オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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話しは殆ど進まないんじゃ。









可能性の獣
70話『ァア───────!!』


────剣戟が高鳴る。

 

火の手が上がり、赤々と照らされる歓楽街で、その戦いは巻き起こっていた。

 

一対十、圧倒的な戦力差。

しかし、かけ離れた技量と経験が、ジリ貧程度にその差を埋める。

 

「くらいなぁ!!」

 

アマゾネスが鬼気迫る表情で、その戦斧を振り下ろす。盛り上がる筋肉が、その一撃が全力である事を物語る。

 

「──────シッッ!」

 

対するは仮面の少女。

振り下ろされる斧に対して、取る行動は、受け。

攻撃が遠心力によって最大の威力を持つ前に受け止め。

 

流す。

 

そして鋭い気合と共に、受け流した勢いで刃は跳ねる。

 

────狙いは腕。

 

「うぎゃ・・・・・!!!」

 

第二肩関節から先を吹き飛ばす。思わず後ずさるアマゾネスに仮面は追撃を打ち込む。

 

跳ね上げられた刀は、勢いを殺さずに振り下ろされる。

 

狙いは足。

 

「いぎっ!?」

 

足を斬られ、アマゾネスは転がるが・・・・・なにもアマゾネスは1人ではない。

 

「っ!」

 

槍が迫り、矢が飛来する。

残念な事にそれに対応できない仮面ではない。

それら尽くを撃ち落とし、弾く。

 

決して千日手にはなり得ない。このまま時間さえかければ勝つのは仮面だ。しかし、アマゾネス達にも切り札はある。

フリュネと呼ばれる戦士だ。

彼女さえくれば・・・・・仮面は押し負ける。

 

「みんな!あのお狐様を止めな!時間を稼ぐんだ!」

勇ましいそんな声に、仮面が小さく舌打ちする。

状況は芳しくない。

早期の救出を狙っている以上、足止めされるのはごめん被りたいからだ。

 

しかし、背を向けて走ろうものなら的にされる運命、ならば立ち向かわなくてはならない。

正面からの突破は難しい。なにせ包囲網は既に完成し、ジリジリと迫られているのだから。

 

なにか、そう、あと何か一つの出来事で・・・・・状況は一転する。

 

 

 

 

───故に(だからこそ)

 

────故にだ。(成し得るために)

 

─────『ソレ』はそこに現れた(彼は此処にやって来た)

 

 

 

 

放たれる矢の雨。防ぐことは不可能では無く、例え防げずとも被害は軽微に済ませられる。

そんな攻撃の時、まさにその瞬間に。

 

「・・・・・!!」

『・・・たす・・・・・・ける・・・・・』

 

不意に横から伸びた腕が、仮面に当たるはずの矢を全て受け止めた。

長い銀髪を靡かせた・・・・・少女とも少年ともつかない顔つきの人。

細く長い腕を銀の輝きを放つ鏃が貫き、仮面に無念を伝えている。

 

「・・・・・助太刀、感謝!」

『・・・・・ぁぁ・・・・・気にするな』

 

突如現れた謎の人物に、相手方が気をそらされた。

 

ここだ、ここしかない!

 

仮面が突き進む。縮地を用いて加速したその速度は音速の壁を突破する。蹴られた大地がめくれ上がり、衣服が破れることすら考慮せず、指揮系統を食い破る。

 

「牙突────一式!!」

「なっ!?」

 

───銀閃の牙が舞う。

 

一瞬の間を置いて・・・・・リーダー格が地に伏せる。

 

「てっ、撤退するよ!みんな逃げろ!」

 

娼婦たちが逃げていくのを尻目に、仮面は振替る。

 

「ふぅ・・・・・どなたかは知りませんがありがとうございまー・・・・・す?居ない?」

 

振り向けば先程の人は居なくなっていた。

とは言えここは戦場、誰が居てもおかしくは・・・・・いや、おかしい。

仮面は思う。

 

あれは誰だ?

ファミリアにあんな人は居ないはず。であればイシュタル・ファミリアなのか?いや、ならばこちらを助けるのはおかしい。

 

では、一体誰?と仮面が考えた時だ。

 

「はぁ、はぁ、命!」

 

鈴のように可憐な声が耳を打つ。

ドキリと心臓が怯えた。何せ、仮面・・・・・命は勝手な行動をしたのだから。

 

「妖夢殿・・・・・」

 

なにを言われるか。何であれ、覚悟は出来ている。

命は刀を鞘にしまい、静かに立つ。

しかし、妖夢から出てきた言葉は予想外のものだった。

 

「命!ここにハルプが来ませんでしたか!?」

 

失踪したハルプを見たか。

命の答えはNO。見たのはハルプでは無かったように思えるからだ。

横に首を振る命に、妖夢はより一層慌てふためく。

 

「えっと、知らない人は来ませんでしたか!?」

「は、はい。来ました。先程助けていただいて・・・・・」

「それです!その人がハルプです」

「・・・・・へ?」

 

2人は互いに見たものの情報を共有し、再び発生した巨大な音の発信源へと急ぐ。

 

「それにしても、なぜハルプ殿が!?」

「わかりませんが・・・・・助けると呟いていました。春姫か命、あるいは両方のために来たのかと」

「・・・・・!!そう、ですか・・・・・」

 

事実、ハルプはその2人を助けるために来た。

しかし、その意識は蹂躙され、最早「助ける」と言う目的すら忘れかけている。

 

だが、それでもと。

 

彼は抗い、前に進む。

 

耳が聞こえずとも、目が見えなくなろうとも、例え体が動かなくなろうとも。

 

「・・・・・見えてきました。くっ、不味いです、あのままでは・・・・・」

「あのままではどうなるのでしょうか!」

「ハルプが消えます」

「っ!どうすればいいんですか?!」

「私が不意を付いて攻撃するので、命はハルプに話しかけてみてください。さっきは通じたんです、なら次もまだ・・・・・」

「わかり、ました・・・・・」

 

遠くに見える銀の異型。

鈍りそうになる足にムチを打ち、二手に別れ崩れかけた街を往く。

しかし、妖夢が視界から消え、命が一人になった時、再び包囲された。

 

「はぁ・・・・・はぁ、逃がさない。みんな、殺るよ!!」

「面倒な・・・・・」

「ここまでされたんだ、やり返さない訳が無いでしょ!!」

 

再び始まる剣戟。

 

しかし、それは怪物を誘う泣き声のようで・・・・・。

 

「───がっ・・・・・!!!!」

 

突如、なにかが割るような音がして・・・・・一人の娼婦が壁にめり込んだ。

 

『ァア───────!!』

 

空間がひび割れた。まるで世界が壊れるように。

そこより現れるのは・・・・・銀の髪をうねらせる巨躯。黒銀の獣。

 

───太古の昔より繰り返される・・・・・怪物による猛威が振るわれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───腕が薙ぎ払われる。

私はそれをしゃがむ事で回避し、後方に跳ねる。反応が遅れた者が捕まり、空高く放り投げられた。

 

・・・・・本当に、あれはハルプ殿なのだろうか?

 

その巨躯は禍々しい。体長は2mを超える。腕は地につく程に長く、腰のあたりまで伸びた髪は風もないのに揺らめいている。

身体中に不自然な黒い罅の様なものが蠢いていて、酷く濁った赤い目が髪の隙間から覗いていた。

 

『・・・・・』

 

私はハルプ殿だと思われるモンスター・・・・・いや、人・・・・・なのでしょうか。なんと区別すれば良いのか分かりかねますが、ハルプ殿に攻撃出来ない状態です。

 

!!・・・・・向こうも首を傾げています。私が攻撃しないことを不思議に思ったのか、はたまた私を思い出してくれたのか・・・・・。

 

『────────────ァァァア!!』

 

突如、体を屈めたと思えば跳躍した。その高さたるや・・・・・私が体を仰け反らせ無ければならないほどで・・・・・つまりは私の真上。

・・・・・確実に殺しに来ている!

 

「くっ・・・・・!!」

 

咄嗟に体を投げ出すように横に跳ねる。

そして爆音。

跳躍から繰り出された振り下ろしは易々と地面を陥没させた。当たれば私など一溜りもないだろう。

 

「ハルプ殿!どうか気を確かに!」

「ハルプだって!?アンタらのお仲間かい!?ならさっさと大人しくさせ───」

 

イシュタル・ファミリアの団員が私にそう言いかけ・・・・・吹き飛ばされる。

ハルプ殿は・・・・・普段なら生命は奪わない。暴走しているいまでも・・・・・奪ってはいない、偶然かどうかは分からない。だとしても、はやく、止めなくてわ。

 

「全員!撤退だ!ギルドに応援をっ・・・・・!ま、まって、いや、おねが」

「ちょっ、ちょっとまって、助けて!誰か!見てないで助けなさい!!いや、いやぁあああ!!」

 

一人、また1人と倒されていく。

思い返すのは・・・・・あの戦いだ。

痛感した無力感。救おうともがいても救えない理不尽。

もう・・・・・あんな思いは御免こうむる!

 

「1人でも・・・・・!」

『────────ァァアァァア!!!』

 

─────1人、極東の武士は獣に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は真夜中。時間軸はやや遡る。

街は静まり返り、起きている人はほとんどいないだろう。

起きているとするならば・・・・・そう、例えばこんなサボり魔と、それに付き合わされる真面目な奴。

 

「ふあぁ〜・・・・・ねむいよぉ・・・・・僕、もう寝たい・・・・・」

「ダメだ。・・・・・リーナ、貴女が仕事をサボるからこうして夜遅くまで仕事をしているのだぞ?ほら、私も手伝うから、早く終わらせてしまおう」

「うぅ、その優しさが僕の逃げ道を塞いでるよ・・・・・」

 

仕事をサボってサボってサボり続けた結果の今。

むしろ、アリッサが手伝う必要は無いのだが・・・・・恩を返すためにとアリッサはやって来た。

 

「・・・・・うぅ、明日はいっぱい寝てやる」

「明日は明日で仕事はあるぞ。手早く終わらせ、その後に寝る方がいい」

「そんなぁ・・・・・リーナさんもう限界だよ!これは全部スキルが悪いんだ!」

「サボりもか?」

「・・・・・ぃぇ」

 

しょぼくれるリーナの態度に、アリッサは「ふふっ」と小さく笑いながら、パラパラとリーナが書いた報告書に間違いが無いかを確かめる。

 

不備は無し。

 

ほっと一息ついて、リーナに「少し茶でもいるか?」と伝えようと振り向いた時だ。

 

「・・・・・!」

 

リーナの目が、冷たい光を灯していた。

 

「・・・・・なにか、起きる・・・・・?」

 

それはいわゆる勘。

 

その普段と比らべるまでもない真剣な表情に、アリッサは体を固くする。

 

「皆を起こして、なにか・・・・・なにか起こるよ」

「・・・・・分かった。」

 

人々が動きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁっ・・・・・!!!」

 

ハルプ殿の一撃を受け流しきれずに壁に叩きつけられる。

あぁ・・・・・私では、やはり力不足。・・・・・辺りを見渡せば・・・・・地に倒れ伏せた敵。

状況だけ見るならば、敵を倒しただけに思える。

・・・・・けれど、ハルプ殿は私も狙っている。

 

先程は助けていただいたが・・・・・最早そんな理性すら残っていないのだろう。

いや、だが周囲の倒れた人達はみな気絶しただけだ、とすれば僅かに理性は残っているのだろうか?

 

「・・・・・っ!!」

 

再び振り下ろされる腕を、何とか躱す。

単調な攻撃故に、回避しやすいが・・・・・守るために盾となったりと、相当にダメージを負ってしまった。

 

『・・・・・?』

 

ハルプ殿の動きが止まって・・・・・?・・・・・っ!!!

 

なにかが、おかしかった。次の攻撃は回避出来ないと直感的に、本能的に分かる。であれば・・・・・受け流す、受け流せるのだろうか?

 

・・・・・無理だ。受け流す事は出来ない。

即座に否定して、受け止めるために姿勢を変える。

そんな時。

 

「────はぁぁあああっ!!」

「妖夢殿!」

 

振り下ろされた腕が私に当たる前に、妖夢殿が突如斬りかかった。

助けが来たのだ。自分の無力さを痛感し、しかしやはり・・・・・気持ちが安らぐ。

 

腕がはねとばされたにも関わらず、何事も無かったように、腕があるハルプ殿。

そう、先程からこれだ。

敵方のアマゾネス達が渾身の一撃を加え、腕を吹き飛ばしたとしても、何事も無かったかのように、吹き飛ばされた筈の腕で薙ぎ払われた。

 

「すみません遅れました!カエルさんに捕まってました!」

「カエル・・・・・?」

 

恥ずかしながら妖夢殿が来てくれた事で緊張がややほぐれました。

妖夢殿が詠唱を開始。手中に現れたのは白楼剣と楼観剣。

 

そして─────

 

「──────フッッ!!」

 

視界から掻き消える程の速度で加速しました。縮地を超える縮地。鮭跳びによる高速移動。そしてそこから放たれる無数の斬撃。

魂殺しと強制成仏の二振りを使って。

 

『ァァァア!!??』

 

斬られたハルプ殿の体から、キラリと光る欠片のような物が空に飛んでいきました。中には途中で消える物も。

 

「はぁぁあああ!!」

 

それが何であるか・・・・・なんとなしには理解出来ました。

 

魂。幽霊であるハルプ殿には絶対に必要な物・・・・・であるはず。それを躊躇なく斬り捨てる妖夢殿。

きっと、それに足る理由があるはず。

 

「くっ・・・・・!そこっ!!」

 

でなければ・・・・・あれほど辛そうな顔はしないでしょう。苦虫を噛み潰したかのような顔は。

 

「ハルプ!話を聞いてください!ぐッ!!」

 

時折ハルプ殿に声をかけるものの、一切の返事は返ってきません。お返しにと言ったふうに更に加速した一撃が迫ります。

 

剣閃は積み重なり、やがてハルプ殿の動きが止まりました。

 

「止まった・・・・・?」

「ハルプ!聞こえますか!?私です!妖夢ですよ!!」

 

妖夢殿の必死の呼びかけに、ハルプ殿はゆっくりと首を傾げる。なにかを不思議に思っているように見える・・・・・っ!!

 

『───────ォオ!!』

「また暴れだしました!!」

「・・・・・ハルプ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴れ狂う銀の巨躯。

 

「はぁ────はぁ・・・・・まだ、動きますか。繋がりが薄れる速度が尋常ではありませんね・・・・・!っ!あの子以外を斬り捨てるのは骨が折れますっ」

 

身に纏うのは黒い業。

 

『・・・・・・・・・・あぁ・・・・・助けなきゃ』

 

零れでるのは傲慢な悲想。

 

「ハルプ!!!聞こえているでしょう!?私達は敵ではありません!!」

 

声など聞こえている。

 

『────がァ!!』

 

それでも尚、やらねばならぬと獣は考えた。

 

「ぐっ!!妖夢殿!本当にこの方はハルプ殿なのですか!?」

「はい!!断言します!」

 

激化する戦闘。無雑作に振るわれる一撃は、まともに受ければ命の保証は無い。

 

躱し、斬り、避けて、斬る。

 

その巨躯を構成する魂の欠片を斬り飛ばす。

妖夢は気がついていた。なにせ、自分の半身に大量の魂が詰まっていたのだから。

 

斬り続ければ、いずれハルプは正気を取り戻す。

そろそろだ。これだけ斬れば、ハルプが表面に出てくるはず。

 

そう思い・・・・・油断した。

 

「なっ・・・・・!」

「妖夢殿!」

 

振り下ろされた腕を躱した妖夢だったが、腕は途中であらぬ方向へと曲がり、妖夢の首を掴み高々と持ち上げる。

 

「うぐっ・・・・・カハッ!」

 

今までは見えなかった、確かな殺意。殺してやると言う憎しみ。手と半霊を通して伝わるそんな感情に・・・・・妖夢は抵抗する意思を削がれた。

 

足をばたつかせ、首を絞める手を引き剥がそうとするものの、ビクともしない。

 

「お辞め下さいハルプ殿!」

 

妖夢の意識に靄がかかる。

 

「ぅ・・・・・が・・・・・ぁ!」

 

妖夢の死を予感し、命が走り出す。

こんな所で躊躇している自分はやはり未熟だと、そんな思いを懐きながら。

 

 

 

 

「──────ぉおおおおお!!!」

 

 

 

 

しかしその時、稲妻が黒銀の巨躯を貫いた。

 

「桜花殿!!」

 

命は叫ぶ、自らの団長の名を。

頼もしく皆を引っ張るそんな名を。

 

稲妻が収束し、人の形となり桜花が現れた。背を2人に向けて、獣の前に立ち塞がる。

 

「助けに来たが・・・・・なんだアレは」

 

険しい顔つきで桜花が獣を睨む。

獣は無傷だ。貫かれた腹は依然そこにある。

 

「ハルプ殿です、ですが・・・・・自我を失っているようで・・・・・」

「・・・・・マジかよ。とにかく妖夢を助けるぞ」

「千草殿は?」

「こちらを俯瞰出来るところに待機している」

 

とは言え、未だに妖夢は捕まったまま。いざ助けようと槍を構える。

体に纏うのは紫電。自らの神の名を背負う、神降ろし。

雷の武士が地を蹴る、そんな瞬間に────

 

 

 

 

 

「─────俺も手伝おう」

 

 

 

 

 

「「?!」」

 

誰もが声の方向に振り向く。

 

しかしそこにあるはずの影は無く、獣の後ろで大剣を振り切った姿勢で佇んでいた。

 

その速度は紛うことなきレベル7。誰もが見失い、口を開けざるおえない。

 

『ぁ・・・・・ああ』

 

獣が残念そうに妖夢を見る。妖夢は咳き込みながらも、震える手で刀を構えた。いや、震えているのは手だけではない。心も震えている。

 

最も親しいと思っていた、自分にとってこの世界で絶対的な家族だと思っていた存在からの否定、拒否に挫けそうになっている。

 

「オッタル。お前達の守護者だ」

 

簡潔に告げられる名前、妖夢ははっとオッタルを見た。オッタルのその顔には確かな・・・・・失意があった。

 

獣は首を傾げる。そんな様子に苦笑いを浮かべつつ、オッタルは掻き消える。僅かな差をもって地面が吹き飛んだ。

 

「─────故にこそ」

 

いつの間にかハルプの真後ろに居たオッタルがハルプに背負投げをぶちかます。

 

「お前を倒そう。そうしなければ・・・・・お前を守れそうにない」

『──────────アァ!!』

 

大剣の一撃と、黒銀の右腕がぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オッタルと獣がぶつかった同時刻。

彼らは歓楽街・・・・・陥落街へとやって来た。まるで戦争でもあったのかといわんばかりに、荒れ果て、滅びの匂いを漂わせる。

本来ならば色気と金の匂いで噎ぶ程であるはずなのに。

 

「・・・・・り、リーナさん。本当に、行くんですか?」

「うん」

 

クルメが金の瞳を揺らしながら、白銀のエルフへと尋ねる。行かなくてはならないと分かっていながらも、この光景を前に逃げ出したくなってしまう。

そんなクルメの内心を理解して、リーナは頷く。そして、こう続けた。

 

「行きたくないなら我慢しないでいいよ?」

「い、いえ!頑張ります!」

 

2人はずらりと並んだタケミカヅチファミリアの後方に居た。

最も先頭では、ダリルとアリッサが身振り手振りを交えて作戦を話し合っている。

 

「いいかテメェら!この中で何が起きてるかはわからねぇ!目下の目標は消火だ!燃えねぇ自信がある奴は俺に続け!生存者を探すぞ!」

「「「「おう!」」」」

 

ダリルは自身の火耐性を活かすために、火の中を進むようだ。

数人の耐久に優れる者や、サラマンダーウールを纏った者もダリルの近くへと集まる。

 

「アリッサさぁん!えっと、武錬の城には誰もいなかったです!」

 

てってけと走ってきたマシューが、タケミカヅチ達が居ないことをアリッサに告げる。アリッサはその報告に頷き、話し始めた。

 

「いいか皆よく聞け!この奥で幹部達が戦闘を行っている可能性が高い!私達はその援護を行うぞ!可能であれば敵対ファミリア団員を拘束する!いいな?」

「「「「おう!」」」」

 

アリッサが盾を高く掲げ、団員達が得物を掲げる。

 

「─────あぁ、そうだマシュー」

「はい?」

 

アリッサが、忘れてたと言わんばかりに軽く言葉を紡いだ。

それはマシューのことを信頼しているからなのだが・・・・・

 

「ギルドが感付くだろうから、止めてくれ」

「・・・・・は!?」

 

本人からすればたまったものではないだろう。

 

「いざ──────突撃ぃ!!」

「待っってぇえええ!置いてかなぃでくださぁぁい!!」

 

1人ボッチになったマシュー。頑張れ。

 

 

 







次回、物語がぐっ!と進む・・・・・!予定。

ついでのマシューの活躍をドゾ。



【マシュー】

ヾ(・ω・`;)ノ「あわわ・・・・・どうしよう」

( ¬_¬u)「足止めなんて出来ないよ・・・・・」

ロイマン「そこのお前!何をしている!」

(°Д°)ピャッ!「は、はいぃ!」

ロイマン「何をしていると言ったんだ」

( ̄▽ ̄;)「(まずい、考えろ、考えるんだ)」

ロイマン「答えられないことがあるのかね?例えばこの惨状のように」

(`・ω・´)キリッ「私達はタケミカヅチ・ファミリアです!」

ロイマン「・・・・・ほう?」

(`・ω・´)キリッ「人命救助のために来ました!(嘘じゃないよ!)」

(; ・`д・´)「ところで、ロイマン所長。歓楽街は・・・・・その、好きですか?」

ロイマン「大好きだ(即答)」
その他ギルド員「(冷たい眼差しをしている)」

(`・ω・´)キリッ「僕もです(行ったことはないけど)」

ロイマン「ふむ・・・・・そんな体でかね?」

(;^ω^)「(身長が)小さい子が好きなアマゾネスもいるんですよ(震え声)」

ロイマン「ふん、まぁいい。皆!人命救助に取り掛かるぞ」

ヾ(・ω・`;)ノ「お、お待ちください!」

ロイマン「なんだね」

ヾ(・ω・`;)ノ「えっと、よく考えてみてください。この歓楽街を運営してるのは何処でしたか?」

ロイマン「それはもちろんイシュタル・ファミリアだ」

(`・ω・´)キリッ「であれば、可笑しいとは思いませんかね?」

ロイマン「・・・・・確かに。あれだけの規模のファミリアはほとんど無い。例え真夜中だとしても消火活動が出来ないわけがないな。」

(*´∀`)-3「その通りです。つまり・・・・・」

ロイマン「ファミリア間の抗争・・・・・という訳か。・・・・・タケミカヅチ・ファミリアとイシュタル・ファミリアの、な。」

ヾ(・ω・`;)ノ「違います違いますぅ!」

ロイマン「何が違うのだね?」

(`・ω・´ )キ、キリッ「確かに、タケミカヅチ・ファミリアは沢山の問題を起こしてきましたが、今回は違います!」

ロイマン「というと?」

(`・ω・´)「思い出してみてください。タケミカヅチ・ファミリアがどんなファミリアか」

ロイマン「問題児(即答)」

(´;ω;`)「そうですけどぉ・・・・・そうじゃなくて、どんなことに特化しているか、ですよ」

ロイマン「なるほど・・・・・対人戦、か」

(`・ω・´)キリッ「その通りです。幹部の皆さんやリーダー格の皆さんはレベル差があっても勝てる化け物達です。絶対に、『両成敗』してくれますよ!」

(※マシューは全容を理解していません)

ロイマン「ふむ・・・・・このままでは職員が怪我をおう所だった訳だ、君には、いや、君たちには感謝しなくてはな、ありがとう。名前は?」

.*・゚(*º∀º*).゚・*.「マシューです!(助かったぁ!)」

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