オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

63 / 91

遅れて申し訳ないです。シフシフは焼き土下座も辞さない覚悟。

今回の内容は

幻想郷視点

本編、鬼ごっこ

となっております。シリアスです。え?鬼ごっこなのにシリアス?だって?そうです、シリアスですよ。シフシフはもう嘘はつかないのです。

え?幻想郷視点?ネタですよ、ネタ。


では、楽しんで読んでいただければ幸いです。










62話「お父さん!帰りましょう!私達のお家はこっちですよっ!」

此処は幻想郷。全てを受け入れる残酷な世界であり・・・・・・・・・・同時に微笑ましい場所でもある。これは第1話の幽々子達の視点である。

 

「ねぇ、妖夢ちゃん平気かしら?」

 

「はぁ、幽々子。貴女は何時まで同じ事を呟くの?」

 

「幽霊ですもの、一つのものに囚われやすいの」

 

「はいはい。わかったわ。」

 

「見せてくれないの?」

 

「何が見せてほしいのかしら?」

 

「意地悪なのね」

 

「気が利かないのよ。」

 

片や口元を扇で隠し、片や頬を膨らませ講義する。ちなみに時間は大きく遡っている。具体的には妖夢をダンまち世界に送りだしてから数分後だ。

 

「私は妖夢ちゃんがどうなったか知りたいのよ」

 

「まだどうなったもこうなったも無いわよ。今送ったばかりでしょうに。」

 

「分からないわよ?何かに襲われてるかもしれないじゃない」

 

「可愛そうな妖夢。信用されてないのね」

 

「信用しーてーるーわ〜っ」

 

「ジタバタしてもダメよ。あの子のためなのでしょう?」

 

「じゃあ今から私のため。」

 

「・・・・・。」

 

紫は呆れた目線を幽々子に送る。そして扇子をパチン!と閉じて、幽々子の頭に振り下ろす。

 

「いでっ!何するのよ〜!痛いじゃな〜い!」

 

「プッ・・・・・。はぁ、ほら、匂いを嗅いでみなさい?」

 

「わぁ、凄い加齢臭!ウッ!?いった〜い!!」

 

「私の匂いじゃない!付け加えれば私は臭くないわよ!桃みたいな香りでしょ!?」

 

「ババくさ痛い!?」

 

「いい加減怒るわよ?」

 

「(。í _ ì。)ハーイ」

 

なかなか話が進まないものの、幽々子は仕方なさそーに匂いをかいだ。すると・・・・・

 

「∑(๑º口º๑)ゴハンノニオイ!?」

 

と一気に駆け出しヘッドスライディングで座布団に飛び込み、宙返りしながらキチンと正座して座る。

 

「 (๑`•ㅁ・´๑)✧早く座りなさいよ紫。」

 

「コ、コイツ・・・・・!!」

 

「怒ったって体力の無駄よ。今は食べる時。蓄える時なのだから。」

 

「殴っていいかしら?」

 

「暴力は何も生まないの。産むのは卵だけにしなさい紫」

 

「産まないわよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くの時がたって、2人は再び会話していた。

 

「さて!紫!本題に行くわ!」

 

「帰りたくなってきたのだけれど」

 

「なんだかんだ言っても付き合ってくれる紫ちゃんマジ天使」

 

「はいはい、で、覗き見したいんでしょう?」

 

「話が早い。」

 

二ターと笑みを深めた幽々子にものっそい呆れためを向けて、紫は隙間を開く。そこに映るのは妖夢の姿。アワアワアワアワアワアワ。ひたすらに慌てふためきながら森の中を悪戯に徘徊している。

 

幽々子が何やら真剣な眼差しになった。それに、紫もだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ、紫」

 

「えぇ、わかっているわ。」

 

大妖怪の確かな覇気。もしも近くに人間がいたならばひっくり返って泡を吹いたあと、吹いた泡の勢いで空を飛べただろう。それほどの真剣さ。・・・・・先程までのギャップを含めてのものだが。

 

「「か、可愛い・・・・・・・・・・!!」」

 

「いつまでも眺めて痛い・・・・・!」

 

「可哀想でしょうが。とは言え、あの子のためなら私は何もしないわ?約束通り10年後に迎えに行けばいいんでしょう?」

 

「ええ!そうよ。・・・・・そうなの、そうなんだけれど・・・・・あー!可愛い!抱きしめたい!と言うか抱きしめる!」

 

「させるか」

 

「くっ!なんてこと!私を止められるのはりょうりだけなのよ!」

 

「幽々子様、デザートです」

 

「٩(๑>؂<๑)ハイ!」

 

「「(ちょろいな)」」「(美味いな)」

 

3人がそれぞれそんなことを思いながら、隙間から妖夢を眺める。

 

「ん?」

 

幽々子が何か異変に気が付いたようで、小さく疑問の声を上げた。妖夢がキョロキョロとあたりを見渡したあと、まるで初めて出会ったかのように半霊を撫で回したりし始めたのだ。

 

「・・・・・これは・・・・・」

 

「どうしたの?」

 

「いえ・・・・・いいの。」

 

その後妖夢は木に寄りかかり、眠りについた。半霊を抱きしめて身を小さくする妖夢に、妖忌はハンカチが手放せない。

 

「ふむ、半霊を抱いて寝る癖は治ってませんなぁ。治すように言ったのですが」

 

「あら、良いじゃない、そういう所も可愛らしいわ。ね?幽々子」

 

「ええ。(気のせいかしら?)」

 

何故か頭から離れない違和感に、幽々子は何時までも首を傾げる。そして、その様子を紫はしっかりと見ていた、腹に抱えた爆弾は幽々子にとって余りに大きいネタだ。ここぞという時に爆発させたい。と言うか仕返ししたいのだ。

 

「(気が付いたかしら・・・・・出来れば気が付かないで欲しいのだけれど)」

 

「ねぇ、紫。」

 

「何かしら?」

 

「やっぱり臭くない?」

 

「・・・・・殺されたいのかしら」

 

「死ねるのかしら?」

 

「無理でしょうねっ」

 

互いにさぐり合う大妖怪。その横で妖忌だけは全力で妖夢に声援を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────本編───────

 

 

夕暮れ時、妖夢は走り回っていた。理由は言わずもがな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鬼ごっこである。

 

鬼ごっことは。鬼役と人役に別れ、追いかけっこを行う遊びである。単純だが、それゆえに戦術も多い。さらに言えばこう言った街中での鬼ごっこは、地形や時間帯によって逃げやすさ、隠れやすさが変化する。

 

単純だから、難しい。難しいから面白い。

 

だが・・・・・・・・・・例えば鬼ごっこの鬼が武神であったなら、こんな事もあるかも知れない。

 

「みょおおおおおおおおん!!」

「フハハハハフハハハハ!!待てぇい!待て待て!」

「縮地やら鯨飛びやらを使いまくって!なにが!鬼ごっこですか!鬼は縮地なんかしません!」

「ハーッハハッハ!勝てばよかろうなのだぁあ!」

 

ビュ!と言う音と共に、タケミカヅチが妖夢の肩を触ろうと縮地を使用するが、妖夢は大きく跳躍し、家の壁を蹴り屋根へと着地する。

 

「はぁ、はぁ!」

「妖夢ちゃんこっち!早く早く!」

「千草ぁ!お前もいたか!捕まえるぞぉ!」

「ひやぁ!?あぶなぁ!?」

 

イナズマを描くようにビュンビュン縮地を使用して、縮地の筈なのに、よく分からないけれど3次元移動をしてくるタケミカヅチ。本人曰く「空気も蹴れれば地面と変わらない」との事。

 

千草と妖夢がギリギリで屋根から飛び降りて路地を駆け抜ける。

 

「はぁはぁ、千草!あと、何人、残って!ますか!?」

「ひゃ!あ、後は!多分!5人!っんあ!!」

「逃げるの上手いなお前達!お父さんは嬉しいぞ!」

「「ひぃいいい!」」

 

妖夢は身体能力が無ければ捕まり、千草はその持ち前の視力が無ければ対処出来ない。ギリギリの戦いの中、絶望は訪れる。

 

「「!?」」

「ふっ。リーナさん登場!僕の結界で動きを遅くしてあげたよ・・・・・!」

 

鬼ごっこ。これには沢山の種類がある事をご存知だろうか?そう、例えば凍り鬼。捕まればそこに固定され、助けてもらうまでは動いてはいけない、という鬼ごっこ。

 

いま、妖夢達が行っている鬼ごっこは『増え鬼』又は『増殖鬼』と呼ばれる鬼ごっこだ。要するに、鬼に捕まった人は鬼となり、後半になればなるほど鬼が増え、生存が難しくなる鬼ごっこ。主に人数が多く、ゲームが終わらない可能性がある場合に用いられる。

 

そう、リーナもまた『鬼』。身体能力が低い彼女が鬼にならないはずが無い。何故ならば、勝たなかったら罰ゲーム。買った場合は御褒美が待っている。負けられない戦いはいくらでもあるのだ。

 

「よぉくやったぁぞぉ!りぃなぁ!」

「あっ、タケミカヅチ様まで遅くなってる。」

「ふぅっ、たぁけもおぉそぉくぅなぁってるなぁらぁ、わぁたぁしぃのぉほぉうぅがぁはぁやぁいぃはぁずぅ!」

「にぃげぇるぅなぁぁ!」

「にぃげぇまぁすぅよぉ!ちぃぐぅさぁ!」「りょぉうぅかぁいぃ!」

「しゅぅくぅちぃ!」「しゅぅくぅちぃ!」

 

全体的にスローモーションになった3人がスローモーションで駆け抜ける。リーナは頭に汗を浮かべてそれを見守った。

 

「ぷはぁ!抜けた!逃げますよ千草!」

「うん!」

「まぁてぇ!くっぅそぉお!うぅごぉきぃがぁ・・・・・!くっ!抜けたか!差をつけられたな・・・!はぁ!」

 

何とか抜け出した3人が再び鬼ごっこを始めた。なんと三人全員が縮地を使用して駆け回るという暴挙。

 

「しつこ過ぎる・・・・・!なにかまく方法は・・・・・!」

「妖夢ちゃん!これを使って!!」

「・・・・・これは?!」

 

千草が胸元から丸い球体を取り出し、妖夢に渡す。

 

「煙玉ですか!」

「正解!」

「タケ!プレゼントです!」

「おっ気が利く・・・・・ん?」

 

ぼフン。という音と共にタケミカヅチが煙に包まれる。今だ!と全力で逃げる妖夢と千草。ちなみに命はとっくに捕まっている。

 

「はぁ!はぁ!どうして、こんなことに、なったんだっけ?!」

「そんなの!分かるわけ!ありませんよ!」

 

本人達は良く知っているが、思い出したくない。この久しぶりキッツイ修行と化した『戯れ』は、元はと言えば妖夢が提案したのだ。ただ単純に「タケミカヅチに甘えたい」が故に。

 

 

 

 

時は遡り、午前。

 

タケミカヅチを除き、妖夢達は居間に集まり会議していた。

 

「・・・・・という訳なのです」

「「「なるほど」」」

 

妖夢は語った。せっかく生きて帰ったのだから、親孝行も兼ねてタケに甘えましょう!と。そこから即理解、即会議である。タケミカヅチ大好きっ子の4人組は、アーでもないこーでもないと案を提示していく。

 

「やっぱり鍛錬じゃないか?タケミカヅチ様だし、喜んでくださるだろう」

「桜花殿、それでは甘えられていません」

「・・・・・確かに、鍛錬で甘えさせてくれる神では無いからな」

 

桜花は鍛錬を推した。しかし、武神が鍛錬で甘えさせるなど有り得ないと提案は蹴られる。

 

「ならば将棋は如何でしょうか皆様」

「軍神相手に将棋ですか・・・・・勝てる気がしませんね」

「む・・・・・確かに・・・・・」

 

軍隊の戦いを駒を用いて再現する将棋では、軍神が甘えさせてくれるとは思えない。と命の案も蹴られる。

 

「うーん、一緒にお買い物?」

「ん、悪くは無い。が、何だか甘えられてないような気がするな・・何でだ・・・?」

「買うのが私達だからでは?」

「そ、そうか?」

「甘えると言うか、貢ぐというか・・・・・」

 

お買い物。本来なら父や母に欲しいものをせがみ、買ってもらうのは「甘え」だろう。だが、残念なことに金を稼いでいるのは妖夢達だ。これでは「甘える」という行為とは違うだろう。

 

「むー、もう鬼ごっことかで楽しく遊ぶしかないのでは?」

「鬼ごっこかー、そうは言ってもな、どこでやるんだ?」

「え・・・・・ま、街中とか?」

「街中って・・・・・」

 

うーむ、うーん、えーっと、とそれぞれが唸る。いざ甘えようと思った時一瞬にして甘える案が出る人物達では無い。なにせ皆真面目で実直なのだから。良くも悪くも「いい子」なのだ、タケミカヅチに迷惑になるような行為が簡単に出てくる訳では無い。

 

甘えるとは迷惑をかける事だ。それゆえに絞り出せない。

 

「くそー、どうする?」

「うーん、やっぱり鬼ごっこでいいのでは?」

「隠れんぼとか?」

「タケミカヅチ様の身体能力でそれはきついだろう。」

「え?(鬼ごっこ提案を思い浮かべながら)」

「え?(タケミカヅチの移動速度を考えて)」

 

その後もグダグダと考えて、結果的に「鬼ごっこ」に決まったのだ。

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

「ふっ!あれで撒けたと思ったか!武神舐めるなよ!」

「油断も慢心もせずに全力でやってこれなんですが!?」

「そうですよ!?」

「隙あり!」

 

律儀にもツッコミのために若干後ろを向いて速度が落ちた2人にタケミカヅチが迫る。

 

「うわっ」

「千草!?」

「貰った・・・・・!」

 

千草がタケミカヅチを避けるために踏みしめた屋根がズボりと抜ける。もちろん千草は一瞬動けなくなり、タケミカヅチがそこにタッチする。

 

「ひゃ・・・・・!あ、あわわ、あわわわわわ・・・・・!?」

「おっと、すまん。落ちるのを防ごうとし」

「きゃぁああ!」

「アベシッ!!」

 

それ以上落ちるのを防ごうと両手を伸ばしたタケミカヅチ、しかし、運が良かったのか悪かったのか、片手が千草の胸に触れ、逆鱗に触れたようだ。レベル3の殺人的ビンタが迫り・・・・・いや、完全に命中し、その衝撃を首だけでほとんど殺しきって吹き飛んでいく。

 

「千草が・・・・・やられた・・・・・?くっ!千草!あなたの勇姿!忘れません!」

「お願い忘れてぇぇえええ!」

 

真っ赤になって体を抱きしめる千草を置いて、妖夢は夕日に光る涙を散らしながら駆け抜けていく。

 

(捕まる訳には行かない・・・・・!・・・・・ん?てか何で私は鬼ごっこ何かに興じて・・・・・?いや、私が提案したんですけどね?絆は大切です、でもそれよりもハルプを探した方が問題の解決は早急に行えるはず・・・・・。ハルプを通して説明してもらえば全て解決する筈なのに。)

 

「余所見とは余裕だな、妖夢。」

「なっ・・・・・!」

 

いつの間にか。目の前にいる。そんな恐怖に晒された妖夢は固まる。その硬直にタケミカヅチが顔をしかめた。・・・・・前までは、このようなことが起きてもすぐさま行動に移せた筈だからだ。前とは違うと、知識だけでなく実感もした。

 

「・・・・・。」

 

何も言わず肩にタッチする。妖夢は捕まった。あっさりと。

 

「つ、捕まってしまいました・・・・・。あ、アハハ。」

 

少しだけ怯えたような顔でタケミカヅチの顔色を伺う妖夢。その事にタケミカヅチは申し訳なくなって、急いで表情を戻す。

 

(受け入れなくてはならない。目の前にいるのが俺達の知る妖夢でなくても、妖夢である事に違いはない。受け入れるんだ。)

 

タケミカヅチの頭にむかしの記憶が蘇る。妖夢はタケミカヅチこう言った。

 

────

 

「私たちは家族なんですよね?なら私は許します。家族なら言い合いだって喧嘩だって物の取り合いだってきっとするでしょう、でも、家族なら最後はきっと手を取り合って仲良く出来るはずです。」

 

「本で読みました、例え血が繋がってなくても家族にはなれるんだって。えへへ、俺達がお前の家族だって言ってくれた時は嬉しかったです。」

 

「そんな顔しないでください、大丈夫です今までが違うなら私達で作ればいいんですよ。そうですねぇ・・・タケがお父さんで、命がお母さん、桜花が長男で、私が長女、千草は妹です。どうです?」

 

──────

 

(俺は・・・・・この後約束したんだったか。家族だと。・・・・・なのに俺は、アイツの心情を無視してファミリアを大きくした。ファミリアが大きくなって安定すれば、きっとみんな喜んでくれると、そう思っていた。)

 

タケミカヅチは拳を握り込む。血が出るほどに強く、握り込む。妖夢が目を見開いてタケミカヅチの顔と手を交互に見比べる。

 

「た、タケ?」

 

(けれど違ったんだな。・・・・・小さくて良かったんだ、狭くてよかったんだ。・・・・・苦肉の策だったんだろうな、ファミリアの分割は。あれすら俺は蹴りかけた。非効率だし、面倒だったから。・・桜花たちは、そんな妖夢の考えを察して無理にでもあの案を通したんだろう。)

 

「俺は・・・・・ダメな父親だな。娘の気持ちもわからないなんて・・・・・」

 

タケミカヅチは沈み込む。子は親に似るという言葉がある様に、彼は真面目で実直だ。しかし、沈み込むタケミカヅチの頭を妖夢がそっと抱きしめた。

 

「そんな事はありませんよ。貴方は私達のお父さんです。私も、あの子も、タケ以外のお父さんは知りませんから。」

「どういう、事だ?」

 

妖夢はタケミカヅチの頭を抱きしめながら悲しそうに、懐かしそうに言葉を紡ぐ。

 

「私にも居ないんですよ。お父さんが。知らないんです、顔も声も、何も。居たと言う事実が有るだけです。あのこと同じ、あの子も何も思い出せないんです。」

 

ふふ、と妖夢は少しだけ嬉しそうに笑った。

 

「一緒、ですね・・・・・少しだけ嬉しいと思ってしまいました。でも、あの子は嫌がるかな・・・・・」

「そんな事は無い、ハルプならきっと『一緒だな』と笑ってくれる。」

「あはは、そうですね。きっと、そうですよ。」

 

さて、と妖夢はスカートが花開くように、くるりと回りながら1歩下がる。そしてタケミカヅチに手を差し伸べた。

 

「お父さん!帰りましょう!私達のお家はこっちですよっ!」

「は、ははは・・・・・。適わないな、全く。妖夢は妖夢だ、昔も今も変わってそうで変わってない。」

「むー。なんです?それは。なんだか褒められている気がしません!」

「ははは!悪い!お願い聞くから許してくれ!」

「えへへ、はい!了解です!味噌汁にトウガラシ入れときます!」

「いや何で!?懐かしいけどな!?」

 

夕日が沈む。けれど、人の営みは終わりはしない。きっと朝まで騒ぐのだ。隣の家がなんだ、モンスターがなんだ。自分の武勇を大げさに語り、誰かの痴態を笑う。

 

この街は楽園だろうか?

 

その問に多くは頷くだろう。けれど、頷かない者も確かにいる。

 

見えているのは表舞台のみ。見えない裏は悪が好きなだけ蠢いている。

 

この街は楽園だろうか?

 

この問にあるものは首を振った。此処は魔境だ、魔物が常に足元に居て、冒険者達はいがみ合う。殺し合い等いくらでもあるのだ、楽園な筈がない。

 

 

 

 

 

「とっ、殿方の鎖骨ぅ〜〜〜ッ!?!?」

 

・・・・・果たして彼女にとって此処は楽園か否か。鎖骨を見るだけで気絶するほど男に耐性のない娼婦は1人の人物を待ち続けていた。

 

気絶した彼女はいつも同じ夢をみる。初めは気絶する前に見た男との秘め事をする夢、そしてその後必ずこの夢を見るのだ。

 

「春姫、ですか?」

「はい、わたくし、春姫と言います。・・・・・おっ!お友達になってくだしゃい!」

 

それはとある少女と彼女・・・・・春姫が少女の友達になった日の夢だ。

 

「・・・・・どうしてですか?まだ出会ったばかりですが。」

「わ、わたくしっ!お友達が欲しくて・・・・・!」

「友達とは絆を結んで初めて出来るのです。・・・・・焦らずゆっくりと仲良くなりましょう!」

 

焦る春姫を宥めて少女は優しく微笑む。頭を撫でられる感覚に春姫はその表情をだらしなく崩す。赤くなる顔に少女が眉を八の字にまげて「しかたない」とでも言うように笑う。

 

「は、はい・・・・・。今日は何をしますか?」

 

ハッとして恥ずかしくなった春姫は少し間を置いて真面目な顔で話しかける。それに対し少女は微笑みを隠さずに対応する。外見では殆ど変わらないような少女が、まるで大人のようでかっこよく見えた。

 

「今日は、そうですね・・・普段は何をしてますか?」

「えっと、お化粧の練習とか・・・・・」

 

え、私やったことないですそれ・・・・・と小さな呟きが聞こえた。だから春姫は教えてあげることにしたのだ。

 

「なら、わたくしが教えて差し上げます!」

 

そこから彼女達の友情は始まったのだ。恥ずかしがって逃げようとする少女をどうにか説得したり、頑張って捕まえたりして、教えて、教わった。

 

「これは・・・・・カチューシャですか・・・・・」

「はい!・・・・・わぁ、とってもお似合いですね!」

 

黒目がカチューシャに目をつけた少女にそれを贈り物にしたりもしたのだ。春姫にとって最も幸せな時期だった。命、千草、桜花、そして少女。

 

「ほ、本当ですか?」

 

腕を後ろで組んで、恥ずかしそうに春姫をみる少女。

 

夢は、ここで変化する。

 

家からの勘当。そして乗せられる馬車。ほんの小さな出来事で、春姫は少女と達とお別れをしなくてはならなくなった。

 

馬車を見送るものは少ない。命に千草、そして桜花の3人だ。「友達」の3人だった。春姫は少し沈んだ。

 

少女は・・・・・「友達」には無れなかったのだろうか、私が嫌いだったのだろうか。そんな思いが離れない。

 

カタガタと揺れる馬車内で涙をこぼしていた時、その声は聞こえてきた。

 

「・・・・・・・・・・むです!・・・・うむです!」

 

揺れる車内を四つん這いで突き進み、外に顔を飛び出せば、馬車に追いつこうと走る少女の姿が。

 

「妖夢です!魂魄妖夢!私の名前です!春姫!」

 

はしりながら、息も絶え絶えで必死に名前を叫ぶ。そんな妖夢に春姫は涙を流す。

 

やっと教えてくれた、と。

 

「・・・・・覚えました。覚えました!妖夢様!」

 

春姫がそう言えば、妖夢は安心したように速度を緩める。そして、声が聞こえる内にと、大声を張り上げる。

 

「私は!あなたの事!お友達だって思ってますから!」

 

妖夢そう言って大きく手を振る。春姫は涙を袖で拭って手を振り返す。

 

「「また会いましょう!」」

 

簡単な約束を一つ残したままに、馬車は走り続ける。

 

 













さて、なんだか伏線が増えてきましたね。可笑しいなぁ、なんで回収しようとすると増えるのか・・・・・。

次の話はハルプ視点、からのタケミカヅチからの妖夢の説明会となっております。

ハルプの能力が唐突に明らかになりますよ。強引です。どんな能力なのかある程度バレてそうですけどね。

コメント、誤字脱字報告、募集してます!シフシフのモチベーションの為にも一肌脱いでくだされ٩(´✪ω✪`)۶

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。