オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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サブタイトル詐欺







72話『さぁ、戦おうか』

何もかもが崩れる様な、そんな感覚が私を襲った。足元がおぼつかなくなり、冷や汗が出るような浮遊感に襲われる。

背筋に冷たいものが走り、このままでは死んでしまうと錯覚する。いや、それが錯覚だとは言いきれない。

 

ぐわんぐわんと歪む視界。分からなくなる上下左右、前と後ろ。

 

吐き気すら催す不思議な感覚は、【集中】のスキルによって引き伸ばされた体感時間のせいで1分ほどに感じた。

 

実際は10秒あったか無いかだとは思いますが。

 

「────はぁっ!・・・・・はぁ、はぁ」

 

体に自由が戻り、荒く息を吸う。不意討ちを警戒して辺りを見渡して・・・・・

 

───目を疑った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

辺り一面、視界の続くどこまでも。地平線の彼方まで・・・・・・・・・・草一本生えていない荒野だった。

 

「こ、ここは?」

 

空を見れば、雲すら無い。

 

少し、息がしにくい。酸素が薄い様ですね・・・・・。しかし・・・・・1体何が起こっているのでしょうか。

 

私は情報をまとめることにする。

 

私、いえ、私達は正気を失ったハルプを助ける為に、ハルプと交戦。

ある程度戦闘を続けていると、ハルプがやや正気を取り戻した。

ですが、その状態が1番危険でした。技を取り戻したハルプは戦闘を模擬戦と認識し、私達を殺すつもりで攻撃してきた。

 

・・・・・あの時のハルプは自分に都合の良いように解釈していました。模擬戦という殺さないようにする戦いだと認識していたはず。

なのに、私達を殺そうとする・・・・・やはり完全に戻った訳では無かったようです。

 

あと、他に気になるとすれば・・・・・私やクルメさん、後はオッタルさんを忘れている節がありました。

・・・・・いえ、言葉を濁すのは辞めましょう。少なくとも「私は」確実に忘れられていた。

 

・・・・・悲しいですが、理由が分からない以上仕方ありません。

なにせハルプの現状は、魂がハルプに集まりすぎて起きた暴走の筈。ハルプ以外を取り除けば全ては丸く収まる筈なのです。

・・・・・なにか見落としがあるのでしょうか・・・・・。

 

私は色々と考えながら、少しづつ歩みを進めます。

 

どれだけ歩いても、景色は一向に変わりません。

ここは何処なのでしょうか?

 

『お?よう妖夢!ひっさしぶりだなぁ、元気だったか?こんなの所で何してんだよ?』

 

!!!

 

私は突如聞こえてきた私以外の私の声に、咄嗟に振り向き刀を向ける。

 

そして、また、目を見開いた。

 

『お、おいそれ白楼剣だろ?落ち着けって、俺を成仏させに来たのか?』

 

そこにはハルプが居ました。

本来の、ハルプが。

黒いヒビが無く、巨大化も異形化もしていない。私と瓜二つのハルプが。

 

驚いた顔をして、両手を上げて安全性をアピールしています。

 

「・・・・・ハルプ、ですか?」

『ハルプ、ですよ?』

 

・・・・・本物です・・・・・間違いなく。し、しかし、どうして?

・・・・・まさか、この場所と何か関係が?

 

「ここは何処ですか。答えてください」

『おおう、いつに無くキツイっすね。・・・・・忘れたのか?』

「私はこんな所知りません」

『こんな所って・・・・・オラリオだぜ?元、が付くけど』

「・・・・・え?」

 

お、オラリオ?この荒野が?

まさか幻覚が見えている?まだ正気では無いのでしょうか?

 

『・・・・・本当に覚えてないんだな。いいぜ、説明してやるよ。オラリオがこんな風になっちまったのは俺達のせいだ。俺達が歴史に干渉しすぎた結果、縒り戻しが発生した。ベル・クラネルが大して強くないころ・・・・・たしか・・・・・戦争遊戯の頃だ。いきなり黒龍が襲来した』

「黒龍が、ですか?にわかには信じられませんが・・・」

 

黒龍と言えば・・・・・確か四天王てきなポジションで、最強のファミリア二つを滅ぼしたんでしたよね?

 

『お前マジで言ってるのか?ま、まぁ、若しかしたら記憶消されてんのかもしれないから、話すよ?』

 

ハルプが眉を寄せながら、けれど話してくれます。

 

『その黒龍襲来によってオラリオは消滅。モンスターが大量に湧き出した。戦争遊戯によってオラリオから離れていたアポロン・ファミリアとヘスティア・タケミカヅチ連合は共同戦線を張ってモンスターの群れと正面衝突。

初めは良かったが、所詮は雑魚の寄せ集め。強力な個体が現れてからは簡単に崩壊した。』

「そ、それってみんな死んでしまったってことですか!?」

 

えっと、戦争遊戯と言うと・・・・・確か今の時期の筈です!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今の、時期・・・・・?

 

『まぁ話を聞けって。タケや命、桜花たちの奮戦によって時間が稼がれ、お前だけは元の世界に戻した。・・・・・俺も行けってタケに言われたけど紫って奴に「お前はダメだ」って言われてここに残された。んで、死なない俺は全力を尽くしたが・・・・・この有様さ。タケは死に、神の恩恵は消えた。アポロンは最後まで引きこもってたが死んじゃったから人間の負け。モンスターが世界の王者となった訳だが・・・・・俺は死なない。だから、時間をかけて全部殺した』

 

コイツは、ハルプじゃない。いえ、ハルプです。ですが・・・・・私の知る(・・・・)ハルプではない。

 

『その後はずーっと、こんな感じさ。人間探してあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。紫って奴の目論見だと、俺の精神が崩壊して半霊の中から居なくなれば回収するつもりなんだろうけどさ?崩壊なんてしませんよーだ。』

「そ、そうでしたか。人は居ましたか?」

 

・・・・・!そうだ、私以外の皆さんはどうしたのだろうか?・・・・・なぜ、この事を一番最初に考えなかった?おかしい、あの子の記憶が有る以上、皆さんは相当優先度が高いはず。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぁ。何で戻ってきたんだ?』

 

ハルプが俯いてそう言います。

顔が見えなくて、何を考えているか分からない。答える必要があるのは確かです。

 

「気が付いたら、ここに居ました」

 

嘘偽りなく伝える。でも、何かを間違えた。

 

『・・・・・』

「ハルプ?」

『・・・・・だよ』

 

黙り込むハルプを、私は見ていることしか出来ない。そして、長い間溜め込まれた激情が爆発しました。

 

『なんで、逃げたんだよ。どうして・・・・・どうして一緒に戦ってくれなかったんだよっ!!!お前が居たらもっと戦えた!!もしかしたら何人か救えたかもしれない!!みんな死ななかったかもしれない!!なんで、なんでお前だけ逃げたんだよ!?逃げるなら皆を連れて行ってくれれば良かったんだ!!俺は行けなくてもいいよ・・・・・!でも・・・・・皆は・・・・・死んじゃうんだぞ・・・・・?』

「・・・・・」

『答えろよ、妖夢・・・・・』

 

知らない。私はその歴史を知らない。私はこのハルプの知る妖夢ではない。

だから・・・・・答えられない。

 

『・・・・・そうか、そうだよな。はは、悪かった』

 

ハルプが2歩、3歩と、覚束無い足どりで後ろに下がる。

 

『全部、無駄だったよ・・・・・。誰も、生きてなんかいなかったよ』

 

その姿は私の知るハルプと比べて・・・・・あまりにも小さく見えた。心が弱っているとすぐに分かった。

 

「ハルプ・・・・・ごめんなさい。きっと、私は貴方の知る妖夢ではありません」

 

助けたいと思った。けれど、それが無理な事も分かっている。

何が起きたのかは分からない。けれど、他のハルプと会うという現象に出会っている。

もしも、これがハルプの能力なら・・・・・紫様が拒んだのも理解できる。単純に、強すぎる。決して一個人が持っていいものではない。

 

『そう・・・・・か。お前、妖夢じゃないのか・・・・・他の奴か、そうか、そうか・・・・・』

 

ハルプの手から・・・・・刀が伸びる。

私はゴクリ、と唾を飲み込んだ。

 

『なら・・・・・死んだっていいや』

 

戦闘が・・・・・始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如足元が崩れる様な、そんな感覚が私を襲った。

背筋に冷たいものが走り視界が歪む。

握り締めた千草殿の手の温もりだけが、確かに感じ取れた。

 

「・・・・・・・・・・ぅ・・・・・ぁ?」

 

冷たいものが頬に当たる。雨だ。雨が降っている。空全体を見渡しても雲一つ無いと言うのに。

 

「う、・・・・・うーん・・・・・命、ちゃん?」

「起きました千草殿・・・・・なにか様子が変です」

 

千草殿を庇うようにしながら、辺りを見渡す。

凍っているのだ、大地全体が。

霜柱によって押し上げられ、凍っている部分がキラキラと光っている。

天気は雲一つない晴天。ただし雨は降っている。

 

・・・・・意味が分からない。

 

霜柱なら日光と雨で溶けてしまう筈だし、そもそも空の何処にも雲がないのに雨だなんて。お天気雨にしたって強すぎる。さらに言えば気温が高い。

 

一歩進む度にザクザクと音が鳴る。

 

「ここ、どこ?」

 

千草殿が心配そうに私に尋ねる。とは言え、私とて何も分かりません。

 

・・・・・ん?あれは、何でしょうか?

 

「千草どの、あちらに見える影は何でしょうか。千里眼で確認しては頂けませんか」

「う、うんっ!えっと」

 

遠くに小さな影が見える。蜃気楼が発生しているようで私では目視しきれない。なので千草殿に千里眼で確認してもらう。

 

「え!?」

「ぬわ!どうしたのですか千草殿!?」

 

いきなり肩をビクッと跳ねさせた千草殿に、私が驚いてしまう。一体何が見えたのでしょう。

 

「えっと・・・・・その、ハルプちゃんが・・・・・居るよ?」

「・・・・・戦闘準備を整えましょう」

「あ、待って待って!!黒い傷は無いし、モンスターみたいにはなってないよ!」

「それは真ですか?」

「うん、信じて」

「・・・・・はい。信じます。疑ってしまい申し訳ない」

 

千草殿に謝罪した後、ハルプ殿がこっちに向かってくるとの事なのでもしもの為に武器を確認する。

 

・・・・・武器に破損は見られません。

とは言え、仮に戦闘になったとして。私では数秒しか持たないでしょう。千草殿には逃げてもらいたいのですが・・・・・。

千草殿を疑っている訳ではありません。こういう時に私は油断してしまうので何時も足でまといになってしまう、なので練習を兼ねてです。ほんとに。

暫くすると、ハルプ殿が目の前にやってきた。傷は無いし、妖夢殿と同じ姿だ。違うとすれば服装でしょうか。何やら大きなリックを背負っています。

 

『やぁ、こんなところで何をしているのかな?』

「は、ハルプ殿・・・・・!!」

 

正気を取り戻したのですね!!と、私が感動し、千草殿も嬉しさに喉を詰まらせる。

しかし、ハルプ殿は何やら不思議な顔をしている。

 

『ハルプドノ?ふむ、halbはドイツ語だとして、ドノ・・・・・は do no だろうか・・・・・いや、可笑しいか。だとすればハルプ、が名称で、ドノは敬称の殿だと見るべきだね。しかし、ハルプ・・・・・半分と言うか意味だが・・・・・半人前という事を表しているのか?それともこの世界特有の役職、若しくはこの外見年齢を指す単語なのか・・・・・ま、いいか。所で君達、そんな半人前のハルプ殿に、何か用かな?』

「「人違いでした!」」

 

だ れ で す か!?!?

私たちの知るハルプ殿ではない!!

 

『おや、そうかい?それは失礼した。ふむ・・・・・それにしても人違いでした、か。ならばやはり人名。そして人名にハルプの名付けると言うことは、ドイツ人ではないな。恐らくは日本人特有のセンスだ。彼らはとりあえず響きさえよければなんでもいいからね。・・・・・さて、初めに戻すよ?君達は何故こんなところに?』

 

なんというか・・・・・独り言が凄まじいです。思った事は全部出てきているのではないでしょうか。

 

「気が付いたら、ここに居ました」

『ほほう?気が付いたら、か。その気が付いたら・・・・・というのが物理的なものなのか、表現の問題なのか・・・・・気絶などをしていつの間にかここに居た。という状況なのか、私のように特に物事を決めずに進み、流れ着いたのが此処でした。というものなのか。

ふむ・・・・・前者と見るが、どうかな?』

「は、はい。あってます」

『おお、それは良かった。』

 

ニコニコと笑いながら、リュックを下ろす。

そして手際よく折り畳みのテーブルや椅子を用意し、ティーセットやら薪やらを整えていく。ふとした瞬間、屋根が出来上がっていて雨が当たらなくなった。

 

「わ、わ・・・・・凄い・・・・・」

『ん、ありがとう。好きに寛いでくれ。人と会うのは久しぶりでね、こうした機会にはなかなか恵まれないんだ。世界を探検し、誰も行ったことのない場所へ行く・・・・・なかなか楽しいものだよ』

「ぉ、おお・・・・・?」

 

・・・・・巫山戯ているのかと、思っていましたが・・・・・本当に私の知るハルプ殿では無いようですね。

 

『あぁ、そうだ。こうして会ったのも何かの縁だし、名前を聞いても良いかな?』

「あ、私はヤマト命と言います」

「えっと千草、だよ?」

 

私たちが自己紹介をすると、ニコニコとしていた顔がいきなり真顔に変わった。

 

『・・・・・・・・・・聞いたことがある気がするな。もしや以前会った事があるかな?』

「・・・・・あなたに会ったのは初めてです」

 

唐突な変化に戸惑いつつ、返答していく。

 

『ふむ。「あなた」か。詰まるところ、僕以外の誰かには会ったのだろう?それは誰か・・・・・そう、「ハルプ」と呼ばれた人物だ。そして・・・・・それはボクと同じ姿をしていた。・・・・・そうだね?』

「は、はい」

 

話しが早い。うんうんと頷きながらニコリと笑う目の前の人物に、私はまだ理解が追いつかない。

 

『あぁ・・・・・思い出した。ハルプ・・・・・か。原罪(オリジナルシン)の魂から君達は送られて来たのか。ふふ、刺客かな?』

「よ、よく分かりませんが戦う気はありません!!」

「う、うん!戦わないよ!?」

 

お、おりじなる・・・・・わからん!

とりあえずハルプ殿を知っているようですが、私達と敵対しそうな雰囲気。どうにか止めないと。

 

『そうなのかい?じゃあ質問を重ねよう。君が最後に見た「彼」はどんな状態だった?心的な物でもいいし、肉体的な事でもいい』

「は、はい。あれは─────」

 

私は10分程の時間を使い説明をした。千草殿が合間合間に足りない部分を付けたし、殆ど全ての情報を伝えたと思われる。

 

『・・・・・ふむ。狂乱・・・・・暴走・・・・・なるほど理解した。更に記憶の欠落も見られる、と。制御不能になったか、哀れな奴』

「・・・・・助けられますか?」

『ん?当然さ。・・・・・あ、でも白楼剣と呼ばれる剣が無くちゃ無理だ。あとそれを使える人物が居ないと無理だね』

 

どうやら白楼剣と妖夢殿で救えるのは確実な様子。良かった・・・・・

 

「います!」

『ならば良し。さぁ帰りなさい!と言いたいところだけど、残念。どうやらこの世界の基点として、ボクが選ばれているらしい』

 

どうやって帰れば、と聞こうとしたその瞬間。

 

「─────ッ!?」

 

ドクン、と心臓が高鳴る。悪寒に襲われ、直感に従いしゃがみ後方に飛び退く。

 

『だから、ボクを倒さないと帰れないよ』

 

ハルプ殿は、刀を振り切っていた。反応が遅れれば死んでいた。千草殿も確りと回避できている。

若干戸惑いつつ刀の柄に手を掛け、睨みつける。

 

『さぁ、戦おうか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に訪れる浮遊感。内蔵が浮かぶような感覚の後、俺はそこに居た。

 

「・・・・・」

 

妖夢が新調してくれた新しい槍、銘は「束丸(たばねまる)」。・・・・・なんと言うか、面白い名前だが・・・・・妖夢達の友人だというヴェルフ・クロッゾが作ったものだ。使用した感覚としては、俺の腕の長さや身長に合わせてあるのか使いやすい。

 

「・・・・・」

 

さて、現実逃避は辞めにしよう。

俺は、夕暮れ時なのか茜色に染まっている辺りを見渡す。

 

「!?」

 

一面──────死体だらけだ。

 

「・・・・・何がどうなってる」

 

恐らく、なんて付ける必要は無い。これは幻だ。

なにせ・・・・・地面を埋め尽くす死体が全部・・・・・妖夢な訳が無い。空に浮かぶ首の折れた死体達が妖夢である筈が無い。

それら全てが虚ろな表情で倒れている。

 

俺の足元もそうだ、俺が踏みつけているのもそうだ。

 

だから、これは幻だ。

 

でなければ・・・・・耐えられない。

 

「うっ・・・・・」

 

吐き気を催した。

よくみれば、全ての死体が、何処か違った。死に方が違った、怪我の位置が違った。全部違った。

 

吐くことは出来ない。たとえ幻だとしても・・・・・そんなことは出来ない。

 

俯いて、耐える。目を開けば必ず目が合う。

 

目眩がした。幻だと理解しているのに、ショックが大きすぎた。

 

フラフラと後ろに下がる。嫌に柔らかい足元に足を取られながら下がり、首を吊った妖夢にぶつかった。

妖夢の虚ろな目が俺を責めているように思えた。

「なんで踏むの」「なんで助けないの」「桜花助けて」と。

 

目の前が歪む。耐えられない。

 

俺は───意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こりゃ、ねぇだろ。

 

水、水、水水水水水水水水水水水水水!!!!

俺の足元の小島以外、全っっっぶ!海ぃ!!!

 

巫山戯てやがる、なんだよこりゃぁ、俺はアイツと戦ってたんじゃなかったか?

 

「・・・・・あぁクソ!!」

 

拳を地面に叩きつける。やり場の無い怒りが炎となって身体が燃え上がる。

 

「もー、そんなに怒らないでよー、同居人の気持ちにもなって?」

「っるせぇ!なんでテメェはそんなに余裕あんだよ!?」

「何も出来ないからでしょ?」

「っ・・・・・あぁ、そうだな」

「じゃ、私寝るね」

 

寝んのかよ・・・・・。不貞寝か?ったく。

 

お?オッタルが帰って来た。物凄い速度で泳いでやがる。

 

「おーい!どうだった?!」

 

そうやって叫ぶと、オッタルは一旦潜水し、イルカみてぇに飛び跳ねて俺の目の前に着地した。

 

「何も無い。少なくとも1時間ほど進んだが・・・・・」

「そうか・・・・・」

 

2人で落胆し、寝ているリーナを見る。

海水で濡れて、肌に張り付いた水色の着物。エロい・・・・・と言いたい。巨乳だったら言ってたが。

 

『はろ〜、はわゆ〜、はいふぁいんせんきゅ〜』

「あ?」「む?」

 

小島の横を・・・・・・・・・・・・・・・サングラスに花柄の水着を来たハルプが流れて行った。

 

「あ?」「む?」

 

変な声しか出ねぇ・・・・・え?何あれ。何だあのシュールな光景は・・・・・

 

「・・・・・オッタル」

「分かっている」

 

オッタルが完璧な飛び込みで海に消え、ユラユラと流れていたハルプが『うへぁ!?』と言って海に沈んだ。

そして再びのドルフィンジャンプ。

 

「連れ帰ったぞ」

『ぺ!ぺーっ!けほけほ、しょっぱいよぉ・・・・・目に入った痛い・・・・・みんな酷いよぉ・・・・・』

「・・・・・ぇ、こんな奴だったか?」

「・・・・・わからん」

 

涙目で俺を見上げながら抗議してくるハルプ。俺は普段のアイツと違いすぎて困惑しか出来ねぇ。

 

『もうっ!折角の海水浴なんだよ?!折角プカプカしてたのにっ!!あれ楽しいんだよ?!邪魔したらダメじゃん!』

「いや知らねぇよ!!」

『ひぃ!ご、ごめんなさい!!あ、あれ?俺の浮き輪無くなっちゃった!?』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ、こんな奴だったか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・わからん」

 

や、やべぇぞ、なんて言うか・・・・・調子が狂うぞ。

なんて思ってたらハルプがオッタルの手から抜け出してリーナの元に。

 

『おねーさん!おねーさん起きて!!あの2人怖いよ!!助けて!』

「んだとゴラァ!?」

「むにゃむにゃ・・・・・なーにー?・・・・・へ?ハルプちゃん?」

『助けて!!あのおじさん達がいじめて来る!』

「なんだって!?よぉしおねーさんに任せなさい!!」

 

いや、少しは疑えよ少しはおかしいと思えよ何一瞬でそっちに回ってんだよ。捕まえろよ結界の出番だろうこのバカエルフバーカバーカ。

 

「な、なんだぁ?僕をひたすらコケにしている気配が・・・・・!」

「バカかてめえは。そいつがおかしい事くらい気がつけよ!!」

「何を言うんだ!!可愛いは正義!厳ついのは悪だぁ!」

「何その理論!?」

「身体中に刺青がある時点でダメですー、怖いですー、厳ついですー!」

『そうだそうだー!』

 

こ、この、糞ガキどもが・・・・・!

ビキビキと怒りが炎に変わる。ハルプが面白いくらいにビビっている。

 

『は、はわわ・・・・・』

「おー、ありがとう。よく考えればダリルの炎なら着物乾くね。よいしょっと・・・・・」

 

・・・・・何でこいつは服脱ぎだしたんだよ?呆れた、もう阿呆らしい・・・・・。怒るだけ魔力の無駄だな。

 

「ダリル?ほら、早く炎だしてよ」

「・・・・・今ので呆れて怒りも消えたわ」

「ロリコンかな?僕の貧相な胸に興奮したのかな?」

「んだとぉ!?ぶっ殺すぞ!!」

「おー、燃えるねぇー」

「て、めぇぇ・・・・・!!!!」

 

俺が火の粉を撒き散らしながらリーナを追いかけていると、ガシャン!と言う金属音が聞こえてくる。

 

「「「『!』」」」

「はぁ、はぁ・・・・・はぁ」

 

そこには金属鎧の女・・・・・アリッサが、気絶したクルメを抱いて息切れを起こしていた。

あの女の事だ、クルメを抱いて、なおかつ全身鎧のままここまで泳いで来たに違いねぇ。化物かよ。

泳げない俺からすれば確実にバケモノだな。

 

『任せて俺はライフセイバーの資格を持っています!・・・・・・・・・・あかん、こりゃ死んでるわ・・・・・』

「な、本当か!?」

『ぇ、あああ、ごめんなさい、生きてますよ・・・・・?でも水を飲んじゃってるみたいなので今から出させますね?』

「・・・・・・・・・・た、頼む。・・・・・ん!?」

 

アリッサがハルプを見て固まった。そりゃそうか。

 

『にしても、鎧のまま泳ぐなんて命知らずなんですね。よいしょ、よいしょっと』

「けほっけほっ・・・・・は、はぁは、ぁ・・・・・ここは・・・・・?」

『ここは・・・・・えっと、小島?だよ?』

「そうです・・・・・か!?」

『ふぇ!?』

 

・・・・・・・・・・・・・・・にしても、どうなってんだ、こりゃあ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・わからん」

「考えるだけ無駄だな・・・・・」

「あぁ」












今回の話で出てきたおかしな世界のまとめ。文章で出てきたものをまとめただけです。

一つ目の世界。
何処までも荒廃しており、草木は無く。雲もない=海や川も無い。酸素も少ない。
ハルプの性格は殆ど一緒。けれど絶望状態。
一人称は「俺」
妖夢が担当。難易度イージー


二つ目の世界。
雲一つ無い快晴で大雨、気温が高く蜃気楼が発生している。大地は凍り、霜柱が地面を持ち上げている。

ハルプの性格は知的で温厚。即断力に優れ、理解力も高い。その分他人を置いてきぼりにして物事を進める。
ダンまち世界が出典では無い。
一人称は「ボク」
命、千草が担当。難易度ノーマル

三つ目の世界。
夕暮れ時、茜色に染まっている。
地面は妖夢の死体で埋め尽くされており、空中は首を吊った妖夢が沢山ぶら下がっている。

桜花が担当。難易度???


四つ目の世界。
一つの小島を除き、海。季節は夏。

ハルプの性格はお調子ものだけど臆病。荒っぽさが無く、可愛らしい性格。
一人称は「俺」
オッタル、ダリル、リーナ、アリッサ、クルメが担当。
難易度ベリーイージー

本来の世界。
担当は・・・・・・・・・・。
難易度???


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