オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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下に進むにつれ、シリアスが強くなっていきます。

桜花視点オンリーです。






73話「コホン。えっと、桜花」

背中に何かを感じる。・・・・・布団か?

 

目を開けようとして、止めた。

あの光景が広がっていると思うと、目を開ける勇気が出ない。

 

 ギシ

 

目を閉じた暗闇の中、すぐ近くから何かが軋むような音が聞こえた。

モンスターか?いや、なら襲われている筈だ。

じゃあ、なんだ?この幻を見せている奴の正体・・・・・って言ったらハルプなんだろうが・・・・・ハルプが居るのか?

 

「・・・・・」

 

起きたことを悟られないように、出来るだけ睡眠時の呼吸に近づける。

 

そして、薄らと目を開けた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・束・・・・・か・・・・ルフ・・・・・ては、まと・・・・・で、ね・・・・・」

 

小さな明かりに照らされ、作業机に向かう少女がいる事が分かった。椅子に座っているが、髪が床に付いている。束丸を見ているようだ。

髪が長いとなると、やはりハルプか。

 

「・・・・・?」

 

少女が振り返る。俺はすぐに目を閉じて寝た振りを続ける。顔の確認は出来なかった。

 

「起きた・・・・・?」

 

ハルプがこちらに気がついたのか、ゆっくりと歩み寄ってくる。・・・・・この状況で勝てるか?槍はさっきの作業机の上だ。素手なら俺の方が強い自信はあるが・・・・・

 

早鐘のように心臓が鳴る。気が付くなと祈る。

 

「・・・・・おはようございます。桜花」

 

バレている!!!

布団を吹き飛ばし、ハルプに掴みかかる。

このまま投げ飛ば──────は?

 

目が・・・・・青い(・・)

 

「よ、妖夢・・・・・なのか?」

「はい」

 

眼帯に、長いボサボサの銀髪。服はよく分からない。色んな服を縫い合わせて作ったのか、混沌としている。

さらに、よく見てみれば片腕が無い。何があったんだ?

 

「生きていてくれて、ありがとうございます。桜花、あなたを見つけた時、私は、私は本当に嬉しかった・・・」

「あ、ああ・・・・・俺も、だな」

 

訳が分からない。俺の知っている妖夢と違いすぎた。

 

「・・・・・どうかしましたか?」

「え、いや・・・・・成長、したんだな」

 

・・・・・外見の年齢は18歳位だろうか?俺と対して変わらないように見える。・・・・・これも幻覚か何かだと思う方が自然だ。

 

「そうですか?ありがとうございます」

「なぁ、ここは・・・・・どこなんだ?」

 

一見、襲ってくるようには見えない。だから、少しでも情報を集める事にする。

 

「・・・・・私は・・・・・廃棄場と呼んでいます。が、正直よく分かりません。わかる事といえば、その人が攻撃を躊躇する者達に姿を変えたナニカが襲いかかって来る所です」

「・・・・・それが本当なら、お前と俺は見てるものが違うのか?」

「・・・・・はい、恐らくは。・・・・・桜花は何に見えますか」

「俺は・・・・・妖夢に見える」

「・・・・・!!あ、あ、ありがとう、ございます」

 

妖夢が頬を赤くして髪を弄り始める。視線を不自然にチラチラと向けてくる。

・・・・・やばいな、これは怒らせたかもしれない。さり気なく束丸を手に取っておく。

 

「なぁ、妖夢・・・・・」

「は、はい。何ですか?」

「えっと・・・・・お前のレベルは?」

 

聞けるうちに聞いておこう。戦いになった時が怖いからな。

・・・・・にしても、立派に成長したんだなぁ。あんなに小さかった妖夢が、こんなに伸びるのか。

 

「えっと・・・・・もうずっと更新出来ていないのですが・・・・・」

「最新のものでいいぞ、俺も一緒に戦う奴の能力は知りたいしな」

「・・・・・!!い、一緒に、戦う・・・・・!!こ、コホン」

 

妖夢がクルッと背を向ける。髪の毛が大きく動く。俺は一瞬、回転斬りが来るのかと思って武器を構えてしまったがすぐに構えを解く。

 

「一緒に、一緒に、一緒に・・・・・!やった!やりましたよ!仲間です、仲間が出来ましたっ!でもでも、どうしましょう。一緒に動くとしても、私は片腕しか無いですし、庇って戦うのは無理です。いやいや、桜花ですよ桜花!あの桜花が来てくれたのです。百人力です。無双なのですよっ。いや、でも・・・・・しかし・・・・・!(小声)」

 

妖夢は背を向けながら何やら呟いている。

俺を殺す算段でも考えているのか?絶対に怒っているぞアレは。

ご機嫌取りは苦手だが・・・・・やるしかない!

 

「妖夢・・・・・?」

「ははい!?」

 

うぉお!?絶対に怒ってるじゃないか!?今凄い振り向き方したぞおい!目が!目がなんか凄いぞ、殺意は無さそうに見えるけど妖夢だからな、わからん。殺意無く殺しに来るかもしれん!

 

「えっと、その・・・・・」

 

 なんか考えろカシマ・桜花・・・・・!!こう、妖夢が喜びそうな・・・・・

 

「綺麗に、なったな?」

「──────っ!?」

 

妖夢の顔が物凄い速度で真っ赤に染まった。

・・・・・なんだ、何が気に触ったんだ・・・・・!?妖夢といい、千草といい・・・・・外見について褒めると怒るのか女性は?!ヘルメス様は嘘を言っていたのか!?

 

「アリガトウ、ゴザイマス・・・・・!」

 

お、お礼・・・・・?

効いたのか?世辞ではないし、本心だが・・・・・効果あったのか・・・・・?

 

「それで、その・・・・・レベルは?」

「タシカ、・・・・・コホン。最後の更新では8レベルでした。そこからは時折二律背反(アンチノミー)が発動していますから・・・・・もしかしたらもっと上かも知れません。」

「は、8か。そうか・・・・・」

 

よぉし、戦うのは無しだ!!

戦闘になったら確実に目で捉えることすら出来ないな!

 

「ひ、低かったですか?」

 

低い訳ないだろ!?なんで青ざめてるんだ!?

 

「いや、俺の倍あるぞ!うん、凄い強いな。頼りにしているぞ!!」

「た、頼りに・・・・・してる・・・・・!!」

 

妖夢が再びぐるっと回る。俺は無理だとは思ってもとりあえず槍を構え、すぐに戻す。

 

「は、はわわ・・・・・!!頼りにしているって!頼りているって!!やりました!やりましたよ幽々子様〜!私、今、頼られています!!ふふふふふ、桜花君、私に任せておきなサーイ!守ります守りますとも!(小声)」

 

不味いな、レベル8とか何をやっても勝てる気がしない。

どうする・・・・・、逃げるか?ちなみに俺は家の中の扉付近にいる。若しかしたら逃げられるかもしれん。・・・・・家の中のからは、だけどな。

 

はっ、そうだ!ヘルメス様が言っていたことを思い出したぞ!タメ口で話すことで距離を縮められると!

 

「なぁ、妖夢」

「はい!何ですか?」

 

ニコニコと笑いながらこちらに振り返る妖夢。・・・・・くっ!笑顔とは本来攻撃的な(ry

ひ、怯むな。よく見ろ、可愛い顔だろ?そう、そうだ落ち着け・・・・・タメ口で話そうぜ?って言うだけなんだからな。よ、よし。

 

「俺達は今、2人きりだ」

「はい」

「なら、分かるだろ?」

 

妖夢が首を傾げ、暫く考える。妖夢なら分かるはずだ、チームワークを深めたり、そういった効果は。

 

「──────ふぇ!?え、ええ!?えっと!?おおおお桜花、落ち着いてください、本気ですか!?」

 

何やら妖夢が慌てている。なんだ、なんか間違えたか?

わからん・・・・・わからないものは置いておいて、本気であることを伝えなくては。このままだと殺される。だから仲良くならないといけないんだ。

 

「本気だ」

 

真面目に、真顔で心を込めて言った。

 

「ぅ・・・・・うぅ・・・・・」

 

妖夢の顔が真っ赤に染まり、頭から蒸気が噴き出している。

ま、ずい。これは・・・・・沸点を超えたな。

 

「で、でもですよ?ご飯はあまり取れませんし、私が戦えなくなってしまえば殺られてしまいますし。そ、そもそも出来るかも分からないですし・・・・・」

 

ご、ご飯?戦えなくなる?わ、わからんが、タメ口はそんなに嫌なのか?

でもハルプは出来ていたんだ、妖夢にも出来るはず!

 

「出来る(迫真)」

 

そう、出来るんだ。タメ口くらい出来るさ。俺達の仲だろう!?

そんな思いを胸に、祈るように目をつぶった。

 

「わ、わ、わかり、ましたっ!!」

「違うぞ」

「え?」

「ですますは要らない。タメ口だろ?」

 

よし!やったぞ!!了承したぞ妖夢が!!命が繋がった!!

と、喜んだのもつかの間、妖夢がまた髪を踊らせて後ろを向く。

 

「どどどどどど、どうしましょう幽々子様〜!?タメ口ってことはアレですよね!?夫婦なら、敬語は要らねぇぜ、って事ですよね!?あわわわ、でも私にできるでしょうか!?むりむりむり、絶対に無理です!!そ、それに・・・・・こ、子供なんて・・・・・まだ私には早いというか、いや、でも欲しくないわけでは無いのですよ?この惑星の総人類2人ですし、3人とか4人とかにしたい気持ちはありますが!!・・・・・うぅ、うぅぅ!・・・・・き、決めましたっ!女、魂魄妖夢!今日、大人になります!見ていてください幽々子様〜!!(小声)」

 

お、妖夢が立ち上がったぞ?

 

「コホン。えっと、桜花」

「なんだ、妖夢」

「〜〜!!・・・・・ぇっと・・・・・あなた?」

「ん?なんだ?」

「〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

え、なんだ?どうしたんだ?そんなにタメ口は嫌なのか?ならやめさせた方が良いのか?ヘルメス様、分かりません俺。

 

「えっと、覚悟は、出来てるから・・・・・その、初めてだから、優しくして欲しい・・・・・な?」

「あぁ、分かってる。初めては何でも怖いからな」

 

覚悟を決める必要があるのか・・・・・。そんなに怖いか、タメ口。まぁ、出来るだけ優しい口調を心がけよう。

まぁそれに、俺も初めてゴブリンと戦った時は怖かったからな。命や千草にバレないように気を引き締めてた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・んん!?

 

「ちょ!まっ!?妖夢なんで服を脱いで!?」

「ぇ、あっすみま・・・・・ごめんね!着てる方が良かった?!」

「お、おう!着ててくれ是非!」

「う、うんっ!!・・・・・桜花って変態なんだね・・・・・着てる方がいいなんて」

「・・・・・ふん!?」

 

まて、まてまて待て!?何かがおかしいぞ!?

なんで服脱ぎ始めたっ!そして着てた方がって、そりゃそうだろうけど・・・・・もしや話がズレてる?

 

「ま、待てよ。落ち着いて聞いてくれ、妖夢」

「な、何かな?」

 

はぁ、顔が熱い!

とりあえず誤解が生まれていたとしたはそれを無くさなければ。

 

「えっと、俺は・・・・・お互いタメ口にしようって言いたかったんだが・・・・・り、理解してくれたと思って話を進めてしまった、んだ、が?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

妖夢さん?あ、殺される?これ殺される?

 

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!なんだ、そんなことでしたか・・・・・分かりました。わかった桜花。あー恥ずかしかったっ!!もう、なんでもっと早く言わないの?」

「ぃあ、す、すまん!」

 

俺は咄嗟に土下座した。敏捷値が許す限界までの速度で土下座した。

また、俺はやってしまった!何故俺はこうも意思疎通が出来ないんだ・・・・・団長失格だァーーー!!!

 

「ふふ、いいんだよ。私だってずっと1人で寂しかったしね。・・・・・でも、桜花には帰るところがあるんでしょう?私も協力するから。」

「・・・・・・・・・・良いのか?」

 

初めから、全部分かっていたのか。

そう思うと、少しやるせない。妖夢を助ける事は出来ないのだろうか?

 

「うん。生きてほしいから。あと、出来ればもう、ここに来たらダメだよ?」

「・・・・・お前は」

「桜花・・・・・期待させないでね。」

「・・・・・すまん。」

 

儚げに笑う妖夢。変わり果てた姿だが、中身はそう大きく変わっていないらしい。なんだかんだ言っても他人を優先する。

 

・・・・・助けたい。

 

その思いはある。だが、それが無理な事もわかる。

なにせ目の前に居るのは妖夢だ。俺の何十倍も強い。それを、俺が助けられるか?足を引っ張り、助けてもらって・・・・・終わるのか?

 

ダメだろう?それじゃあ男じゃない、そうだろう?

 

俺は誰だ。カシマ・桜花だ。タケミカヅチ・ファミリアの団長だ。

 

目の前の女の子は誰だ。魂魄妖夢だ。タケミカヅチ・ファミリアの団員だ。

 

なら、どうするか。

そんなの、一つしか無いだろう!

 

俺は意を決して妖夢に話しかける。

 

「妖夢」

「なに?桜花」

「期待はするなよ?」

「・・・・・・・・・・ありがとう」

 

ニッと互いに笑い。妖夢が扉に手をかける。

 

「行くよ」

「あぁ」

 

扉が開き・・・・・外の世界へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死屍累々。

その言葉こそ、この光景を最も的確に表せる言葉だろう。

強烈な腐臭と、最悪な悪路。

一歩踏み出す事に、嫌な音が響く。

 

「うぅ、やっぱり慣れないな」

「我慢するしかないよ。桜花の視点だと私が踏まれてるのかぁ・・・・・やっぱりおんぶしようか?」

「いや、それじゃあ咄嗟に反応出来ないだろ?」

「それもそうだね」

 

俺はこの光景に慣れることは出来そうにない。

そう言えば、妖夢にはこの光景はどう見えているのだろう?

 

「なぁ、妖「しっ、静かにして」・・・・・!」

 

妖夢に聞こうとしたら、何かが見えた。人影だ。この世界には夕方しか無い。そのせいか遠くの人影は発見しやすい。

 

「・・・・・どうする?」

「先手必勝だよ」

「敵じゃない可能性は?」

「・・・・・わからない。でも、どれだけ頑張っても対話出来なかった。もしかしたら向こうから見たら、私達は化け物なのかも。でも、それを考えたら動けないから」

「・・・・・そうかわかった。じゃあ先手を打とう。俺が囮になる、妖夢は側面から叩けるか?」

「もちろん」

 

作戦は簡単に。難しくする必要は無い。妖夢のレベルは8。俺と合わせようとしたらお互いに足を引っ張り合うだけだ。

 

「おーいそこの人!!!」

 

デカイ声を上げ、両手を振って人影にアピールをする。その瞬間後ろで風が巻き起こり、妖夢が消えた。

人影はこちらに走って来たが、突然、首が上に飛んだ。

 

「終わったよ」

「うぉ!?速いな・・・・・!」

 

一瞬で後ろ(・・)に走り、大きく遠回りをして、一気に接近。通り過ぎざまに首を刎ね、俺の隣りに駆けてきたのだとか。説明が無ければ全く分からなかった。

 

・・・・・妖夢が強くなるとこうなるのか。

 

「進むよ」

「渓谷だったか」

「うん。そこに・・・・・罅がある」

「・・・・・罅?」

 

その罅に辿り着けば帰れるのか?

 

「・・・・・・・・・・そこに飛び込めば帰れる。迷いがあると無理だと思うけど・・・・・」

 

そう言って妖夢が申し訳なさそうに呟く。

 

「いや、いいさ」

 

先へ、先へと進む。似たような出来事が何度か続き、山が見えてきた。

腐臭が増した。骨が目立ち始めた。

 

「・・・・・来る!!」

 

突如、地面から飛び出してきた。

 

「ぅぁあああああ!!!」

「ちぃ!」

 

妖夢だ。妖夢にしか見えない!?血走った目で、必死に、刀で攻撃してくる。

 

「退いてええ!!!!」

「おち、つけ!!」

 

攻撃を槍で逸らし、受け流す。

 

「シッ───!!」

 

そこでタタラを踏んだ妖夢の首を妖夢が刎ねる。自分でも何がなんだかわからない。だが、その時・・・・・

 

 ─────妖夢と目が合った。

 

「────────桜・・・花・・・?」

「!!」

 

ぼとり。と落ちた首は、目を大きく開けて驚いたままの顔で固まっていた。

足が、震え始めた。息がしにくい。

 

「聞いたらダメだよ、なんて言われたのかわからないけど・・・・・最期にあぁやって言葉を残していく。それで、私たちの心を折ろうとしてくるんだ」

「・・・・・わかってる」

「なら・・・・・いいけど」

 

まだ、死体の上を進む。

数分おきに、奴らは来た。最期に嫌な言葉を呟いていく。

 

「なん・・・・・で?」

「桜、花・・・・・?」

「死にたく・・・・・ない」

 

聞きたくない。聞きたくない。聞きたく無い!!

聞くに耐えない、俺を攻める非難の声が俺の心を掻き毟る。

自分がどこを向いているか分からない。

 

「・・・・・桜花、ごめんね。こんなところに連れて来ちゃって・・・・・全部倒してからにした方が良かったよね。」

 

違う。俺がカッコつけたから。早く帰ろうと焦ったから。

 

「全部、全部私が倒してくるから。」

 

危険だ。そんな一言すら出てこない。喉が干からびたようだ。

 

「桜花はここで寝てていいよ。安心して・・・・・きっと、何とかするから」

「いや、まて、俺は───がっ!?」

 

頭に強い打撃を感じ・・・・・意識は遠のいた。

・・・・・妖夢が山へと走っていくのが見える。そして、それを追う津波のように人影が向かっていくのも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、目が覚める。

 

 ──────夕暮れだ。あの世界だ。

 

夢ではない。夢ではないのだ。幻など無かったのだ。

 

「・・・・・」

 

膝に手を置き、立ち上がる。槍を片手に、グチュグチュと音を立てながら山へと進む。

妖夢はいなかった。だが、仕方ないだろう。俺はやっぱり足でまといだった。

 

 

 

 

 

 

道中、敵はいなかった。

新鮮な死体は、妖夢が倒したものだろうか。

 

「・・・・・・・・・・」

 

やがて、階段(・・)が見えてくる。下へと続く階段だ。死体が掻き分けられ、クレーターのようになったな場所。ここの中心が渓谷。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

不気味な音を立てながら、下へと下っていく。

沢山の死体が転がっていた。骨や腐肉ではなく、新鮮で、さっきまで生きていた肉。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

クレーターを回るように緩やかな階段。

クレーターの中央を見遣れば、死体が積み重なっていた。

 

 ──────その近くに、刀が突き刺さっている。

 

 白楼剣だ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

後悔が、胸を締め付ける。

なぜ、俺はあの時・・・・・と。

男では、無かったのか、俺は。こんなことになるなら・・・・・。

悔しかった。虚しかった。何も出来なかった。助けられなかった。

 

「なんで、なんでお前は・・・・・!!」

 

本当に、なんで・・・・・俺は・・・・・!!!

涙が溢れそうになる。堪える。死体をかき分け、ボロボロの少女を見つけ出す。

 

(おう・・・・・か・・・・・)

 

妖夢が小さく声をだす。か細く、擦り切れている。体は傷だらけだ。足も、片方無い。

 

「俺の・・・・・ためか?これは・・・・・俺のためなのか?」

「・・・・・」

 

妖夢が微笑み、頷いた。

頬を、1滴の涙が流れ出す。

 

「─────────ッ!」

 

感情が溢れ出す。

どうして、自分はこんなにも情けないのか。

どうして、こんな奴が団長なのだろうか。代わりはいくらでもいた。適任な奴は他にも居た。

 

だが、俺がなった。なってしまった。

 

情けない。だが、言わなきゃならない。団長として、家族として。

 

「あり、がとう・・・・・!!本当に、ありがとうっ!!」

 

鼻水を拭い、涙を払う。妖夢を抱き上げ抱きしめる。

 

「ごめん、ごめんな。本当にごめん・・・・・!」

 

軽かった。凄まじく軽かった。片手と片足を失った彼女は、人とは思えないほどに軽かった。

 

(いい、から・・・・・はやく、)(いって・・・・・ぇ?)

 

俺は、首を振った。

きっと、まだ助けられる。これならまだ、万能薬で・・・・・助かる。

情けない・・・・・本当に情けない。俺は、妖夢の決意を踏みにじろうとしている。でも、嫌だった。もう、目の前で死んで欲しくなかった。

 

だから、抱き上げた。

 

「まだ、諦めるなっ!!」

 

だれの口から、こんな言葉が出るのだろう。

少なくとも、妖夢は諦めなかった。諦めていたのは俺だ。俺の方だ。だから、この言葉は・・・・・俺に対するものだ。

 

(・・・・・)(あり、がとう。桜花は、優しいね)

 

違う。俺は優しくない。俺は、弱い。これも逃避だ。最悪の結果から逃れようと、もがいてるだけだ。助けてくれた恩人の恩を踏みにじっているだけだ・・・・・!

 

・・・・・俺は、俺達は渓谷の淵に立った。

強風が吹き荒れ、俺達の髪を靡かせる。奥底は見えない。どれだけ高いのか。本当に元の世界へ繋がっているのか。

そんな疑問が浮いては消えを繰り返す。もし、繋がっていなくても・・・・・妖夢を信じる。

 

「・・・・・行くぞ。妖夢」

「・・・・・」

「妖夢?」

 

ぐったりと、妖夢は動かない。

心臓が脈を打つ。激しく大きく。

まだ、大丈夫だといい聞かせ・・・・・

 

(ごめんね。・・・・・ごめん)

 

そんな小さな言葉に押され、踏み出した。

 

 ─────止めなくてはならない。

 

そうだ。止めなくてはならない。

 

俺がするべきはハルプを止めること。元の世界に帰ること。

意識が定まる。目的が決まる。何をすべきかもわかった。

 

「妖夢、お前も、助けてみせる!!」

 

 ────大きく地を蹴り、罅に飛び込む。

 

 

 

の、だが・・・・・。

 

 

 

『いよっとぉ!そうはさせないぜぇ!!』

 

衝撃が、体を襲う。










さて、最後の最後で現れた『』さん。
次回も桜花パートでいいのかな?ほかの人挟んだ方がいいかな?わからん!
まぁ、そこら辺は何となくで決めていきやしょう。

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