の場所に向かいます。次は食事に向かうようですね。どこに行くのかを話し合いながら、取り敢えずは中央広場に向かいます。そこからならどこの方面にも行けますからね。

 

「う〜ん、じゃあ・・・・・クルメちゃんの所に押しかけるというのは!?」

「仕込みの邪魔をするつもりか?」

「僕は、あの子の料理を!また!たべたいっ!」

「力説しなくていい。」

 

竹の子槍を振り回す危険人物なリーナさんは、アリッサさんに頭をこずかれて「うにゃぁ!?」とへんてこな悲鳴を上げて、命の裏に隠れます。何を隠そう命はこの中の最高身長、技量だってアリッサさん、よりも上です。いくらか技も使えますし、アリッサさんに負ける事は無いでしょう!家族贔屓なんてしてないですよ!

 

それにしても・・・・・クルメさんの料理ですか・・・・・記憶にはあるんですが、舌には残っていません。是非とも食べてみたいです・・・・・しかし、今しがたアリッサさんの言ったとおり、邪魔をするわけには行きません。どうしたものでしょうか・・・・・。

 

「うーん、みんなでクルメちゃんのお手伝いして上げれば食べられるんじゃないかな?」

 

と千草。

 

「ふむ、それもアリかも知れませんが、私達には【料理】のアビリティが有りません。邪魔なだけでは?」

 

と命。

 

「命殿の言う通りだ。・・・・・それに、私は余り料理が得意では無くてな・・・・・」

 

とアリッサさん。

 

「ふっ。僕に全てを任せれば何かすごい料理を作れるよ!」

 

とリーナさん。取り敢えずリーナさんは置いておくとして、クルメさんの工房に押しかけるのはやはり気が引けます。あの子が帰ってきて、のんびりする時間があったらお邪魔するとしましょう。

 

「豊穣の女主人でいいんじゃないですかね?」

 

私は記憶を辿り、割と利用していた施設を発見しました。あの子は可愛い子が沢山で最高!との評価を下していましたが・・・・・若干気になります。なので皆さんに提案をした次第。

 

「私は妖夢ちゃんと一緒なら大丈夫!」

「ファミリアも潤ってきましたし、多少の贅沢は問題ないはず。」

「豊穣の・・・・・?あぁ、マシューがよく連れていかれる所か。」

「あるぇ?リーナさんは無視なの?リーナさんの手作り料理は無視?ねーねー!・・・・・僕は、負けないぞ。皆から冷たくされたって負けないからなぁ!」

「はぁ、お前は何と戦ってるんだ。」

 

まぁそんなこんなで豊穣の女主人に突入です。

 

「いらっしゃいませにゃ〜!ニャニャ?妖夢ちゃんではありませんかニャ。何名様ニャ?」

 

ニャーニャーと言っている猫さん、名前は・・・・・え?クロエ?アーニャ?・・・どっちですか?

 

「えっと5人です。」

「了解ですにゃ!5名様ごあんなーい!」

 

 




後書き〜。

次回はリーナとクルメが主役?なお話です。グルメリポートさせようとしたら何か違った。何を言ってるかわからないと思うが俺も何を言ってるのかわからない。

全く関係ない落書き攻撃。

色無し白黒ダリルさん。と言うかほんとに落書き

【挿絵表示】


ドーナッツ齧るリーナさん。

【挿絵表示】



あ、ちなみに最終西行妖は、即死耐性無視、蘇生不可能、消滅。の効果です。ゴライアス如きでは耐えられない一撃。

即死を強引に押し付けて、その上蘇生されないように消滅させる。というかんじですね。

ジョジョのあの人とか、アインズ様とかの方がお得感がある。だって発動早いもの。


あとステイタス高すぎねぇ?って思った方。アンチノミーが発動していたので無駄なく経験値を使えているためめっちゃ伸びてます。ランクアップ自体は最後の詠唱する前にしてます。

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