オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
夜、暗闇が街を支配する。暗がりで巻き起こるのは欲望の円舞曲。娼婦が男を誘い、男は金を払って館に入る。路地裏では何やら薬の取引が成立したようで、下品な笑いが反響する。
そんな場所で、剣線が走った。横、縦、斜め。肉を断ち、骨まで断ち、時折剣とぶつかって火花を散らす。壁には斬痕が目立ち、地面は抉れた部分が多い。
「・・・・・っ!!」
髪を結い、狐の仮面を付けた忍装束の少女が、都合30人からなる冒険者と戦闘を行っていた。彼女はどうやら盗人のようで、娼婦でもあり、冒険者でもあるアマゾネス達と一進一退を繰り返す。
振るわれた刀が、長髪のアマゾネスの指を全て斬り飛ばした。長髪のアマゾネスが悲鳴をあげて後ろに下がる。開いてしまった隙間を、熟練兵を思わせる連携ですぐさま塞ぎ、全方向からの攻撃で仮面の少女を仕留めようとする。
しかし、それらの攻撃全てを防ぎ、受け流し、斬り返す。攻めているはずなのに、自分が傷を負っていくと言う嫌な状況に、アマゾネス達は余裕を失っていた。
「糞ガキが!おらぁぁあ!・・・・・がぁ!?」
痺れを切らしたアマゾネスの1人が少女の死角から攻める。しかし、大声をあげた事で気が付かれたのか、神速と言って差し支えない回転斬りが放たれた。銀閃の後、臓物をぶちまける。
「畜生!1人やらr・・・・・が・・・・・!」
勝てない───そう理解し、短髪のアマゾネスが増援を呼ぼうと、少女から目を離した。
その一瞬。腹を刀が貫いた。
布面積が極端に少ないその腹部を、赤が占めていく。目をカッと開き苦しむアマゾネスに、仮面の少女は蹴りを入れて吹き飛ばす。
既に戦闘開始から十分が経過した、しかし、未だ仮面の少女は無傷、息を切らす事すらしておらず、刀を構えて悠然と佇んでいる。
強者でありながら慢心無し。仮面の奥に見える青い目は、どこまでも鋭い。アマゾネス達は、自身の首と心臓に刀が添えられたような、そんな悪寒を感じ、一歩下がる。
────下がってしまった。
士気の低下を感じ取ったのか、少女は一瞬にして加速した。それは、この場にいる誰もが、知覚することの出来ない速度。
気がつけば少女は後ろに居た。慌てて振り向こうとアマゾネス達が体勢を変えれば・・・・・地面に倒れていた。斬られたのだと気が付くのに数秒必要だった。
「ま、て・・・・・貴様・・・・・何者、だ・・・・・」
「・・・・・」
傷がやや浅かったアマゾネスは、少女に問いかける。アマゾネスの問いに、少女は無言で答えた。
そのアマゾネスは気が付いた。少女の手には血が付いていない刀。つまり、血すらつかないほどに、鋭く、速い攻撃だったのだ。そ
「こた、えない、気か・・・・・!ならっ・・・・・!!」
口端から血を流しながら、アマゾネスは隠し持っていたナイフを少女に向けて投げつける。命の危機に瀕した際の、限界を超えた高い筋力で、ナイフは投げられた。寸分違わす少女の心臓へと、風を切りながら突き進む。
(勝った・・・・・!)
そう確信し・・・・・期待に裏切られる。
キイイイイイイィィィィィン・・・・・と甲高い音が谺響する。心臓に突き刺さると思われたナイフは、その姿を二つに変え、地面に金属音と共に転がった。
「なん・・・・・だ・・・・・と・・・・・」
必死の抵抗虚しく、アマゾネスは出血により気を失った。狐仮面の少女は、そんなアマゾネス達にポーションを振りまき、死なない程度に傷を癒し、その場を後にする。
「やはり、慣れません。記憶にあり、経験があるとは言え・・・・・知らない剣技を扱うのはちょっと不気味です。魂魄流ではなく、タケミカヅチ流とでも言うのでしょうか?」
首を傾げながら裏路地に消え、やがて足音もしなくなった。
十八階層、大穴が空いたこの場所で『異端児』達は集まっていた。
「本当にやるんだよな?」
『おうっ、頑張っていこうぜ!』
「ハァ・・・・・貴様ハ楽観的過ギル。少シハ慎重ニナルベキダ。」
『貴様じゃない、ハルプだっ。覚えてよ』
「ウム・・・・・」
さて、瓦礫は除けたし、あ、俺です。ハルプです。今は十八階層で街づくりやってます。ふむ、まず必要なのはやっぱりお家かな?
「家かラ作るノ?」
『うーん、そうだな、それでいいかも。・・・・・ごめん、偉そうに言ったけど街の作り方なんてわからないんだ。あはは』
俺が知ってれば楽なのにな・・・・・。可能性の能力だろ?ならさ・・・・・こう・・・・・『俺が知っている可能性』的な感じで使えないかな・・・・・う"ぇ!?
───能力を使用。検索中、可能性世界から自身の知覚領域を選択───
な、なんだ?検索中?霊力が・・・・・少しづつ失われて・・・・・?これが、能力?
───発見確率22%。内蔵されたエネルギー源から霊力を選択。霊力70%に低下。
と急に声というかなんと言うか、変な感覚と共に、俺が胸を押さえると、『異端児』達が心配そうにこちらを見る。大丈夫だ、と手で制する。
───失敗。検索出来ませんでした。内蔵霊力及び、魔力による可能性
不思議な感覚だ、なにも知らないはずなのに、何かが頭に引っかかる。まるで、
──可能性の
ううっ・・・・・一気に霊力持っていかれた・・・・・。燃費悪過ぎだろ・・・・・!
───再試行中。並行世界の自身の深層意識まで侵入。知識を開示。発見率80%まで上昇。
え?アレで80%まで?いや、寧ろ多いのか?てか失敗したらまた霊力使うのか?わからないことが多すぎる!
───成功。
オッケイ!成功見たいだ。でどうなるの?
「ハルっち?大丈夫か?」
『あ、あぁ、平気だよ。今思い出せそうなんだ』
リドが心配してくれた。俺の肩を優しく掴んで顔をのぞき込んでくる。表情は分からないが、心配してるのは伝わってきた。
───構築完了。情報を開示。意識を確りと持つ事を推奨。
ドクン!と体全身が震えるような感覚と共に、知識が頭に入り込んできた。視界が・・・・・暗転する。
パイプ、土、重機。それらが置かれているこの場所は・・・・・工事現場?
「あぁ!これはそっちだ!えぇ?あーそれはそっち!違う!そこじゃない!おい!聞いてるのか!」
やべっ人がいる!・・・・・あれ?平気だぞ?殺したくならない。・・・・・?なんだ、何だがあの人見てると・・・・・他人な気がしないんだが・・・・・いや、そうか、『俺』なのか!?俺にあった他の可能性ってわけだ!・・・・えぇ・・・・・工事のオッサン?
「ハルっち!」
うぅ・・・・・頭痛てぇ・・・・・でもどうやら俺は、工事のオッサンになった可能性があるらしい、そっから知識を逆輸入した・・・・・のかな?どうせなら美少女が良かったぜ・・・・・あ、今か。まぁいいや、返事してあげないとな。
『大丈夫、問題ない。うん、多分。』
「余計心配になるんだが」
・・・・・なんか怖いな、知らない知識が入り込んでくるって。まぁいいや。取り敢えずは拠点になる建物と、資材置き場から作っていこうか。何をするにも下地からってことだな。
『よし、まずは俺達の拠点になる建物を作るぞ!』
「いきなりだな!?」
『いちいち19階層とか行ってたら時間かかるだろ?いつ冒険者達が帰ってくるのかわからないのに。』
「それもそうか・・・・・そうだな!よし!みんなやろう!」
リドの声に、やる気のある異端児が声を上げる。いやっほー!はははは、とみんなで笑って、さらに小さくまとまった、肩がぶつかるレベルで小さく。
『よし、まずは飛べる奴らで上から・・・・・あ、俺飛べたわ。行ってくる』
ドロンと半霊モードになる。リド達がアングリと口をあけて驚いている。ふふふ、幽霊として驚かれるのはいい事のはず。ピキ
ふむふむ、上にやって来たが・・・・・こりゃ酷いなぁ。街を作るにしたってさらに小さいものになっちゃうなぁ。
でも、彼処にアレを作って、そこにこうだろ?あそこの途切れちゃった川を引いてきて・・・・・ふむふむ、よしっOK!するするーとリド達の前に戻って、ポンッ!と人間型に変身。
『よっす、大体決まったぞ!・・・・・どしたの?』
「は、ハルっち・・・・・形が変わって・・・・・」
『ふっ、姿形が変わるモンスターだっているんだし、気にすんなよ。』ピキ
こっち来て〜、とみんなを誘導して、リヴィラ跡地の奥側。抉れた洞窟がある、宿屋になっていたところだろうか。ここを市役所的なもの、そしてしばらくの拠点にする。壁に同化させる感じで作るんだ。モンスターが湧かない性質が変わってなくてよかった。
『木を使って行こうかな、集めるか。』
────ひび割れが・・・・・止まらない。
妖夢とハルプ。二人は1人。・・・・・それは、昔の話だ。今は半人と半霊。それぞれ別の個として、別の目的を持って動いている。心の底で、合流して再び暮らす事を望みながら、「会いに行こうとする事」が出来ない。
何故か、それは・・・・・無意識的な能力の使用にあった。制御出来ていない故に、ハルプが無意識にその可能性を遠のけたのだ。
会いたくないのでは無い。合わせる顔がない。自覚はしていないが・・・・・それでも能力はそれを本人の願いとして発動した。
故に、妖夢は・・・・・・・・・・今日も、二人になってしまう前に、ハルプが元より計画していた活動を続けるのだ。
どうも、私です。妖夢です。なかなかあの子が帰ってこなくて心配ですが・・・・・帰ってきてくれると信じます。
もう朝ですね。私はいつもの日課であった鍛錬を終わらせ、居間で寛ぎます。
さて、今日もイシュタル・ファミリアに襲撃を掛けましょうか!・・・・・え?どうして、ですか?簡単な話です。相手が人数で勝っており、質もある程度あるならば、小数である事を活かした暗殺、奇襲ですね。さらにこちらが質で勝っている現状、あえて殺さず医療費を使わせたり、襲撃に備えるために準備させることで消耗させる作戦なのです。
死人が出なければギルドも派閥同士の小競り合い程度に思ってくれるはずです。どうにかしてあの子の友達である春姫さんを助けなくてはいけません。
・・・・・?あの子を助けてから一緒に行けばいいのでは?
「妖夢、最近なんだか考え事をしているみたいたが・・・・・大丈夫か?」
っと、タケが話しかけてきました。心配そうです。
「タケ・・・・・大丈夫ですよ、少しあの子のことを考えていたんです。」
「・・・・・。そうだな、お前が行きたいと言ったら、みんなで行こう。」
「・・・・・?はい、そうですね。」
タケは・・・・・このもどかしい気持ちをわかっているのでしょうか?・・・・・きっと分かっているのでしょう。私がやっていることもきっと気が付いている。目的は知らないと思いますが・・・・・知られたら命や千草が勝手に動く。だから、知られるのはダメです。
「最近は・・・・・よく、刀を研ぐんだな。」
「手入れは重要ですから。」
「そうか・・・・・。あー、全く・・・・・」
タケが頭をガリガリと掻き、隣に座り込んだ。
「妖夢、何が目的だ?巷では噂が流れまくってるぞ。『お狐様』ってな。イシュタル・ファミリアは色んなファミリアと繋がっている。変な挑発は止めるんだ。」
「『お狐様』?」
私がお狐様について聞けば、タケは詳しく話してくれました。要するに、狐のお面を付けた剣士が、イシュタル・ファミリアに襲撃してボッコボコにした後なにもせずに帰っていく事から付けられたとか・・・・・。
肩慣らしの意味もあったので・・・・・特に欲しいものもないですしね。物取りはしないですよ?最終的に人を攫うだけです。・・・・・む?もっと酷くなってる・・・・・?
「はぁ、相談しろ相談。いいか?俺たちは家族だ。その関係は変わらないし変えさせない。・・・・・俺達はお前の力になれる。」
タケが私にそう言った。心配そうな目で私を見ていた。・・・・・いや、違いますね、私も見ていますが、私を通してあの子の面影をみている、探している。
あの子のために、結果的に私の為に、タケは協力しようとしてくれているのですね。なぜ、悲しいと思ってしまうのでしょうか・・・・・。記憶のせい?
「そう・・・・・ですね・・・・・」
ですが・・・・・やはり巻き込めない。
「でも、大丈夫です。巻き込みたくありません。」
あの子が帰ってきた時に、全員で出迎えるためにも、誰1人として欠けてもらいたくない。
私達は『家族』です。最も信頼できる人達です、だからこそ、私は彼らを頼れない。あの子の計画にも、秘密裏に助け出すとありました。・・・・・私はバレてしまいましたが、あの子ならきっと完璧にこなすのでしょう。
「・・・・・そうか。」
タケがどこか悔しそうにしながら居間を出ていきました。私はその後ろ姿を見送ったあと、私も居間を出て自室に向かいます。
そして、廊下を進んでいた時です。
「妖夢殿、少しお話があります。」
命が私に声をかけました。嫌な予感がしました。
ここはとある酒場。僕はレベルアップを祝う為に、リリとヴェルフと共に、酒場にやって来た。
「「「かんぱーい!」」」
飲めや歌えやと酔っ払った男の人達が騒ぐ中。僕達は祝杯を上げる。
「「レベルアップおめでとう!」ございます!」
「ははは、なんだか照れくさいなこういうのは!」
「照れなくても良いんですよ、もっといい装備作ってくださいね。ベル様の為に」
「分かってるさ。いい装備作ってやる!」
「私はベル様と妖夢様のファンですから、ヴェルフは準備役です。はい、ベル様あーん」
「分かっちゃいたが酷いな!?」
「いいいや、僕はいいよ?ヴェルフにしてあげなよ、ヴェルフのお祝いなんだし・・・・・あむ」
そんな感じで賑わっていた時だ、酒場の一角からこんな話が、わざと聴こえるように放たれた。僕は思わず身を固める。
「あの【リトル・ルーキー】って奴、マジで調子乗ってるよな〜。【ソード・ブレイカー】のお零れで強くなった様くせによ!マジでむかつくわ〜」
ほんとほんと、とそれに続くように僕の悪口は続く。でも、確かに僕は調子に乗ってるかもしれない。僕の周りは強いひとばかりで、なんで僕があの人達の中に平然と混ざっているのか・・・・・悪口を言われるのも分かる。あの人達は凄いから、みんな憧れたりしてるんだ。
「・・・・・ベル、言われてるぞ。俺が言い返して来るか?」
「いや、良いよ。僕は気にしないから。」
「ベル様が気にしなくても私は気にしますっ!フシャー!」
僕に悪口を言う彼らは彼らは、僕達の話を聞いていたみたいで、舌打ちを一つついて、また話始めた。
その内容に僕は目を見開いた。拳を強く握りしめる。
「それによ、あの【ソード・ブレイカー】とか言うガキ、魔法でモンスターごと人を殺したらしいぜ?」
「マジかよ、最低だな。もう名前【
チビのくせにあんな大口叩いてよぉ!もって2ヶ月だな!どうせすぐ死ぬよw」
僕は椅子を後方に吹き飛ばし立ち上がる。僕に対する悪口なら我慢できた。でも、恩人を嗤う者に対して我慢する必要はあるだろうか?いや、無い。
僕は彼らが立ち上がる前に、間合いに入る。
「妖夢さんを・・・・・!馬鹿にするなっ!」
立ち上がり、振り向いた瞬間を狙う!
所謂・・・・・昇竜拳。ハルプさんから教わった体術。一撃で顎を粉砕する。さらに勢いそのままに、空中で回転し、ほかの男にかかとをぶち込む。これが竜巻旋風脚!
一瞬にして2人が倒され、最後の1人は慌てふためいていた。そこに僕が更に回し蹴りを打ち込もうとした時、その蹴りが止められる。
「止め、無いか・・・・・!」
黒い長髪の男の人だった。両手を使い、更には腰を落とし、僕の回し蹴りをギリギリ押さえ込んだ。僕が力を抜けば、男の人も手を離し、喧嘩にタンマが入る。
「この事はギルドに報告させてもらう。・・・・・いくぞおまえたち。」
男の人が冒険者達に撤退するよう命令し、僕を睨みながらギルドに報告すると脅した。僕達は反論しようとしたけど、それを聞く前にヒュアキントスは店から居なくなる。
「何なんですかアイツら!ベル様にあんな事言ってボッコボコにされたらギルドに言い付けるなんて!本当に冒険者ですか!男ですか!?」
「リリスケ、お前の言う通りだ!髪長いし女だなあいつ!」
「ヴェルフ様の頭は少しおかしいんじゃないですか!?アレが女に見えるとか全ての女を敵にする発言ですっ」
「あ、すまん。」
僕は拳を握りしめる。
僕は、どうしたら良いのかわからない。尊敬する妖夢さんを助けたいのに、何をすればいいか分からない。尊敬するハルプさんの力になりたいのに、どうしたらいいのか分からない。
(でも、馬鹿にさせたら駄目なんだ・・・・・!)
それだけはわかっている。帰ってこれる場所を作らなくてはならないのだ。・・・・・自分を救ってきたのは誰か。そう問をかけられたなら、ベルは1人1人の名前を答えるだろう。その中には、妖夢とハルプの名前が確かに存在する。だから・・・・・今度は僕が助けなくちゃ。
英雄、ベル・クラネルは、どこまでも純粋にそう思った。
十八階層、そこに俺は居る。なんと、みんなの拠点が完成したのだ。木材を使った頑丈な家だ。
「ふぃ〜・・・・・疲れるな、こりゃあ。」
『重機が要らないのはイイけど、その分疲れるなぁ』
「人間すげー・・・・・町作るのって骨が折れそうだ・・・・・」
『ははは、リドっち、頑張って』
さらに、今回は外からの侵入を防ぐ外壁を、コンクリートでつくってみようと考えた。材料も手分けして集めておいたから、既に集まっている。なので、まずはセメントから作っていこうか、得た知識を元にするなら・・・・・っと。
セメントの原料は、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料、せっこう。こいつらを使って調合して、作る訳なんだが、ただ混ぜるだけじゃ作れない。こいつらを粉砕して、高温の釜とかに入れるんだが・・・・・ふむ、出来れば1300℃以上欲しいんだよ。いや、1400は欲しいかも。
火炎切りとかじゃ限界があるからなぁ。・・・・・はっ!3000℃出るって謳ってる剣あったじゃん!あの、あれだ、落第騎士の英雄譚の・・・・・ラーヴァデイン?ラーヴァテイン?わからんが、あれだあれ。あれ召喚しようぜ。・・・・・そういえば、初めてunlimited blade worksを使った時にさ、半霊からめっさ剣飛び出てたけど・・・・・もしかして?
『
おお・・・・・出来た!凄いぞ?!俺、無限の剣製使えちゃったよ!?
てかラーヴァテインでもラーヴァデインでも無かったよ!リヴェリアのレア・ラーヴァテインに引っ張られたよ!
「は、ハルっち!平気なのかそれ!?」
『凄いだろー!この剣!』
「ちげー!体だよ身体!」
『へ?』
頭を傾げて下を向けば、お腹や足から剣が生えている。うん。まぁあれだね。衛宮士郎にだけ許された魔術をさ、勝手に使ったらこうなるよね。更には自分のものにしようとするとか、こうなって当たり前だよね。
『ゴフッ・・・・・!へ、平気じゃないや。』
耐久力を平然と突破されました・・・・・なので、1回半霊形態に体を戻します。そして人の形になります。はい、怪我が消えました。・・・・・万能ー!
『OK、治った』
「有りかよ・・・・・。っ!」
『ん?どったのリドっち』
「え、あ、何でもないぜ?」
変なリドっち。まぁいいや。さてと、続きをしますかねぇ。えっと、そうそう、加熱するんだよね。釜使って。・・・・・釜準備してねーわ。むー、とりあえず皆には1度休むように伝えとくか。
『えっとね、取り敢えず今日はもう休もうか。皆好きに動いていいよ?あ、集合場所はこの家ね!』
「ん?ハルっちは来ないのか?」
『あー、コンクリートって言うのを作るんだけど、1日では作れないからさ、先に作っておいて、後で使おうと思って』
「こんくりーとか、無理しないでくれよハルっち」
『おうおうわかったよ』
ムウ、ココニ住ムノカ?いいじゃんかグロス。と会話が聞こえる中、俺は作業を開始する。
投影だー!釜だ!レーヴァテインをファイヤー!・・・・・お?本人は燃えないのね。良かった良かった。
そんなこんなでクリンカって言う塊まりができる。丸いやつだな。これを砕いて粉にすれば、セメントの完成だ!
閑話休題
それにしても・・・・・もう2日経ったんだな。早い(確信)
まぁ明日の予定も完成したし。俺も寝よー。・・・・・そう言えば俺って寝る必要あるのかな?ま、いっか。
『グーロースー!一緒に寝よーぜー!』
「マタオマエカ、自分ノ部屋ハ作ッタダロウ?」
最近はグロスと寝るのが日課となった。おじいちゃん見たいで新鮮だったからだ。うへへ。
『1人じゃ寂しいじゃないかっ!お願いっ!このとーり!』
「・・・・・ハァ・・・・・勝手ニシロ。」
『いやったー!うわーい!・・・・・おやすみ。』
「・・・・・オヤスミ」
グロス硬いなー、石だよ石。流石ガーゴイル。ふへへ、こんなコンクリート作ってやるぜ。二百年くらいの寿命のやつ。ふわぁ・・・・・眠い。
『───スゥ────スゥ───』
「・・・・・寝タカ。」
グロスがのっそりと起き上がる。石でできた体でありながら、音をたてず滑らかに動いた。そして、ハルプの上に覆いかぶさるように、その石の顔をハルプの顔に近づける。
「・・・・・罅ガマタ、広ガッタナ。」
そう言ってハルプの頬を人差し指で撫でる。感触は・・・・・絹のように滑らかで、決してひび割れている様には思えない。
「割レテイルノハ表面デハナイ・・・・・カ。」
グロスが心配そうに覗くハルプの顔は、片目だけが開いたままだ、片目に光は無く、そこから中心に罅が広がっていた。呪いの刻印の様に、そのヒビは身体を蝕んでいた。
「ヤハリ、我々デハ、コノ者ハ救エナイ。リド・・・・・オ前モワカッテイルダロウ?我々デハ、ハルプノ心ノ支エニハ成レン」
グロスはもう1度、ハルプの頬を撫でる。
「オ前ハドウシタイ・・・・・」
『──スゥ───スゥ──』
グロスの問いに、ハルプは応えない。その暗くなった瞳が、ただひたすらに虚空を眺め続けていた。