オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

75 / 91

遅れましたー!しかし、次話は完成済み。
割と急いで作ったので変な場所があるかもです。











74話「今─────行きます!!」

「糞が!!!」

『したいの?』

「ちげぇわ!!」

『お、おう』

 

あぁくそが、調子が狂う。何なんだこいつ!!!!

 

『ねーまってよー、俺とお話しようよー!』

「だからしねぇって言ってんだろ!!」

 

ウザイ、とてもウザイ。ずっと付きまとってこうしてお話しよーとか言いやがる、ぶっ飛ばしてぇ・・・・・!!でも攻撃効かないんだよこいつ!!巫山戯てんだろ!?

 

『おーねーがーいー!おにーいーちゃーんー!』

「誰がお兄ちゃんだ!死ね!!」

『死んでますっ!』

「じゃあ生きろ!!」

『はいっ!!』

「なんでだッ!!」

 

はぁ、こいつの近くにいると凄い疲れる・・・・・。

だいたい、なんで俺に付きまとってんだよ!?ほかの奴のとこ行けよ!!

 

「おい、なんで俺に付きまとってんだ」

『みんな泳ぎに行っちゃったし寂しいかなって思って!』

「思って!じゃねぇんだよ!!ウザイ!離れろ!」

『えー、近くに居たらダメなのー?』

「駄目だ。来んな、寄るな、俺の視界に入るな!」

『・・・・・!なるほど!』

 

あ?・・・・・・・・・・・・・・・なんでコイツ俺の後ろに回り込もうとしてんだ?まさか、俺の視界に入るなって言ったからか?おいおい、その前の2つ、前の2つを無視すんなよ!?来んな寄るなって言っただろぉ!?

 

『うわっぷ、あっぶない。視界に入る所だった・・・・・ふぅ』

「ふぅじゃねえんだよ!!!!ウザイわっ!!ぶん殴るぞ!」

『殴ってもいいよ?それで寂しくなくなる?』

「だ、か、らぁ!あぁ〜うぜぇぇ!!!」

 

あぁ色々とキツイ、ストレスがヤバイぞこれは。なんだ、俺は子供が好きじゃないんだ・・・・・くそ、俺が泳げたらこいつから逃げれたのに・・・・・

 

『えへへ、ねえねえ?俺の事、嫌いじゃ無いんでしょ?』

「あぁ!?」

『だって炎出てないもん。それ怒ったら出るんだよね?』

「ちっ知るか」

 

お前は好きじゃあない。つか、アイツも好きでは無い。何時か超えたい相手だ。・・・・・それにそっくり、というか別のアイツらしいが、戦闘力も対して無いらしいからコイツを倒した所で俺の目的は達成なんざされねぇ。

 

だから、いち早く元の世界に帰らないと行けねぇ訳だ。

 

・・・・・。

 

「おい」

『ん?なになにっ、遊んでくれるの!?』

「遊ぶかバカ。・・・・・どうやったらこの世界から出れる」

『まだ遊んでくれないかー。えっと、この世界から出るには~・・・・・ふむふむ、なるほど、はぁ~、みょん?』

「・・・・・?」

 

ハルプの野郎が何やら考え始めた。アイツと比べて天然さが増しているが、若しかしたらあいつよりも頭がいいのかもしれねぇ。

 

『わかんない!!』

「わからんのかいっ!」

 

ダメだァ・・・・・つかえねぇ・・・・・!!

 

『ねーえー!遊ぼーよー!お兄ちゃんー!』

「だからお兄ちゃんじゃねえっつってんだろ!!」

『じゃあオジサン?』

「お兄ちゃんで良しッ!」

『やったぜ!』

「しまったっ!?」

 

もう嫌だァ・・・・・猛者(オッタル)、帰ってきてくれぇぇぇえええ!!!

 

『じゃあさっ!遊んでくれたら教えてあげるよ?』

 

ハルプが両手を後ろで組んで、ニヤニヤしながらそう言った。

俺は思わずハルプを凝視する。

 

「てめ、さっきは分からねぇって・・・・・・」

『遊んでくれなきゃ言わないもーんだ!』

 

畜生が・・・、だけど、その程度なら─────いや待て待て、どの程度か分かってないんだけど!?あっぶねぇ、若しかしたら世界一周クロールとか言われるかもしれなかったぞ!?

 

だ、だが、そうでもしないとここからは出られないだろうな。

 

いっちょ頑張ってみるか。死ぬ気でな。

 

「いいぜ、やってやる──!!」

 

その後、死ぬほど水泳した。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は今泳いでいる。

というか、潜水してる。ブクブクと泡を吐きながら潜っているけど、わかった事が一つある。

 

この世界にはモンスターが居ない。

 

潜って浮上してを繰り返しているのに、小さなモンスターすら見当たらないのだ。

 

ふむ。と僕は考える。

仮に、この世界を抜け出すためにはあのハルプちゃんを倒す必要があるとして・・・・・。

恐らく身体能力は高く無い。それどころか戦闘を行った事があるかも分からない。

 

だが、僕たちにはあの子を倒す決定打が欠けている。

一応どうにかする手段はある。オッタルさんやダリル達皆があの子の腕や手を吹き飛ばして、僕の結界に入れてくれれば封印できる。

 

ただ、封印して倒した事になるのかよく分からない。

さらに言えば倒した所で出られない可能性もある。だからこの事は相談してないし、実行には移せない。

 

「ブクブク・・・・・ぷはぁ!うっへ〜、塩辛いね」

 

着物を着ては泳ぎにくいから脱いでいる。一応サラシを巻いてる。下着は履いてなかったから、クルメちゃんから短パンを借りた。

クルメちゃんと身長が近くて助かったなぁ。流石に、いくら僕の体が魅力的で無いにしろ、男の人からしたら目の毒だろうしね。

 

「リーナさーん!!」

「お?クルメちゃんどしたのー?」

 

クルメちゃんに呼ばれて、そっちに泳いで行くと、何やら下を指さしている。

 

「何かあったの?」

「はい!何か、家みたいな物が」

「家・・・・・?」

 

なぜ家が海の下に・・・・・?

誰かが作った?それとも海に沈んだ?どちらにせよ、注意する必要がある。

 

「2人だけは危険だね。少なくとも、アリッサを連れていこう」

「そうだね、じゃあ1回島に戻る?」

「うん。入れ違いにならないようにしようか」

 

僕達は一旦小島に戻る事にした。

 

 

 

 

さて、小島に戻ってきた僕達だけど・・・・・どうやらダリルは散々遊ばれたみたいだね。疲れた顔して1本だけ生えてるヤシの木のに寄りかかっている。

 

「り・・・・・な・・・・・たす、けてくれ・・・・・」

「何があったんだろう」

「狼にも天敵はいるって事でしょ」

 

呆れた目をしながらダリルを助け起こす。ダリルが珍しくお礼を言ってる。

 

『おっ帰り〜!!待ってたよ待ってたよ!!ねねね、ご飯にする?俺魚とってこようか!?』

 

すると、水着のハルプが走ってきて抱き着いてくる。可愛い。

だが、それが不安だ。

 

「うん、ただいま~。ありがとー、1人で平気?」

『うんっ!まっかせてよ!いってきまーす!あっお兄ちゃん皆に手出しちゃだめだからなっ!』

「だすかっ!さっさと行け!」

『いひひっ、はーい!いってきまーす!』

 

なにせ、おかしい。見送りながらそうおもう。

 

僕が、僕らがこの状況下でこの娘に対して心を開いている(・・・・・・・)。普通なら有り得ない。

 

暴走したハルプちゃんの攻撃なのか、魔法なのかよく分からないけど、何らかの方法でこんな場所に飛ばされた。

そして、これだ。

 

僕らに良く懐き、慕い、甘えてくる。

 

「今戻った。む、ハルプはどこかに出かけたのか?」

「あぁ、魚を取りにな」

「そうか。」

 

こんなの警戒するに決まってるだろう?心は開かれてしまったようだけど、それとこれとは別だ。

 

みんなは警戒してないのかな?いや、アリッサとオッタルなら警戒はしてるかも。

 

「ねぇ、皆。少し聞きたい事があるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、皆。少し聞きたい事があるんだ」

 

突然、真剣な声音で白髪のエルフ・・・・・確かリーナ・ディーンだったか。が、話しかけてくる。

 

俺としてはこの場所から一刻も早く戻りたいのだが、現状、戻る手段は謎だ。今しがた出掛けて行ったスキル・・・・・では無かったのだった。

今の彼女に名前があるのかは不明だが、仮称はとりあえずハルプとする。

 

ハルプがこの場所からの脱出方法を知っているとしたら、どうにかして協力を得なければならない。なにせ、ハルプはあのハルプと同じ様に通常攻撃は何一つとして効果が無い。・・・・・・ややこしいな。元のハルプをA、こちらのハルプをBとしよう。

 

通常攻撃が効かない以上、俺でも対処できん。魂魄妖夢の持っていた白楼剣と呼ばれるもので無ければ有効打は得られないのだ。

 

「おい、オッタル聞いてるのか?」

「む・・・・・」

 

どうやら話しは始まっていたらしい。全く聞いていなかったな、素直に謝っておこう。

 

「すまない、考え事をしていた。もう1度お願いしたい。」

「「「おぉ」」」

「・・・・・どうした?」

 

俺が謝ると、何故か3人は驚いたような顔をした。何故だ、何が間違った・・・・・いや、俺の立場による落差(ギャップ)か。アリッサと呼ばれた鎧姿の女は特に何も言っていないな。

 

「いや、お前って謝るんだなぁ。って思った」

「だ、ダリルさん!もう少し言葉を、ぉ」

「ねぇねぇ!もしかして猛者に謝られた人って貴重なんじゃないかな!」

「・・・・・話しとは?」

 

あ、ごめん。とリーナ・ディーンは話し始める。

ふざけた調子とは打って変わって真剣な顔になる。

 

「みんなは、あの娘に付いてどう思う?」

 

リーナ・ディーンが思い切り突っ込んだ話題を出した。

ふむ・・・・・。

 

「アイツか?あー・・・・・どうだろうな」

「えっと、可愛くていい子だと思うよ?」

「・・・・・・・・・・。」

 

む、アリッサ・ハレヘヴァングも悩んだか。

リーナ・ディーンも同じ様な意見なのだろう。

 

───────信用出来ない。

 

その一言に尽きる。だが、信用を得て協力を要請しなければならないのは確実だ。

・・・・・騙されている可能性を考慮せねばならないがな。

 

なにせ、こちらに交渉の材料は何一つない。嫌だ、と言われればその瞬間詰む。

 

「まだ、何とも言えないな・・・・・」

「あぁ、俺もそう思う。まだ暫くは様子を見よう」

 

協力を仰ぐために親身になるのが正解なのか、それとも蹴り飛ばしてでも離れるべきか・・・・・・。

 

「あぁ、そうだな・・・」

 

ダリル・レッドフィールドのそんなため息が、深く印象に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ夜が開けぬオラリオで、一人の男が裏路地を急いでいた。

 

「(本当なんだろうなっ・・・・・?)」

 

這う這うの体で逃げ出したと言うアマゾネスから聞いた、タケミカヅチ・ファミリアとイシュタル・ファミリアの抗争。

銀髪の怪物との戦闘。

 

話に出てきた「ハルプ」と言う単語。

 

「っ・・・・・!!」

 

鼻に付く血と焼け焦げた臭い。

 

「嘘じゃねぇみたいだな」

 

男、べート・ローガはイシュタル・ファミリアの本拠地────歓楽街へと躍り出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、戦おうか』

 

その一言の後、ハルプちゃんから放たれる殺気は大きくなった。

 

振り抜かれる斬撃。

 

それに私は反応できない。どれだけ目が良くても、体がついて行かないなら意味は無い。

 

私は弱い。みんなに比べれば、とても弱い。

 

「──────っ!!」

 

命ちゃんが私を押し退け、刀で斬撃を受け止める。

 

『おや?反応出来ないと思ったのに、変だね。うん、変だよ。君はアレだろ、分かるんだろ?』

 

そう言ってニヤリと笑うハルプちゃん。怖い。

 

「はい・・・っ、勘ですっ!」

 

命ちゃんが眉間にシワを寄せ、鍔迫り合いから押し込む。

ハルプちゃんは『おっとと』と笑いながら押されていく。

 

「千草殿っ!援護をッッ!!」

 

命ちゃんが私の名前を呼ぶと、一気に踏み込んだ。

そうだ、私も自分の仕事をしなくちゃ。

 

「───はっ!!」

 

刀ごと押されてたたらを踏んだハルプちゃんに、私の矢と命ちゃんの刀が迫る。

 

『ふむ、なら────こうか!』

 

えっ嘘でしょ!?

ハルプちゃんは片手で持った刀で命ちゃんの攻撃を受け流して、もう片方の手で私の矢を掴んじゃった。

 

『そして、こうだね』

 

受け流されて前のめりになる命ちゃんに、掴んだ矢を振り下ろす。

 

「命ちゃん!!」

「くっ!?」

 

私は咄嗟に叫び、命ちゃんは応えてくれた。体を捻り、回避しつつ、裏拳をハルプちゃんに叩き込む。

よしっ、顎に当たったよ!!

 

『うおっと、びっくりした』

「く、やはり効きませんかっ」

 

大急ぎで飛び退く命ちゃん。それに合わせて私も弓で援護する。

残りの矢が・・・・・・あと3本しか無い。無駄打ちは出来ない。それに、私の役目は戦場を見渡して援護すること。集中しなきゃ・・・・・・!

 

『はっ!てやぁ!!』

「く、そこっ!!!」

 

斬撃の応酬が始まった。斬り掛かって、防いで、斬り返す、それを繰り返す。私の弓の腕じゃ怖くてここには打ち込めない。けど、タケミカヅチ様のお力を借りれば・・・・・・!

 

「【穿つ───────】」

 

スキルの千里眼を発動して、ハルプちゃんの動きを読む。大丈夫、行ける!

 

「【必中の一矢】っ!弓神ノ一矢!!!」

 

私の放つ全力の一撃。魔法の力で加速して私の思うように動く矢は、頭めがけて飛んでいく。

 

『当たらないよ。』

 

ヒョイっと言った感じで首を傾げて避けようとするハルプちゃん。私は矢に命じる。横に曲がれ、と。

 

『!?』

「そこぉ!!」

 

矢が耳から耳へと突き刺さり、命ちゃんの一撃がお腹を一閃。

 

普通なら勝った。

でも、私達は知っている。

 

『ふむ、いい連携だね』

 

────無傷。

 

こんなの、勝てるわけない。絶望的な戦況に私達が挫けそうになった、そんな時。

 

「────え?」

 

─────雷は落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・』

 

───────自己問答はままならない────

 

───思考を何かが妨げている────────

 

─────────記憶があやふやで不鮮明だ─

 

─今、俺は何をしている───────────

 

─────ブレる思考、思い通りにならない体─

 

───えっと、俺は、確か──────────

 

──────ここは、そう、オラリオで────

 

──頭痛が酷い。頭が欠けたみたいだ─────

 

────────────足音。2つ?────

 

「───か。久しぶりに会えたと思えば、随分と大きくなったな」

 

───────知っている───この声────

 

『タ、ケ?』

「あぁそうだ。お前の父、タケミカヅチだ。」

 

─────嬉しさ(悲しさ)が込み上げてくる──────

 

『嬉し、い。会い、たカッタ』

「俺もだ。なぁ───、今までどこで何をしてたんだ?」

 

─どうして誰も俺の名前を呼んでくれないの?─

 

─────────────忘れたの?────

 

───思い出せない?────なんで?────

 

──苦しい──怖い──悲しい──悔しい───

 

「泣いているのか?俺でよければ話を聞こう。いや、聞かせてくれ。俺はお前の父だ。子供を救う義務がある。」

 

─────欲しい──────────────

 

─────────呼んで欲しい───────

 

───名前、呼んでほしい──────────

 

『名前、呼んで、欲しい』

 

────不思議そうな顔────懐かしい───

 

「───」

 

───聞こえない──────────────

 

『違う』

 

─────聞こえない、呼んで貰えない────

 

「───?」

 

─やだ────忘れないで──────────

 

『それじゃ、無い』

 

───────────────俺は─────

 

───────俺の名前は──────────

 

 

 

「────妖夢」

 

 

 

─────ドクンと、体が脈打った──────

 

──体が暴れ出す─────怖い───────

 

「そうか・・・・・・なら俺も禁忌に手を染めよう。お前だけを先に進ませはしない。家族なら・・・・・・肩を並べて歩かないとな」

 

───────勝手に、タケを攻撃する────

 

「いいかよく聞け。掟と言うのはな、大事な時に破るためにあるッ!!」

 

─視界が白く染まる─────────────

 

─────────嫌だ、戦い、たく無い───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春姫は人生で最大のピンチを迎えていた。

砂埃の中、人影がモゾりと動く。いや、もはや人影ですらない。

 

翼が生え、尾が生え、低い唸り声は春姫のか弱い心臓を締め付ける。

 

そこにあったのは暴虐の化身。地上でひとたび力を振るえば殺戮の嵐となるであろう地下の王者達。

そんなものを前に、春姫の呼吸は止まりかけた。

 

だが、声を出さなかった事、砂埃で匂いが分かりづらかったこと、幸運などが幸いして春姫は気が付かれていない。

 

「みんな無事か?」

「キュイ・・・・・・」「ウー!」

「外二追撃二出タノハ我々ダケダ、誰モ減ッテイナイ」

 

するとなんて言うことか、春姫の前でモンスターが話し始めた。

 

「!?・・・・・・こんっ」

 

春姫は目の前が暗くなるのを感じ、意識を手放した。

脳を守るための自衛だが、この状況は良くないだろう。傍から見たらモンスターの餌だ。

 

「・・・・・・声がしたと思ったら気絶してるし」

「キュイ?」「ウー?」

 

そんなモンスター達・・・・・・ゼノス達は春姫に気がついた。気絶の仕方が妙に艶かしいが、モンスターである彼らには特に問題は無い。

 

しかし、彼らが強引に入ったからだろうか、石造りの地下室は崩壊寸前となっていた。

 

「おい!?崩れる!あの子を助けるぞ!」

「イヤ待テ危険ダ!リド!!!!」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

 

リドが春姫を抱え起こし、グロスが続く。ウーウーと鳴く不思議な箱とアルミラージがあとを追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉を突き破る生々しい音が、静けさのみが残る荒野に響いた。

日が決して眠らぬ不可思議な世界で、黄昏に照らされたシルエットは浮かび上がっていた。

 

『・・・・・・かハッ』

 

ハルプが血をはきだした。けれどそれは地面に触れる前に気体となって消え失せる。

 

「─────終わりです。」

 

妖夢の楼観剣がハルプを貫いている。

 

『・・・くっ・・・・ま、だ・・・・・・!!』

 

ヨロヨロと、貫かれたままに進む。諦められなかった、認められなかった。

 

「もういいんですよ。もう、戦わなくていいんです」

 

妖夢はそんなハルプを抱きとめしゃがみ込む。

悲しさを隠しきれず滲み出たような、そんな顔をしながら、自らの膝の上に力なく倒れる相棒の顔を覗き込む。

 

『──────』

 

声を殺し、ハルプは泣いている。魂故に涙など出ない。

キラキラとハルプの末端が光りの粒子となって消えていく。白く、大きさも様々で────美しかった。

 

『ごめ、ん』

 

核を破壊されもはや崩壊を待つのみとなったハルプは、絞り出すようにそう言った。

過去を振り返り、様々な後悔が襲ったのだろう。全て、自分が悪かったのだ。

 

「いっ、いえっ、ありがとうございますっ!」

 

涙ぐみ、つっかえながらも妖夢は礼を言った。ここまで来れたのは貴方のお陰だと。自分としてでは無く、目の前の彼の知る妖夢の代わりに、そう言った。

自分ならきっと、そう思っているはずだ。そう考えて。

 

『・・・・・・・・・・・・じゃ、あ。最後、に。全部、教える、から・・・』

 

その言葉を噛み締めるように目を閉じたハルプは、少し間を置いて目を開く。そこには優しげな笑みがあった。彼の中で全ての決着が付いたのだろう。

 

自身の能力の全てを明かし、目の前の自分の知らない彼女を助ける為に、彼は最後の力を振り絞る。

 

『俺の能力は─────────』

 

 

 

 

 

ひときわ大きな白い光が、ポゥ・・・と空へ飛ぶ。

光りの粒が空に無数に浮遊していた。

 

地上には妖夢が1人立っている。

 

「・・・・・・」

 

その顔には確かな覚悟が刻まれていた。白楼剣を召喚し、楼観剣を握り直す。

 

能力に対する対処法は理解した。

 

ならば斬る、斬って助ける。

 

「今─────行きます!!」

 

息を整え、白楼剣を天に向け構える。白い光りが妖夢に寄り添う様に集まり────白楼剣が眩い光を纏った。

高まる魔力と霊力、そして妖力。スカートがふわりと浮かび、柔らかなボブカットが力の高まりに呼応するように動く。

 

「断迷剣──────」

 

迷い込んだ世界の迷宮に、出口のない迷路に出口を穿つ。

練り込まれた力の全てが白い光となって立ち上る。

 

「──────迷津慈航斬!!!」

 

 

白く長い光の柱が────世界を絶つ。

 

 

 

 

 

 

 









誤字脱字、コメント待ってます。


次回は桜花パート。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。