オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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どうも、シフシフです。64話です。ほのぼの多めです。しかし、やはりほのぼのが苦手なシフシフなのです。すまぬ・・・・・文才無くてすまぬぅ。自分の小説見直すと句読点とか抜けまくってて笑えます(直せ)

あと、ラストに挿絵載せます。妖夢です。次話にはハルプを載せるつもりです。両方、所要時間は30分~五十分位なのでクオリティはお察し。









64話『ここか?ここがいいんか?うししし。』

【リクエスト】『再会』

 

 

 

 

私は今、暇をしている。1日の鍛錬は終わらせたし、これ以上やっても意味が無くなるだろう。・・・・・しかし、現在ダンジョンは入ることが出来ない。それにギルドからどんな要求をされるかわからない状況だ。ギルドから完全に目をつけられている私達タケミカヅチ・ファミリアは、目立つ行動を慎まなくてはならない。

 

「ふむ・・・・・」

 

もう既に書類整理も終わらせてあり、武器の手入れだって終わってしまった。やる事などそれこそ鍛錬しか・・・・・。

 

「いや、皆に会いに行くのも手か?」

 

一人で暇ならば2人。そういう訳だが・・・・・確かリーナとクルメは居ないはずだ。またオラリオを巡っているとか。

 

「まて。一人で飲む酒もいいものだ。」

 

そうだ、私はチビチビと一人でよく飲んでいたじゃないか。そして、その周りで冒険者達が騒ぐ。喧騒を肴に酒を飲むのはなかなかに楽しいものだった。まぁ最終的に私が止めるのだが。

 

「・・・・・行くか。・・・・・む、そうだ」

 

すこしお洒落というものをして見るか?今の今まで騎士甲冑ばかりだったが、町娘のような格好ならば知り合いにもバレることは無いだろう。うむ、なかなかいい考えだ。

 

 

 

 

 

 

そん理由で私は豊穣の女主人へとやって来た。ここは女性ばかりが店員であるから、女性も来やすい。もちろんそれら目当てに男性も多いが。

 

「いらっしゃいませー!」「いらっしゃいにゃー!」

 

軽く頭を下げて店にはいる。普段ならば奇怪なものを見る目が今日は無い。その事に気分を良くしながら席に向かう。

 

「店は初めてかい?」

 

おっと、店主ですら気付かないか・・・・・。うむ。うむうむ!・・・・・楽しいな。・・・・・っていかんいかん。返事を返さねば。っ!そうだ、声でバレる可能性があるな。ふむ・・・す、少し高めに出してみるか?

 

「あ、あぁそうなんだ。」

「ははは!緊張してるんじゃないよ!ここでは好きに飲んで、好きに食って、好きに騒げばいいのさ。もちろん器物損壊させたらぶちのめすけどね!」

「あ、あはは」

 

な、なんだこれは・・・・・!めちゃくちゃ恥ずかしいぞ・・・・・!?私が私じゃないみたいだ!

 

「で、誰か連れを待ってるのかい?」

「連れを?」

 

なぜそのような事を聞くんだ?

 

「随分とお洒落しているじゃないかい、男を待ってるんじゃなかったのかい?」

「なっ!?」

 

た、確かに・・・・・これはリーナに強引にプレゼントされた、お洒落な洋服セット・・・・・そう見えるかもしれない。しかし私に男の伴侶など居るはずも無い。

 

「図星じゃないか。まぁゆっくりと待つんだね。これはサービスだよ。」

「え、いや!ちがっ!!・・・・・行ってしまった・・・・・。」

 

そう言って美味しそうなツマミを置いて言った店主。

 

・・・・・ま、まぁ勘違いが起きただけ、実際に待っている訳でもないし・・・・・待てよ?これはもしや誰も来なかった場合・・・・・「あぁ、フラれちまったんだね」とか店主に言われるのではなかろうか?最悪だな・・・・・どうにかして回避を試みて・・・・・いや、どうやって回避するんだ。

 

「ご注文はお決まりかニャ?」

「む・・・・・取り敢えず水を1杯」

「了解ニャ」

 

くっ、どうする?どうすればいい・・・・・!

 

「いらっしゃいませー!1名様御来店ー」

 

ん?と私がふりむけば、入口には見知った顔が。名前はモルド、私が守ると誓った人の一人だ。彼もあの戦いを生き延びたのか・・・・・よかった。・・・・・私は守ると、そう大口を叩いた。しかし、人は死んだ、私の目の前で水晶に押しつぶされた、咆哮で砕けた。

 

やはり、やるせない。もっと、もっと良い結果があったのではと悔やむ気持ちが湧いてでる。もっと強ければ彼らを救えただろうに。

すると、モルドは周囲を見渡したと思えば私の隣に座った。急いで視線を逸らし、前を向く。

 

「なぁ、嬢ちゃん。」

 

私はチラリとモルドを見る。・・・・・失念していた。あの時、あの戦いの時に、モルドは私の素顔を見ている。西行妖と呼ばれる木が存在する不思議な世界で、肉体の無い、けれど肉体のある、そんな不思議な世界で私の顔を見たはずだ。

 

「・・・・・だんまりかよ。」

 

話せばバレるだろう馬鹿者め。

 

「まぁいいさ。・・・・・俺はよ冒険者なんだ」

 

知っているとも。初めは随分と荒れていたからな。

 

「だがよ、夢があるんだ」

「・・・・・?」

「へへ、気になるかよ」

 

横を見ないで前だけ向いて、モルドは語る。気を利かせた女将が度の低い酒を私たちの前に瓶ごとグラスと一緒に置いた。

 

「俺はさ、こんななりだが・・・・・騎士になりたかった」

「・・・・・!」

 

モルドが・・・・・騎士に?

 

「憧れてるやつがいたのさ、つえぇんだよソイツは。折れねぇ、曲げねぇ。仲間の為に傷ついて、平気な顔して強がって。盾になって怪我してもよ、次の冒険の時ゃあケロッとして鎧着込んでやがる。」

 

ふむ、驚いたが・・・・・モルドにもそのような奴が居たのだな。

 

「追いつこうと必死になったさ・・・・・けど、追いつけねぇんだ。どれだけ手を伸ばそうとも、アイツだけ先に行っちまう。アイツが憧れた『騎士』ってやつに俺もなりたかったんだがよ・・・・・」

「・・・・・・・・・・!」

 

き、騎士に憧れた者が・・・・・3人・・・・・?!騎士サークルとか作れるのではないだろうか!?円卓、円卓の騎士、円卓会議・・・・・くぅ!カッコイイなあ!

 

「・・・・・そいつがよ、嬢ちゃんに似てんだよ。」

「!?」

 

ば、バレているのか!?いや確証をえている訳では無いはず・・・・・

 

「はは、なわけないか。悪いな、こんなオッサンの語りなんざ聞かせちまってよ。」

「・・・」

 

ふぅ、よかった、バレていないようだ。・・・・・まてよ?似ている?私に?なおかつ騎士が好きで、モルド達を庇ったりして戦う・・・・・??み、身に覚えがあるぞ?

 

「名前は・・・・・?」

「そいつの名前か?てか、やっと話したな嬢ちゃん。まぁいいさ、ソイツの名前はアリッサ・ハレヘヴァング。俺の知る中で最高の盾で、最高の女だ。」

「っ〜〜〜〜〜!!!」

 

へ?え?あ、え?ええと、ん?!・・・・・あ、あわわわわわてててるななな!!何かが可笑しいろ!何かが!こんらの何者かの陰謀にきまつまてふ!

 

・・・・・くっ落ち着け私!思考すら噛むな!

 

こ!これはもしかしてプロポーズなのか!?(上擦った声)

い、いやしかし・・・・・私にはそんな考えはなくてだな。

 

「どうした嬢ちゃん、酒が回っちまったか・・・・・?」

 

なにが、どうした!だ!貴様のせいだぞモルド!危ない・・・・・私のキャラが崩壊する前に止めなくては・・・・・!

 

「ど、どんな所が最高?」

「えぇ?そりやぁ硬いだろう?まずはな、そして割と繊細で割と可愛いものが好きで、料理だって不味くはねぇ。それによ、最近知ったんだが、飛びっきりの美人でな」

「も!もう止めていい!」

「そ、そうか?」

 

くっどうする!?変なことを言えばその場で叩き潰して、ざんねんアリッサだ!とやるつもりだったが・・・・・!か、顔がヘルハウンドのブレスを受けたかのようだ!

 

「って、今の声・・・・・!?」

「そ、そうだ。私だ。ひっ、久しぶりだな」

 

店主!なぜそんな微笑ましそうに見ている!そしてモルド!貴様のせいだぞこの、この!この空気は!

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(白目)」

「な、なんだ、なんで気ぜつした。おい!起きろ!・・・・・起きろと言っている!」

「あだぁ!?いっでぇ!?」

「あのような事を言って!何が目的だ!」

「若い子がいたから雰囲気作りに利用しただけだからな!」

「本人にやってどうする!この愚かで不埒でどうしようもない奴め!」

「やめ!やめろ!店が壊れるだろうが!」

「はぁ!はぁ!くっ、確かにそうか・・・・・仕方ない、諦めるとしよう。しかし、許せんな。若い娘に手を出すだと?・・・・・はぁ、キュクロを見習ってもらいたいな、少なくとも手は出さなかったというのに。」

「あぁ?知るかってんだ。なんならお前でもいいんだぜアリッサ」

「・・・・・。」

「アリッサ?無言は肯定と取るぞ?うん?」

「はぁ、貴様は・・・・・これほど言って諦めないか、そうか、世のためだ殺すしかない」

「え?ええええちょっと待とう!少し待とう!それ刃物だからな、刃物だからな!!」

「てぇええええい!」

 

 

・・・・・2時間後

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・もういいだろうアリッサ・・・・・」

「あ、あぁ・・・・・流石に堪えるな。・・・・・・・・・・ふふ、だが、久しぶりに友とこうして駆けっこと言うのも、なかなか粋なものだな。」

「ヒールの癖に俺より速いとかマジで怖いからな?」

「これすごい走りにくいぞ?」

「そんぐらい見りゃわかる。・・・・・それによ、その格好。もしかして俺たちの知らない所ではよ、あんなふうに普通の女の子だったりしたのか?」

「いや、今日が初めてのお洒落だったな」

「・・・・・ほう・・・・・?アリッサの初めては俺だったわけだ」

「いや、リーナというエルフの女性だな」

「あ、はい。」

「それと、貴様の誘いだが、断る。なんだいきなり「妻になってくれ」とは。流石の私も呆れたぞ?」

「いやぁ、独身は辛いからよ」

「ふむ・・・・・そうだな、桜花団長を倒せたなら。でどうだ?」

「無理だろ、あのタケミカヅチ・ファミリアだぞ?あんだけ騒動起こしたと思ったら今度はダンジョンを崩壊させたらしいじゃねぇか」

「な、なんの話かわからないな」

「バレバレ過ぎるだろ、少しは隠せ。」

「ふふ、善処する。・・・・・さて、私はもう帰ろう。」

「そうかい、・・・・・じゃあな」

「あぁ。・・・・・どうだ、また一緒に冒険に行かないか?」

「・・・・・おう。」

 

日も暮れ始め、2人は別々の方向へ歩き始めた。けれど、その心の奥底には同じ思いがあった。

 

名を・・・・・騎士道。

 

片方のそれは柔く歪んでいるものの、それゆえに折れることは無い。

片方のそれはひたすらに固く、硬く、堅く、難く。決して曲がらず、折れず傷つかない。

 

2人の騎士見習いは歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【本編】

 

 

 

「さて、妖夢について話し合っていこうか。」

 

そう言ってタケミカヅチが胡座をかく。それに合わせるように各々が楽な体勢になって寛ぎ始める。此処は武錬の城の1室だ。

 

「ふむ・・・・・誰から語りたい?」

 

タケミカヅチがニヤリ、と笑を深めた。そうこの顔は「俺がが誰よりも妖夢について知ってるんだぜ?」という余裕の表情だ。その表情にイラッと来た者多数。

 

「まずはウチからやな!」

 

ロキがテーブルをバンッ!と叩いて名乗りを上げた。その表情やいかに、「お前が知らない妖夢を私は知っている」とでも言わんばかりだ。

 

「ほう・・・・・?で、お前から見た妖夢はどんな感じなんだ?」

「まぁ、一言で言えば『しっかり者の甘えん坊』やな。」

 

その言葉に部屋の大多数が頷いた。タケミカヅチはまだ余裕の表情だ。しかし、ロキがニヤリとその口元を歪める。

 

「ふっ、タケミカヅチぃ、妖夢たんとハルプたんの『メイド服姿』・・・・・見たことないやろ・・・・・?」

「メイド服姿・・・・・・・・・・だと・・・・・?」

 

ばか・・・・・な。とタケミカヅチが大げさに驚く。いや、本気で驚いているのだが、喜劇でも観ていると錯覚する位には大袈裟に驚いた。

 

「可愛かったで〜!もう抱き締めたい!いや抱きしめた!舐めたいとすら思ったで!」

「おい誰かこいつ殺せ」

「わかった」

「ベート!?やめ!やめぇ!あぎゃぁぁぁあ!」

 

両肩を抱きしめグネグネし始めた魑魅魍魎は、狼にムシャリと殺られた。どうやらタケミカヅチの機嫌を損ねる、若しくは妖夢に何らかの劣情を抱くと死ぬシステムのようだ。そんな空気が産まれ、次に手を挙げたのは・・・・・リーナだ。

 

「じゃ、次は僕の番ね。あ、僕は剣の館のリーダーになったリーナ・ディーンです、よろしくー。」

「「「「よろしく」」」」

 

自己紹介も兼ねてリーナが笑顔で挨拶すれば、好意的に挨拶が返ってくる。

 

「僕から見た妖夢ちゃん達は、そうだねぇ・・・・・zz。っ!強くて、可愛くて、若干怖いところも有るけど、優しい子かな。そう思うよね?」

「おい、なんで俺に振るんだよ。つか今一瞬寝たよな」

「だってダリル敵対した人代表でしょう?それと寝てないから」

「え、なに、俺そういう区切りだったのか?」

 

タケミカヅチがリーナからの印象に、ふむ、と頷く。しかしだ、簡潔すぎて何だかなぁと思い始めた。とことん聞きたいのだ。

 

「リーナ。どんなところをそう思ったんだ?」

「んー?えっとね、じゃあ強さについて。まずは単純に戦闘力が桁外れって所かな」

 

そう語るリーナはやや苦笑いだ。それもそのはず、あのゴライアスを1人で葬り去るレベル3なんて可笑しい話なのだから。部屋の大半は乾いた笑いと共に頷く。

 

「それに、アレだけ傷だらけになっても立ち上がるのは凄いよね。僕じゃあ絶対に真似出来ないよ。」

 

傷だらけになっても動けるものは居るだろう。現に、ここに何人と居る。しかし、魔力が完全にカラになり、魔力枯渇を起こしている状態で、尚且つ霊力枯渇までしており、筋肉の断裂が発生して動けるなんて正直ワケワカメなのだ。・・・・・実は倒れている間にスキル【二律背反(アンチノミー)】が発動し、レベルアップした事で、ある程度回復し、動けるようになったのだが・・・・・それを知っているのはステイタスに触れたタケミカヅチだけだ。

 

「確かに・・・・・私も、きっと無理」

 

アイズがリーナの言葉に頷いた。アイズが肯定した事にロキがギョッとした。リーナはみんなの反応を見たあと話し出す。

 

「それに、妖夢ちゃん達は人を動かす力があるよね。可愛いのも有るけど、何でか協力したくなるんだよ。それも強さの一つかな、と思うね。」

「・・・・・・・・・・意外だな、割とよく見てるじゃないか。書類は酷いのにな」

「主神様、それは言わない約束でしょう」

「初耳だなぁ?」

 

人を惹き付ける力、それが妖夢にあるのかは分からない、しかし、人々を動かして来たのは確かな事だ。

 

「あと、可愛さについてなんだけどね、水浴びした時とか・・・・・・・・・・あっ、そう言えばあの時ベート覗ききたよね」

「おい誰かそいつ殺せ」

「承知した」

「てめっ余計な事・・・・・!オッタルやめろ!あれはわざとじゃなっグァァア!!」

「あー、じゃ、じゃあ、僕はこれくらいで。」

 

ベートがイノシシタックルを喰らい消し飛んだことは置いといて、次のチャレンジャーは・・・・・オッタルた。果たしてタケミカヅチからの死刑宣告から逃れられるか・・・・・!

 

「俺はフレイア様の命により、魂魄妖夢を常に監視していたのだが・・・・・」

「おい誰か「タケミカヅチ様お静かに」・・・・・はい。」

 

早速ギルティしようとしたタケミカヅチを、若奥様こと命が止める。既に尻に引き始めているのでは?と数人が思っただろう。

 

「俺から見た魂魄妖夢は確かな戦士だ。剣に生き、忠義に生きる確かな剣士だ。お前達を誰よりも愛していたのが見ていてわかった、魂魄妖夢の強さは剣技だけでは無い「家族愛」もその強さに含まれているのだろうな。」

「・・・・・言ってることはスッゲーまともなのに【猛者】が言うとスッゲー変に聞こえんだけど、俺のだけか?」

「いや、ベート。ウチもやで」

 

オッタルが「家族愛」という単語を言った瞬間、部屋の空気が「誰この人」となったのは言うまでもない。しかし、よく良く考えてみれば【猛者】の素顔なんて知る由もなく、割とロマンチストということで収まった。

 

「・・・・・とは言えやはり極めつけはあの「武」だな。正直な話し、九つ同時の斬撃は防げるとは思えない」

「ほほう?ほうほう?なら妖夢に負けるってことか?オラリオ最強が?(嬉しそう)」

「否、断じて否。俺はフレイア様がいる限り最強でなくてはならない。負けはしない、防げずとも喰らいながら殺せばいいだけのこと。」

「やりそうでゾッとするよ。」

 

謎の火花がタケミカヅチとオッタルの間で散る。妖夢とオッタルの戦闘を想像したフィンが肩を竦めて苦笑いする。ヘスティアが、ベル君にはこうなって(戦闘狂)ほしくないと心の底から思った。

 

「はっ、妖夢とハルプが一緒なら18っつの同時斬撃だがな。耐え切れるわけがないな。」

「俺の耐久ステイタスを嘗めないで頂きたい」

「ふん、馬鹿め。妖夢の魔法で創り出される楼観剣はステイタスを無視して攻撃してくるからな。耐久のステイタスなんぞ役に立たん」

「ほう・・・・・ならば殺られる前に殺るだけだ」

「お二人共、そこまでです」

 

やはり命に止められるタケミカヅチとオッタル。落ち着けさせるためなのか、お茶が用意されていた。用意周到な女、命。もはや熟年夫婦である。

 

「は、はい!つ、つぎ、わ、わ私言います!」

 

大人数の前で緊張し、噛みまくっている千草だが、尊敬し家族的な意味で愛している妖夢の事とあれば、緊張なんて何のその。今ならきっとゴライアスも1人で倒せる・・・・・位の勇気を振り絞れる。

 

「えっと、妖夢ちゃんは気遣いができて、よく周りを見ていて、頭も良くて、私の知らないことをいっぱい知っていて、でも私とか命ちゃんが知ってることを知らなかったりして・・・・・えっと、だから・・・・・えーっと・・・・・と!とにかく凄い人なんです!」

 

「「「「「かわいい」」」」」

「おい、テメェら口に出てんぞ。タケミカヅチ、殺すか?」

「そんな簡単に人を殺すなんて許せない。誰か奴を殺せ」

「お前!おま!棚に上げやがってぇえええええ!ホブゥ!?」

「悪!即!殴!・・・・・正義は必ず勝つっ・・・・・!」

「良くやったでティオナ!偉いぞ!」

「いえいえ!そんな!あはははは!」

「(υ´• ﻌ •`υ)ナンナンダコイツラ・・・・・」

 

千草の、顔を赤くしオドオドしながらの一生懸命さが伝わる演説的なそれに、だらしなく一部の者達が顔を緩め、それを咎めたベートがお腹に拳を受けて大切断されたが、そんな事はどうでもいい。

 

「・・・・・流石俺の娘だな・・・・・。好評が多い!」

「では、次は私から言おう。」

「お、アリッサか。いいぞ」

 

心の底から嬉しそうに、妖夢の評判を喜ぶタケミカヅチ。そこにやはり鎧姿のアリッサがくぐもった声と共に、手を挙げた。

 

「私は弓の館のリーダーを務めている、アリッサ・ハレヘヴァングと言う。守る事しか脳がない私だが、以後よろしく頼む。」

 

リーナを見習い、立ち上がると皆に自己紹介をするアリッサ。ガチャガチャと鎧が鳴るが、今日は結構軽装な方だ。簡単にいうと追加装甲を外している。

 

「私が思う妖夢は、非常に鋭く、敵に無慈悲である。・・・・・まさに刀の刃のような人だと思う。しかし、

彼女は同時に『活人剣』で有るのだろう。誰かのために戦えると言うのは誇るべき事だ。・・・・・それに、最後の瞬間を見ただろう?自分が死ぬかもしれないと言うのに笑っていた。我々の為に死ぬ事を躊躇わなかった。

まぁ、私を殺そうとした時も・・・一切の躊躇いも無かったのだがな。・・・・・ふふ。」

 

少し可笑しそうに笑うアリッサ。それにタケミカヅチが苦笑いを浮かべる。アリッサが言いたい事がわかったのだろう。

 

「あの時の悪寒は凄まじいものだった。瞬きする間もなく、気が付いたら妖夢は私の後ろにいて、刀は私の首に触れていた。タケミカヅチ様が止めていなければ私は死んでいた。・・・・・そんな無慈悲な彼女が、最後は我々の為に命を張ろうとしたのだから、変われる勇気も有るのだろうな。」

 

アリッサが自分の首を撫で、そう言うと、タケミカヅチは神妙な顔付きで頷く。

 

「なるほどな・・・・・。」

「まぁ、今じゃ中身が変わっちまったんだろ?」

「おい、ダリルを連れ出せ」

「へ、いいのかよ?俺を本気にさせればこの家が燃え」

「【阿弥陀籤】・・・水!」

「つべたぃ!?おま!何でこういう時だけピンポイント・・・・・!!あびゃぁ!?」

 

アリッサがもう言うことは言った、と言った感じで座ると、タケミカヅチが顎を撫でながら考え込む、ダリルが少し暗くなった雰囲気を打破するために、濁流と化し、犠牲となった。

 

さて、そんな会話を続けていた時だ。とっ、とっ、とっ。と廊下を誰かが歩く音がした。この場にいるのは冒険者、その足音を会話しながらでも完璧に拾っていた。

 

「・・・・・」

 

静まり返る室内。とっとっ。と言う音は依然続いており、やがて、部屋の前で止まった。妖夢かもしれない。と誰もが思う。別に本人が居ても良いのだが、さっきまでいなかった手前、聞かれるのは少し恥ずかしい。

 

「・・・・・・・・・・誰だ?」

 

タケミカヅチが部屋の外、襖の奥へと声をかける。すると・・・・・

 

「拙者でござるよ〜(小声)・・・・・あれ、拙者混じったらいけない雰囲気でごザルか・・・・・?」

「お前かい!」

 

現われたのは猿、もとい猿師。ドッ!と笑いが起きた。ナイスタケミカヅチ!とタケミカヅチのツッコミを讃える声もある。

 

「いやー、笑っていただけたようでなによりでごザルな〜」

 

そう言って猿師が後ろ手で襖を閉める。そして普段よりも足音を立ててタケミカヅチの隣りまで進み、座り込む。誰もそれを気にしたりはしない。機嫌が良いのだろう程度にしか思われない。

 

そして、その閉められた襖の奥、足音を立てないように妖夢が通り過ぎる。

 

(すみません猿師さん・・・・・わがままを聞いていただいて。)

「行ってきます」

 

妖夢は小さくそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が痛い。ガンガン響いて視界も良くない。そして何より・・・・・めんどくさい。何に対してもやる気が出ない。気だるい。

 

『ここ何階層だよ・・・・・』

 

駄神にひたすら落とされるいじめを受けたせいで、今自分が何階層かわからん。いつか殺す。絶対に殺す。

 

何回目かわからない階層の変化にため息をつく。

 

19階層は木でできてるからわかりやすいはずなんだけどな・・・・・。

 

「ぎゃぁぁぁおおおおお!」

『うるさーい。頭に響くだろ死ね』

「ぎゃぁぁぁ。」

 

名前も知らないモンスターが襲ってくるが、ウザイので斬る。・・・・・まぁ知らないってことは確実に25階層よりも下な訳で・・・・・。18より下は下層だから、もう下層ってわけだ、相当落ちたぞ?多分30階層位かな?。

 

てか何だよ、『可能性を操る程度の能力』って。チートかよ、チートだよ。でもどうやって使うんだ?駄神は「無意識に使うなよなぁ」って言ってたし・・・・・うーん、使ったことあったかなぁ。

 

『はぁ・・・・・めんどくさいなー。もうここら辺で寝ようかなー。』

 

そんな事を独り言を呟きながら進んでいると、何やら鎧の音や、複数の足音がした。・・・・・重いな、人じゃない。人じゃないのに鎧着てるのか、『異端児』だよな。うん、連れてってもらうか。

 

『ういっす。もしかして同士かな?それともタダのモンスター?』

「・・・・・!?」

 

俺が急に飛び出していきなりそういうもんだから相手は固まってしまった。でもあれだね、蜘蛛人間だね、いや、女郎蜘蛛?まぁとりあえずアラクネってやつだ。なんだっけ、原作だと・・・・・ラーニェ・・・・・的な名前だった気がする。んでもって横の黒鎧がオードリーだったかな?

 

『ん?その風貌、もしかしてリド達が話してた・・・・・えっと、ラーニェとオードリー?』

「・・・・・私がラーニェだ。そしてこいつはオード。貴様は・・・・・新入りか?」

『おう!俺ハルプ!宜しくなラーニェ!オードリー!』

「・・・・・」「オードだ。と言いたいらしい。」

 

おや、オードだったらしい。それにしても2人とも顔が見えん。鎧のせいだな。鎧といえばアリッサのイメージだったが、鎧はやはりいいものだ。見る分には凄いカッコイイ。でも、着るのは面倒臭い。

 

はっ!そうだ、能力を扱えるかやって見よう。うぉ〜!だんだん俺を連れていきたくなーる、連れていきたくなーる!みょんみょんみょんみょん・・・・・。ちなみにこのみょんみょん言ってるのは、能力を波紋上に拡げているイメージだ。

 

『そっか、わかった次は間違えないぞ。ところでさ、迷子になって帰れなくなっちゃったんだけど・・・・・背中乗せて?疲れた。』

 

俺が能力の使用をイメージして、上目遣いでそう言えば(体格的にどう頑張っても上目遣いだ)ラーニェは少し考えたあと、後ろに控えていたペガサスをちらりと見る。するとペガサスはそれに嘶きで持って答えた。

 

「乗っていいらしい。お礼はしっかりと言うのだぞ?」

『えー、俺ラーニェが良かったなぁ。ま、ありがとうな!ペガサス号!』

「私は乗り物では無いぞ。」

『乗りやすそうだったよ?』

「それでもだ」『そっかそっか』

 

まったく何なんだこいつは。とラーニェが呟く。あたすですか?あたすはハルプです。・・・・・能力、使えたのかな?わかんねー。使い方わかんねー。

 

ペガサスの首をナデナデしながら階層を進む。天井は割と高いからフワフワと浮かびながら進んで行く。撫でているとヒヒィン!と嘶いて、具合を教えてくれる。

 

『ここか?ここがいいんか?うししし。』

「ブルルル!ヒヒィン!」

 

時折モンスターが攻撃してきたものの、あっさりと異端児の皆に消し炭にされてしまう。なかなか強くて正直驚いている。でもなぁ、技術が足りないな、これは俺が教官となって教えてあげるしかないな!

 

さて、少し楽しみができたところで

 

「着いたぞ」

『ありがとうな!』

 

目的地に到着した。さて〜、リドになんて謝ろうか・・・・・。の、能力が可能性操るものなら、こう、なんて言うか、怒られない道もある・・・・・?いやまてよ、なぜ怒られると考えているんだ。むしろ心配されて終わるだけだろうに。ふむ、ええっとだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオにて、闇は蠢く。彼らは『イケロス・ファミリア』、原作において『怪物趣味』をこじらせた者達が異端児を捕らえ、犯し、売り払う外道の衆。そして、その趣味は変わらない。

 

彼らは今、又と無いチャンスを得ていた。

 

「ダンジョンを封鎖する」そうお触れが出され、ダンジョンに入る者は居なくなった。極僅かな調査員だけがダンジョンに潜っている。

 

ダンジョンの入口はギルドの者達に封鎖されている、これでは怪物を捕らえる事は出来ない・・・・・筈だった。しかし、イケロス・ファミリアにはダンジョンに続く秘密の入口があったのだ。

 

ダイダロス通りから地下に降り、迷宮のように広がる地下を進み、そこに足を踏み入れる。十八階層、森が広がり、水が川や滝を形作り、水晶が乱立する。そんな場所。しかし、彼らにも予想外な事が起きていた。

 

「おーいおい、なんだぁ・・・こりゃあ」

 

壁はヒビ割れ、中央は消えてなくなり大穴が空いている。天井にあって輝き、階層中を照らしていた巨大な水晶たちは尽くが無くなっていた。薄暗くなった十八階層でイケロス・ファミリアの団員たちは、何が起きたのかわからずに困惑するしかなかった。

 

「まぁ。なんだ、取り放題なのは変わりないな。」

 

ゾロゾロと階層をすすむ彼ら。そしてその姿は下の階層へと消えて行った。

 

 

 

 

 

物事は地下だけで進むのではない。地上・・・・・いや、更に上でも物語はすすむ。

 

「ベル・クラネルか・・・・・欲しいな、欲しい。愛でたい。なぁ、そう思わないか?ヒュアキントス?」

「はっ、御心のままに。」

 

恋多き神、アポロンはほくそ笑む。白いうさぎのようなベルを、その腕に抱くことを思って。ヒュアキントスが、黒い長髪を靡かせて、その場をあとにした。

 

 










ども、シフシフです、読んでくれてありがとうございます。

そして挿絵をスッと出して行くスタイル。
シフシフ「トレース・オン」(参考はセイバー)


【挿絵表示】


今後の展開はワチャワチャする予定ですが、11巻読んだら変わるかな?って感じです。早く読まねば・・・・・(使命感)

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